ネオ・ボンゴレⅠ世も異世界から来るようですよ?   作:妖刀終焉

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最近寒いですね
風邪ひかないように気をつけてください


十三番目の太陽来る!

「ゲームが再開!? だってゲームはしばらく休戦中の筈じゃ……」

 

 それに耀の考えが正しければこれでゲームのクリア条件を満たしていることになる。

 

 回廊で待っていたキリノは巨龍の雄叫びを聞いて恐怖に駆られながら黄道の間へと駆け込んできた。

 

「み、皆さん。今のはまさか巨龍が……!」

 

「もしかして……」

 

 耀はハッとなって最悪の考えに行き着いた。『無理矢理ゲームクリアしようとして間違えたことでゲームが再開してしまったのではないか?』と。

 

 しかしレティシアは耀を落ち着けようとその考えを否定する。

 

「いいか、耀。お前の考えは正しい。だからこそ再開された。……分かるか? ゲームクリアに近づいたからこそ休戦期間が終わったんだ」

 

「え? それってどういう……」

 

 何かが足りないのだ。ゲームクリアのための決定的な何かが足りない。

 

 耀はもう一度契約書類(ギアス・ロール)に記されている勝利条件の三、四の内容を読み直した。

 

 

 三、砕かれた星空を集め、獣の帯を玉座に捧げよ。

 四、玉座に正された獣の帯を導に、鎖に繋がれた革命主導者の心臓を撃て。

 

 

 耀は「分からない」と心の中で呟いた。

 

 この局面でそんな弱音を吐けるわけがない。こうしている内にも巨龍が暴れている。レティシアが抑えるといっても限度がある筈だ。

 

 一秒でも早く回答を、という焦燥感が耀を襲った。

 

「大丈夫だ。冷静になればきっと解ける。嬢ちゃんにはゲームを理解する才能がある。俺が保障する。だから諦めるな……」

 

 ガロロは耀の肩を強く握りしめて激励した。

 

 それが返って彼女に重圧を与えてしまった。自分の見落としが合ったせいで仲間達を危険に晒してしまう結果になってしまうと。

 

(それに助けに来てくれたツナも……)

 

 恐い……。その感情が耀を震えさせた。

 

「落ち着け、春日部耀!!!! それでもお前は……春日部孝明の娘かッ!!!」

 

 一瞬、耀の頭の中が真っ白になった。それを共に聞いたツナも絶句している。

 

「春日部……? 何で耀のお父さんが……」

 

 二人と違い、レティシアは酷くショックを受けたような顔をしている。どうやら孝明という人物は知っていても耀の父親だということまでは知らなかったらしい。

 

 それからガロロは耀の父、春日部孝明のことを熱く語り出した。それは自分が孝明に助けられたことであったり、十年前にアンダーウッドを魔王から守ったことであったり、人物像であったり。

 

「そんな孝明の娘である嬢ちゃんが、こんなチンケなゲームをクリア出来ない筈がねえ。自信を持て、春日部耀……」

 

 耀はその言葉に勇気付けられた。そしてガロロからもっと父親のことを聞きたい……であればこんなところで躓いてはいられない。

 

「頑張って!」

 

「……っ! うん!」

 

 ツナからの声援も貰って仕切りなおした耀は改めて先程の項目に目を通す。

 

 不思議とさっきよりもすっきりした頭で様々な観点からその意味を考える。

 

「――――――正された、獣の帯?」

 

 耀はそこへ注目した。そう、正されたということは誤りがあったということ。

 

 耀は一度、十二星座の欠片を取り外してもう一度繋げ直した。

 

「やっぱりだ。あの時はどこかが欠けてたせいかとも思ったけど、蠍座と射手座が繋がらない」

 

 天体分割法は遥か昔に考案されたもの。この城の古さのせいで見落としていたことだが、もし吸血鬼達が天体分割法よりも遥かに近代的な天文学を学んでいたとしたら、話は変わってくる。

 

 であれば太陽の通る道、黄道は十二星座だけではない。蠍座と射手座の間にヨハネ・ケプラーが発見したとされる『蛇使い座』が入る筈である。

 

 耀はもしやと思い、キリノが持っている残りの欠片に蛇使い座がないかどうか調べてみた。しかしこの中には蠍座と射手座の間に当てはまる欠片は無い。きっとまだ見つかっていない欠片なのだろう。

 

「みんな、今すぐ蠍座と射手座の間にある星座を探して! もしも城下町がそのまま大球儀を示しているならその中間地点に――!」

 

