ネオ・ボンゴレⅠ世も異世界から来るようですよ?   作:妖刀終焉

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黒ウサギ「月に代わってお仕置きデス!」


正体不明と孤高の浮雲が激突するそうですよ?

「あの、ツナさん。聞くタイミングが掴めなくてモヤモヤしてたのですが、あのスーツを着た赤ちゃんは一体何者なんでしょうか? 纏ってるオーラというか殺気というか……とても赤ちゃんのものには思えません」

 

「そうね。そこんとこはっきりして欲しいわツっ君」

 

「うん。教えてツっ君」

 

「その呼び方止めてよ!」

 

 ツナは先程からその呼び名で二人から弄られている。ちなみに黒ウサギはいたって真剣に聞いているのだが、ツナが恥ずかしがって話にならない。

 

「当たり……前だ……」

 

 ソファの向こう側から唸るような声が聞こえてくる。そこから這い上がるように顔を見せるのは先程ビアンキを直視してダウンした獄寺だった。

 

 未だに顔を青くしているも、話が出来るくらいには回復したと見える。

 

「リボーン、さんは……世界……最強の、殺し屋(ヒットマン)……だ……」

 

「赤ちゃんが殺し屋(ヒットマン)って……」

 

「ちょっと信じられな……あれ、リボーン?」

 

「春日部さん?」

 

 耀はその名前を何処かで聞いたような気がして己の記憶を掘り起こす。そう、ツナは自分がいじけていた頃にその名前を出していた。

 

(そういえばツナはその人のお陰で変われたって……)

 

「えっと、リボーンちゃんは何故ツナさんのところに?」

 

「そいつの家庭教師だからだぞ」

 

 黒ウサギの疑問に答えたのは食後にエスプレッソを飲んでいたリボーンだ。コーヒーカップを置いたリボーンは椅子から降りてツナの隣に立つ。

 

「家庭教師?」

 

「ああ、ツナを立派なマフィアにするためにオレはボンゴレ九代目から要請を受けたんだぞ」

 

「ちょ! リボーン!」

 

「何せこいつは次期ボンゴレファミリーのボスだからな」

 

 何の躊躇いも無く事情を明かしたリボーンに対して動揺を隠せないツナ。彼からすればマフィア云々は知られたくない秘密の一つ。ヴァリアーとのリング争奪戦や継承式などを終えて、もう取り返しのつかないところまで着ているような気はするが、彼はマフィアになるつもりなどさらさら無いのだ。

 

(どうしよう!? 最悪の形で秘密がバレた!)

 

 ツナはおそるおそる三名の様子を見た。

 

「ふーん」

 

「へえ……」

 

「は、はぁ……ところでマフィアって何ですか?」

 

「あ、あれ? リアクション薄っ」

 

 耀と飛鳥はマフィアという言葉の意味は知っているが、特に大きなリアクションは無い。黒ウサギは『マフィア』という概念が箱庭に存在しないので聞き慣れない言葉にどうリアクションを取っていいか分からないでいる。

 

「マフィアっていうのは箱庭でいうところのコミュニティが近いわね」

 

「なっ!? ということはツナさんはこの世界のコミュニティの次期リーダー!?」

 

「しかも現状ボンゴレに敵対出来るような勢力は少ない位規模がでけぇぞ」

 

 以前敵対してたシモンファミリーはもう同盟ファミリーとなったし、同じく格式あるジッリョネロファミリーとの仲は良好。新進気鋭のジェッソファミリーも、マーレリングが封印された今、ボンゴレと敵対するようなことは無いだろう。

 

「ツ、ツナさんってそんなに凄い人だったんですか……」

 

「いや……だから、オレはマフィアになんかならないって!」

 

「今更何言ってやがる。もう継承式も済ませたじゃねぇか」

 

「あ、あれは山本を襲った犯人を誘き出すために仕方なく……」

 

 この三人、というより"ノーネーム"にはそんなことでツナの見方を変えるような人物はいないのだ。既に元魔王二人をメンバーに加えているのだからマフィアくらいでガタガタ言う方がおかしいだろう。しかしツナはそれに気がつかなかった。

 

『ママンただいま~!』

 

『タダイマ~!』

 

