ネオ・ボンゴレⅠ世も異世界から来るようですよ?   作:妖刀終焉

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一ヶ月近く空けてしまった
申し訳ない


十三番目の太陽を撃て
巨龍来る!


 外へ飛び出したツナの目に入ってきたものは空からヒラヒラと落ちてくる黒い封筒。ツナはそれを迷わず手に取った。

 

「これは……まさか!」

 

 火龍誕生祭でペストがギフトゲームを仕掛けてきた時の状況に似ている。つまりこの中には契約書類(ギアスロール)が入っている筈。

 

 封を開けるとツナの思った通りのものが入っていた。

 

 

 

 

 

 

『ギフトゲーム"SUN SYNCHRONOUS ORBIT in VAMPIRE KING"

 

・プレイヤー一覧

 ・獣の帯に巻かれた全ての生命体

 ※ただし獣の帯が消失した場合、無期限でゲームを一時中断する

 

・プレイヤー側敗北条件

 ・なし(死亡も敗北と認めず)

 

・プレイヤー側禁止事項

 ・なし

 

・プレイヤー側ペナルティ条項

 ・ゲームマスターと交戦した全てのプレイヤーは時間制限を設ける。

 ・時間制限は十日毎にリセットされ繰り返される。

 ・ペナルティは“串刺し刑” “磔刑” “焚刑”からランダムに選出。

 ・解除方法はゲームクリア及び中断された際にのみ適用。

 ※プレイヤーの死亡は解除条件に含まず、永続的にペナルティが課せられる。

 

・ホストマスター側 勝利条件

 ・なし

 

・プレイヤー側 勝利条件

 一、ゲームマスター・"魔王ドラキュラ"の殺害。

 二、ゲームマスター・"レティシア=ドラクレア"の殺害。

 三、砕かれた星空を集め、獣の帯を玉座に捧げよ。

四、玉座に正された獣の帯を導に、鎖に繋がれた革命主導者の心臓を撃て。

 

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

 

 "                 "印』

 

 

 

 

 

「何だこれは……?」

 

 ツナが困惑するのも無理は無い。こちらの敗北条件が無いことや向こうの勝利条件が無いこと、ペナルティについても不明な点が多いが、何よりも"ノーネーム"の同士である筈のレティシアがゲームマスターであることが不可解だ。

 

 ――レティシアが裏切った?

 

 否、今までそんな素振りは見せなかった。裏切るどころか彼女は"ノーネーム"のことを人一倍心配しているのだ。そんな優しい彼女が進んで敵に回るとは思えない。

 

 考えられるのは第三者の介入だろう。この名前を記載されていない何者か、もしくは"コミュニティ"がレティシアに何かしたのだ。

 

「――――GYEEEEEEEEEEYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEYYAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaa!!!」

 

 巨龍は雄叫びを上げながら己の鱗を散弾のごとく"アンダーウッド"中に撒き散らす。やがてその鱗は形状を変化させ大蛇、火蜥蜴、大蠍といった魔獣となって"アンダーウッド"を襲う。。

 

 最前線には巨人、内部には魔獣、空には巨龍と敵が多すぎる。

 

(巨人の方にも向かいたいが……)

 

 まずは魔獣を殲滅する方が先だ。内部には非戦闘要員もいるのだから彼らの安全確保をしなければ。

 

 そう思い、ツナは魔獣の群れに飛び込んだ。

 

 ここで問題が出てくる。ツナの技は一対一で本領を発揮するものが多く、この数が相手となるとX BURNERや死ぬ気の零地点突破のように時間が必要な技は使いにくい。

 現時点では徒手空拳で魔獣を退けることは出来ても、彼一人でこの流れを変えることは出来ない。

 

 そう反撃の狼煙となるきっかけが必要だ。

 

 それは盛大な破壊音と共にやってきた。

 

「あれは……」

 

 大樹を揺らした衝撃と爆音、巨人が最前線から吹き飛ばされて大樹に突き刺さったのだ。

 巨人が自分の意思で空を飛んで突っ込んで来たとは考えにくい。

 

 ツナはこんな出鱈目なことをする男に一人、心当たりがある。

 

「そういえば、そろそろ十六夜が来る頃だったな」

 

「ガウ?」

 

