ネオ・ボンゴレⅠ世も異世界から来るようですよ?   作:妖刀終焉

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今回はちょっと短め


ボンゴレサイド来る!

 ツナが"箱庭"で戦っている頃、ボンゴレファミリーは突如行方を晦ませてしまったツナを探し続けている。

 自称右腕の獄寺隼人、友人の山本武、先輩である笹川了平は古里炎真を始めとしたシモンファミリーと共に毎日近隣の捜索にあたっていて、九代目も少なくない数の人員を用いて世界中を探させている。勿論その中には彼の父、沢田家光をボスとする門外顧問機関"CEDEF(チェデフ)"もいた。

 

 他にもツナに縁のあるマフィア達がこぞって探しているものの、彼に誰も辿りつけてはいない。沢田奈々には『家光が世界中の工事現場に連れまわしている』と誤魔化しているが、それもいつまで持つか分からない。

最初は誘拐の線を疑う者もいたが、それであればすぐ近くにいたリボーンが気づかないわけがないのだ。

 

 そのリボーンはというと、ツナが持っていったと思われる通信機に繋げられないかと思い、入江正一やスパナと共に試行錯誤を続けている。

 

「どうだ入江。繋がりそうか?」

 

「も、もうちょっと待って」

 

「正一、こっちのダイヤルにしてみたらどう?」

 

 つい先程、一瞬だけだがツナのヘッドホンに接続することに成功していた。正一もスパナも未来での出来事のお陰で本来であればありえないような技術や知識を持っている。それでも今回の作業には骨が折れた。当たり前だろう。何せ異世界へ通信を繋げる作業なのだから。

 

「――よし! 繋がった!」

 

 少々雑音混じりではあるが、話すこと自体に問題はないだろう。

 

「綱吉君、聞こえるかい!」

 

『こ、この声……もしかして正一君!?』 

 

「ウチもいる」

 

『スパナ!?』

 

「や、やった……」

 

 久しぶりに聞いたツナの声に正一は安堵した。そして今までの疲れがどっと出たのか、くたびれたようにそのまま椅子の背にもたれ掛かっている。

 

「ウチはとりあえず守護者達に知らせてくる」

 

 スパナはそう言うと立ち上がって別の通信機を取った。何か進展があれば獄寺達に知らせる手筈になっているのだ。きっとすぐにこちらへ来るだろう。

 

「おいツナ、お前今何処にいやがる?」

 

『リボーン!? いや……それはその……説明に困るというか』

 

 通信機越しのツナは言いよどんでいるように思える。彼とて今の状況をどう説明すればいいのかよく分かっていないからだ。

 

「なら説明しやが――」

 

 リボーンの声を遮るように大きな音を立ててドアが開く。その音に驚いて正一は椅子から転げ落ちた。

 

 ドアを開けたのは汗だくになっている獄寺。後ろにいる山本と了平も同じく汗まみれだ。きっとここまで走ってきたのだろう。

 

「おいスパナ。さっきの話は本当だろうな?」

 

「ああ。今はリボーンが話してる」

 

 三人はすぐさまリボーンの元へ駆け寄った。

 

「ご無事ですか十代目!」

 

『獄寺君。心配かけてごめん』

 

「ハハッ、元気そうで良かったぜ」

 

「沢田! 今一体何処にいるのだ!?」

 

 友人である三人はツナが無事であることに安堵している。今まで何も手掛かりを残さずに消えたなど、未来に行った時以来だ。きっと嫌な予感がしていたに違いない。

 

『リボーン。俺、こっちでやらなきゃいけないことが出来た』

 

 ツナは机に置いてあった手紙を読んだことで"箱庭"と呼ばれる世界に連れてこられた事、そこで"ノーネーム"が助けを求めていた事、ボンゴレⅠ世(プリーモ)がこの世界と関わっていた事、そして何者かがこの世界にリングと匣を持ち込んだ可能性がある事を皆へと話した。

 

「……何ていうか、夢物語みたいな話っすね」

 

「でもよ。未来にも行ったし、異世界があってもおかしくないかもな」

 

「よ、良く分からんが、沢田はその"コミュニティ"とかいうものを助けているということでいいのか?」

 

「さっき十代目がそう仰ってたろうが芝生!」

 

「何だとタコヘッド!」

 

「お前らちょっと黙ってろ」

 

 リボーンは言い争いを始めた獄寺と了平を蹴り飛ばして黙らせる。その光景に山本と正一は冷や汗を垂らしている。

 

「そうか、ならとことんやってきやがれ」

 

