ネオ・ボンゴレⅠ世も異世界から来るようですよ? 作:妖刀終焉
巨龍と巨人の襲来はアンダーウッドに多くの爪痕を残した。収穫祭はすぐには再開出来ず、後日に復興が終わり次第再開される予定だと発表された。
多くの怪我人や死人を出した中で、"ノーネーム"も大きな被害を出したかと思えばそうでもない。
十六夜は肩を貫かれていたがもうピンピンしているし、耀は脚をやられていても"生命の目録"から動物の治癒力を引き出してもう松葉杖無しで歩けるようになり、ツナと飛鳥に至っては軽症で済んでいる。黒ウサギも本調子とまではいかなくとも日常生活に負担はかからない程度に回復していた。
問題はレティシアであった。
酷く衰弱していたせいか、もう丸一日眠り続けている。脈は正常であることから着々と調子が戻っているだろう。現在は"ノーネーム"のメンバーが交代で看病を続けている。
「ランボさんはねえ、あのおっきなのをビシッバシッビューン! って」
「分かった分かった。もうそれ何回も聞いたから」
「ガハハハハ!」
ランボはツナと合流してから先程の戦いで巨人を倒したことを自慢気に触れ回っている。この話をツナにするのももう10回目だ。
(何で来たのがランボなんだよ~)
心の中で溜息をついたツナであった。
現在は皆本陣営でのんびり過ごしている。
「あの、ツナさん」
そういえば、と黒ウサギはツナに声をかけた。黒ウサギは気になったのはランボが突然青年の姿に変わったことである。
「ああ、ランボ……お前また10年バズーカを」
「10年バズーカ?」
聞きなれない言葉にいの一番に興味を持った十六夜が読んでいた本から目を離してツナを見る。十六夜の目が怪しく光ったのをツナは気がついていなかった。
「撃たれた人は10年後の自分と5分間だけ入れ替わることが出来るんだ」
勿論未来での戦いのように人の手が入った場合は例外はある。
「な、成程……(あれ? この子が10年後にはあんな大男に!?)」
ツナも黒ウサギも知らないことだが、ランボは特殊な10年バズーカの弾によって20年後のランボと入れ替わっている。それは黒ウサギの勘違いを加速させていた。
「ほー10年バズーカってのはこれのことか?」
「そうそうそんな……何で十六夜君が持ってんの!?」
「いや、その牛坊主の頭からそれっぽいのがはみ出てたんでな」
十六夜の手にあるのは紛れもない10年バズーカ。彼はそれを興味深そうに調べている。
「おっ、スイッチ発見」
「ああ~! それランボさんのだもんね!」
今頃になって10年バズーカを取られた事に気がついたランボは十六夜から10年バズーカを取り戻そうと躍起になった。
「わっ! ちょっと待ってろ。軽く見たらスグ返すっての!」
はてさて十六夜がこんな面白そうな玩具を見つけてそうあっさりと返すわけがない。身の危険を感じたこの場にいるツナ、耀、黒ウサギは身構える。
「返せ返せ~! それランボさんの~!」
「ちょやめっ! 擽った……」
ランボが十六夜のわき腹によじ登ったことでこそばゆくなった十六夜は――――発射スイッチを押してしまった。
「わっ!」
「キャ!」
「うん」
皆、身の安全のために床へと伏せる。
10年バズーカの弾はこのままいけば扉に当たって誤爆しそうだ。
誰もがそう思って安堵していた時だ。
「皆、交代の時間…………何ちょっと待って誰よこんなところに待って止してイヤアアアアアアアアアアア!!!」
扉に当たる直前、タイミング良く(悪く?)扉が開いて飛鳥が入ってきた。
いつも気丈な態度を取る彼女でもいきなりバズーカを撃たれたらそういう態度は取れなかったらしい。
「飛鳥!」
「飛鳥さん!?」
「ちょ、ちょっと待って。久遠さんが10年バズーカで撃たれたってことは……」
煙が晴れて、そのぼやけた人影が顕わになっていく。
「10年後の久遠さん!?」
「けほっ……けほっ……」
煙で咳き込む声に皆の目が注目を集める。
そこにいたのは見目麗しい黒髪の女性。その美貌は十六夜ですら息を飲んだ。しかし赤いドレスやその面影からその人物が久遠飛鳥だと分かる。
「ここ、"アンダーウッド"よね?」
当の本人は目をパチクリさせながら辺りを見渡している。その彼女に恐る恐る黒ウサギが近づいて話しかけてみた。
「えっと、飛鳥さん……ですよね?」
「急に何言い出すのよ。というより貴女、白夜叉のところに用事があるとか言ってなかったかしら? それに皆……何だか縮んでない?」
「は?」
一方で耀は10年後の飛鳥のある一部分を凝視していた。
そう。胸部である。
現在の飛鳥も15歳にしては良いスタイルをしていた。そしてその成長はまだまだ続いていたようで、目の前にいる飛鳥は黒ウサギに匹敵する程の大きさにまで成長を遂げていた。
(だだだ大丈夫。私だってまだ成長期。まだ慌てるような年齢じゃない)
今の耀には必死に自分に言い聞かせることしか出来なかった。
「ヤハハハ。あのお嬢様が10年後にはこんなレディになるのか」
「あら、十六夜……? 随分背が縮んでるわね」
