ネオ・ボンゴレⅠ世も異世界から来るようですよ?   作:妖刀終焉

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ピクシブ見てると、どうやったらこんな絵が描けるんだろうといつも思います


そう・・・巨龍召喚
収穫祭来る!


 "ハーメルンの笛吹き"とのギフトゲームから早一ヶ月。一同はこれからの活動方針を話し合うために本拠の大広間に集まっていた。

 

 大広間の長机には、上座からジン、十六夜、ツナ、飛鳥、耀、レティシア、そして年長組の代表としてリリが座っている。この席順はジンと黒ウサギを除けば、"ノーネーム"への貢献度を示していた。十六夜は水神を倒しての水源の確保、レティシアの奪還、ついこの間のゲームでは謎解きだけでなく神格保持者となった悪魔、ヴェーザーをも倒した。十六夜が次席に座っている理由はこれだ。

 

「どうした? 俺よりいい位置に座ってるのに随分と気分悪そうな顔してるじゃねえか、御チビ」

 

「やめなよ、十六夜君」

 

 十六夜はガチガチに緊張しているジンを笑い、からかっている。隣で座っているツナはそれを諌めているが、当然十六夜は聞く耳を持たない。

 ツナの頭の上ではナッツがスヤスヤと寝息を立てている。

 

 ツナもレティシア奪還には大きく貢献したし、生誕祭のギフトゲームでは決勝進出(中止にはなったものの、決勝進出分の報酬はキッチリ出た)、そして実質一人でペストを追い詰めたという功績がある。

 本人は末端の席で良いと遠慮していたが、皆に押し切られて十六夜の次席に納まっている。

 

「だ、だって旗本の席ですよ? 緊張して当たり前じゃないですか」

 

 ジンはローブを掴みながら反論している。彼はリーダーとはいえ他数名ほど功績を挙げている訳ではないので上座にいることに引け目を感じているのだ。

 

 しかし、そういうわけにもいかない。彼はこの"ノーネーム"の顔であり、今まで入手したギフトもジン=ラッセンの名義で届いているのだ。

 

 そしてそれだけではない。

 

「苦節三年……。とうとう私たちのコミュニティにも招待状が届くようになりました。それもジン坊ちゃんの名前で!」

 

 黒ウサギは大事そうに胸に抱いていた三枚の封筒を見せると、いつも以上のテンションではしゃぎ出す。無理も無い、今まで名無しと蔑まれてきた事を考えれば、それは大きな進歩だ。

 

「ところで今日集まった理由はその招待状の事かしら?」

 

 ツナの次の席に座っている飛鳥が話を急かす。十六夜やツナには劣るものの、彼女も相棒のメルンやディーンと農園区復興に大きく貢献している。ツナに十六夜の次席を譲られたが、それは彼女のプライドが許さなかったようで、不満はあるものの納得して四番目についている。

 

「はい、そうですがその前に報告が……」

 

 黒ウサギとリリから"ノーネーム"の現状が伝えられた。

 

 ペスト討伐のお陰で多額の報奨金が出たことで備蓄はしばらく問題ないこと、メルンとディーンのお陰で農園の四分の一が使えるようになったことだ。

 

「――――つまりだ」

 

 そして話は先程の招待状にと戻る。

 

「主達には特区にふさわしい苗や牧畜を手に入れて欲しいのだ」

 

「牧畜って、山羊や牛のような?」

 

 そう、この居住区にはそういった動物が全くいない。

 

「そうだ。都合のいいことに、南側の"龍角を持つ鷲獅子(ドラコ・グライフ)"連盟から収穫祭の招待状が届いている。連盟主催とあって収穫物の持ち寄りやギフトゲームも多い」

 

「へー、北側のとは違うんだ」

 

「ああ、火龍生誕祭は工芸関係の方が多いからな。こちらは収穫祭と銘打つだけあって、きっと希少な種や苗、牧畜を賭けてくる者が多いだろう」

 

 ツナの関心した呟きにレティシアは補足を付け加えながら答える。

 

「方針については一通り説明は終わりました。……ですが、一つ問題があります」

 

