ネオ・ボンゴレⅠ世も異世界から来るようですよ?   作:妖刀終焉

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砕かれた星座来る!

 あれから一夜明けて、ツナ達も一息つくこととなった。

 食料や水に関しては、ガロロやジャックがギフトカードに常備していた保存食と水樹でどうにかなった。ギフトカードは、ただギフトを入れておくだけでなく、緊急時のための備えにもなるのだとツナと耀は学んだのだ。

 

 耀は食事の味に少し不満はあったものの、それでも今後のためにガンガン食べている。

 

 一通り食事を終えた皆は今後のことを話し合うことになった。

 

「さて、今後の活動だが……まずは意見を募りたい。誰か案はあるか?」

 

 ガロロの言葉に、耀はここに残り、謎解きを行うことを提案した。耀もツナもペナルティを受けることは確定している身。であれば、合流するよりも敵陣内で少しでも多くの手掛かりを見つけてゲームクリアを目指した方が良い。

 

 審議決議の間は戦闘行為が禁止されてるので、非戦闘員である子ども達も絶対とは言えなくても襲われる危険性は低い。それにこの場にいる50人の内40人が子どもだ。散策するのであれば頭数は多いに越したことは無い。

 

 子ども達も少しでも役に立ちたいとその意見に賛成であった。

 

「……おし、分かった。若い連中がそこまで言うからにゃ俺も腹を括ろう。しかし具体的にはどうする?無闇に探索するんじゃ骨折り損だ。もし無策なら、許可は出せないぜ」

 

「うん。それについては私から提案……というか、勝利条件について暫定的な解答があるというか……」

 

「それ本当!?」

 

 耀は少々自信無さ気ではあるが、あの難解な勝利条件を解き明かしたことにツナだけでない、他の4名も驚き、賞賛している。

 

 耀が自分の予想を確信にするためにガロロ達に吸血鬼の歴史について尋ねた。

 

 吸血鬼は先日攻めて来た巨人と同じく本来の故郷を追われて"箱庭"へとやってきた一族である。

 彼らにとって太陽の光を浴びることが出来る箱庭は夢のような居場所だっただろう。そして、当時は各地域で独裁状態だった箱庭に秩序を齎そうと彼らは"箱庭の騎士"として立ち上がった。彼らは持ち前の力、知恵、そして勇気で凶悪な魔王を倒していき、中下層の魔王はあらかた駆逐され箱庭には安定期が訪れた。その後下層では"箱庭の騎士"を中心に規定を設けて、"階層支配者(フロアマスター)"や"地域支配者(レギオンマスター)"の制度が出来上がった。

 

(レティシアってそんなに凄い人だったんだーーーーー!!?)

 

 今の話を聞いたツナは、"ノーネーム"で雑務を行っている人物がそんな大物である事を再確認する。そんな人物を支配下に置いた先代のリーダーはどれ程の実力者だったのだろう。

 

「……それで、めでたしめでたし?」

 

「そんなわきゃねえ」

 

 その後、間もなくして吸血鬼の一族は吸血鬼の王によって惨殺されることとなる。

 

「それを行ったのが"串刺しの女王"――――僅か十二歳で"龍の騎士(ドラクル)"にまで登り詰めた最強の吸血鬼。レティシア=ドラクレアさ」

 

 二人は絶句した。 

 

「そ、そんな……」

 

「あん? お前ら同じコミュニティだろ。聞いてないのか?」

 

 ガロロは怪訝な表情をするも、話を続けた。

 

 初代"全権階層支配者(アンダーエリアマスター)"となったレティシアはその権力と利権を手に、上層の修羅神仏に戦争をしかけ、それを阻止しようとして革命を起こした吸血鬼達と殺し合い――――その結果滅んだ。

 

 耀はガロロから聞いた吸血鬼の歴史を頭の中で何度も反芻しながら、そして契約書類(ギアスロール)を何度も見返している。

 

 ツナも少しでも助けになればと考えてはいるものの、何一つ実になることが思いつかない。ならばとまた契約書類(ギアスロール)に目を落とす。

 一番上に記してあるゲーム名に最初に目がいった。

 

「SUNは太陽、SYNCHRONOUSは同時、ORBITは人工衛星とかの軌道だったかな? って人工衛星……?」

 

 古い歴史を持つ吸血鬼にそぐわない人が生み出した文明の利器。何か関係があるとは思い難い。しかし耀はツナの呟きにコクリと頷いた。

 

「そう。人工衛星」

 

「じ、人工衛星ですか!? まさかこの城が……?」

 

