ネオ・ボンゴレⅠ世も異世界から来るようですよ?   作:妖刀終焉

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十六夜達にリングを持たせるのは無しの方向で行こうと思います


生命の炎と造物主の決闘来る!

十六夜と黒ウサギが追いかけっこをして時計塔を盛大に破壊(主に十六夜が)して騒ぎを起こしている間にツナと耀は別の場所にいた。

 

メインイベントである二つのギフトゲーム"造物主の決闘"と"生命の炎"は同時進行で行われるようになっていて、現在は予選の真っ最中。景品のギフトが強力なものであるが故に主催の"サラマンドラ"や本拠を北の六桁の門に構える"ウィル・オ・ウィスプ"、その他多くの名のあるコミュニティの猛者達が互いのギフトを競い合っていた。

 

 予選内容はゲーム盤の上を逃げ回るキャンドル("ウィル・オ・ウィスプ"の提供)を、灯している火を消さずに相手より先に捕獲すること。ちなみに殺害さえしなければ相手への妨害も認められているので、相手の攻撃を避けながらキャンドル捕獲に専念するか、相手を倒してから悠々とキャンドルを捕獲するかの二つに一つ。

 

 ツナは持ち前のスピードで相手を翻弄しながら着々に勝ち進んでいき、最終予選へとコマを進めていた。これに勝つことができれば明日は決勝戦だ。

 

「うわ~、緊張するなぁ」

 

 コロッセオ内の隣では耀が自分の10倍は裕にあるゴーレムを蹴り倒して観客の歓声を浴びていた。決勝進出を決めたのは彼女の方が先であった。これはプレッシャーがかかる。

 

 ツナの方は最初こそスピードでゴリ押しして勝つことはできたものの、徐々に苦しくなってきた感は否めない。向こうも伊達に場数はこなしてはいないのだ。

 

「始めよう」

 

 死ぬ気丸を飲んでツナは戦闘態勢になる。

 

「でやっ!」

 

 相手は炎を纏ったブーメランを飛ばしてきた。向こうは先にツナを倒してからキャンドルを捕まえる戦法の様だ。

 

 ブーメランは速いが、ツナはXグローブでそれを容易く弾いた。

 

「掛かったな」

 

「何!?」

 

 相手のブーメランがクンと曲がって戻ってくる。投げたブーメランが手元に戻ってくるのは別段おかしなことではない。異常なのは弾いたブーメランが回転力を取り戻して再びツナへと襲いかかってくること。

 

「くっ」

 

 ツナは空へ逃げるもブーメランはあらぬ曲がり方をしてまたツナへと向かってきた。

 

(追尾してくるのか!)

 

 ツナは避けても避けても追いかけ続けるブーメランを振り切ろうにもそれに集中してしまえば敵の思う壺。できる限り最小限の動きでブーメランを回避しつつ敵の動向も見なければならない。おまけにブーメランのスピードがだんだん上がってきていた。

 

「それじゃあそろそろ追加といこうか」

 

 敵の手には今度は二つのブーメラン。形状からして先程の物と一緒だと考えていい。

 

「さあ、踊れ踊れ!」

 

 炎のブーメラン二つはターンして戻ってきたブーメランを避けたタイミングでツナへと投擲される。一つ目は避けることに成功しするも、もう一つは間に合わずに手刀で叩き落した。

 

「チッ」

 

 相手は今ので仕留めるつもりだったのだろうか、舌打ちをしている。

 

 今度は戻ってきた二つ(・・)のブーメランがツナの方へ戻ってくる。

 

(二つ? もう一つは何処へ?)

 

 ツナが避けた方はそのまま敵の元へと戻っている。ツナはこれに疑問を覚えた。三つの内一つを手元に戻すことに意味があるとは思えない。

 

(何だ。何故あいつはそんなことを……?)