『――其処までだ小娘ッ!!!』

 

 出鼻を挫く様に黄道の間の窓をぶち破る大きな影。傍に控えていたジャックはすぐにその敵の強大さを悟り、ランタンにありったけの業火を召喚し、その敵へとぶつけた。

 

『ヌルイわッ、木っ端悪魔がァ!!!』

 

 しかし敵はその業火をあっさりと振り払い。逆にジャックの頭を鉤爪で鷲掴みにして回廊へ続く階段へ叩き付けた。

 

 その光景を目の当りにしたキリノは腰が抜けて、その場にへたり込んでいる。

 

「く……黒い、グリフォン……?」

 

 鷲の頭も、獅子の身体も、全てが黒く塗りつぶされているグリフォン。驚くべきは、頭に聳える巨大な龍角と胸元に刻まれた"生命の目録"だ。

 

「あいつは一体!?」

 

「生きてやがったのか……グライア」

 

『久しいな、ガロロ殿。だが、今はお前に構っている暇は無いッ!!』

 

 グライアと呼ばれた黒いグリフォンは黒い翼で突風を巻き起こしてガロロを吹き飛ばす。ツナは死ぬ気化し、壁に叩きつけられる直前にそれを受け止めた。

 

「無事か?」

 

「ああ……すまねえな坊主」

 

『フンッ、まあいい。今はこちらの方を優先させて貰おう』

 

 ガロロが無事だったことに多少不機嫌になったものの、グライアは嬉々として耀の方を見た。

 

『嬉しいぞ、コウメイの娘。よもや解答に辿り着くのが本当に貴様であったとは……!』

 

「な、何を言って……」

 

『我が名はグライア=グライフ! 兄・ドラコ=グライフを打ち破った血筋よ! 今一度、血族の誇りに決着を着けようぞ――――!!!』

 

 グライアは雄叫びを上げて耀に襲い掛かる。それを辛うじて避けた耀は他のメンバーに言い放つ。

 

「この人の狙いは私だ! 皆は十三番目の星座を探して!」

 

「オレも残る――」

 

「ここは私一人でいい! ツナはみんなを守って!」

 

 確かにここでツナと耀が残れば、ジャックがやられてしまった以上、戦えるのは子どもを守るために残ったアーシャだけになってしまう。その状況で子ども達を守りながら欠片探しをするのは危険だ。

 

 かといって敵は強大なのは目に見えている。

 

「大丈夫だから! 私を信じて!」

 

「……分かった! すぐに十三番目の星座を探してくる! ガロロ、キリノ、ここを離れるぞ!」

 

 耀はツナが二人を連れてここから離れたのを見て安心した。レティシアはゲームマスターだ。ゲームマスターを殺してゲームそのものをダメにしてしまうなんてことはしないだろう。

 

 耀は室内だと不利だと悟り、旋風を巻き上げて外へと出た。

 

 

 

 

 ツナはガロロ、キリノを安全な場所へと残し、全速力で城下町へと飛ぶ。こうしている間にもみんなが戦っている。ツナがすべきことは最後の欠片を見つけてこのゲームを終わらせることだ。

 

 場所は分かっているのだ。逆にツナ一人の方が足手まといもいなくて早く終わるだろうとガロロは判断した。

 

「蠍座と射手座の間……この辺か?」

 

 町の壁には蠍のマークとケンタウロスのマークがある。間違いないだろう。

 

 

 

 

「しししっ、ここで張ってれば……来るだろうと思ってたぜ」

 

 

 

 

 

「この笑い声……ベルフェゴールと同じ……」

 

 ツナの上には人の影が見えた。そいつは玉座のような形状をした椅子に座りながらも浮いている。椅子の足からFシューズと同じ要領で赤い嵐属性の炎が噴出していた。

 

「あぁ? ベルフェゴールだと? しししっ、そんな準天才の弟と間違われるのは心外だぜ、ボンゴレX世(デーチモ)。オレは――――」

 

 ツナは思い出した。メローネ基地で正一が言っていた言葉を。

 

 ――ベルフェゴールには双子の兄がいる。 

 

「ジル様だ!」

 

 ジル。ボンゴレ独立暗殺部隊ヴァリアー幹部ベルフェゴールの双子の兄で本名をラジエルという。

 ミルフィオーレファミリーのホワイトスペルで嵐の六弔花を務めた男であった。しかしイタリアでの戦いでXANXASに破れ、石となって砕け散った。

 

「何故お前が……。それにお前は」

 