黒ウサギは状況がイマイチ掴めていない10年後の飛鳥に軽く現状を説明した。
「……つまりここは10年前に巨龍のギフトゲームがあった"アンダーウッド"ということでいいのかしら? だとしたら皆が縮んでることにも納得がいくけど」
「そ、そうだ飛鳥さん! 10年後に我々は、"ノーネーム"はどうなっているんでしょうか?」
飛鳥が生きているから大丈夫だなどと安心は出来ない。前の仲間達のように魔王のギフトゲームに敗れて"コミュニティ"がバラバラになっている危険性も無いわけではないのだ。黒ウサギはそれが最も心配だ。
「ああ、それなら――」
「おっとストップだお嬢様!」
それにまったをかけたのは逆廻十六夜。
「なっ!? 何故ですか十六夜さん! 未来を知ることが出来れば我々にとってとても有利な……」
「おいおい黒ウサギ。もし俺達が未来なんて知っちまったら」
「知って……しまったら?」
この場にいる全員が息を飲む。
「つ ま ん な い だ ろ う が!」
黒ウサギはズテッとこけた。
「ちょ、そんな理由ですか!?」
「あはは……十六夜君らしいけど」
しかしある意味では十六夜の判断は間違っていないとツナは思う。
未来には数え切れない可能性がある。例えばヴァリアーとの戦いで出てきた10年後のランボはリング争奪戦について知らなかったし、20年後のランボに至ってはツナや守護者達と死別している。
仮に未来を知っていてもちょっとした食い違いから別の未来に分岐する可能性も大いにありえのだ。
もっとも十六夜はそこまで考えて言ったわけではないかもしれないが。
「ふふっ、10年経っても変わらないのね」
「変わらないんだ……あ、そろそろ5分くらいかな?」
「あらそう……まあこれからも結構色んなことがあると思うけど、皆くじけずに頑張りなさいね」
ボフンッという音と共に10年後の飛鳥は消えて元の15歳の飛鳥へと戻った。
「へ? へ? 結局何だったの?」
何が何やら分からず仕舞いだった飛鳥は終始首をかしげたままだったという。
Capter1 10年後の威光来る!
10年バズーカの騒動から一時間後、特にやることもない耀は散歩している途中にガロロと出会い、家へと招待された。古城で言っていた自分の父親である春日部孝明のことをもっと聞きたいと思ったことがきっかけだ。
「ホレ。こいつがお前の親父さん、春日部孝明の肖像画だよ」
ガロロは幾つかある肖像画の中でボロボロの服を着たガタイの良い男のものを指差した。
「ホントだ……」
その画は耀の記憶にある父親のものとほぼ一致している。
間違いない、自分の父親は"箱庭"に来ていたのだ。
「お嬢ちゃん達のコミュニティが名無しになる前は、エース的存在でな。階級支配者よりも強いって話だぞ」
「階級支配者って、白夜叉よりも?」
「白夜叉……あの人は階級支配者でも別格だしなぁ……おまけに神格を返上したって話しだし。う~ん……」
ガロロは唸りながらも孝明と白夜叉の優劣について悩んでいる。階級支配者の中でも白夜叉は凄まじく強いというのがありありと伝わってくる。
「あれ?」
すぐ隣の肖像画には黒いマントを着た金髪の青年の肖像画があるのを耀は見つけた。その姿はどこと無く、自分が憧れている少年に少し似ている。
「ねえ、ガロロさん。この金髪の人って」
「ん? ああ。数百年前に10年前と同じように魔王の襲来があってな。その時にこの"アンダーウッド"を守ってくれた"サウザンドアイズ"幹部のジョットってヤツだ。その時の記念に俺が描いたんだ」
(へえ……え? ジョット……?)
――初めまして、ジョットの子孫よ。会えて光栄だ。
この"アンダーウッド"で最初にサラと出会った際に彼女が言った言葉を思い出す。そうだ。彼女はツナのことを指して言っていた。
「父さんもツナのご先祖様も"アンダーウッド"を守るために、戦ったんだ……」
耀はそのことに何か運命めいたものを感じた。
「ああ、そうだよ」
「っ!?」
本人は独り言のつもりだったがガロロに聞かれてしまったらしい。
「知ってたの?」
「知ってたも何もハーメルンの事件から"ノーネーム"は有名だしな。おまけにジョットの再来だなんて噂も一部じゃ広まってる」
孝明とジョットの肖像画を眺めながらガロロも嬉しそうに笑っている。
「ツナの御先祖様ってどういう人だったの?」
「ジョット……もう大分昔になっちまうが、あいつはなんというか真面目で、理不尽が嫌いなやつだったな。孝明とは違ってスラッとしてるわりに力もあって、ちょっと仏頂面で、いつだって弱い者達を背にして戦っている……そんな男だ」
ツナはジョットほど頭が良いわけでも、経験を積んでいるわけでも、はたまた勇敢なわけでもない。きっと戦うことだって好きじゃない。
(でも、いつだって皆のために眉間に皺を寄せながら戦っている)
耀はツナのことをもっと知りたい。そして自分もいつかツナのような『優しい強さ』というものを手にしたい。そう思いながら目の前の肖像画を己の脳裏に焼きつる
その後、ガロロの話をずっと聞いていたのだった。
Capter2 過去の繋がり来る!