 ジャックも今の一言で耀と同じく答えに辿り着いた。

 

 今ツナ達がいるこの城を人工……否、神造衛星だと仮定すればこのゲームに太陽と軌道が関係することが明らかになる。

 そして第三の勝利条件である『砕かれた星空を集め、獣の帯を導に、鎖に繋がれた革命主導者の心臓を撃て』にある獣の帯は"獣帯(ゾディアック)"、つまり黄道十二宮を示すことになる。

 

 砕かれた星空、つまり天球分割法によって十二に分けられた星座を玉座に捧げると見解出来る。

 

 ここまで来れば頭脳労働担当でないツナでも分かった。

 

「つまり、十二星座に関係のあるものを集めてこの城の何処かにある玉座に持っていけばこのゲームはクリアってこと?」

 

「私の考えが正しければ多分……そう、だと思う。でもその星座に関係あるものっていうのがまだよくわからないし。玉座の場所も『捧げる』っていうのもまだ……」

 

 それでもこのギフトゲームを攻略する上での方針を決めるには充分であった。

 

 

 

 

 十二に分かれた城下町の探索はこの広さから二手に分かれてすることになった。何かあったときのためにと一方にはジャックとアーシャが、もう一方にはツナと耀、そしてガロロが引率している。子ども達にはジャックの案でゲーム感覚で楽しく探索して貰えるように景品を出すといったふうにしていた。

 

「そういえば……」

 

「?」

 

「よく分かったよね、星座とか。ゾディアック……だっけ? オレ、さっぱり分からなかったよ。というか今でもほとんど分かってないし」

 

 年齢ならツナと耀はほぼ同い年。それでも、十六夜ほどではないにしろ有している知識が彼とは桁違いだ。 

「……父さんが、そういう話が好きでよく聞かせてくれたから」

 

「父さんって確かその凄いペンダントをつくった人だよね?」 

 

 ツナは箱庭に来たばかりの頃に白夜叉の元で彼女が言っていたことを思い出す。

 

「心配とかってしてないのかな」

 

 ツナがそうであったように、他の三人達にも残してきた家族や友人がいたのではないか? 今まで言葉にこそだしてはいなかったものの、それは今になってポツリと吐き出される。

 

 耀は小さく、そして少し悲しそうな顔をして首を横に振った。

 

「父さん、行方不明だから……」

 

「えっ、あ……ごめん!」

 

「別にいいよ。あんまり気にしてないし。……そうだ。ツナの父さんはどんな人なの?」

 

 耀は空気を変えようと、ツナの方に話を振ってきた。気遣いもあるのだろうが、純粋にツナのことをもっと知りたいという気持ちもあったのかもしれない。

 

「オレの父さん? う~ん……なんというかちゃらんぽらんでいい加減なダメ親父で、二年くらい前に石油を掘りに行くとか言い出して――」

 

「に……ねん……? それで、ツナの父さんは?」

 

「へ? 突然帰って来て色々勝手なことを言い出して……」

 

 丁度ヴァリアーが襲いかかってきた頃の話である。ディーノと共にハーフボンゴレリングを持って帰国したのだ。

 

「そうなんだ……羨ましいな」

 

 二年後に帰ってくると約束してついぞ帰ってくることはなかった耀の父、春日部孝明。

 妻子に詳細を話さず家を出て、それでも二年後に帰ってきたツナの父、沢田家光。

 

 共通点はあれども全く正反対の結果になったこの境遇を耀は羨んだ。彼女は父の言う通り多くの動物達と友達になり父を待った。

 

 けれどもそれは叶うことは無かった。

 

(でも、もし父さんが戻ってきていたら)

 

 一瞬だけ過ぎったその考えをすぐに捨て去る。たらればを考えても仕方が無いし、そうなっていたらこの箱庭で"ノーネーム"の皆と出会うことが出来なかったかもしれない。

 

「良いとこ取りって出来ないものだよね……」

 

「えっ、何か言った?」

 

「ううん、なんでもない」

 

 子ども達も手伝ってくれたお陰で城下町の探索は考えていたよりも早く終わり、皆は"黄道十二宮"に関連するものを持ち寄った。

 

 全て合わせると黄道十二宮の星座が刻まれた何かの欠片が計12個と、別の星座が刻まれたものが計14個。黄道十二宮の星座が刻まれた欠片はともかく他の14の欠片が見つかったのは彼らにとって想定外だった。

 

「……キリノ。この欠片はどんな建物の下にあったの?」

 

「えっと、十二宮は神殿のような大きな廃墟に。その他は瓦礫の下からで出てきました」

 

