ネオ・ボンゴレⅠ世も異世界から来るようですよ?   作:妖刀終焉

3 / 34
展開が早いのは気にしないで


白夜叉来る!

「"サウザンドアイズ"?」

 

「YES。"サウザンドアイズ"は特殊な"瞳"のギフトを持つ者達の群体コミュニティ。箱庭の東西南北・上層下層の全てに精通する超巨大商業コミュニティです。幸いこの近くに支店がありますし」

 

「ギフトを鑑定すると何かメリットがあるのか?」

 

「自分の力の正しい形を把握していた方が、引き出せる力はより大きくなります。皆さんも自分の力の出所は気になるでしょう?」

 

 同意を求める黒ウサギに、十六夜・飛鳥・耀の三人は複雑な表情で返し、自分の能力について嫌というほど知っているツナは軽く頷いた。それくらいのことであれば大きな戦いの前の修行でよくやっていたからツナにとっては慣れっことも言える。 

 

 問題児+αと黒ウサギの一行は各々のギフトを鑑定すべく町並みを歩く。中世ヨーロッパのような町並みを黒ウサギを除いた全員が興味深そうに眺めていた。

 

 周りに舞っている桜のような花びらを見て飛鳥が呟いた何気ない一言から皆が全員違う時間軸、もしくは違う世界からここへ来たことを黒ウサギに説明された。

 

(白蘭がこの世界にいませんように白蘭がこの世界にいませんように白蘭がこの世界にいませんように!)

 

 ツナがパラレルワールドという単語を真っ先に聞いて思い浮かんだかつての敵。彼は自分の能力、『パラレルワールドの自分と記憶と情報を共有する』でほとんどのパラレルワールドを征服してしまったのだ。そして仕方がなかったとはいえツナが初めて殺しをしてしまった相手でもある。虹の代理戦争で共闘はしたものの苦手なことに変わりはない。

 

 説明もそこそこにして黒ウサギは振り返る。目先にあるのは歴史のありそうな和風の建物。かかっている紫色の旗には互いが向かい合う二人の女神像が記されている。

 

店の前では、看板を下げる割烹着の女性店員の姿があって、黒ウサギは慌ててストップを、

 

「まっ」

 

「待った無しです御客様。うちは時間外営業はやっていません」

 

(取り付くしまもねーーーー!)

 

 ストップをかける前にピシャリと断られてしまう。黒ウサギが店員を悔しそうに睨みつけて飛鳥も文句を言い放った。

 しかし二人がギャーギャー騒ごうとも店員は動じることはない。

 

「なるほど、"箱庭の貴族"であるウサギのお客様を無下にするのは失礼ですね。中で入店許可を伺いますので、コミュニティの名前をよろしいでしょうか?」

 

「……う」

 

一転して言葉に詰まる黒ウサギ。しかし十六夜は何の躊躇いもなく名乗る。

 

「俺たちは"ノーネーム"ってコミュニティなんだが」

 

(黒ウサギが渋ってたのにあっさり名乗ったーーーーー!!)

 

 十六夜はノーネームの威光の無さを知ってかし知らずかあっさりと名乗ってしまった。黒ウサギはだから名乗りを渋っていたのだというのに。黒ウサギから詳しい説明は無かったものの、弱小であったシモンファミリーが他のマフィアから受けていた扱いを思い出してなんとなく理解はしていた。

 

「ほほう。ではどこの"ノーネーム"様でしょう。よかったら旗印を確認させていただいてもよろしいでしょうか」

 

 十六夜たちは知る由もなかったが"サウザンドアイズ"の商店は"ノーネーム"の入店を断っている。

 全員の視線が黒ウサギに集中する。

 

 彼女は心の底から悔しそうな顔をして、小声で呟いた。

 

「その……あの……私たちに、旗はありま「いぃぃぃやほおぉぉぉぉ!久しぶりだ黒ウサギイィィィ!」きゃあーーー!」

 

