ネオ・ボンゴレⅠ世も異世界から来るようですよ? 作:妖刀終焉
"ヒッポカンプの騎手"開催当日、ツナ達はジンから昨夜の出来事を聞かされた。それはこの"ヒッポカンプの騎手"での勝者が次の"階層支配者"を決める事が出来るというものだった。
「サラもなかなか面白い面倒ごとを任せてくれたな」
「でもせめて一言欲しかったわ。本当に心配したのよ?」
「これはもう、サラには美味しいものを奢ってもらうしかないね」
「昨日散々食べたのに!?」
ツナのツッコミに皆は苦笑する。耀の胃袋に限界というものは存在するのかが怪しくなってきた今日この頃である。
「にしても……女性出場参加者は本当に全員水着なんだな」
ツナはそういえば白夜叉が酔っ払った観客達に向けてそんな事を声を大にして言っていたのを思い出す。その時はただの悪ふざけかとも思っていたが、実際に規則に加えてしまったのか。
「ちょ、恥ずかしいからジロジロ見ないでよ」
十六夜に見られて顔を赤らめている飛鳥は、普段着ているドレスと同じ色をしたビキニタイプで腰にパレオを付けている。いつもドレスを着ているだけあって水着のように露出度の高い格好はとても新鮮味がある。
「ねえ、ツナ。ど、どうかな?」
対する耀は飛鳥程起伏に乏しくはあってもストライプ柄のセパレートタイプの水着によってスレンダーさが際立って健康的だ。
「ど、どうって言われても……」
ツナにそんな気の利いた言葉など出るわけも無く、顔を赤くしながら目を逸らすだけで精一杯だ。
「お……お待たせしました……」
テントの出口にはウサ耳だけが入っている。しかしその本体は一向に中へ入って来ない。痺れを切らした女性二人はウサ耳を掴んで思いっきり引っ張って本体をテントの中へ引き摺り込んだ。
「フギャ!?」
黒ウサギは――――黒ビキニだった。
全ての男の憧れである黒ビキニ。フリルのような装飾も無いシンプルなタイプのものだったが、黒一色故に黒ウサギの白い肌がより強調されている。そして水着になった事でより顕わになった黒ウサギの豊満な胸、無駄な肉付きの無いくびれた腰つき、引き締まっていながらも柔らかそうな美脚。男を魅了し、女を嫉妬させる美しい肢体が目の前にあった。
「……ブフッ! 沢田、お前鼻血出てるぞ!」
「えっ、マジ!?」
思わず噴出して指摘した十六夜の言う通り、鼻の下に触れると赤い血がついていた。
「……」
「い、痛いってば! 何でオレ蹴られてんの!?」
耀は無言で、しかし不機嫌に頬を膨らませながらツナの脛の部分をゲシゲシと蹴っている。勿論、彼女が思いっきり蹴ったらツナの足は確実に圧し折られてしまうので彼が軽く痛みを感じる程度の力しか篭ってはいない。
「これがラブコメってやつか。壁殴り代行は任せろー!」
「十六夜君が殴ったらどんな壁でも粉々に砕けるでしょうが」
「というか私は放置ですか!?」
それから間も無くして、参加者を集めるための鐘が鳴り響いた。
◆
『――大変長らくお待たせしました! それでは今より"ヒッポカンプの騎手"を始めさせていただこうかと思います! 司会進行は毎度お馴染み黒ウサギが――』
――雄々オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ
黒ビキニ姿の黒ウサギが壇上に現れた途端、会場一体の男共はこの"アンダーウッド"すら揺るがしそうな大歓声を上げる。凄まじい熱気と興奮に会場が包まれるそんな中で、リリとレティシアの手伝いで売り子をやっていたペストは観客達を汚物を見るような目で止めを刺し、リリの教育上宜しくないと判断したレティシアはリリの目を両手で覆いながらそっとこの場を去るのだった。
「は、はは……」
ヒッポカンプの上に跨って手綱を握るツナの手は震えている。
"ノーネーム"は今回のレースのために二つのチームに分けた。
騎手・飛鳥にサポート・十六夜、白雪のAチーム。
騎手・ツナにサポート・耀のBチーム。
優勝を狙うために人員を満遍なく使うのは利に敵っている。サポートは一チームにつき三名までなので、チームを分ければ全員の参加が可能となるのだ。
(耀の方が適任だよなぁ……)
しかし今回のルールであれば死ぬ気の炎で加速が出来るツナの方が騎手に向いている。そして彼女の多種多様な能力は騎手よりもサポートでの方が遺憾無く発揮できると十六夜は言っていた。
そして実況席へと上がってきた白夜叉は語り出す。
『えー、諸君!ゲーム開始前にまず一言―――――黒ウサギは実にエロいな!』
『さっさと開始してくださいこのお馬鹿様ッ!!!』
壇上の中央からではいつものハリセンが届かないのでその代わりに今回は投石を採用している黒ウサギ。いつもよりバイオレンスなツッコミである。
『それでは本当に一言――――黒ウサギは本当にエ……』
黒ウサギが自分の顔位の大きさがある岩を持って振りかぶっていたのを見た白夜叉は流石にこれは拙いと口を止めた。
『うむ、流石に投岩は拙いので話を進めるとしようか』
白夜叉は今回の祭りで"サウザンドアイズ"がギフトゲームを開催する準備が出来なかった事を謝罪し、その代わりに"ヒッポカンプの騎手"の勝者には"サウザンドアイズ"から望みの品を進呈すると発言した。
白夜叉の言葉に騎手の飛鳥、そして大河の両岸にいるサポート役のツナ、十六夜、耀が目配せし合って、その装いを新たにする。
(そうだ。もし負けたら議長を辞めさせられるんだ! 自分の角を折ってまで"アンダーウッド"を守ったのに!)