 十二宮のものだけ扱いが違っている。しかしそれさえも時間稼ぎのためのミスリードだという可能性は捨て切れなかった。耀は欠片を手にとって完成形を予想しながら弄っていた。

 

「なんかパズルみたいだ……」

 

 ツナも適当な欠片を二つ手に持った。それには牡羊座と牡牛座が刻まれている。

 

 それを耀はふと何かを閃いた。

 

「っ! ごめん、それ貸して!」

 

 ツナは慌てて耀に二つの欠片を手渡す。牡羊座と牡牛座は黄道十二星座で隣り合う組み合わせ。彼女の考えが正しければ――――。

 

「嵌まった」

 

 二つの欠片はカチリと組み合った。

 

 それから双子座、蟹座、獅子座と十二星座を時計回りに組み合わせていき……一つの半球体が完成した。

 

「解けた」

 

「「「は?」」」

 

「え? じゃあこれが!」

 

「うん。これが、この欠片が玉座に捧げる最後のカギだ!」

 

 耀は今までにない歓声を上げながらツナとアーシャに抱きついて喜んだ。

 

 

 

 

 耀が思わず謎を解いてしまった頃、下の方ではレティシアの偽物がゲーム中断中にも関わらず攻撃を開始。その際にサラを庇った十六夜が負傷。

 それを開始の合図にでもするかのように巨人の軍勢がアンダーウッドに攻め込んできた。

 

 レティシアの偽物を十六夜とグリーが、巨人の軍勢を他のメンバーで相手をすることとなる。

 

 そして黒ウサギは大樹の天辺で突如現れた謎の少女と対峙していた。

 

「……貴女は、我々の敵ですか?」

 

「うん、そうだよ」 

 

 目の前の少女を敵と判断した黒ウサギは即座に雷光を放つ。熱と火花を散らした一撃は水樹の葉を一瞬にして燃え上がらせた。

 

 しかしそれは少女を倒すには至らず、ナイフの投擲による反撃をされる。"擬似神格(ヴァジュラ)金剛杯(レプリカ)"による一撃を耐えた上に反撃までしたこの少女の能力の高さに彼女は戦慄した。

 

「ちなみに私の仕事は、ウサギさんの足止めです。だってウザギさんに"バロールの魔眼"を撃ち抜かれたら私達が困るもの」

 

 少女が告白した直後により重厚な地響きが平野を揺らす。黒ウサギは一つの答えに辿り着いて一気に血の気が引いた。彼女は自身の情報収集能力でそれを確信にした。平野でレティシアを攫ったローブの女が召喚の儀式を行っている。

 相手は死の呪を持つ魔眼の持ち主である魔王バロールをこの平野に召喚するつもりなのだ。

 

(これ以上あの子にばかり構ってはいられません!)

 

 あの巨龍だけでも絶望的なのに魔王バロールまで出されたら参加者側に勝ち目は無い。

 

 黒ウサギは決心し、"擬似神格(ヴァジュラ)金剛杯(レプリカ)"を掲げる。"擬似神格(ヴァジュラ)金剛杯(レプリカ)"を掲げた黒ウサギの髪は燃え上がるような紅蓮に染まる。

 青い稲妻は炎を纏った紅い稲妻と姿を変える。

 

「擬似神格解放……! 穿て、"軍神槍・金剛杯(ヴァジュラ)"――――!!!」

 

 平野を燃やしつくさんとする勢いを秘めた炎と雷を少女へと投擲した。本体が燃え尽きる代わりに一度だけ神格を解放することが出来る黒ウサギの切り札。

 

 少女のギフトの詳細は不明であったが、これだけの一撃であれば、

 

「――――平野ごと吹き飛ばすつもりだったなんて、過激だねウサギさんは」

 

 確かに直撃した筈だった。しかし少女は無傷な上に黒ウサギが予想していたよりも地表が荒れていない。同等の一撃で相殺するか、壁を囲って押さえ込むかしなければこんな結果にはならないだろう。

 

 黒ウサギの武器は"マハーバーラタの紙幣"が二枚のみ。インドラの槍と黄金の鎧の使用には制限がかかっていることもあってかここで使用することには危険が伴う。彼女の任務はあくまでバロールの魔眼を撃ち抜く事だ。それが出来なくなってしまえば詰んでしまう。

 

 

 

 

 

 その時、様々な戦いが繰り広げられる中で、一つの雷が大樹の上へと落ちた。




そういえば耀の母親ってどうしてるんでしょうね?
生物学者『だった』って作中で言ってるからもう故人なんでしょうか……

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