ネオ・ボンゴレⅠ世も異世界から来るようですよ?   作:妖刀終焉

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問題児たちが未知と遭遇するそうですよ?

「チェッカーフェイスがⅠ世(プリーモ)を箱庭に送った!?」

 

「……」

 

 チェッカーフェイスが二人に告げた内容にツナは驚きを隠せないでいる。

 

 十六夜も声こそ上げてはいないが、内心では驚愕していた。

 

「ど、どうしてそんなことを!?」

 

「君は虹の代理戦争で私が言った(トゥリニセッテ)の成り立ちについて覚えているかな?」

 

 (トゥリニセッテ)は元々、ボンゴレリング・マーレリング・おしゃぶりのようなものではなく、7つの石の珠であった。

 

 しかしチェッカーフェイスの一族が一人、また一人とこの世を去り、とうとう5人だけになってしまった。残った人数では(トゥリニセッテ)を機能させることが出来ないと7つの石を分割しておしゃぶりを作り出した。そしてそのおしゃぶりの炎を灯し続けるためにアルコバレーノが誕生した。

 

「ってことは、リボーンとかいう赤ん坊が着けてた黄色のおしゃぶりが……?」

 

「いや、確かにリボーン君もアルコバレーノだったが、今は違う」

 

「だったらそのおしゃぶりは今何処に――」

 

「今はその話は関係の無いことだ」

 

 むくれる十六夜を尻目にチェッカーフェイスは話を続ける。

 

 だが、更にチェッカーフェイスの一族は減り、とうとう彼自身とユニの先祖、セピラの二人だけとなった。二人ではとても残りの石を制御することが出来ないと、今度は石を削り出し、後にボンゴレリング・マーレリングとなるリングを7つずつ作った。

 

「そしてマーレリングはセピラの家族(ファミリー)が、ボンゴレリングは沢田綱吉君の先祖であるジョット君の家族(ファミリー)が管理することになった。だが……」

 

 ここまでは以前聞いた内容と合致している。ここからがあの時語られなかった新たな内容なのだとツナは理解した。

 

「正直に言えば、私には不安があった。セピラが選んだとはいえあの若い青年にボンゴレリングを任せて良いものかと。今思えば彼女と袂を分かった原因の一つかもしれないね」

 

 悪しき者の手にリングが渡れば、世界のバランスの崩壊に繋がる。事実、白蘭は(トゥリニセッテ)を悪用して世界の覇者になろうとしていた。

 

「私の不安が原因か、それともリングの意志かは定かではないが、ジョット君に大空属性のボンゴレリングを渡した時、彼はボンゴレリングが課した試練を受ける事となったのだよ。君にもボンゴレリングにまつわる試練には覚えがあるだろう?」

 

 ヴァリアーとのリング争奪戦。

 ボンゴレの覚悟を受け継ぐ試練。

 アルコバレーノの試練。

 初代ボンゴレファミリーの認定試験。

 

 思いついただけでも4つもある。

 

「おいおい、つまり初代ボンゴレにとっての試練が箱庭行きってわけか?」

 

(トゥリニセッテ)に認められるにはそれ相応の力を見せなければ駄目だということだよ」

 

 未来の世界で消耗しきっていたツナが白蘭を追い詰めることが出来る程の力を秘めたボンゴレリング。特に大空のボンゴレリングはボンゴレの血筋以外が使おうとすれば、かつてのXANXUSと同じようにリングに拒絶される。

 

 この仕組みは、ジョットがボンゴレリングに対して力を示して認められたからこそ生まれたものだった。

 

「……死んだらどうするつもりだったんだ?」

 

 十六夜はチェッカーフェイスを睨みつける。

 

 自分達は箱庭に呼ばれた後、すぐに"ノーネーム"という居場所があった。しかし、ジョットがもし自分達のように誰かに見つかることも無く、そのまま野垂れ死ぬという可能性も高かった筈。

 

「その時はその時だ。また新しい適合者を探すだけだよ」

 

「そんな……」

 

 白夜叉は以前、ジョットが行き倒れているのを拾ったと言っている。もし白夜叉に拾われていなければジョットは十六夜が考えていたようにそのまま死に、その子孫である家光やツナも生まれることは無かったことになる。

 

「既にアルコバレーノとなった多くの人間が犠牲になっている。今更一人二人の犠牲者を恐れて(トゥリニセッテ)の機能を停止するわけにもいかないのだよ」

 

「アルコバレーノが、犠牲?」

 

「十六夜君。アルコバレーノは、次の代に交代する時におしゃぶりを抜かれて……死ぬんだ」

 

 話についていけない十六夜にツナはアルコバレーノの結末を語った。

 

 アルコバレーノはおしゃぶりに死ぬ気の炎を灯し続けるための人柱であり、その役目を終えたアルコバレーノは死ぬ。仮に生き残ったとしても復讐者(ヴィンディチェ)達のようなゾンビ状態になってしまう。

 

