ネオ・ボンゴレⅠ世も異世界から来るようですよ?   作:妖刀終焉

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2月14日もいつもどおりに過ごしていた作者が投稿しますよっと
ちなみにハルハルインタビューは不定期で行わせていただきます


降臨、蒼海の覇者
ひとときの休息来る!


『どうだ? ランボのやつは少しは役に立ったか?』

 

「もうびっくりしたよ! というより何でランボなのさ!?」

 

 ツナは現在、また元の世界と通信が繋がったことを機に今回あった出来事をリボーンに伝えていた。

 

 元六弔花のジルに幻想種の修羅開匣。

 これは無視できる問題ではない。

 

『だが、新たな謎が一つ増えたな』

 

「うん、どうやってジルがこっちに着たか、だよ」

 

『違げえぞ。少なくともこっちの世界のジル(・・・・・・・・・)に動きはねえからな』

 

 かつてのミルフィオーレファミリーの人員は、ボスである白蘭を始めとしてジンジャーのように行方の分からない人物を除けばボンゴレの厳重な監視下に置かれている。それは生存が確認されたジルもそうだ。

 

「それじゃあ一体……――」

 

『それについては私が説明しよう』

 

 声が変わる。このどこか知的な声はツナにも聞き覚えがあった。

 

「もしかしてヴェルデ!?」

 

 元アルコバレーノの一人であり世界一の頭脳を持つとされている科学者ヴェルデ。

 

『全く、アルコバレーノの呪も解けて新たな研究を始めようとしたらリボーンに見つかってしまうとは』

 

『つべこべ言わずにさっさと言いやがれ』

 

『銃を向けるのを止めてくれ! 大体私自身の戦闘力は大した事ないんだぞ……!』 

 

 ヘッドホン越しからでもヴェルデの焦った顔が容易に想像できる。どうやらヴェルデはリボーンに捕まって無理矢理連れてこられたのだろう。

 

 流石は世界最強の殺し屋(ヒットマン)だ。

 

『……順を追って説明しよう。まずは幻想種の匣アニマルについてだが……』

 

「いや、それも気になるけどまずは――」

 

『順を追って話すと言っただろう。黙って聞いていろ。幻想種の匣アニマルは、結論から言えば製作自体は別に不可能というわけではない』

 

 ツナの言葉を無理矢理切ってヴェルデは話を進めた。

 

『匣アニマルに必要とされるのはその生物の遺伝子サンプル。最も、他にも必要なものはあるが、一番はこれだ。逆にいえば遺伝子サンプルさえあれば古代種であろうが幻想種であろうが匣アニマルを作り出すことが可能なのだよ。それを考慮すれば"箱庭"は貴重なサンプルの宝庫だろう』

 

 ミルフィオーレは並行世界の科学力を用いて恐竜を再現していたが、それでも種類は少ない。しかしここにはグリフォンにドラゴン、探せばペガサスや人魚のような幻の生物がいることだろう。

 

 ヴェルデの言う通り技術さえあればそういった強力な匣アニマルもつくり放題だ。

 

『しかし匣アニマルを使うだけならまだしも修羅開匣となれば話は変わってくる。匣を身体へ埋め込み、自分自身を匣アニマル化するのに耐えられる人間はそれほど多くはない』

 

 それを実用出来た真・六弔花は人間としてはそれだけずば抜けていたということだ。白蘭が自らに匣を埋め込まなかったのもそれが原因かもしれない。

 

『となると、手っ取り早いのが――そういった人間を造り出すことだ』

 

「造り……出す?」

 

『おそらく君が戦ったのは死んだジルの遺伝子を用いて造られた強化人間だろうと私は推測している』

 

「それってもしかしてクローン?」

 

『何者が造り出したかまでは知らないがね。……もういいかリボーン。いくら私でもこの程度の情報量ではこれ以上のことは分からん』

 

 ヴェルデの話でなんとなくだが敵がとてつもなく強大たということは理解できたツナであった。

 

 

◆ 

 

 

 巨龍との戦いから半月が経過。アンダーウッドの復興も大分進み、収穫祭は開催されて問題児三名とツナ、ランボは祭りに参加している。

 

 十六夜は地下倉庫へ閲覧を、ツナ、ランボ、耀、飛鳥は狩猟際に参加している。

 