 玄関の方から子ども二人分の声が聞こえてくる。そして帰ってきた二人は急ぎ足でリビングへと現れた。茶髪でふわりとした髪型で縦縞のマフラーを首に巻いた少年、フウ太。そしてラー○ンマンのような独特な髪型にチャイナ服を着たランボと同じくらいの背丈の子ども、イーピンだ。

 

「ツナ兄! 靴があったからもしかしてと思ったけど、帰ってたんだ!」

 

「ツナサン、オカエリ!」

 

 二人はツナが帰ってきたことに歓喜してツナへと抱きついた。ツナはそれを少し困りながらも受け止めたのだった。

 

「ツナ兄って、ツっ君は兄弟がいたのね」

 

「いつまで引っ張るつもり!?」

 

 飛鳥はイーピンの変わった髪形を観察しながらもツナを弄り続けるのを止めない。

 

「ツナ兄、この人達は?」

 

「オレの新しい友達だよ」

 

 フゥ太もイーピンも三人にしっかりと会釈をした。ツナの周りにいるだけに精神年齢は見た目よりも高い。

 

「ガハハー! これでも喰らえー!」

 

 ランボはバズーカを構えてエスプレッソを飲むリボーンに攻撃を仕掛けようとしている。ちなみにリボーンはランボを視界に入れてすらいない。

 

「ランボ、ソレ危ナイ! 振リ回シチャダメ!」

 

「イーピン邪魔だもんね!」

 

「二人ともやめろって! というかランボ、それ10年バズーカじゃ……」

 

 ランボを止めようとするイーピン。だが、そのくらいで考え直すランボではなく、バズーカの奪い合いが始まってしまった。

 

「あ」

 

 バズーカの取り合いでランボは謝ってスイッチを押してしまい、中の弾が発射されてしまった。

 

 そしてその弾に当たってしまったのはバズーカを取り合っていた二人。

 

「い、今のって10年バズーカだよね?」

 

「ということは……!」

 

 煙と共に現れたのは二つの人影。

 

 牛柄のシャツを少し肌蹴た伊達男と、中華コートを着て、頭を白い布で覆い、『楽々軒』と書かれた岡持ちを両手に持つ美少女がその場に座っていた。

 

「やれやれ、これから健康ランドにでも行こうとしてたんだがな……」

 

 そう言いながらタオルと石鹸を手に持っているのは10年後のランボ。もうこの状況にも慣れているのか、『またか』と半ば諦めたような風だ。

 

「ここ何処なの~? 早く届けないと川平のおじさん煩いのよね」

 

 と困り顔で腕時計を見ているのは10年後のイーピン。口振りからして、どうやら出前の途中だったようだ。   

「ちょっと待って、その牛柄シャツ男は何となくランボって分かるけど……その白い女の子は誰よ!?」

 

「そいつはイーピンだぞ」

 

「イーピンって女の子だったの!?」

 

 飛鳥はてっきりイーピンも男の子だと思っていたので驚きを隠せない。さっき見ていたイーピンと10年後のイーピンに共通して見られる点が全く見られないのだから無理もない。

 

「え? 気づいてなかったの?」

 

「寧ろ何で春日部さんは分かったの!?」

 

「匂い」

 

「ああ、そういうことね」

 

 黒ウサギは10年後のランボを見て首を傾げている。

 

(おかしいですね。以前見た方はもっとがっしりしてて『俺、歴戦の戦士』って風な人だったのですが。一体どういう事なんでしょうか?)

 

 黒ウサギは20年弾について知らないせいで10年後のランボと20年後のランボが同一人物だと勘違いしてしまっている。そのせいで首を傾げていたのだ。

 

「お嬢さん、オレが何か?」

 

「い、いえ。何でもありません」

 

 そして、この騒動はまだまだ終わらなかった。

 

「リボーン。食後に私が作ったデザート……を……」

 

 キッチンから出てきたビアンキはリボーンのために作っていたクレームブリュレ風ポイズンクッキングの皿を持ったまま固まった。その視線が捉えていたのは10年後のランボ。

 

「あ、やばっ!」

 

「ロォォォォォメェェェェェオォォォォォ!!」

 

 10年後のランボを見た途端にビアンキは悪鬼羅刹の如く怒り出す。10年後のランボもこれが初めてというわけではないので一目散に外へと逃げ出した。

 

「逃がさないわよロメオォォォォォォォ!!」

 