 店の中から爆走してきた着物風の服をした真っ白い髪の少女に勢いよく抱きつかれて黒ウサギは少女もろとも道の向こうにある浅い水路まで吹き飛び、ボチャン、と転がり落ちた。

 

「ちょ、ちょっと大丈夫!?」

 

 ツナは慌てて黒ウサギに声をかける。

 

 フライングボディーアタックで黒ウサギを強襲した白い髪の幼い少女は、黒ウサギの胸に顔を埋めてなすり付けていた。

 

「し、白夜叉様!? どうして貴女がこんな下層に!?」

 

 この少女は白夜叉というらしい。

 

「そろそろ黒ウサギが来る予感がしておったからに決まっておるだろに! フフ、フホホフホホ! やっぱりウサギは触り心地が違うのう! ほれ、ここが良いかここが良いか!」

 

 見た目女の子だが中身はエロ親父だった。

 

「し、白夜叉様! ちょ、ちょっと離れてください! というかツナさんしかこないってどういうことですか!?」

 

「ほ、ほら離れて!」

 

 ツナは白夜叉を引き剥がそうとするがなかなか力が強い。

 

「むむむ、私と黒ウサギの至福の時間を邪魔するとは一体何処のどいつ……」

 

「だから離れてくださいって……白夜叉様?」

 

 白夜叉はツナの顔を見た途端、まるで時間が止まったかのようにツナを見つめている。

 

「あのー、白夜叉様?」

 

「えっと、オレがどうかしましたか?」  

 

「……はっ! ああいや何でもない。……そんなこと、ある筈ないだろうに」

 

 最後の小さく付け加えた寂しそうな言葉はツナに聞き取ることはできなかった。

 

 一連の流れの中で呆気に取られていた飛鳥は、思い出したように白夜叉と呼ばれていた少女に話しかけた。

 

「貴女はこの店の人?」

 

「おお、そうだとも。この"サウザンドアイズ"の幹部様で白夜叉さまだよご令嬢。仕事の依頼ならおんしのその年齢のわりに発育がいい胸をワンタッチ生揉みで引き受けるぞ」

 

「オーナー。それでは売り上げが伸びません。ボスが怒ります」

  

 どこまでも冷静な声で女性店員が釘を刺す。

 

 注意するのならセクハラの方だろうとツナは心の中でツッコんだ。この世界の住人も問題児達と同じでどこかズレている者が多い。もしかしたら黒ウサギのような常識人は貴重なのかもしれない。

 

 

 

 

 女性店員の批判もあったが白夜叉が責任を負うと豪語して5人は店へと通される。

 

「生憎と店は閉めてしまったのでな。私の私室で勘弁してくれ」

 

 通された白夜叉の部屋は香のような物が焚かれており、風と共に五人の鼻をくすぐる。刀や掛け軸、そして花が飾ってありこれでもかというほど和が詰め込まれている部屋だ。

 

 個室と言うにはやや広い和室の上座に腰を下ろした白夜叉は、大きく背伸びをしてから五人に向き直った。

 

「もう一度自己紹介しておこうかの。私は四桁の外門、三三四五外門に本拠を構える"サウザンドアイズ"幹部の白夜叉だ。この黒ウサギとは少々縁があってな。コミュニティが崩壊してからもちょくちょく手を貸してやっている器の大きな美少女と認識しておいてくれ」

 

「はいはい、お世話になっております本当に」

 

 投げ遣りな言葉で受け流す黒ウサギ。貴重なコネクションなのだからもう少し大切にすべきだろう。

 

 その隣で耀が小首を傾げて問う。

 

「その外門、って何?」

 

「箱庭の階層を示す外壁にある門ですよ。数字が若いほど都市の中心に近く、同時に強力な力を持つ者達が住んでいるのです。箱庭の都市は上層から下層まで七つの支配層に分かれており、それに伴ってそれぞれを区切る門には数字が与えられています。ちなみに、白夜叉様がおっしゃった三三四五外門などの四桁の外門ともなれば、名のある修羅神仏が割拠する人外魔境と言っても過言ではありません」

 

「おんしも、恩人に対して言うな」

 

(行きたくねーーーーー!!)