 

 ツナは必死に頭を働かせる。そうして最初にブーメランを弾いた時に敵は「掛かったな」と言っていたのを思い出した。今自分を追尾しているのは弾いたブーメラン。それにはよく目を凝らすとツナのオレンジの炎が僅かにくっついているのが見える。 

「そうか! オレの炎か!」

 

「チッ、もう気づきやがった」

 

 ツナは敵の武器はブーメランに相手の炎を付着させてマーキングにする。そしてその主を延々と追尾するという特性を持っていることを暴いた。だから最初に避けた二つ目はそのまま敵の手元に戻ったのだ。

 

 以前にも太猿が使っていた黒手裏剣(ダークスライサー)と少し似ていたのでそこまで辿り着くのにそれ程時間はかからない。

 

 

 

「まぁ、もう遅いけどね」

 

 今度は手元のブーメランを含めて合計6つ。それをツナを狙っているブーメランに向かって投げつけた。ぶつかった6つ全てにオレンジ色の炎が付着して計8つが全方向から取り囲むようにツナに向かって飛んでいき、衝突した。

 

「さてと……」

 

 敵はゆっくりとキャンドルへ歩みを進めようと背を向ける。刺激さえしなければ捕獲は簡単なのだ。

 

 

 

「……何処へ行く気だ」

 

 

 敵はギョッとして振り向いた。今のをそう簡単に避けられるわけがない。仮に幾つか避けられたとしても相当なダメージになった筈。

 

 そう当たっていさえすれば。

 

「ナッツ、ありがとう助かった」

 

「ガウ♪」

 

 ツナの肩に乗っているのは相棒のナッツ。そして下にボトボトと落ちていくのは石化した7つのブーメラン。最後の一つはツナが掴み、そして今握り潰した。

 

 ブーメランを大空属性の特徴である"調和"で石にして炎ごと封じ込めたのだ。ちなみに石化は炎の効果なのでルール違反ではない。

 

 動きを封じていたブーメランがなくなったことでツナは思う存分に動くことができる。敵もこれは拙いと新しいブーメランを取り出したが一手遅かった。その頃にはツナの手にキャンドルがあった。

 

 その瞬間、観客席から歓声が上がる。

 

「ふう」

 

 ツナが一息つくと、バルコニーの白夜叉が拍手を打って歓声がピタリと止まる。

 

「最後の決勝枠が今決まった。"造物主の決闘"は"ノーネーム"の春日部耀、そして"生命の炎"は同じく"ノーネーム"の沢田綱吉。決勝のゲームは明日以降の日取りとなる。明日以降のゲームルールは……もう一人の"主催者"にして今回の祭典の"主賓"から説明願おう」

 

 そう言って白夜叉はバルコニーの中心を譲る。

 

 出てきたのは深紅の髪を頭上で結い、色彩鮮やかな衣装を幾重にも身に纏った少女。まだ幼いと侮ること無かれ、彼女こそ此度新たに"階級支配者"として任命された者なのだから。

 

 しかし年相応に緊張しているのだろう。白夜叉は先輩らしく優しく笑いかけて彼女の緊張を解していた。

 

「ご紹介に与りました、北のフロアマスター・サンドラ=ドルトレイクです。以降のゲームにつきましてはお手持ちの招待状をご覧ください」

 

(あの子が例の)

 

 小さな少女の権力者。死を運命付けられていた大空のアルコバレーノである少女、ユニを彷彿とさせて複雑な気分だ。

 

「ツナ、おめでとう」

 

「あ、春日部さん。そっちもおめでとう」

 

 二人は互いに決勝進出を祝いあう。これにて本日の大祭はお開き。

 

 耀はナッツとじゃれながら、ツナはそれを微笑ましく見つめながら、そして置いてきた筈なのに何故かいる三毛猫は男泣きしながら、二人と二匹は帰路に着いた。

 

 

 

 

 サウザンドアイズの支店に戻ったツナ達は本日の疲れと汚れを洗い流すべく風呂に入った。そこはやはり男なだけに女性よりも入浴時間は短く、女性陣が出てくるまで男性陣は歓談している。ついさっき十六夜が女性店員に『この店はどうやって移動してきたのか』を聞いていたが、ツナは1%も理解できなかった。

 