「問題?」

 

 黒ウサギはとても言い難そうに目を泳がせて、

 

「この収穫祭ですが、二十日間ほど開催される予定で、前夜祭を含めれば二十五日。約一ヶ月行われることとなります。この規模のゲームはそう無いですし、出来れば最後まで参加したいのですが、コミュニティの主力が長期間不在なのはよくありません。なのでレティシア様と一緒にせめて御一人残って欲し――――」

 

「「「嫌だ」」」

 

「やっぱりだったーーーーー!!」

 

 この展開はジンも黒ウサギもツナも予想していた。生誕祭での前科があるお祭りごと大好きな問題児達が留守番なんてするわけがない。

 

「あーじゃあオレが残るよ」

 

 ツナが名乗り出る。確かに彼も祭りには行きたいが、そのために"ノーネーム"の子ども達を危険に晒すわけにはいかない。第一、話が進まない。

 

「――――えっ?」

 

 ツナの言葉に真っ先に反応したのは耀だった。今の彼女は雨に濡れた捨て犬のような悲しい顔をしている。そして問題児他二人は冷めた目つきでツナを見ていた。

 

「えっ、何で皆そんな顔でオレを見るのさ!?」

 

「いや……だってなぁ?」

 

「ねぇ?」

 

「ツナ、行かないの……?」

 

 飲み会で皆がビールを頼んだのに一人だけカシスオレンジを頼んでしまったような空気になってしまった。

 お酒は二十歳になってから。

 

 この何とも言えない空気をジンが無理やりぶった切る。

 

「わ、分かりました! せめて前夜祭を三人、オープニングセレモニーから一週間を全員で、残りの日数を三人と人数を絞らせて下さい!」

 

 ジンもこうなることを見越してキッチリ対策は立てていたようだ。しかしこれだと内二人は全部の日数参加が可能なのだ。普通は席順で決まるのだが、問題児達がそんなことで納得する筈がない。ツナも名乗り出たらまた変な空気になると思って今度はしゃしゃり出るのはやめた。

 

 決定方法は十六夜の提案で『期日まで最も多くの戦果を挙げた者が勝者』と決まった。

 

 

 

 

「ギフトゲームっていってもな~~」

 

 三人はやる気マンマンで早速ギフトゲームを探しに行ったが、ツナは今回の件に関して、それ程勝利に執着してはいなかったので、ただその辺をぶらついているだけだったりする。

 第一、彼は今まで一度も自分からギフトゲームをしにいったことがないのだ。

 

「とりあえず……あれ?」

 

 気が付いたら霧の深い森の中にいた。

 

「こ、ここ何処だろう?」

 

 ツナは引き返そうかと考えたが、あまりに霧が濃くて元来た道すらも見失ってしまった。

 

(まさか幻術!?)

 

 そう思ってキョロキョロ周りを見るが誰も見当たらない。

 

 そもそも幻術をかけておいて術者がすぐ近くにいるわけが無いと思い出してツナはこれからどうするか考え出した。

 

「フォッフォッフォッ、まあ落ち着きなされ」

 

「あなたは!?」

 

 先程周りを見回した時にはいなかった老人が切り株に腰掛けている。足元には老人の持ち物であろうバスケットが置いてあった。

 

「これはあなたの仕業ですか?」

 

「いや、これはこの森の特徴なんじゃよ。ワシもここで迷ってしまっていての、疲れて休んでいるところじゃ」

 

 ツナは超直感でこの老人が嘘をついていないと判断した。

 

「フゥム……君、ワシとギフトゲームをせんか?」

 

「へ?」

 

 何故ここから出ることを考えているのにギフトゲームになるんだろうと疑問に思う。

 

「何、ルールは簡単じゃ。ワシをこの森の向こう側まで連れて行ってくれるだけでいい。時間制限も敗北条件も無い。良いと思わんかね?」

 

 裏を返せばこの老人を森の向こう側まで連れて行けなければツナはこの森の中を永久に彷徨うはめになる。しかし、どちらにしろツナはこの森から脱出しなければならないし、この老人をこのまま放置しておく訳にもいかない。

 