 リボーンは口元を緩ませずにはいられない。いつもなら受身のツナが自分から何かをすると言い出すことは少ない。それに"箱庭"での戦いはきっとツナにとって大きなプラスになることだろう。虹の代理戦争が終わってからは大きな戦いもなかったので、今回の件についてはちょうどいい。

 

「ボンゴレⅠ世(プリーモ)や、リングと匣を持ち込んだ奴についてはこっちでも調べておいてやる」

 

 Ⅰ世(プリーモ)の件は過去の文献を漁ればもしかしたら出てくるかもしれないだろう。リングと匣もこの時代はまだ持っている者は限られている。リボーンとしては気が進まないがヴェルデ辺りに連絡を取らなければならないかもしれない。

 

「イテテ……しかし十代目を一人にしておくわけには」

 

「なら君達も行けばいいんじゃない? "箱庭"って所へさ♪」

 

 いつの間にか白髪少年がドアの傍に背中を預けている。彼こそが十年後の未来でツナ達を苦しめたミルフィオーレファミリーのボス、白蘭である。

 今回は彼も並行世界の技術を提供していた。

 

『もしかして白蘭!!?』

 

「正解♪ 虹の代理戦争以来だね綱吉クン♪」

 

「おい、さっきの言葉はどういう意味だ?」

 

 獄寺は怪訝そうな顔で白蘭を睨む。白蘭は睨まれてもその笑みを崩すことはなく、相変わらず不気味さが漂っていた。

 

「言葉通りの意味だよ♪ そんなに心配なら君達も行けばいいじゃないか♪」

 

 簡単に言ってくれる。そもそもツナをここへ導いた手紙は役割を果たしたと同時に消滅。おまけにその手紙を出した人物も誰か分からないのに――と普通なら思うだろうが、未来ではあらゆる並行世界での情報を駆使してほとんどの世界をその手に収めたこの男ならその方法を知っているかもしれない。

 

「まあ、流石に今すぐっていうのは無理だけどね♪」

 

『あ、あは……れ……』

 

 ツナとの会話に徐々に雑音が混ざりだす。正一とスパナは慌てて調整しようとするも雑音は大きくなる一方でツナの声も聞こえなくなってくる。まだ安定にはほど遠い状態だったようだ。

 

 そして通信はプッツリと途絶えた。

 

「お前ら、このことを他の奴らにも伝えろ。オレは九代目に会いに行く」

 

 今、ボンゴレサイドが動き出した。

 

 

 

 

 ツナの方は、突然の通信に驚いていたものの仲間達に今の自分の状況を伝えることが出来て幸いだった。

 

「あの、どうでしたか?」

 

 心配そうに声をかける黒ウサギ。

 

「いや、寧ろとことんやってこいってオレの家庭教師が言ってました」

 

「へー、お前家庭教師がいるのか?」

 

「……まあ、そうだよ」

 

 ツナは十六夜の質問に曖昧に頷く事しか出来なかった。『自分の家庭教師が世界最強の殺し屋(ヒットマン)で赤ん坊でもある』等と一体誰が信じることだろう。

 

「それと、オレの友達も何人か来るかもしれない」

 

「えっ、ツナさんの友達がですか!?」

 

 ツナは皆がここへ来るのもそう遠くないような気がしてくる。

 ランボの持つ十年バズーカであったり、白蘭の能力であったり、ボンゴレリングの縦の時間軸であったりと世界や時間に関するイレギュラーな出来事が多数起こっている。今更そんなこと出来っこない等とは思わない。

 

 黒ウサギは黒ウサギでツナの世界なら出来てしまいそうな気がして逆に恐かった。

 

「ツナの」

 

「友達……」

 

 十六夜は二丁拳銃をぶっ放す強面の男を、飛鳥はメガネをかけた文系のひょろい少年を、耀は気の良さそうな好青年をそれぞれ思い浮かべている。

 

「おい黒ウサギ、俺達をこっちへ連れてきたみたいにツナの世界の奴を連れてくることって出来ないのか?」

 

「そうですね……私が召喚を行っているわけではないので詳しくは分かりませんが、あの手紙はランダムに貴方方のように自分の世界に退屈している人物に届けられますから。またツナさんの世界に届けられるかどうかまでは……」

 

「チェ」

 

 十六夜はツナの世界に俄然興味が湧いてきた。

 

 問題児達とボンゴレファミリーが合流する日も近い。




獄寺は本来なら『初代』と言うだろうと思いますが、獄寺が『初代』とツナのことを呼ぶのはどうしても違和感があるんで『十代目』と呼んでおります

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