 十六夜の強さはツナもよく知っている。単純な攻撃力ならとてつもない。そして楽しみにしていた祭りを邪魔されたとあればその心中は穏やかではない筈。

 

 彼が暴れまわっているのなら前線の方は問題無さそうだ。

 

『"審判権限"の発動が受理されました! 只今から"SUN SYNCHRONOUS ORBIT in VAMPIRE KING"は一時休戦し、審判決議を執り行います! プレイヤー側、ホスト側は共に交戦を中止し、速やかに交渉テーブルの準備に移行してください! 繰り返し――』

 

 黒ウサギのアナウンスは途中で遮られてしまう。

 

 巨龍にとってはただ動いただけ。たったそれだけのことで吹き荒れた暴風は"アンダーウッド"全土の人々全てを吹き飛ばし、震撼させた。

 

 ツナでさえ柔の炎で飛ばされるのを堪えるだけで精一杯だ。

 

「グッ……アッ……!」

 

「ガ、ガウ!」

 

(何だ……ナッツは何を見て……?)

 

 巨龍に隠れて今まで見えなかった上空に浮かぶ古城。そこへ魔獣が向かっている。しかも"アンダーウッド"の住人と思しき子ども達を捕まえながらだ。

 

「マズイ!」

 

 幸いなことにあの古城周辺の風はそれ程乱れてはいない。

 一か八か、柔の炎を剛の炎に変換し、城へと一直線に飛んだ。

 

「――――っ、はっ! ここまでは暴風も届かないな」

 

 少し消耗しながらも暴風を抜けたツナは柔の炎に切り替えて城へと到着する。

 

 ここは恐らく敵の本拠地だ。

 目立たないように死ぬ気モードを解いて城へ潜入する。

 

「まずは子ども達を捜さないと」

 

 メローネ基地での潜入を思い出す。

 ラル・ミルチに気配の消し方や息の殺し方、足音を立てない動き、その他諸々を獄寺や山本達と一緒にスパルタで叩き込まれている。

 

「あれは……」

 

 敵の本拠地だけあって警戒は強い。水気を含む不快な音を立てて血塊と苔の集合体のような赤黒い怪物がそこかしこに跋扈している。

 

 驚くことに薄っすらだが黄色に光っているのだ。

 

(あれは、まさか晴れの炎!?)

 

 晴れの炎で強化されているのであろうが、動きはそれ程素早くない。しかし、こう数が多いと正面突破は難しい。

 

 ツナは怪物達が通り過ぎるのをひたすら待った。

 

 ――そして、怪物達の足音が一斉に止まった。

 

(何だ……?)

 

 見つかったのかと思い、警戒しながら死ぬ気丸を片手に持つ。

 しかし、ツナの考えは外れていた。

 

『キャーーー!!』

 

 少し離れた先で子ども達の悲鳴。足音が止まったのはあの怪物が他の侵入者に気づいたからだった。

 

 ツナは再度死ぬ気化し、悲鳴が聞こえた方へと飛ぶ。怪物の後ろから素早く奇襲をかけ、手刀で怪物を切り裂いた。

 手応えで言えば生き物というより硬質化した何かを切り裂いたという感覚だ。

 

 いたのは子ども達だけではない。

 

「ツナ!?」

 

 怪物が真っ二つに割れた先には子ども達と一緒に耀もいる。

 

「お嬢ちゃん、お仲間かい……!?」

 

「うん!」

 

 共にいた猫のような老齢の獣人に聞かれた耀は赤黒い怪物を素手で打ち砕きながら頷く。耀も以前共に戦ってペルセウス戦の時と比べて格段に強くなっていた。その証拠に赤黒い怪物、正式名称"冬獣夏草"十数匹を難なく倒している。

 

「ん? これは……」

 

 耀が砕いた怪物から黄色の鉱石の破片のようなものが出てきたのをツナは手に取った。純度は大して高くないにせよ、まだ黄色の炎を薄っすらと出している。

 

(まさか、これを核にして死ぬ気の炎を……?)