 ツナはそのギフトゲーム? の条件を飲んだ。

 

『ギフトゲーム名"迷いの森"』

 

 プレイヤー 沢田綱吉

 ゲームマスター 老人

 

 クリア条件 老人を連れて森の向こう側まで到達する

 敗北条件 無し

 

 宣誓、上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

 

 "謎の老人"印』

 

 ツナは"契約書類(ギアスロール)"に記入をした後、老人の希望で彼をおぶって歩を進めた。途中で拾った小石を一つずつ置きながら迷わないように、さながらヘンゼルとグレーテルのように森の向こう側を目指す。

 

「重くないかの?」

 

「ええ、大丈夫です」

 

 彼も老人をおぶった位でばてるような柔な鍛えられ方はしていない。ボンゴレ式の教育はいつだってスパルタなのだ。

 

 三十分くらい歩いただろうか、そうすると目の前にさっき置いていった小石が等間隔で置いてある。自分と同じように石を置いてこの森を脱出しようとしていたのかと考え、小石を辿ってまた進もうとする。

 

「いや、ちょっと待って。これって……」

 

 置いてある石には見覚えがあった。ツナがさっき置いておいた筈の石だ。全て覚えているわけではないが、いくつかの形はうろ覚えだが分かる。

 

「そうなんじゃよ、どれだけ進んでも元の場所に戻って来てしまうんじゃ」

 

「それ先に言ってくれませんか!?」

 

 この三十分間は一体なんだったのかとツナは老人にツッコンだ。

 

(これって……前にも似たようなことがあったような……)

 

 ツナは思い出す。チョイスでトリカブトに幻術の世界に閉じ込められた時にそっくりだ。これが森の特徴なら術者を倒して術を解くなんて真似は出来っこない。

 骸やマーモン(ヴァイパー)のような術師ならどうにかする手段を持っていたかもしれないが、ツナはこの二名ではない。

 

「あー、こういうのは十六夜君の専売特許なのに……。お爺さん、ちょっと退がっててください」

 

 老人を下に降ろして安全な場所まで非難させた後、ツナは超死ぬ気モードになる。

 

 ツナはあの時と同じ事をするつもりだ。

 この空間に捕らえられてしまっているのであれば、空間ごと破壊してしまえばいい。

 

「X BURNER!!!」

 

 深い霧はツナの炎圧によって森ごと吹き飛ばされていく。

 

 そしてなんという偶然だろうか。奇しくも同時刻、十六夜が別の森で湖をつくっていた。

 

「た、たまげたわい」

 

 老人は腰を抜かして座り込んでしまった。かなり強引ではあったものの、森の向こう側までの道は拓いた。

 

「さあ、行きましょう」

 

 ツナは再度老人をおぶって歩き出す。今度は何の妨害も無く真っ直ぐ進むことが出来た。

 

 辿りついた森の向こう側あったのは、花畑。遠い所にあったお陰でこちらに被害はなかったようで、ツナは胸を撫で下ろした。

 

 花畑の中央に十字架が立てられている。

 

「お墓……?」

 

「ああ、ありがとう。やっとここまでこれたわい。ギフトゲームは君の勝ちだ」

 

 老人はギフトゲームに負けたというのに心底嬉しそうに笑い、手に持っていたバスケットをツナに手渡した。

 

「これは……?」

 

「報酬じゃよ。それに、もうワシには必要ないしの」

 

 バスケットの中には金色に輝くリンゴのような果物や何かの植物の苗が入っていた。

 

「ここを真っ直ぐ行けば君が元いた場所へ辿り着く。さあ、日が暮れない内に帰りなさい」

 

「え、でもお爺さんは帰りは……」

 

 老人はフッと笑った。

 

「心配せんでもいい。ここがワシの家じゃ」

 

「へ…………えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!?」

 

 後日、ツナが貰った植物の苗が"宝樹の木の苗"というとてもレアな代物だと黒ウサギから聞いて再度驚きの声を上げることになる。ちなみに一緒にあったリンゴはその木がつける実だとのこと。

 

 

 

 

