ネオ・ボンゴレⅠ世も異世界から来るようですよ?   作:妖刀終焉

33 / 34
寝てるときに扇風機をつけっぱにしてると蚊に刺されることはないけど、腹を壊す
皆も気をつけようね


問題児たちが雨と嵐の話を聞くそうですよ?

 翌日の朝、ツナは難しい顔をしながら皆と食卓についていた。

 

 リボーンはあの後寝付いてしまい、言葉の真意も聞けないままだ。モヤモヤしながらで寝つきも悪かったし、家に帰ってきたというのに相変わらず休まることが無い。

 

 そのリボーンはツナの苦悩を知ってか知らずか、呑気に眠気覚ましのエスプレッソを飲んでいる。その隣ではビアンキがリボーンのトーストにバターを塗っていた。

 

 十六夜は器に入った納豆をこれでもかというくらいかき混ぜている。その胸中にあるのはツナと同じくリボーンが放った言葉だ。

 

 飛鳥と耀は昨日の出来事が忘れられないのか、牛乳を飲み続けている。ちなみにもう三杯目だ。しかし、牛乳に直接豊胸について作用する成分は含まれていない。所詮は気休めの領域を出ないのだ。

 

 黒ウサギはその光景に若干引きながら、バターを塗ったトーストの上にスクランブルエッグをのせて齧っている。 

 

 いつもの面々に問題児達を加えた二日目が始まろうとしていた。

 

 

 

 

「時間がねえ。さっさと始めるぞ」

 

「いきなり何を始めるつもりだよ!」

 

 ツナがリボーンに連れて来られたのは、かつて死ぬ気モードの特訓をした山。

 

「昨日オレが言った事を忘れたわけじゃねえだろ?」

 

「というか朝からどういう意味だって聞いてただろ!?」

 

「……というか、死ぬ気丸や死ぬ気弾無しでも死ぬ気にはなれるのか?」

 

 疑問に思って口を開いたのは、ツナの死ぬ気の特訓に興味を持って付いて来た十六夜だ。

 

「当たり前だぞ。初代ボンゴレの頃には死ぬ気弾なんて存在してねぇ。それに、死ぬ気弾や死ぬ気丸はドーピングじゃねぇからな」

 

 ジョットやツナの父親である家光も実際に死ぬ気弾や死ぬ気丸を使わずに死ぬ気モードになっている。それはツナもその眼で見てきたことだ。

 

 とはいえ、ツナは自分がそんなことが出来るとは思えなかった。

 

「本当なら後一年間みっちり鍛えてからこの修行に入るつもりだったけどな」

 

 リボーンがその考えを変えたのは、昨日見たツナの死ぬ気によるものか、それとも急遽次の段階に進ませなければならないという焦りか。

 

「でも、居られる時間があんまり……」

 

「ツナ、お前は虹の代理戦争で歴代のボンゴレの誰も到達することが出来なかった『死ぬ気の到達点』へと辿り着いた。今のお前なら死ぬ気弾(きっかけ)が無くても死ぬ気になれる筈だぞ」

 

「……」

 

 リボーンの言葉にツナは黙り込んだ。

 

(死ぬ気の到達点……死ぬ気にはまだ先があるって事か? 面白れぇじゃねぇかよ)

 

 人知れず笑みを浮かべる十六夜。口振りからしていつでも到達出来る境地ではないとある程度理解したが、いずれ見てみたい。そして願わくばどちらが上か競い合いたい。であるならツナにはこれくらいのハードルを越えてもらわなければ困る。

 

「忘れたのか? お前は自分の意思で死ぬ気になったことがある筈だぞ」

 

「え?」

 

 リボーンが言ってるのは、未来での戦いでの事だ。白蘭は圧倒的な力でツナの技を破っていき、ツナは力尽きて死ぬ気モードが解けてしまった。だが、リングに刻まれた初代ファミリーの意思がボンゴレリングの真の力を解き放ったことで白蘭に勝つことが出来たのだ。