 

 ツナも協力するとは言ったが人外魔境に行くのは流石に御免だ。

 

 黒ウサギはわかりやすいように紙に上空から見た箱庭の略図を描いた。

 

 それはまるでバームクーヘンだと皆が頷きあい。見も蓋も無い感想に黒ウサギはガクリと肩を落とす。それに対して白夜叉はバームクーヘンという例えに面白おかしく笑っている。

 

「ふふ、うまいこと例えるが、私はバームクーヘンに一票だ。その例えなら今いる七桁の外門はバームクーヘンの一番皮の薄い部分にあたるな。更に説明するなら、東西南北の四つの区切りの東側にあたり、外門のすぐ外は“世界の果て”と向かい合う場所になる。あそこはコミュニティに属してはいないものの、強力なギフトを持ったもの達が住んでおるぞ―――その水樹の持ち主などな」

 

 白夜叉は薄く笑って黒ウサギの持つ水樹の苗に視線を向ける。白夜叉が指すのはトリトニスの滝を棲みかにしていた、十六夜が素手で叩きのめした蛇神のことだろう。

 

「白夜叉様はあの蛇神様とお知り合いだったのですか?」

 

「知り合いも何も、あれに神格を与えたのはこの私だぞ。もう何百年も前の話だがの」

 

 小さな胸を張り、カカと豪快に笑う白夜叉。

 

 

「神格……要は神様の資格ってことですか?」

 

「ちょっと違うが、まあ大体そんなモンじゃな。そういう種を最高のランクに体を変化させるギフト――蛇に神格を与えれば巨躯の蛇神に。鬼に神格を与えれば天地を揺るがす鬼神と化す。更に神格を持つことで他のギフトも強化されるといったカンジでな」

 

「へー」

 

 ツナの疑問に白夜叉はあっさりと答える。

 

「あの蛇に神格を与えたってことは、オマエはあの蛇より強いのか?」

 

「ふふん、当然だ。私は東側の"階層支配者"(フロアマスター)だぞ。この東側の四桁以下にあるコミュニティでは並ぶ者がいない、最強の主催者だからの」

 

 "最強の主催者"―――その言葉に、十六夜・飛鳥・耀の三人は一斉に瞳を輝かせた。ツナは嫌な予感しかしない。超直感を使わずともそれが理解できる。

 

(この三人白夜叉さんに喧嘩売る気満々だーーーーー!!)

 

 ツナの予感は当たっていた。三人は白夜叉相手に闘争心むき出しの目で睨む。白夜叉もそれに気がついたようで高笑いをした。

 

「抜け目ない童達だ。依頼しておきながら、私にギフトゲームで挑むと?」

 

「え? ちょ、ちょっと御三人様!?」

 

 慌てた黒ウサギを白夜叉は右手で制する。ツナはこの三人を止めない、というより止めるのは最初から無理だと判断して諦めた。

 

「よいよ黒ウサギ。私も遊び相手には常に飢えている」

 

「ノリがいいわね。そういうのは好きよ」

 

「ふふ、そうか。おんしはどうする?」

 

 白夜叉だけでなく全員の目がツナへと集中する。特に黒ウサギにとってツナは最後の砦なだけに縋るような目で見ている。

 

「じゃ、じゃあ見学だけで」

 

「……なんじゃ、つまらん」

 

 白夜叉はツナの実力も測りたかったのか宛が外れたようだ。そして黒ウサギは少しほっとしているもののツナが参加しないだけで何一つ状況は好転していない。

 

「そうそう、ゲームの前に確認しておく事がある」

 

「なんだ?」

 

 白夜叉は着物の裾から"サウザンドアイズ"の旗印―――向かい合う双女神の紋が入ったカードを取り出し、表情を壮絶な笑みに変えて一言、

 

「おんしらが望むのは"挑戦"か―――もしくは、"決闘"か?」

 

 

 

 