その尊い行いをグリフィスは『馬鹿な真似』と侮辱した。彼が勝ちたいと思うのにこれ以上の理由は要らない。いつの間にか手の震えも止まり、その目には覚悟が宿っている。
「それでは参加者達よ。指定された物を手にいれ、誰よりも速く駆け抜けよ! 此処に、"ヒッポカンプの騎手"の開催を宣言する!」
ツナは死ぬ気モードとなって左手を後方へと向けた。
――レース開始直後。その刹那に事態は起こった。
「きゃ……きゃああああああああああああああああああ!!?」
途端に広がる女性達の絶叫。その身を覆っている水着がバラバラに切り裂かれたのが原因だ。そしてそれを実行したのは――クイーン・ハロウィンの寵愛を受けた騎士フェイス・レス。彼女はこのパニックの中で隙間を縫うように進みながら自分に近づく参加者の水着や衣類を蛇蝎の魔剣で切り裂いて素っ裸にしている。
誰もがフェイス・レスがトップに躍り出るだろうと考えていたその矢先、オレンジ色の炎がフェイス・レスの隣を超スピードで横切った。
「くっ! こ、これは……!?」
X BURNERの剛の炎を後方へ噴射することで、その勢いを利用して凄まじいスタートダッシュを可能にした。
その名も『
あまりの勢いにフェイス・レスの騎馬も一瞬体勢を崩すが、直ぐに持ち直してツナの後を追う。
「わ、私も負けてられないわ!」
飛鳥も負けじとヒッポカンプを加速させた。
開始直後にフェイス・レスの動きを察知した十六夜が小石を投げて剣を弾かなければ今頃は飛鳥も悲鳴を上げる女性陣の仲間入りをしていた事だろう。
「クッ、流石は我が仇敵が選んだ騎士ッ! 血も涙もないその判断力と、肌には傷を付けず水着だけを斬り捨てる剣技ッ!宿敵の臣下なれど見事だと言わざるを得ないッつうかもっとやれヤッホウウウウウウウ!!!!」
「「「ヤッホオオオオオオオオオオオ!!!」」」
この状況に会場は大盛り上がり。司会の黒ウサギは今日ほどゲームに参加しなくて良かったと思わなかった事は無い。というかツナがフェイス・レスを差し置いてトップに躍り出た事については言及しなくて良いのだろうか?
レースの方はといえば、フェイス・レスの手によって脱落者が続出し、参加者は既に十分の一にまで減ってしまっている。
"ノーネーム"側としても白雪が水着を切り裂かれてリタイア。序盤で水のギフトを扱うことが出来る彼女を失ったのは大きな痛手だ。
『現在のトップは炎の噴射で頭一つ抜きに出た"ノーネーム"より沢田綱吉! 二番手は"ウィル・オ・ウィスプ"よりフェイス・レス! 三番手には同じく"ノーネーム"より久遠飛鳥! 以下、四番手から七番手は"二翼"の騎手たちが猛追している状況……おや? トップのツナさ……じゃなくて沢田選手のスピードが弱まっています!』
(思っていたよりも流れがキツイ。そろそろ加速も限界か……?)
フェイス・レスとの距離も段々縮まってくる。だが、一応トップは保ったままでアラサノ樹海の分岐点まで辿り着く事が出来た。
「沢田! お嬢様! こっち側の細い道を選べ!」
「分かったわ!」
ツナも飛鳥と同じ細い道へと進もうとする。
「おっと、そうはさせませんよ」
「なっ!?」
ツナの行く手をフェイス・レスとその騎馬が遮った。河の流れが強いこともあってかルート変更をしなければ先に進むことが出来ない。
「(しまった! あの仮面の狙いは沢田か!?)おい春日部! ……春日部?」
耀にツナのサポートをさせようと指示を出そうとしたが、当の本人が何処にも見当たらない。疑問に思ったが、足を止めるわけにはいかなかった。
◆
飛鳥が選んだルートと同じくツナとフェイス・レスが進むルートも樹海で死んでいった幻獣の亡霊"
「ナッツ!」
「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」
ナッツの咆哮によって襲い来る"
その一方でフェイス・レスも"
フェイス・レスは"
二人の戦いは拮抗していた。
(やりますね。貴重品で無いとはいえ魔剣が既に5本も駄目になっている)
(くっ、さっきまであった差がもうほとんどない。騎手としての技術は圧倒的に向こうが上だ。それにヒッポカンプも……抜かれるのは時間の問題か)
樹海を抜けると、目の前にあったのは大瀑布。辺り一面は水霧で覆われて目の前がほとんど見えはしない。滝の傾斜もほぼ垂直でとてもヒッポカンプで進むことが出来るようには思えなかった。
「この上が折り返し地点か」
「お先に失礼します」
通常であれば別のルートから登るであろうところを、何とフェイス・レスはそのまま滝を登り始めたのだ。彼女のヒッポカンプが特別だから出来るのか、それとも水のギフトで滝を登れるようにしたのかは不明だが、少なくともツナには到底真似できない芸当だ。
(よくあんな急な流れの滝に逆らって……滝?)