「『死んだ筈だ』って言いたいんだろう? 確かにオレは不本意にもXANXASに負けて死んだ」

 

 ジルはそのことを思い出して椅子の取っ手を壊さんとばかりに握り締めている。

 

「だが、神は……いやあの方(・・・)は正統王子であるオレを見放さなかった。新しい命だけでなく新しい力も与えてくださった。白蘭なんかとは比べ物にならない力をなぁ! しししっ」

 

 屈辱から一転して歓喜の顔を見せるジル。そしてジルはツナにあるものを見せ付けた。

 

「これ……何だか分かるか?」

 

「それは……まさか」

 

「しししっ、お前が探してる蛇使い座の欠片だ」

 

 最悪だ。最後のピースが敵の手に渡ってしまった。

 

「ぶっ壊してやろうかとも思ったがなかなか壊れねえでやんの。まあ、お前をおびき出すための良い餌にはなったけどな。しししっ」

 

「何が目的だ!」

 

「目的? そんなもんボンゴレのカス共に復讐するに決まってんだろ! 特に天才であり真の王子であるこのオレをコケにしやがったXANXASや真・六弔花なんてモンをつくってオレを前座扱いした白蘭にはなぁ!」

 

 ジルは人差し指に嵌めた赤いリングに死ぬ気の炎を灯し、匣を開口した。そこから出て来たのは嵐属性の蝙蝠。

 

嵐蝙蝠(ピピストレッロ・テンペスタ)

 

 ツナも話には聞いていた匣アニマル。超音波のように目に見えない嵐の炎で相手を攻撃するやっかいな相手だ。

 

「しししっ、手始めにボンゴレを血祭りに上げてボンゴレリングをいただくとするか」

 

「来るかッ! ナッツ!」

 

「GYAOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!」

 

 嵐蝙蝠(ピピストレッロ・テンペスタ)の超音波のような嵐の炎にナッツの大空の炎を乗せた咆哮がぶつかり合う。

 

「チッ、また天空ライオンシリーズかよ。嫌なこと思い出させやがって。出力アップだ!」

 

 ナッツの調和を超えんとする嵐の炎を出すよう蝙蝠に命令するジル。しかし通常の匣アニマルとVG(ボンゴレギア)として進化したナッツでは大きな力の差が出るのは自明の理。

 

 嵐蝙蝠(ピピストレッロ・テンペスタ)はナッツの調和に押し切られて石化し、下へと落ちていった。

 

「しーししっ、激弱ッ。白蘭から渡されたやつじゃこんなモンか」

 

 己の匣アニマルがあっさりやられたというのにジルは余裕を崩さない。まるでこれはウォーミングアップだとでも言いたげの表情だ。

 

(何だ。やつは何を隠している……)

 

 思いつくのはツナ達やXANXASのよう形態変化(カンビオ・フォルマ)が出来る特殊な匣アニマルを持っているか。

 

「――――修羅開口か」

 

「ご名答! しししっ」

 

 ジルは着ているシャツをはだける。すると胸に埋め込まれた赤い匣があった。

 

「それが『あの方』というやつから貰った力か?」

 

「しししっ、またまたご名答ぅ! だが真・六弔花共のような現代種や古代種じゃねえ。もうワンランク上の修羅開口だ!」

 

 嵐の炎が注入され、赤い匣が開口すると、ジルは嵐の炎に包まれた。 

 

「ひゃっはぁ!! 力が漲ってきやがるぜぇ!!」

 

 身体中の筋肉が膨れ上がって黄土色の毛が生え、両手には肉食獣の持つ鋭い爪、口のからは鋭利な牙が見える。そして背には蝙蝠のような翼に蠍のような尻尾。

 

「これが最強の、幻獣種の修羅開口"嵐マンティコア(マンティーコラ・テンペスタ)"だ! 王子(プリンス)は今、(キング)へと進化したんだよ!」

 

 マンティコア。古いペルシア語に由来し、『人食い』という意味を持つ怪物。

 

 ツナは単独で行った方が良いというガロロの判断は間違っていなかったと彼に感謝する。

 

「ナッツ、形態変化(カンビオ・フォルマ)

 

 ナッツはXグローブと合体しボンゴレの紋章が刻まれたガントレットとなった。両腕のガントレットから絶対に負けられないという覚悟の現れである死ぬ気の炎を吹き出す。

 

 この古城で大きな二つの戦いの火蓋が切って落とされた。

 

 




次回、幻獣種修羅開口の真の恐ろしさが明らかに

と煽り文みたいなのを入れてみる

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