ネオ・ボンゴレⅠ世も異世界から来るようですよ?   作:妖刀終焉

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ジョットってツナの曽曽曽祖父らしいですね


アンダーウッド来る!

 収穫祭へ出発する前夜、十六夜のヘッドホンが紛失するという事態が発生した。皆が夜通しで探したが、一向に見つかることは無く、結局彼は耀と順番を交代して、レティシアと共に本拠に残ることになった。

 現在彼の頭にはヘッドホンの代わりにヘアーバンドが載っている。ヘッドホン一つで楽しみにしていた前夜祭を諦めるなんてとても意外なことだ。

 

 耀は少し申し訳なさそうだったが、十六夜の最後の言葉で罪悪感が消し飛んだ。

 

「愛しの沢田と一緒に楽しんでこいよ」

 

 思わず蹴りを入れてしまった耀は悪くない。もっとも、蹴りは右腕で受け止められてしまったのだが。

 

 何はともあれ、ツナ達は境界門を通って七七五九一七五外門"アンダーウッドの大瀑布"、フィル・ボルグの丘陵に着いた。

 

 それと同時に一行は、多分に水分を含んだ冷たい風を浴びる。

 

「わ……!」

 

「きゃ……!」

 

「うわっ……!」

 

 その冷たさにツナ、耀、飛鳥は驚きの声を上げる。まるで滝のすぐ近くで水飛沫でも浴びているようだった。

 

 眼下には距離感がおかしくなるほど大きな水樹、そしてその根が網目状に張り巡らされた地下都市という壮観な風景が飛び込んできた。

 

「すごい……」

 

「飛鳥、ツナ、下! 水樹から流れた滝の先に、水晶の水路がある!」

 

「あっ、ホントだ!」

 

 耀の、今まで見たことの無いようなはしゃぎっぷりにツナと飛鳥は少し驚きながらも彼女が指を差した方を見る。その先には網目状に張り巡らされた根の隙間を潜るようにして翠色の水晶の水路が作られている。

 

(確か北でも同じようなのを見たような……)

 

「二人とも、上!」

 

 飛鳥は水路について思うところがあったが、耀の声を聞いてすぐに考えを変え、ツナと共に上を見た。

 

「つ、角が生えてるーーーー!?」

 

 ツナは空を飛んでいる角の生えた鳥を見て驚きの声を上げた。飛鳥も唖然とした表情でそれを見ていた。

 

「聞いたことも見たこともない鳥だよ。やっぱり幻獣なのかな? 黒ウサギは知ってる?」

 

「え、ええ。まあ……」

 

 耀の言葉に黒ウサギが困ったような顔で答える。

 

「ちょっと見て来てもいい?」

 

「ちょ、ちょっと落ち着いて!」

 

 思わず身を乗り出そうとした耀をツナは慌てて止めた。ここに着てから彼女の興奮振りが半端ではない。

 

 すると懐かしい声が聞こえてきた。

 

『友よ、待っていたぞ。ようこそわが故郷に』

 

 以前白夜叉とのギフトゲームの際に耀が乗ったグリフォンだ。ちなみに飛鳥とツナにはグリフォンが何と言っているのかは分からない。

 

「久しぶり。ここが故郷だったんだ」

 

 その後も耀はグリフォン、名をグリーというらしいが、友人の好で送って行ってくれることになった。

 

 自らの力で飛べる耀とツナは、全員が乗り込むまで角の生えた鳥についてグリーに聞いていた。

 

 グリーが言うには、あの鳥はペリュドンといい、人間を殺す殺人種の鳥。伝説の大陸アトランティスから来たとされていて影に呪いを持っているそうで、それを解呪するためには人間を殺さなくてはいけないある意味哀れな怪物なのだ。

 

『それでは行くぞ』

 

グリーがそう言うと翼を羽ばたかせて旋風を巻き起こし、巨大な鉤爪を振り上げて獅子の足で大地を蹴った。

 

 その空を走るかのようなスピードで瞬く間に外門から離れていく。

 

『やるな。半分足らずの力で飛行しているとはいえ、二か月足らずで私に付いてくるとは』

 

 本気ではないとはいえグリフォンのスピードに何とかついていく耀にグリーは賞賛の言葉を投げかけた。

 

 耀の反対側ではツナが皆のスピードに合わせて大空の炎の推進力で飛んでいる。いつもより気流は安定しないものの、炎真の重力操作やブラックホールに比べれば、これくらいはまるで大した事無い。

 

『やるな小僧。おまけにまだ余力を残していると見える』

 

「ツナ。グリーが凄いって言ってる」

 