 

 ツナはその際、死ぬ気弾や死ぬ気丸を使わずに再度死ぬ気モードになっている。

 

「あれは、ボンゴレⅠ世が力を貸してくれたから……」

 

「ボンゴレⅠ世がやったのはボンゴレリングの封印を解いただけだ。死ぬ気になったのはお前自身の覚悟によるものだぞ」

 

 リボーンは一度言葉を切った。その眼は一直線にツナを見つめている。

 

 彼も以前にキャバッローネファミリーのボスであるディーノの家庭教師をしていた。彼も立派なマフィアのボスへ成長したが、ツナはそれ以上の可能性を秘めていると確信している。

 

「ツナ、お前はあの時何を思ったか思い出してみろ」

 

「あの時……?」

 

 白蘭との実力の差は途方もなく大きかった。

 

 怯えもあった。

 

 ランチアから貰ったリングが守ってくれなければ死んでいたかもしれない。

 

「……嫌な事が沢山あったけど。それでも……無くてよかったものなんて何一つ無いって。皆がいたからオレは戦うことが出来たんだって。全部がオレの宝だって……!」

 

 ツナの両手に嵌めた手袋はXグローブへと変化し、その額には綺麗なオレンジ色の炎が灯る。

 

「やれば出来るじゃねぇか」

 

 今までのように特別な修行は必要無かった。ただ、自分の意思で死ぬ気に、彼にとっての仲間を想う強い気持ちを引き出すことさえ出来れば良かったのだ。

 

「へぇ」

 

 死ぬ気弾や死ぬ気丸によって引き出されたものではない、純粋なツナ自身の死ぬ気モード。十六夜も素直に感心している。

 

「……っはぁ」

 

 ツナは息を吐いて死ぬ気モードから元に戻った。

 

「勝手に死ぬ気モードを解いてんじゃねぇ。持続出来なきゃ意味ねーぞ」

 

「ぶげっ!?」

 

 そんなツナに蹴りを入れるリボーン。いくら死ぬ気になれるからといって短時間で解けてしまったら意味が無いのだ。

 

「時間がねぇ。今日一日使って特訓するぞ」

 

「ちょ!」

 

「お? 面白そうだな。俺も手伝うぜ」

 

「十六夜君まで!?」

 

 ツナの今日の予定は『丸一日特訓』に決まってしまったのだった。

 

 

 

 

 一方その頃、他の箱庭組みは獄寺と山本が案内していた。

 

 現在は山本の父親が経営してる寿司屋「竹寿司」に来ている。

 

「ええっと、タマゴとイクラとマグロとエンガワとウニとタイとネギトロとホタテとサーモンと穴子と海老とはまちとかんぱちとイワシとタコとイカと赤貝とつぶ貝とシメサバとカッパ巻きと鉄火巻きとかんぴょう巻きとそれから……」

 

「ちょ、ちょっと耀さん。一応お金は貰ってますけどあまり無駄遣いは……」

 

 今回、箱庭組みの四名はボンゴレの客人という扱いで、少なくない額の滞在費を受け取っている。十六夜、飛鳥、耀は無一文で箱庭に来ていたし、箱庭での通貨はこの世界では使えない。

 

 とてもありがたい反面、勝手に押しかけて滞在費まで貰っているので黒ウサギはとても申し訳ない気持ちになっている。出来ることならそのままそっくり返したいと思っているのだが、それは叶うことやら。

 

「おいおい嬢ちゃん。注文するのはいいんだけどよ。食べ切れるのかい?」

 

「大丈夫、これくらいなら前菜にもならない」

 

「そ、そうかい」

 

 山本の父、山本剛は心配そうな顔をしているが、耀はどうということはないと豪語。アンダーウッドでの彼女の食べっぷりを見なければ誰だってこの質問をするだろう。

 

「私は……白身魚で何かオススメはあるかしら?」

 

「あ、ああ。コハダの生きのいいのが入ってるぜ」

 