 その後を追うビアンキの両手には毒々しい色の料理を載せた皿がある。それは匂いを嗅いだだけで吐き気を催すような代物だ。

 

「よ、耀さん!?」

 

 耀は鼻を押さえて苦しみながらしゃがみ込んでいる。常人の何倍も鼻が効く彼女がビアンキのポイズンクッキングの匂いを嗅いでしまったのだから無理もない。ツナの場合は少し吸っただけで意識を持っていかれるのに対して、ギリギリとはいえ意識を保っているのは"生命の目録"による恩恵だろうか。

 

「あの、ビアンキさんは何故急に怒り出したんでしょうか?」

 

「あ~10年後のランボは昔ビアンキが毒殺したロメオっていう名前の元彼にそっくりらしくて」

 

「ロメオが死ぬ前の二人の仲は最悪だったらしいぞ」

 

 だからビアンキは10年後のランボを見るたびにロメオだと勘違いして襲い掛かるようになったのだ。そして既に二回程やられている。

 

「どうしよう! このままじゃ川平のおじさんのラーメン伸びちゃう!」

 

「の……伸びるくらいなら……私が……」

 

「私に縋ったって知らないわよ! 大体川平のおじさんって誰!? それと耀さん。今食べたら絶対戻すから止めときなさい!」

 

 10年後のイーピンは飛鳥に助けを求めていて、その傍では体調を崩しながらも岡持ちの中に入っているラーメンの匂いに反応している耀がいた。

 

(な、何なんですかこの世界は……? この箱庭に引けを取らないカオスな世界は一体……?)

 

 この常識外れな出来事が次々起きるツナの世界に対して、黒ウサギは戦慄している。

 

「ぶぎゃ!?」

 

 10年後のランボとビアンキが出て行ったと同時に聞こえて来た聞き覚えのある少年の声。ツナはもしかしてと思いながら玄関の方へと急いだ。 

 

「炎真君!」

 

 ツナの友人でありシモンファミリーのボス、古里炎真が二人に吹き飛ばされたせいで仰向けになって倒れていた。

 

「いてて、ツナ君……久しぶり、って今はそんな場合じゃなかった!」

 

 炎真はやけに慌てているように見える。

 

「並中が危ないんだ!」

 

 

 

 

「ふぅん」

 

「へえ」

 

 雲雀と十六夜は出遭ってそうそうトンファーと拳を交えていた。勿論相手を一撃で倒すための力を込めて攻撃を放ったつもりであった。

 

 その結果、互いに動じてはいない。

 

「その辺の不良とは違うようだね」

 

「ハハッ、いきなり当たりに出遭えるとは、こいつはラッキーだ」

 

 二人は地を蹴った。

 

 そこから始まるのはトンファーと拳のぶつかり合い。受けては殴り、受けては殴りの繰り返し。しかし雲雀のトンファーは死ぬ気の炎を纏っていない。十六夜の拳を受け止める毎にトンファーは破損していった。

 

 数度打ち合ったその時、雲雀は破損したトンファーを捨てつつ、無表情で後ろへと大きく跳んだ。その眼が見据えるのは先程十六夜が蹴った屋上の床。そこは凹み、罅が入っている。

 

「君を咬み殺す理由がもう一つ出来た」

 

 何故ただの踏み込みで凹みや亀裂が入ったという疑問が浮かぶ前に雲雀は怒りに燃えた。

 

 ――この男は並盛の校舎を破損させた、と。

 

 並中をこよなく愛する彼からすれば校舎の破壊は度し難い行為。雲雀は先程まで十六夜を『並中にズカズカと入り込んできたただの不良』と見ていたが、『校舎を壊した忌むべき相手』と認識を改めて自分の武器を使うことにしたのだ。

 

 彼が取り出したのは新しいトンファーとツナのリングと同じく輝く石の前で『VONGOLA』の文字が交差しているデザインのブレスレット。ツナのリングと違う点が石の色が紫である事と、ライオンではなくハリネズミの装飾が施されていることだ。

 

 これこそが雲雀のボンゴレギア、"雲のブレスレットVerX"。

 

「ロール」

 

「クピィーーーーッ!!」

 

 ブレスレッドから飛び出したのは彼の相棒である"雲ハリネズミ(ポルコスピーノ・ヌーヴォラ)"のロールだ。

 

形態変化(カンビオ・フォルマ)

 