「うぎゃー! こっち来たー!!」

 

「うわーん! 助けてママーン!」

 

 巨龍の襲撃後もぺリュドンのような殺人種の幻獣はそこらにいて、"龍角を持つ鷲獅子"はそれを放置するわけにもいかず、駆除することになったのだが、十六夜の提案で駆除も祭りの行事として組込むことになったのだ。

 

 耀と飛鳥が息のあったコンビプレイでぺリュドンを仕留めているのに対して、ツナは弓矢など使ったことが無くさっぱり当たらない。

 

 それどころかランボが投げた石が群れのボスらしき巨大魔獣に当たってしまい、魔獣の群れからランボと一緒に逃げている真っ最中である。

 

 今回の狩猟祭に参加するにあたって、ツナ達は制限を受けている。

 

 耀はグリフォンのギフト限定。飛鳥はメルンとのコンビプレイ限定。ツナは死ぬ気モード使用禁止。その結果がこの有様だったりする。

 

 ツナとランボはとにかく逃げていた。

 

 ――瞬間、一陣の風と共にツナ達を追いかけていた魔獣の群れは一斉に絶命した。

 

「……は?」

 

 開いた口が塞がらないとはまさにこの事。ほんの一瞬、それはまるで芸術のような鮮やかさの殺戮であった。

 

 それを行った人物はツナのすぐそばに降り立つ。

 

 銀の仮面を被った純白の騎士、フェイス・レス。

 

「……何をやっているのですか貴方は?」

 

「あの、助けてくれてありがとうございます」

 

 呆れた口調で尻餅をついたツナに手を貸すフェイス・レス。

 

「ふう」

 

 彼女は溜息をつきながら次々に仕留めた魔獣やぺリュドンを一箇所に集めている。仮面に隠されているが明らかに億劫そうだ。彼女も本意で参加しているのではないのだろう。

 

「て、手伝いましょうか?」

 

「……何故競争相手を手伝うのですか?」

 

「だって助けてくれたし」

 

「特にそのつもりは無かったのですが……それに」

 

 フェイス・レスはギフトカードを取り出すとそこへ魔獣の群れを収納した。ギフトカードにはこんな使い方もあるのかと感心したツナだった。

 

「それでは私はこれで」

 

 彼女は次の獲物を探しにまた何処かへと行ってしまった。

 

(凄いけど、よく分からない人だったな)

 

 結果、狩猟祭のトップは"ウィル・オ・ウィスプ"になり、耀と飛鳥は悔しがっていた。

 

 

 

 

「ツナ! ランボさんはあれが食べたいもんね」

 

 狩猟祭の後、ツナはランボと一緒に屋台を見て周っている。耀と飛鳥は知らないうちに何処かへ行ってしまい。自動的にこの二人だけになってしまったのだ。

 

 ランボは右手に綿あめ、左手には焼きとうもろこしを持っていながら、さらにたこ焼きやしきものを要求している。

 

「そんなに買っても食べきれないだろ。半分こな」

 

「ヘイラッシャイ! ぺリュドン焼き美味しいよ!」

 

「ぺリュドン焼き!?」

 

 タコの代わりにぺリュドンの砂肝が入ってるアンダーウッドの名物料理らしい。ツナが思っていたよりも珍味で美味だった。

 

 広間の方では黒ウサギが壇上でマイクを片手に主催者と主賓の入場を呼びかけている。ツナは自然とそちらの方へ目をやった。   

 

『それでは! "アンダーウッド"の収穫祭・主催者代表であるサラ=ドレイク様! 最高主賓である"サウザンドアイズ"の白夜叉様! 壇上にて、開会の言葉をお願いします!』

 

(白夜叉さんも来てるんだ)

 

 壇上に上がったサラは以前のアマゾネスのような野生的な服装ではなく、特有の染色の衣装を纏っていて、髪も三つあみにし、頭上で髪留めと装飾で飾っていた。

 

 しかし白夜叉が壇上に上がってくる気配が一向にない。

 

 すると大樹の天辺に轟々を火が焚かれているではないか。

 

 ――この後、ツナは白夜叉がどういう人物であったかを改めて思い知らされるのであった。

 

『――天が呼ぶッ! 地が呼ぶッ!! 人が呼ぶッ!!! 少し落ち着けと人は言うッ!!!』

 