 刹那、五人の視界は意味を無くし、脳裏を様々な情景が過ぎる。黄金色の穂波が揺れる草原、白い地平線を覗く丘、森林の湖畔。様々に世界が流転し、五人が投げ出されたのは、白い雪原と湖畔―――そして、水平に太陽が廻る世界だった。

 

(すごい……)

 

 チョイスの際に使われた死ぬ気の炎の転送装置とも違う、もっとオカルティックなものだろう。その場にいる誰もが言葉を失った。

 

「今一度名乗りなおし、問おうかの。私は"白き夜の魔王"――――太陽と白夜の星霊・白夜叉。おんしらが望むのは、試練への挑戦か? それとも対等な決闘か?」

 

 格が違う。ツナが真っ先に抱いた感想がそれだ。白夜叉からはチェッカーフェイスと対峙したときと同じくらいの威圧感を感じ取った。そしてそれは喧嘩を売ろうとした三人も身にしみて感じているかもしれない。

 

(決闘とか言ったら全力で止めよう)

 

 これほど大きなフィールドを自分が持つゲーム盤の一つと言い放つ、そんな相手といきなり戦おうとするほど他三人も無鉄砲ではなかったらしく、そうそうに降参した。

 

 ――試されてやると、十六夜のその口調からは全く屈服した態度が見受けられない。今はその時ではないということだろう。他二人も苦虫を噛み潰した顔で悔しげに降参した。

 

 ツナと黒ウサギは心底ホッとした。ギフトゲームは"挑戦"という形で落ち着きそうだ。

 

 ホッとしていたら彼方に見える山脈から甲高い叫び声が聞こえた。その鳥とも獣とも思える叫び声に逸早く反応したのは動物の声を聞くことができる耀だった。

 

「何、今の鳴き声。初めて聞いた」

 

「ふむ……あやつか。おんしら四人を試すには打って付けかもしれんの」

 

 白夜叉が手招きするとそれに応じてソレはやって来る。

 

 鷲の頭と翼にに獅子の身体を持った伝説上の生物、グリフォンだ。体長はざっと5メートルはある。

 

「グリフォン……うそ、本物!?」

 

「フフン、如何にも。あやつこそ鳥の王にして獣の王。"力""知恵""勇気"の全てを備えたギフトゲームを代表する獣だ」

 

 匣アニマルにも真6弔花の恐竜、ディーノの天馬、白蘭の龍といたがグリフォンはいなかった。

 

 白夜叉が双女神の紋が入ったカードを取り出す。すると虚空から“主催者権限”にのみ許された輝く羊皮紙が現れる。

 

 白夜叉は白い指を奔らせて羊皮紙に記述する。

 

 四人は羊皮紙を覗き込んだ。そこに記されているクリア条件は『グリフォンの背に跨り、湖畔を一舞う。クリア方法、グリフォンに"力""知恵""勇気"のどれかで認められること』

 

 先程の白夜叉の言葉の真意はこれにあった。

 

 そのゲームに逸早く立候補したのは耀だった。彼女の瞳はグリフォンを羨望の眼差しで見つめている。乗ってみたいのだろう。

 

「にゃ……にゃ、にゃー(お、お嬢……大丈夫か? なんや獅子の旦那より遥かに怖そうやしデカイけど)」

 

「大丈夫、問題ない」

 

 さらっと死亡フラグを立てた耀の瞳は真っ直ぐにグリフォンに向いている。

 

 宝物を見つけた子どもみたいな目をしている彼女をみて十六夜と飛鳥は苦笑をもらす。

 

 二人と対称に心配性なツナはやはり不安を拭えない。

 

「春日部さん、あんまり無理しないでね」

 

「大丈夫だよ」

 

 耀にも何か策があるのかもしれない。

 

「あ、そうだ」

 

 ツナは自分が着ている並中のベストを脱いで耀に手渡した。ちなみにこれは普通に売っているものではなくレオンの糸でつくられたもので死ぬ気の炎だけでなく耐熱、耐寒にも優れている。ちなみにリボーンが勝手に取り替えたのでツナはこれがレオン製だということを知らない。