 アンダーウッドの収穫祭の前夜祭の前日、全ての日数を出れる二人が決まった。

 

 一人目は地域支配者(レギオンマスター)の証である外門の権利証を手に入れた十六夜。彼はトリトンの滝の主である白雪(水樹の持ち主だった蛇)の身柄を白夜叉に引き渡したことでこれを手に入れた。これで"ノーネーム"は恒久的な、それも莫大な収入源を得たと同時に、名実共に七層東区の筆頭となったわけである。

 掲げる旗やコミュニティの名が無くてもジン・ラッセルの率いるコミュニティとして名が広まっていくことだろう。

 

 二人目は"宝樹の苗"を手に入れたツナである。

 

 その夜に小さな宴が設けられた。十六夜の白ける一言があったものの、とても楽しい宴となった。

 だが、その中で一人、耀は浮かない顔をしている。

 

 彼女は気分転換に三毛猫を連れて居住区の外れまで来ていた。

 

「三毛猫。私は収穫祭が始まってからの参加になったよ。残念だけど、前夜祭はお預けだね」

 

『……そうか。残念やったなお嬢』

 

 耀は膝の上に乗っている三毛猫に向かって話している。彼女は今まで取り立てて"ノーネーム"復興に手柄を立てて来た訳ではない。しかし、他の三人は違う。十六夜も飛鳥も、気になっているツナだって目に見える活躍をしているのに、自分だけ大したことが出来ていない。"ぺルセウス"や"ハーメルンの笛吹き"とのギフトゲームだって肝心なところで何も出来ていないのだ。

 

「ツナ達は凄いよね」

 

『……せやな』

 

「でも、私はあんまり凄くないね」

 

「そんなことないよ」

 

 耀は、この場にいる筈のない第三者の声に反応して慌てて後ろを振り向いた。そこにはツナが料理の皿を持って立っている。耀は驚きのあまり、目をパチクリしていた

 

「そんなことない。春日部さんは凄いよ」

 

「違う、私だけ足手纏い。流される感じでコミュニティに入ったのが駄目だったんだよ。偶然素敵な友達が出来ただけで、私にはその関係を維持するだけの力が……無い」

 

 これが耀の本音だった。彼女の膝の上にいる三毛猫は痛ましそうに耀を見ている。

 

 そんな悲しそうな彼女を見た後、ツナは前を向いて独り言のように喋り出した。

 

「オレさ、ちょっと前まで『ダメツナ』って呼ばれてたんだ……って今も呼ばれてるけどね。運動も勉強もダメダメでクラスの皆からバカにされて、全然友達もいなくて。それでついたあだ名が『ダメツナ』」

 

 ツナは少し恥ずかしそうに自分の過去を喋る。耀はそれが信じられなかった。確かに普段頼りない部分もあるけれど、ここぞという時はとても頼もしい。それが彼女にとっての沢田綱吉だからだ。

 かといって、ツナが嘘をついているようにも見えない。

 

「でも、リボーンのお陰でオレは変わったんだ」

 

「リボーンって前に話してた人?」

 

「うん。今だって死ぬ気にならないと何も出来ないけど、それでもオレには一緒に笑ってくれるみんながいる。いざとなれば力を貸してくれる仲間がいる。友達になるのに力なんて要らないよ」

 

 ずっと一人ぼっちで友達の作り方を知らなかった彼女にとって、ツナの言葉は目から鱗が落ちる気分だった。

 

「…………かな?」

 

「へ?」

 

「ずっと動物以外の友達がいなかった私でも友達、作れるかな?」

 

 耀の不安そうな言葉に、ツナは優しく笑いかける。

 

「大丈夫だよ、ダメなオレにも出来たんだ。それに、もうここに一人友達がいるよ」

 

 ツナの言葉には不思議と安心感がある。耀の今までの劣等感から出たどうにもならないネガティブな気持ちが何処かへ行ってしまうくらいに。

 

「春日部さ「耀でいい」春日べ「耀でいい」あ、うん……耀」

 

「うん、そっちの方が良い」

 

 耀は満足そうに頷いた。




そういえばツナって女性キャラは名前で呼び捨てだった気がする

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