「ブフォ!!」

 

「うわっ! バッチィもんね!」

 

 派手な演出と共に颯爽と現れた白い髪の和服美人。白夜叉はもっと幼い姿をしていた筈だ。しかしこの特徴的な少ししゃがれた声は聞き間違える筈もない。

 

 白夜叉が(見た目的に)大人になっていたのだ。

 

 それから白夜叉から、"龍角を持つ鷲獅子"へと至宝である"鷲龍の角"を授与する旨を伝えられ、次のサラの演説には心を打たれた。

 

 彼女は故郷である北を出て行った。そんな自分を受け入れてくれたこの"アンダーウッド"を、そしてそんな自分を頭領として認めてくれた"龍角を持つ鷲獅子"の先代や同士達を心の底から愛しているのだというのは強く伝わってきたのだ。

 

「ツナか……」

 

「十六夜君?」

 

 万来の拍手の中、いつになく真剣な表情をした十六夜に声をかけられる。十六夜は何故か大きな麻袋を背負っていて、その隣にはリリがいた。

 

「こいつは……強敵だな」

 

「うん」

 

 彼女達の偉業は"ノーネーム"も見習うことが多いだろう。

 

「さてと、俺はこいつをグリーに届けに行くか。お前らはどうする?」

 

「う~ん。オレは特に考えてないや」

 

「あ、だったら"六本傷"の名物料理がそろそろ焼き上がるそうなので年長組の皆と一緒にどうですか?」

 

「それ私も行く!!」

 

「「「!?」」」

 

 上空から颯爽と現れたのは耀。そして気絶した飛鳥。

 

 耀は鬼気迫る勢いでリリに詰め寄るとその名物料理を売っている店を聞き出した。

 

「えっ、ちょ!?」

 

 そしてそのままリリとツナを担いで旋風を巻き上げて颯爽と去っていった。ついでにツナにしがみついていたランボも一緒に。

 

「何でーーーーー!?」

 

「が……ま……うわーーん!」 

 

 

 

 

 そうして辿り着いたのは先程までいた最下層広場より一つ上の広場。リリがレティシアから聞いた名物料理はここで食べることが出来るらしい。

 

 なんでも"斬る!"・"焼く!"・"齧る!"という単純な手法の豪快な肉料理。

 

 まさに昔、漫画やアニメで見たような、所謂"マンガ肉"というものがツナ達の前に出されている。肉自体も良質なものだが、味付けも塩・胡椒で肉の旨味を最大限に引き出している。

 

「うう、ランボさんお腹一杯……」

 

 ランボは既に屋台で色々食べているせいで二口でギブアップ。ツナも必死で食べているがまだ半分しか食べ切れていない。

 

 成長期の食べ盛りでも食べ歩いていた身としては辛いものがある。

 

 それをもの凄いスピードで食べている人物がいた。

 

 ――というか耀だった。

 

 耀は既に七皿目に手を伸ばしている。

 しかもきちんと切り分けて食べているのにだ。

 料理人達や周りの屈強な男達もこの光景に戦慄している。

 

 料理人達は雄叫びをあげてて料理を作る速度を上げ、他の男達も負けじと食べるペースを早めた。中には耀の食べっぷりに感激して応援する人々までいる始末。

 

(何これーーーー!?)

 

 この妙なノリに非常にツッコミたいツナではあるが、この盛り上がりようを見ると、何故かそれをすることは無粋に思えてしまう。

 

(ツナさん!)

 

 ツナは自分と同じくこの空気についていけないリリと目が合った。

 

 二人はアイコンタクトを取って一つの決断をした。

 

「よ、耀様。頑張ってー!」

 

「が、頑張れー!」

 

 ――この空気に流されることにしたのだった。

 

 ツナも夏祭りで獄寺や山本と一緒にバカ騒ぎしながらチョコバナナを売っていた時のことを思い出して少し懐かしい気持ちになった。

 

「……フン、なんだこの馬鹿騒ぎは。"ノーネーム"の屑が意地汚く食事をしているだけではないか」

 

 この高まる歓声と熱気の中、ふと冷めた声が聞こえた。声の主は鷲のような翼を生やした大男。しかも侮蔑と嘲笑を込めた声は一つだけではない。

 