「じゃあそれと、シメサバをお願いするわ」

 

 飛鳥は名家の生まれということもあり、寿司を食べる順番にも拘りがあるようだ。

 

「あいよ。そっちの嬢ちゃんは何にする?」

 

「あ~その……かんぴょう巻きとカッパ巻きをお願いします」

 

 黒ウサギは生まれてこのかた魚肉を生のまま食べたことが無く、また無駄遣いするわけにもいかないために安いのを適当に注文したのだった。

 

……………………

 

…………

 

……

 

「ふぅ、美味しかった」

 

「お寿司なんて久しぶりに食べたわね」

 

(お、お寿司って結構お高いんですね……)

 

 黒ウサギは財布の中身の減り具合に愕然としていた。飛鳥はそうでもなかったが、やはり耀の食べる量がもの凄い。店主が息子の友人だからという理由でまけてくれたものの、貰った額の3分の1くらいが吹っ飛んだ。

 

「次は何処案内すっかな~?」

 

「案内っつても並盛に観光名所みたいなもんはねぇからな……」

 

(いやあの、初日のだけで結構お腹いっぱいなんですけど!!)

 

 並盛は住んでいる人々のキャラが濃い。しかし並盛自体にはそれ程見て周る場所は多くなかったりする。所謂『何も無いが有る』というやつだ。

 

 「そういえば……」と獄寺と山本を見た耀が言葉を漏らす。

 

「二人はどういう経緯でツナと友達になったの?」

 

 アンダーウッドに行く前、ツナは自分で『昔は友達がいなかった』と言っていた。だからどういった経緯があってツナと縁が無さそうな二人が友人になったのか気になったのだ。

 

「……オレは元々、十代目を倒すために日本(ジャポーネ)に来た」

 

「え? そうだったのか?」

 

「……何で山本君が驚くのかしら?」

 

「勿論、次期十代目候補として相応しくなけりゃ殺っちまうとも思ったがな」

 

「さ、殺伐としてますね……」

 

 獄寺の言葉に皆、思い思いの感想を述べる。

 

 当時の獄寺は東洋人とのクォーターであることなどの理由で、どこのファミリーにも迎えられない一匹狼だったので、今よりも荒れていた。

 

「だが、十代目はそんなどうしようもないオレを温かく迎え入れてくれた。オレは救われたんだ。その時、オレはこう思ったんだ。「この方の右腕になって生涯支え続けよう」ってな」

 

 獄寺の言葉、一語一句に強い力が篭っている。

 

「次はオレか。オレは、ツナに命を救われたんだ」

 

「命を救われた? どういうこと?」

 

「オレさ、野球をやってんだけどよ。スランプになっちまって。スランプを脱出しようとして我武者羅に練習してたら今度は腕を怪我しちまった」

 

 そのことについてツナは自分が無責任なことを言ったと後悔していたが、山本は自分のミスだと笑って許していた。

 

「それで、何かもうどうでもよくなって……自殺しようとも思ったんだ」

 

「今の野球バカっぷりを見ると、とてもそうは思えねぇな」

 

「まっ、今思えばオレらしくも無かったな。……それで、オレを止めに来たツナにも八つ当たりみたいなこと言っちまって、なのにツナはオレを自分の身を呈して助けてくれたんだ」

 

「ふ~ん」

 

 飛鳥は、この二人がただの友人という括りでは到底考えられない信頼の強さを感じ取った。この二人はツナにとって親友であり信頼の置ける仲間でもあるのだ。

 

「むっ? お前たちか」

 

 フード付きのジャージを着てランニングしている笹川了平が一行の前で立ち止まる。

 

「ども、笹川先輩」

 

「何か用か芝生」

 

「あ、そうだ。笹川君はどうやってツナと知り合ったのかしら?」

 

 飛鳥はこれ幸いにと了平にもツナと友人になった経緯を聞こうとした

 