 グリーはツナの飛行センスを感嘆し、耀はその言葉を通訳する。果たして本気のグリーとツナが競争したら一体どちらが勝つのやら。

 

 空からの"アンダーウッド"もまた絶景。まさに"水の都"という言葉がしっくりくる。

 

 ツナ達を送り届けた後、グリーはぺリュドンを追い払う仕事があるとのことで再び空へ舞上がり、飛んでいった。

 

 グリーを見送った後、宿舎の上から知った声がかかる。

 

「あー! 誰かと思ったらお前耀じゃん! お前らも収穫祭に」

 

「アーシャ、そんな言葉遣いは教えていませんよ」

 

 耀が"火龍誕生祭"でのギフトゲーム、"アンダーウッドの迷路"で戦った"ウィル・オ・ウィスプ"のカボチャのお化けのジャック・オ・ランタンとゴスロリ衣装を着た少女アーシャだった。

 

 耀はあれからまたアーシャとギフトゲームをして友人でもあり良きライバルでもある間柄になっていて、今も親しげに話している。

 

「それよりさ、耀は出場するギフトゲームは決めたか?」

 

「ううん。今来たばっかり」

 

「それなら"ヒッポカンプの騎手"には出ろよ!」

 

 ヒッポカンプとは別名"海馬(シーホース)"という幻獣で、それに乗ってレースをするのだろう。

 

「おい、お前はどうすんだ?」

 

 アーシャは今度はツナにさも親しげに話しかける。別のゲームではあったものの、同じ誕生際のゲームで決勝にまで駒を進めたのだからそれなりに注目しているのだろう。

 

「オ、オレ!? 特に考えてないけど……」 

 

「あぁ? 男らしくね~な~。つーか試合の時と性格違い過ぎだろ!」

 

「ちょ! 痛いって!」

 

 アーシャは笑いながらツナの背中を叩く。しかし、耀にとっては全く面白くない。

 

「アーシャ」

 

「ん?」

 

「負けないから」

 

「お、おう。望むところだぜ」

 

 勘違いによって急に闘志を燃やし始めた耀に少し戸惑いながらも彼女がやる気になって気を良くしたアーシャだった。

 

(ふふっ。十六夜くんじゃないけど、あの二人は見てて面白いわね)

 

 それを見て飛鳥は少しだけ羨ましくなった。

 

 

 

 

 "主催者(ホスト)"がいる本陣営があるのは大樹の中腹。そこまでは水式エレベーターがあり、ものの数分で本陣に到着し、木造の通路へ降り立つ。

 

 通路を歩いていると、収穫祭の主催者である"龍角を持つ鷲獅子(ドラグノフ)"の旗印が見えた。

 

「旗が七枚? 七つのコミュニティが主催してるの?」

 

 "一本角"、"二翼"、"三本の尾"、"四本足"、"五爪"、"六本傷"、そしてその六つの旗に囲まれるように真ん中には龍の角が生えたグリフォンが描かれた旗がある。

 

「残念ながらNOですね。"龍角を持つ鷲獅子"は六つのコミュニティが一つの連盟を組んでいると聞きます。中心の大きな旗はおそらく連盟旗ですね」

 

 連盟、ツナもその言葉にはピンときた。

 

 ボンゴレファミリーもディーノをボスとしたキャバッローネファミリーや炎真をボスとしたシモンファミリー、その他にも数多くのファミリーと同盟を結んでいる。そのほとんどの理由として『勢力を拡大するため』もしくは『大きな敵に対抗するため』がある。おそらくこの連盟は後者、つまり魔王に対抗することを目的としたものだろう。

 

 耀が黒ウサギに連盟旗について尋ねている間に、他のメンバーは本陣入り口にある受付で入場届けを出していた。

 

 受付をしている樹霊(コダマ)の少女はメンバーの顔を確認していき、その視線を飛鳥で留めた。

 

「もしや"ノーネーム"の久遠飛鳥様でしょうか?」

 

「そうだけど、貴女は?」

 

「私は火龍生誕祭に参加していた"アンダーウッド"の樹霊です。飛鳥様には弟を助けていただいたと聞きまして……」

 

 ああ、と飛鳥は思い出す。ペストとの戦闘中に逃げ遅れた少年を飛鳥はディーンを使って助けていた。

 

「その節はどうもありがとうございました! おかげでコミュニティ一同、誰一人欠けることなく帰ってくることが出来ました!」

 

「それはよかったわ。なら招待状は貴女達が送ってくださったのかしら?」

 

「はい。大精霊(かあさん)は眠っていますので私達が送らせていただきました。他には"一本角"の新頭首にして"龍角を持つ鷲獅子"の議長であらせられるサラ=ドルトレイク様からの招待状と明記しております」