ここは"アンダーウッド"の外れ。
「……こんなところまで飛ばされていたのか」
「クッ……何の用だ」
男が見つめる先には全身泥だらけで無様な姿を晒しているジルであった。男はその姿を笑いもせず、かといって目を背けもせず、平然とした態度で手を差し出した。
その手をジルは乱暴に振り払った。
「いらねえよ! もう一人で立てる」
ジルは悪態をつきながらも己の脚で立つ。男は手を振り払われても特に何も感じなかったようで平然とした態度を変えない。
「何故手を出した? 様が命じたのは監視のみの筈だが?」
「ウッセーよ! 手を出すなとも言われてないんなら命令違反じゃない筈だぜ。しししっ」
「その結果、ボンゴレに無様に敗北したわけか」
ジルは言葉に詰まった。
「まだ3割程度しか力を発揮できていない修羅開匣でボンゴレに勝てるとでも思ったか? だから 様はお前に監視のみを命じた」
「そんでお前がその後始末ってわけかよ――
ジルは目の前の男、かつてボンゴレの敵として立ちはだかった最強の剣士である幻騎士を警戒してリングに炎を灯す。
「よせ、ラジエル。 様がオレに命じたのはお前の回収のみだ。それとも……オレに勝てるとでも思っているのか?」
幻騎士は戦闘態勢に入ろうとしたジルに待ったをかける。
「今は内輪もめをしている時ではない。ボンゴレは我々の想像を超えた力を手にしている。どうやら
そして二人は誰の目にも触れずにこの"アンダーウッド"からその姿を消した。
Capter3 死した弔いの花来る!
ハル「またこのコーナーをやれるなんて、ハルは感激です~! ……へ? 『時間が押してるからさっさと始めろ』? はひっ、失礼しました! 今回から新たに始まるハルのハルハルインタビューNEW。記念すべき第一回はゲストに問題児でお馴染みの久遠飛鳥さんを呼んでます」
飛鳥「どうもーって呼ばれたから来たけど貴女誰かしら?」
ハル「はひっ!? そういえば言ってませんでした。私は三浦ハルと申します」
飛鳥「そう、よろしく。それでこのコーナーって私は何をすればいいのかしら?」
ハル「あ、私が質問をするのでそれに答えていただければOKです」
飛鳥「分かったわ」
ハル「それでは。飛鳥さんは箱庭に来る前は何をしてましたか?」
飛鳥「何、と言われてもね。一応、財閥の娘として生まれて学校の女子寮に入れられて。つまらない人生を送ってたわ」
ハル「財閥!? それってブルジョワジーってやつですか!」
飛鳥「そんなに良いものでもないわよ。ギフトのせいで皆私の思い通りだし、何というかただただ決まりきった人生ってやつに飽き飽きしてたのよ」
ハル「……何というか、ハルには壮大過ぎて分からないですね」
飛鳥「安心なさい。分かる方が異常なのよ」
ハル「気を取り直して。飛鳥さんのディーンって一体何なんでしょうか?」
飛鳥「ディーンについて話すにはこの子についても話さないといけないわね」
メルン「アスカー?」
ハル「きゃー! 妖精さんみたいでとてもプリチーです! ぎゅっとしてもいいですか?」
飛鳥「……話してもいいかしら? ディーンは元々、このメルン達のコミュニティ"ラッテンフェンガー"が造り出したものをギフトゲームで勝った私が貰い受けたわけ」
ハル「はひっ? こんなに可愛いのにあんなデストロイな兵器を造り出すとか怖いです~!! あ、それとつい最近パワーアップしたそうですが……」
飛鳥「あれはサラが自分の龍角を切って渡してくれたのよ。本人も苦渋の決断だったでしょうけど、あの力がなかったら巨龍を受け止めることは出来なかったでしょうね」
ハル「それでは今回のインタビューはここまでです。次回からもハルのハルハルインタビューNEWは続けていきますのでまたお会いしましょう!! シーユーアゲインです~!! ……そういえば飛鳥さん。本編でハルの出番はあるんでしょうか?」
飛鳥「私に聞かれても知らないわよ。次回から新章『蒼海の覇者』が始まるわよ。お楽しみにね」