 

『きゃぁあ!!』

 

 子ども達が逃げた方でまた新しい悲鳴が響く。待ち伏せをされていたのだ。

 その事に気がついた耀は舌打ちをし、ツナも焦る。悲鳴がしたということは最悪子ども達が……。

 

 耀は子どもを、ツナは老齢の獣人を抱えて大急ぎで子ども達の下へ飛んだ。

 

 そこで見たのは、地獄の業火で焼かれる怪物達。

 そしてその業火を操るのはいつもの陽気な道化声を上げる悪魔ジャック・オ・ランタン。

 

 燃え上がる炎は怪物を燃やすだけに留まらず、城下町全てを燃やしつくさんとする勢いで広がる。彼による一方的な殲滅の光景がそこにあった。

 

 これは拙いと耀とツナも慌てて上空へと非難する。ジャックが子どもごと燃やし尽くすなんて非道な真似はする筈もないから、子どもについては心配いらないだろう。

 

「すごい……」

 

 全てを燃やしつくすこの光景はまるでXANXASや二世(セコーンド)が使う憤怒の炎のようである。

 

 炎が鎮火した時には怪物の影も形も残っておらず、文字通り『骨も残らない』というやつだ。もし巻き込まれたらと思うと想像するだけで恐ろしい。

 

 二人がゆっくりと降りてきたとき、ジャックとその頭に乗っているアーシャはようやく二人の存在に気づいた。

 

「おや?」

 

「あ、何だお前らいたのか! もしかしてお前らも子ども達と一緒に捕まってたとか?」 

 

「……違う。捕まった人達を助けに来ただけ」

 

 ツナは抱えてた老齢の獣人をゆっくりと降ろす。敵がいなくなったことでツナもようやく一息ついた。

 

「フー、大丈夫ですか?」

 

「わりィな坊主」

 

「何はともあれ、ここは危険です。他の参加者とも合流しましょう」

 

 ジャックが指をパチンと鳴らすと、キャンドルスタンドとランタンをぶら提げた小さな人形、総勢15体が現れて、隠れていた子ども達を連れてくる。

 全員無事なようで、ツナと耀もほっとした。

 

 それから皆で今後の方針を話し合いをすることとなった。ジャックが敵を殲滅したからといって敵の本拠地と思しき場所で油断は禁物だ。

 

「お二人とも、ギフトカードはお持ちですか? 持っていたら出してください」

 

「わ、わかった」

 

 ツナはオレンジのカードを、耀はパールエメラルドのカードをそれぞれ取り出した。その二枚とも奇妙な紋章が浮かんでいる。

 

「変な紋章が浮かんでる……?」

 

「これは"ペナルティ宣告"です。主催者側から提示されたペナルティ条件を満たしてしまった対象者には、招待状とギフトカードに主催者の旗印が刻まれるのです」

 

 ツナは慌てて持っていた"契約書類(ギアス・ロール)"を広げる。

 

 

『ギフトゲーム名"SUN SYNCHRONOUS ORBIT in VAMPIRE KING"

 *プレイヤー側ペナルティ条項

  ・ゲームマスターと交戦した全てのプレイヤーは時間制限を設ける。

  ・ペナルティは"串刺し刑" "磔刑" "焚刑"からランダムに選出。

  ・解除方法はゲームクリア及び中断された際にのみ適応。

  ※プレイヤーの死亡は解除条件に含まず、永続的にペナルティが課される』

 

 

「ゲームマスターってレティシアの事ですよね? オレはレティシアと戦ってないのに……」

 

「私も、あの巨龍の鱗の魔獣と冬獣夏草くらいとしか戦ってない」

 

「ですが事実、我々はペナルティ条件を満たしてしまった。ならば考えられる可能性は一つでしょう」

  

 二人はハッとした。

 あの巨龍=レティシアだとしたら。その分身である魔獣と戦ってしまえばペナルティ条件を満たしてしまうのではないだろうか。

 

 吸血鬼で有名なドラキュラとはルーマニア語で竜の子を意味する言葉。

 ペストの時もそうであったことから、今回も何かの伝承に準えていると考えていいだろう。

 

「じゃ、じゃあオレ達皆処刑されちゃうんですか!?」

 

「どちらにしろ"魔王ドラキュラ"を倒さない限り……十日後には、血の雨が降ることになるでしょう。伝説の如く、串刺し刑に処されてね」

 

 ジャックのカボチャ頭の中で揺れる炎の瞳が、古城を囲む雷雲に移る。

 

 

 




次回の更新もなるべく早くできるように努力します

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