 雲雀の一声でロールは消え、彼の服装はまるで特攻服のような改造学ランへと変化する。その裾には「漂雲咬殺」の文字が書かれていた。手に持ったトンファーも紫色の装飾が施され、紫色の炎を纏った。

 

 ここからが雲雀の全力と言えよう。

 

(あれはルイオスと同じ"雲の炎"か。だが、大きさも色合いも全然違げえな。別格と判断した方がいいか……それにあれはおそらくツナと同じVGか……ん?あいつ何か持ってやがる) 

 

 雲雀はビー玉程の大きさの何かを指と指の間に挟んで構えている。

 

「これはどうかな?」

 

 雲雀は不敵に笑いながらそれを十六夜へと投げつけた。

 

「なっ!?」

 

 十六夜が驚くのも無理はない。雲雀が投げつけたビー玉は見る見る内に膨張していき全体に鋭い針が付いた球体になっていったのだ。

 

「球針態」

 

「チッ」

 

 球針態は雲雀が上手く操作しているのか、校舎を破壊せずに十六夜だけを追ってきている。それに気が付いた十六夜は舌打ちしながら校庭へと跳んだ。常人であれば不可能であっても十六夜であればやってのける。

 

「逃がすつもりはないよ」

 

 宙に跳んだ十六夜を追う四つの球針態。

 

「ハッ、――――しゃらくせぇ!!」

 

 四つの球針態、その全てが十六夜の拳によって撃ち砕かれた。その破片を見ながら満足そうに笑う十六夜。彼もまた"箱庭"での戦いで成長していた。

 

「ワオ」

 

 そしてそれを眺めて喜ぶのは雲雀。彼も十六夜と同じく強い相手との戦いを求めて止まない者の一人。

 

 二人の戦闘狂による戦いは未だ終わりが見えない。

 

 

 

 

「雲雀さんが他校の不良と喧嘩!?」

 

 ツナ一行は炎真と共に並盛中へと足を急がせていた。ちなみに黒ウサギの本来のスピードであれば五秒もあれば並盛中に辿り着くのは容易いのだが、確実に目立つので彼女も自粛している。耀もビアンキのポイズンクッキングの毒がまだ抜けていないのか調子が悪そうだ。

 

「うん。雲雀さんもどんどんヒートアップしちゃって、アーデルでも手が付けられなくなってるんだ。取りあえず風紀委員と粛清委員が生徒を避難させてるんだよ。今はジュリーの幻術でどうにか誤魔化してるけどいつまで持つか……」

 

 炎真の言葉にツナは嫌な予感を感じ取った。雲雀と互角に戦う不良に思い当たる節があったからである。彼は外れてくれと心の中で祈りながら炎真へと投げかけた。 

 

「……ねえ。ちなみにその不良って金髪でヘッドバンドを付けてたりする?」

 

「ツナ君、何でその不良の特徴を知ってるの?」

 

(確実に十六夜君だーーーーー!!)

 

(あんの問題児様はァァァァァァ!!)

 

 どうやら並中で暴れている不良というのは十六夜で間違い無さそうだ。黒ウサギは十六夜に首輪を付けておかなかった事を心底後悔している。

 

「丁度いいじゃねえか」

 

「何が丁度いいんだよ!」

 

 ツナの肩の上で楽をしているリボーンは現状を聞いて、特に焦りを見せていない。その上それを好機などと意味不明な事を言っている。

 

「箱庭での成果をオレに見せて見やがれ」

 

 リボーンのペットであるレオンは粘土のように形状が変化して、一丁の自動式拳銃となった。

 

「お、お前まさか……!」

 

「いっぺん死んで来い」

 

 問題児三名は目の前で起こっていることが理解出来ない。リボーンが撃った弾丸は吸い込まれるようにツナの額へと当たり、そのまま仰向けに倒れた。

 

「え……?」

 

「な、にこれ……」

 

「……ツナ?」

 

 普通であれば即死。しかしツナの身体の中身が外へ出たがるようにモゴモゴと動き出している。

 

復活(リ・ボーン)!!! 死ぬ気で喧嘩を止める!!」

 

 まるで殻を破るかの如く現れたのは、荒々しい表情で死ぬ気の炎を額に灯した――パンツ一丁のツナであった。




孤高の浮雲って異名が当時めっちゃ好きだったのを思い出した

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