 

「良かったらこれ着てって」

 

「え、いいの?」

 

「いや、いいから渡したいんだけど……それと助けてくれたお礼もしたかったし」

 

 ツナは断固として譲らない。そもそも耀の格好ではこの空間だと辛いというのもある。白夜叉もベスト一枚貸すことにいちゃもんをつけるほど度量の狭くはないので何も言ってこない。

 

 最終的には耀の方が折れてツナのベストを着ることになった。

 

「ありがと、行ってきます」

 

 そして春日部耀の初めてのギフトゲームが始まった。

 

 

 

 

 結果だけを言えば春日部耀は見事グリフォンに認められ、湖畔を舞うことに成功した。一度グリフォンに振り落とされたのを見てツナは冷や汗をかいたが、彼女はそのまま下に落下せず、風を纏って空に浮くことでゲームを続行。そしてその勇気をグリフォンは認めたのだ。

 

 耀は戻ってくるなりツナに着ていたベストを返した。

 

「ありがとうツナ。これ、暖かかった」

 

「うん、役に立ってよかったよ」

 

 そしてツナはベストに何も変化が無いことに気がついた。普通なら寒さで服がカチコチになってもおかしくない筈。

 

(これレオンが作った服だーーーー!! リボーンのやつ勝手に入れ変えたな!!)

 

 今の今まで気づけなかったツナにも問題がないとはいえない。

 

「いやはや大したものだ。このゲームはおんしの勝利だの。………ところで、おんしの持つギフトだが。それは先天性か?」

 

「違う。父さんに貰った木彫りのおかげで話せるようになった」

 

「木彫り?」

 

 耀は頷きながら丸い木彫りのペンダントを取り出し、白夜叉に渡す。白夜叉は渡された手の平大の木彫りを見つめて、急に顔を顰めた。

 ツナたちもペンダントを覗き込む。形状は中心の空白を目指して幾何学線が延びるというもの。

 

(……なんだろこれ?)

 

 何か意味はあるそうだが持ち主である耀はよく覚えていないらしい。ツナも数学……というより教科ほぼ全般ダメなのでさっぱりだ。

 

「材質は楠の神木……? 神格は残っていないようですが……この中心を目指す幾何学線……そして中心に円状の空白……もしかしてお父様の知り合いには生物学者がおられるのでは?」

 

「うん。私の母さんがそうだった」

 

「生物学者ってことは、やっぱりこの図形は系統樹を表しているのか白夜叉?」

 

「おそらくの……ならこの図形はこうで……この円形が収束するのは……いや、これは……これは、凄い! 本当に凄いぞ娘!! 本当に人造ならばおんしの父は神代の大天才だ! まさか人の手で独自の系統樹を完成させ、しかもギフトとして確立させてしまうとは! これは正真正銘"生命の目録"(ゲノム・ツリー)と称して過言ない名品だ!」

 

 白夜叉が何やら熱弁しているが全くわからない。とりあえずツナはこの話に混ざるのを諦めた。リボーンなら何か知ってるかもしれないがここにいない人物のことを考えてもしょうがない。

 

 白夜叉はこのペンダントを買い取ろうとしたが耀に拒否されてしょんぼりとしてしまう。

 

「で、これはどんな力を持ったギフトなんだ?」

 

 十六夜に問われ、白夜叉は気を取り戻すが、首を捻った。

 

「それは分からん。今分かっとるのは異種族と会話できるのと、友になった種から特有のギフトを貰えるということぐらいだ。これ以上詳しく知りたいのなら店の鑑定士に頼むしかない。それも上層に住む者でなければ鑑定は不可能だろう」

 

「え?白夜叉様でも鑑定できないのですか今日は鑑定をお願いしたかったのですけど」

 

 黒ウサギの要求にゲッ、と気まずそうな顔になる白夜叉。

 

「よ、よりにもよってギフト鑑定か。専門外どころか無関係もいいところなのだがの」

 