「十六夜君ってもしかして学者とか目指してたりする?」

 

「……いや。というかそれ以前に将来の夢とか考えたことねーしな」

 

 十六夜は確か高校生くらいの年齢だった筈だ。一体何処でここまでの知識を得たのかをツナはとても気になった。

 

 雑談をしていると湯殿から女性陣が上がってきた。

 

 振り向くと皆、備えの薄い布の浴衣を着ており、ほんのり湯気が立っていて、髪は軽く拭いただけなのかまだ濡れてしっとりとしていた。

 

 ツナは顔を少し赤くして目を背けたが、その反対に十六夜はマジマジと眺めている。

 

「……それにしても、コレはなかなかいい眺めだ。そうは思わないか沢田、御チビ様?」

 

「え?」

 

「こっちに振らないでよ!?」

 

「黒ウサギやお嬢様の薄い布の上からでも分かる二の腕から乳房にかけての豊かな発育は扇情的だが相対的にスレンダーながらも健康的な素肌の耀やレティシアの髪から滴る水が鎖骨のラインをスゥッと流れ落ちる様は視線を自然に慎ましい胸の方へと誘導するのは確定的にあ」

 

 言い終わる前に二つの風呂桶が十六夜の顔に直撃してスコーンといい音を立てる。風呂桶を投げたのは顔を真っ赤にしている黒ウサギと飛鳥だ。そしてそれを受けてなお不敵な表情を崩さない十六夜には流石の一言を送る。

 

 その中で耀はじっとツナを見ている。

 

「えっと、どうかした?」

 

 ツナは直視こそしてないが、それでも気になるのかチラチラ見ている。

 

「……ツナも変態?」

 

「違うよ!!」

 

 

 

 

 

「さて、皆が揃ったところで第一回黒ウサギの審判衣装をエロ可愛くする会議を」

  

「始めません」

 

「始めます」

 

「断固始めません!!」

 

 白夜叉の提案に悪乗りする十六夜。これでは話が全く進まないとジンとツナは頭を抱えた。

 

「まあ黒ウサギの衣装の件についてはさて置いてだな。実は明日から始まる決勝戦の審判を黒ウサギに依頼したいのだ」

 

 白夜叉が言うには、何でもツナ達が予選を行っている間の騒ぎのせいで月の兎がここに来ていることが公になってしまい。皆が『明日のギフトゲームで"箱庭の貴族"を見ることができるのでは?』と期待してしまっているらしい。ここまで期待されては出さないわけにもいかなくなってしまったのだ。

 

 別途の料金も支払うとのことで黒ウサギは快く承諾したが、新しい衣装については却下した。

 

「あ、そういえば明日戦うコミュニティって何処なんですか?」

 

「それ、私も知りたい」

 

 ツナと耀はふと思い出したように白夜叉に明日の対戦相手を聞くが、詳しく説明するのは不公平だと言って指をパチンと鳴らす。すると空中に羊皮紙が現れ、そこに文字が浮かび上がる。

 

 そこには決勝参加コミュニティが記されていた。それを見た飛鳥が驚きの声を上げる。

 

 ゲームマスターに"サラマンドラ"。参加コミュニティに"ウィル・オ・ウィスプ"と"ラッテン・フェンガー"、そして"ノーネーム"。上二つはともかく"ラッテン・フェンガー"についてはツナもよく知らない。だが、どれも格上のコミュニティで油断は禁物。

 

 羊皮紙を見ていた十六夜は何かに気がついて笑った。

 

「へえ……"ラッテン・フェンガー"? 成程、"ネズミ捕りの道化(ラッテン・フェンガー)"のコミュニティか。なら二人の相手はさしずめハーメルンの笛吹きってところか?」

 

(ハーメルンの笛吹き? 何だっけ……動物が音楽を奏でる話だったかな?)