「名無しである以上、一時の栄光ですからな。収穫祭が終わる頃には奴らのことなど忘れているでしょう」

 

「ああ、所詮屑は屑。名無し共の旗に降り注ぐ栄光などありはしないのだから」

 

「――そんなことありません!」

 

 "ノーネーム"の侮辱に真っ先に反論したのはリリだった。その声に観衆や男達の視線はリリへと集中する。一心不乱に食べ続けていた耀でさえ手と口を止めた。

 

「……なんだこの狐耳の娘は」

 

「私は"ノーネーム"の同士です! 貴方の仲間達への侮辱、たしかにこの耳で聞きました! 直ちに謝罪と訂正を求めます!」

 

 男達にギロリと睨みつけられて涙目になりながらもリリはキッと睨み返した。

 

「そうだそうだー! ランボさんも怒ってるぞー!」

 

「ちょっとランボ! リリちゃんも落ち着いて!」

 

 男達はそんなリリを鼻で笑った。

 

「君が誰かなのはよくわかった。――――しかし君もこの御方が誰かわかっているのか? "二翼"が長、幻獣ヒッポグリフのグリフィス様ですよ?」

 

「だ……だから何だっていうんですか! 謝罪を求めているのはこっちです!」

 

「ハッ、分をわきまえろ。グリフィス様は時期"龍角を持つ鷲獅子"の長になられる御方。南の"階層支配者"だぞ。"ノーネーム"如きに下げる頭などないわ」

 

「……待って。それどういうこと?」

 

 男達の言葉に強く反応したのは耀であった。ツナもその言葉に疑問を持つ。

 

「耀の言う通りだ。"龍角を持つ鷲獅子"の長ってサラさんですよね? 何でグリフィスさんが……」

 

 サラは長を引退するような年齢ではない筈だし、"アンダーウッド"の皆に愛されている彼女が長の座を下ろされるとも思えない。

 

「あの女から聞いていないのか。あの女は龍角を折ったことで霊格が縮小し、力を上手く扱えなくなった。元々龍の力を見込まれて図々しくも議長の座についていたのだ。それを失えば退くのが道理だろうが。そんなこともわからんとは……つくづく低脳が揃っていると見える」

 

 確かにサラは"アンダーウッド"を守るために龍角を折って飛鳥へと渡した。

 

 しかしグリフィスと仲間達はそれを愚行と笑い捨てたのだ。

 

「なんなら本人にでも聞けばいい。龍種の誇りを無くし、栄光の未来を自ら手折った愚かな女にな!」

 

「そんな言い方――!」

 

「――――訂正して」

 

 「そんな言い方ないだろう」と言いかけたツナを遮ったのは耀の冷たい声だ。グリフィス達を見る目もとても冷たい。

 

 彼女は明らかに怒っている。

 

「ひっ!」

 

 ランボも彼女の姿に怯えてツナのズボンを掴んでいる。

 

「サラは愚かな女じゃない。彼女が龍角を折ったのは"アンダーウッド"を守るため……私の友達を守るためだ」

 

 真っ直ぐグリフィスに近づいてくるようを遮ろうとした取り巻きの男は――上空へ吹き飛んだ。

 

「こ、これは……ッ!」

 

 やったのは耀だ。脚にはペガサスを模したレッグアーマーが装備されており、ペガサスとグリフォンの力で取り巻きの男を蹴り飛ばしたのだ。

 

「ツナ、ちょっと待ってて。三分で全員土下座させるから」

 

「ちょ! 何笑顔で怖いこといってるの!?」

 

 耀はツナに笑顔を向けた後にすぐ無表情でグリフィスを見た。グリフィスは人化を解いて鷲の上半身と馬の下半身の幻獣ヒッポグリフとしての姿に戻る。

 

 稲妻と暴風が荒れ狂い、観衆たちは我先にと逃げ出した。

 残ったのはツナ達だけだ。

 

 もう耀はツナの制止を聞くことはないだろう。仮に耀を止める事ができたとしてもグリフィスが止まらない。

 

 雷と暴風を纏ったグリフィスと光と風を纏った耀。

 

 二人がぶつかり合う刹那――

 

 

「はい、そこまで」

 

 

 ――突如割り込んできた眼帯の男が二人同時にのしてしまった。




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