 ゲームの褒章として依頼を無償で引き受けるつもりだったのだろう。

 

「ペンダントといや沢田も首にぶら下げてるよな」

 

 とふと思い出したように十六夜がツナをみる。その視線の先にあるのは大空のリングVer.X(バージョンイクス)

 

「ふむ、ならそれもまとめて鑑定してやろう」

 

「いや、いいです」

 

「何、ここまできて遠慮するでない。"主催者"として、星霊の端くれとして、試練をクリアしたおんしらには"恩恵"を与えねばならん。ちょいと贅沢な代物だが、コミュニティ復興の前払いとしては丁度良かろう」

 

 白夜叉は何を思ったか急にやる気になった。

 

 白夜叉がパンパンと拍手を打つ。すると十六夜・飛鳥・耀の三人の眼前に光り輝くカードが現れる。カードにはそれぞれの名前と、身体に宿るギフトを表すネームが記されていた。

 

 コバルトブルーのカードに逆巻十六夜・ギフトネーム"正体不明"(コード・アンノウン)

 ワインレッドのカードに久遠飛鳥・ギフトネーム"威光"

 パールエメラルドのカードに春日部耀・ギフトネーム"生命の目録"(ゲノム・ツリー)、“ノーフォーマー”

 

「あの……オレは?」

 

 そう、ツナにだけ何も無い。

 

「何を言っておる。試練をクリアしたものに恩恵を渡したんじゃから見学していたお主には無いぞ」

 

「そんなーーーーーーー!?」

 

「ちょ、それは流石に酷いのでは?」

 

 黒ウサギが白夜叉に抗弁する。

 

「冗談を真に受けるでない。ただ単に手持ちがそれしかなかっただけじゃ。というかいじり甲斐のあるやつじゃの」

 

「び、びっくりしたー」

 

 白夜叉流ジョークだったらしい。ツナからすればたまったものではないレベルのジョークだった

 

 カードの名前はギフトカード。アイテムタイプのギフトも仕舞うことができる素敵アイテムのようだ。実際十六夜が水樹の苗を仕舞ったりして遊んでいる。

 

「そのギフトカードは、正式名称を"ラプラスの紙片"、即ち全知の一端だ。そこに刻まれるギフトネームとはおんしらの魂と繋がった"恩恵"の名称。鑑定は出来ずともそれを見れば大体のギフトの正体が分かるというもの」 

 

 そう、だから十六夜のような正体不明というものは非常に珍しいのだ。

 

 

 

 

 皆は帰されたがツナはギフトカードをもらうために白夜叉の部屋に残った。

 

「ホレ」

 

「え?」

 

 白夜叉が手を叩くとツナの掌にオレンジ色のギフトカードあった。ツナの顔はあっけにとられている。

 

「手持ち無かったんじゃないの!?」

 

「それも嘘じゃ。ちと確かめたいことがあっての。それを見せて欲しい」

 

 白夜叉が指すのはツナのリング。

 

「……あげないし売らないですよ?」

 

 もしリングをなくしたことがリボーンに知られた日には殺されてもおかしくない気がする。それにボンゴレギアを失うことはボンゴレファミリーだけの問題じゃない。ツナの世界の存亡にも関係してしまう。

 

「安心せい、ちょっと見せて欲しいだけじゃ」

 

 ツナは首のチェーンからリングを外して白夜叉に見せる。ナッツとガントレットがあしらわれた長めの指輪。綺麗な丸い青色の石の上には『VONGOLA』の文字が×の字に交差している。

 

 白夜叉はリングのつくりを様々な角度から見ている。耀の時のように興奮しておらず静かにじっくりと観察している。

 

 そして中央の青い石の部分で目線が止まった。

 

「……おい、小僧。これを何処で手に入れた?」

 

 その質問にどう答えればいいか迷って口を噤む。

 

「答えられんか……なら質問を変えよう。"ジョット"という男に心当たりはあるか?」




やっちまったオリ設定

後悔はしていない

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。