 

 その名前に一同は顔を見合わせる。そう、現在"サラマンドラ"で頭領をやっているサンドラと同じ家名なのだ。

 

「それってもしかして……」

 

「え、ええ。サンドラの姉の、長女のサラ様です。まさか南側に来ていたなんて……もしかしたら北の技術を流出させたのも――――」

 

「流出とは人聞きが悪いな、ジン=ラッセル殿」

 

 聞き覚えの無い女性の声が背後から聞こえて、一同はすぐさま振り返った。途端、ここに来た冷たい風とは真逆の熱風が吹き抜ける。

 

「これって……炎!?」

 

 この熱風の発生源は、空から現れた褐色肌の女性の背に生えた二枚の炎翼だった。

 

 彼女こそ、本来であればサンドラに代わって"サラマンドラ"の頭首になる筈だったサンドラの姉、サラ=ドルトレイク。

 

「サ、サラ様!」

 

「久しいなジン。会える日を待っていた。そして――」

 

 サラはジンを確認した後、強い意志を感じさせる瞳でツナを見る。サンドラと同じくユニを彷彿とさせる真っ直ぐな瞳に思わず気圧されそうになった。

 

「初めまして、ジョットの子孫よ。会えて光栄だ」

 

「へ? あ、ああ、どうも……」

 

 ツナは、サラが差し出した手をおずおずと握った。性格や立ち振る舞いはどちらかといえばラル・ミルチに似ているかもしれない。あちらの方がかなり厳しめだろうが。

 

「あの、もしかしてⅠ世(ジョット)のことを知ってるんですか?」

 

「ああ。だがこんなところで立ち話も何だ。皆、中に入れ。茶の一つくらい出そう」

 

 両コミュニティへの挨拶もそこそこにサラは皆を中へと招き入れる。

 

 

 

 

 ツナ達は貴賓室へと通されてそれぞれ席に付く。

 

「それでは、両コミュニティの代表者に自己紹介を求めたいのだが……ジャック、やはり彼女は来ていないのか?」

 

「はい。ウィラは滅多なことでは領地を離れませんので」

 

 ジャックの言葉にサラは肩を落とす。

 

「そうか。北側の下層で最強と謳われる参加者(プレイヤー)を、是非とも招いてみたかったのだがな」

 

 『最強』というフレーズに耀と飛鳥は白夜叉の時と同じく反応する。ツナは苦笑いしか出来ない。

 

 コミュニティ"ウィル・オ・ウィスプ"のリーダー、ウィラ=ザ=イグニファトゥス。別名"蒼炎の悪魔"とも呼ばれている。生死の境界を行き来し、外界の扉にも干渉出来るという大悪魔で"マクスウェルの魔王"を封印したという噂もある。本当であれば六桁どころか五桁でも最上級の実力者だそうだ。

 

 最も、ツナにそんな事言われてもほとんど分かる訳が無い。

 

 その後は耀がサラの立派な二本角に興味を示したり、そこから"龍角を持つ鷲獅子"連盟の成り立ちについてまで発展したり、対黒ウサギ型ラビットイーターとかいう謎の植物が発注されていることを黒ウサギが知っていじけてしまったり。

 

「あの……」

 

「ああ、君の先祖の事だったな」

 

 黒ウサギはラビットイーターなる植物を燃やしに最下層にすっとんでいった後、ツナはジョットについて尋ねてみた。

 

「といっても、私も母上から話を聞かされただけで直接会った事は無い。彼の事なら白夜叉様の方が詳しいだろう」

 

「そう……なんですか」

 

 また新しい情報が得られるかと思っていたが宛が外れてしまった。

 

「ツナのご先祖様ってどういう人なの?」

 

「どういう人って言われても……仲間を大切にする優しい人かな?」

 

 リングに刻まれている記憶、そしてシモンファミリーとの戦いの最中に見た過去の記憶でツナがジョットを見た率直な印象であった。彼がボンゴレの原型である自警団を設立したのも住民を守ろうとした優しさ故だったし、友であるコザァートの危機にはいの一番に駆けつけようとしていた。

 

「ヤホホ……そうでしたか、彼が。ああ、確かにあのオレンジ色の炎は彼と瓜二つでした」

 

 ジャックは何か思い当たることがあったのか、今まで気がつかなかったことに可笑しそうに笑い、まだ若いアーシャは何のことか分からずに首を傾げる。

 

 一方その頃、黒ウサギはブラックラビットイーターのある最下層の展示保管庫で暴れていた。 




サラはもっとボインだったら完璧だったと思ってみたり

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