「沢田とはパオパオ老師のお導きの下、ボクシングで極限に語り合った!!」

 

「……それだけ?」

 

「そうだ!!」

 

「ほ、他に何か無いんでしょうか……?」

 

「無い! 強いて言えばボクシング部に勧誘しているな!」

 

 彼らしいと言えば彼らしい。直球で極限なものいいだった。

 

 

 

 

 ツナが死ぬ気モードを持続させる訓練は昼過ぎまでぶっ続けで行われていた。リボーンや十六夜との組手を中心に行っていて、ツナは疲労困憊状態になっている。特に十六夜は昨日の雲雀の件でフラストレーションが溜まっていたこともあってかなり容赦が無い。

 

 時間がないだけに特訓も厳しい。

 

「んぐっ……ぷはぁ!」

 

 ツナは休憩時間に持ってきたスポーツドリングで渇きを癒して大きく息を吐く。その隣で十六夜はスカッとした気分で汗を拭いていた。

 

「腹減ったな」

 

「リボーンが何か買ってくるって言ってたけど……」

 

 休憩時間中にリボーンは山を降りて適当に何か持ってくると言っていた。つまりそれまでは自由行動という事になる。

 

 ――ふと、ツナは何かの気配を感じた。

 

(何だ?)

 

 ほんの僅か。しかし確実にツナと十六夜へ向けたもの。

 

 十六夜もそれを勘で察知したのか、警戒を強める。

 

「そこッ!」

 

 ツナの目線の先――大岩の上には何も無い。しかし先程の気配は確かにあの大岩から放たれたものだ。考えられるとすれば骸クラスの幻術使いが術を使って姿を消しているのか。

 

「……僅かに気配を洩らしただけで気づいたか」

 

 声の主は突如としてその姿を現した。

 

 ボサボサで灰色に近い白髪、度が合っているのか分からない小さな丸眼鏡、抹茶色の和服、右手の中指に嵌められたミミズを束ねたような霧属性のリング。

 

(何モンだ……? 冴えない格好だが、ここまで近づいて沢田が気づけないってのは相当だぜ……というか何でラーメン食ってんだ?)

 

「……チェッカーフェイス」

 

「久しぶりだね、沢田綱吉君。虹の代理戦争以来か」 

 

 彼はその手に持ったラーメンを啜る。

 

 チェッカーフェイス。未来では川平と名乗っていた男。その手に持つ気配(セーニョ)のヘルリングで真・六弔花のザクロをあっさりと欺いた。

 

 その正体は(トゥリニセッテ)を管理している人物で、大昔からその時代の最強の7人を選出し、アルコバレーノにすることでおしゃぶりに炎を灯し続けてきた。

 

 しかしヴァミューダ達におしゃぶりに炎を灯し続ける役目を引き継いでリボーン達アルコバレーノの呪いを解いてから消息を絶っていた。

 

「何故今更になって私が現れたか疑問に思っているようだね? 復讐者(ヴィンディチェ)におしゃぶりを託したとはいえ、私が(トゥリニセッテ)を管理する者であることに変わりは無い。その一角に何か異常があれば確認くらいはするさ」

 

 暇だからね、と力が抜けるような言葉を最後に付け足してチェッカーフェイスはツナを見る。異常というのはツナがボンゴレリングを持った状態でこの世界から姿を消したことを言っているのだろう。

 

「しかし、これも運命か。かつてジョット君が行った箱庭に君が呼ばれるとは……」

 

「ちょ、ちょっと待って!」

 

 初代ボンゴレ・ジョットが箱庭に行ったことを知るのはリボーンと、ボンゴレでも一部の人間のみ。それにチェッカーフェイスの妙な言い方も気になる。

 

「何で……」

 

「何故知っているか? 知っているも何も、(ジョット)を箱庭に行かせたのは私だからね」




本当なら並盛編は2,3話で終わる予定だったんだ
でも、書きたいことが多くてそれじゃあ収まらなかったんだ

非力な作者を許してくれ

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。