 

 ハーメルンの笛吹きは正式名称"ハーメルンの笛吹き男"。グリム兄弟等の複数の作者によってドイツの街、ハーメルンの災厄を記した民間伝承のことである。ちなみに現在ツナが想像しているのは"ハーメルンの笛吹き男"では無く"ブレーメンの音楽隊"。同じグリム童話の話ではあるものの話の内容は全く違う面白おかしい話だ。

 

「ハ、ハーメルンの笛吹きですか!?」

 

「どいうことだ小僧。詳しく聞かせろ」

 

 ツナが見当違いのことを暢気に考えていると突然黒ウサギと白夜叉が声を荒げた。

 

 何でも"ハーメルンの笛吹き"という魔王コミュニティ傘下のコミュニティが実際にあったそうで、そのコミュニティ自体は魔王が敗れたことでこの世から消え去った筈だったのだ。だが、もし十六夜の話が正しいのであればまだ残党が残っているということになる。しかもその残党はこの祭りに潜んでいる可能性が高い。

 

 明日の決勝で"ラッテン・フェンガー"が何か仕掛けてくるのではと皆が心配になったが、白夜叉が前もって"参加者以外はゲーム内に入れない"や"参加者が主催者権限を使うことができない"といった決まりをつけていたのでとりあえずゲームの最中に魔王が襲ってきても""主催者権限を使うことはできない。だが、ツナは一抹の不安を感じ取っていた。

 

 

 

 

 次の日、日が昇りきり、開催宣言の為に黒ウサギが舞台中央に立つ。黒ウサギは胸一杯に息を吸うと、円状に分かれた観客席に向かって満面の笑みを向ける。流石にメインイベントである決勝戦を同時進行にするわけにはいかないのでツナの決勝戦は"造物主の決闘"の後に行われることになっていた。

 

『長らくお待たせいたしました! 火龍誕生祭のメインギフトゲーム・"造物主達の決闘"の決勝を始めたいと思います! 進行及び審判は”サウザンドアイズ”の専属ジャッジでお馴染み、黒ウサギがお務めさせていただきます♪』

 

「うおおおおおおおお月の兎が本当にきたああああああああぁぁぁぁああああ!!」

 

「黒ウサギいいいいい! お前に会うため此処まできたぞおおおおおおおおお!!」

 

「今日こそスカートの中を見てみせるぞおおおおおおおおおぉぉぉぉおおおお!!」

 

 観客(主に男)は喉が壊れんばかりの熱裂な声援を発して、地震でも起こったかのような揺れを引き起こす。中には『L・O・V・E 黒ウサギ♥』と書かれた旗を持っている者もいた。

 

 そんな男達を社会のゴミでも見るような冷めた目で観客を見下ろす飛鳥。彼女はまだ娯楽の少ない戦後であったが故のギャップを感じ取っていた。

 

 リリを挟んだ隣では黒ウサギのスカートの中身について熱く語り合っている十六夜と白夜叉がいる。馬鹿二人は顔を見合わせ頷きあった。そして何処に隠していて、何時持っていたか分からない双眼鏡を取り出し黒ウサギのスカートの裾を目で追う。

 

「あ、あの~?」

 

「見るな、サンドラ。馬鹿がうつる」

 

「はぁ~。もうすぐ春日部さんと沢田の試合が始まるっていうのに・・・・・」

 

 飛鳥は呆れながら馬鹿二人を空気と思うことにしたのだった。

 

 

 

 

 ここにいないツナと耀は観客席から見えない舞台袖にいる。レティシアやジン、そして三毛猫も一緒だ。耀はジンから対戦相手の情報を聞いている。

 

「――"ウィル・オ・ウィスプ"に関して、僕が知っている事は以上です。参考になればいいのですが……」

 

「大丈夫。ケースバイケースで臨機応変に対応する」

 

 どこかで聞いたような返答に苦笑するジン。

 

 本当であればパートナーを一人まで参加させても良いのだが、耀はそれを拒否。ツナも別の戦いがあるのでパートナーとして参加することは出来ず、かといってナッツを貸そうにもナッツはギフト扱い。登録されてないギフトは使用することはできないので×。

 

「あんまり無理はしないでね」

 

「……うん、いってきます」

 

 耀の決勝戦が始まった。


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