ツナはかつての戦いを思い出して、そしてある方法を思いついた。
「死ぬ気の零地点突破・
かつてのシモンファミリーとの戦い。雲雀とアーデルハイトの腕章没収戦でアーデルハイトは氷河の炎の力を使って滝を凍らせて
ツナはそれと同じことをしようとしているのだ。
彼の掌が触れた部分から徐々に凍り付いていく。アーデルハイトのようにあっという間とまではいかなくとも、滝を一時的に凍らせることに成功した。
「ポッカ、行けるか?」
ツナのヒッポカンプは凍りついた滝に出来た出っ張りを足場にしながら易々と登って行く。ツナが下に向けて支えの柔の炎を噴射していることもあって上に辿りつくのにそれ程時間はかからなかった。
山頂に辿りついたツナが見たのは
(潮の香り……? ここは山頂だぞ)
試しに水を軽く舐めたが、淡水ではない。このしょっぱさは海水のものだ。改めて"箱庭"の出鱈目さを思い知らされる。
「沢田~! あなたも急ぎなさい!」
飛鳥の声にハッと我に返ったツナは海の中央に生えている大樹の実を取ってギフトカードへとしまう。後はゴールするだけだ。
その時足場が――――否、大気が揺れ出した。
それはあのフェイス・レスさえも脅威を感じている。
「……まさか、こんなお遊びのようなゲームで、動くのですか? "枯れ木の流木"と揶揄された、あの男が………!」
――……ええんか? 僕が出たらゲームそのものが滅茶苦茶になるで?
ツナはレース開始時にあの男の姿が無かったことで安心していた。
「いやあ、参った参った! 寝坊したらこんな時間になってしもうた。無理矢理ねじ込ませてもらったのに、白夜王には悪いことしてもうたなぁ」
しかしその認識は甘かったと今になって気づかされる。
「でもよかった。君らがこんなところでトロトロしてたおかげで、簡単においつけたわ。――――――――此れなら優勝も、容易そうやなあ」
最強の参加者、蛟魔王を加えてレースは後半戦へ突入する。
ハル「最近は暑くなったかと思えば涼しくなったりで着る服にも困っちゃいますね! 皆さんも風邪をひかないように気をつけて下さいね! それでは前回から大分期間が開いてしまいましたけど、ハルのハルハルインタビューNEW! 第二回のゲストには春日部耀さんを呼んでます!」
耀「モグモグ」
ハル「あの、何食べてるん……ってそれお茶菓子に用意したシュークリームじゃないですかー!?」
耀「ゴクン。まだある?」
ハル「はひっ!? まだ食べるんですか! シュークリームは10個くらいあった筈なんですけど! とっとっと、そろそろ質問コーナーを始めませんと上からハルが怒られてしまいます!」
耀(上?)
ハル「今回の話で耀さんの姿がいつの間にか消えてましたけど、一体何をしてたんですか?」
耀「いきなり今回の話? "ニ翼"の人達をボコボコにしてた。グリーやサラをバカにした事はやっぱり許せなかったし」
ハル「ひ、非常に簡潔でデンジャラスなお答えをどうもありがとうございました。……そういえば耀さんって昔は身体が弱かったらしいですね?」
耀「うん。小さい頃はずっとベッドの上だったよ。でも父さんがくれたペンダントのお陰で歩いたり、動物と話が出来るようになったんだ。その時はあそこまでスゴイモノだって知らなかったけどね」
ハル「あ~可愛い動物さん達とおしゃべりするって憧れますよね~?」
耀「うん。……他の人達からは変な目で見られたけど」
ハル「……」
耀「……」
ハル「……わ、私とも友達になりましょう!」
耀「分かった。本編に出てくるのを楽しみにしてるね」
ハル「はひっ!? メタ発言は止めましょう! それでは今回のインタビューはここまでです。次回のハルのハルハルインタビューNEWでまたお会いしましょう!! シーユーアゲインです~!!」
耀「ゲストに呼んで欲しい人とかいたらリクエストしてね。もしかしたら採用されるかも」