「今は沢田綱吉君の提案やバミューダの協力のおかげで、選ばれし7人(イ・プレシェル・ティ・セッテ)を決める必要も無くなったがね。では話を戻そうか。ジョット君は箱庭で大手コミュニティの幹部に拾われて力をつけていき、数年後に私が迎に行った頃にはボンゴレリングに相応しい人物へと成長していたよ」

 

 チェッカーフェイスはここで一度話を区切ってスープを飲み干す。

 

「だが、彼はボンゴレリングに秘められた強大な力をその身を持って知ったのだ。その力を心悪しき者に利用されないため、そして己の後を継ぐ歴代ボス達の選定をより厳格にするために、彼はボンゴレリングの真の力を封印して二つに分けたのだ」

 

 これがジョットがボンゴレリングを得た真相であった。

 

(白夜叉さん……)

 

 白夜叉はボンゴレリングの導きによってジョットと出会う事が出来た。そしてそのボンゴレリングによってジョットと別れることになった。

 

 そう考えるとツナは居た堪れない気持ちになる。

 

 十六夜はこの地球と箱庭を行き来することが出来るチェッカーフェイスとは一体何者なのか。それが気になって仕方が無い。白夜叉や蛟魔王と同格。下手をすればそれ以上の力を秘めているかもしれない。

 

「おい、チェッカーフェイスとかいったか? お前は何者だ?」

 

「生粋の地球人だよ。最も、普通の地球人とは違うが。私としては地球人としての容量(キャパシティ)を遙かに超えている君の方こそ本当に人間かと疑いたくなるよ」

 

「生憎、生まれも育ちも地球だよ」

 

 チェッカーフェイスは残っていたネギを口に入れて、十六夜はニヤリと笑った。

 

「なあ、ただ話すだけじゃつまんねぇだろ! ちょっと俺と遊んでいかねぇか!」

 

(チェッカーフェイスに喧嘩売ってるーーーーー!!)

 

 強者との戦闘を欲している彼らしいといえば彼らしいのかもしれない。

 

「私は君のように戦闘狂というわけでもないのでね。話も終わった。私はそろそろお暇させてもらうよ」

 

「あ、コラ! 待ちやがれ!」

 

 十六夜は岩の上に座っているチェッカーフェイスに跳びかかった。しかしその手は空を切って終わる。チェッカーフェイスの姿は煙のように消え去り、気配も無くなってしまった。

 

「あー! チクショウ!」

 

 十六夜は本気で悔しそうであったとさ。

 

「……つーか腹減った」

 

 

 

 

 ところ変わって観光組。

 

 ランニングの最中だった了平を加えた一行は、特に目的も無くその辺を歩いていた。

 

「……ふと気になったことがあるのだが、聞いていいか?」

 

 了平が問いかけるのは箱庭組の三名。

 

「なんでしょうか?」

 

「何故チーム名が"名無し(ノーネーム)"なのだ? 名前が無ければつければいいではないか」

 

「えぇ?」

 

 了平の問いに対して黒ウサギが微妙な顔をして困った。彼は何かを勘違いしている。"コミュニティ"を"チーム"と言っている時点で色々勘違いしているのは間違いないだろう。

 

「あー、名前はちゃんとあったのですが……魔王とのギフトゲームで旗印ごと奪われてしまいまして」

 

「なら新しく作れば……」

 

「了平さん、旗印やコミュニティ名はそう簡単につけたり出来るものではないのですよ。コミュニティにとってそれは誇りと同じ、奪われたから新しいものを作るなんて考えは恥知らずもいいところです」 

 

「む……すまん」

 

 黒ウサギの『誇り』という言葉に了平は自分の考えが間違っていたと気づく。彼にもボクサーや晴れの守護者としての誇りがあり、それは掛替えの無いものだ。

 

「そういえば聞いてなかったのだけど、私達のコミュニティの元々の名前って何だったのかしら?」

 

「……私達のコミュニティ本来の名前は、"アルカディア"。旗印には日の昇る丘と少女が描かれています」

 

 黒ウサギがしみじみと語る自分達が取り戻さなければならないコミュニティの象徴。

 

「アルカディア――理想郷の代名詞か」

 

「日の昇る丘……中々悪くないわね。早く実物を見てみたいものだわ」

 

「旗印を奪った魔王の手掛かりはまだ――ッ!?」

  

 耀は余所見をしていたせいか、歩行者達の中にいた男性とぶつかって尻餅をついてしまった。

 

「耀さん!」

 

「チッ、ちゃんと前見て歩きやがれバーロー」

 

「ちょっと! レディを突き飛ばしておいてその言い草は何!?」

 

 突き飛ばされた耀に文句を言いながら立ち去ろうとする男に対して、怒りを覚えた飛鳥は当然のように食って掛かる。

 

 獄寺、山本、了平の三名はその男達を見てギョっとした。

 

「てめえら、何でここにいやがる……」

 

「ハハン。ボンゴレ嵐の守護者、我々がここにいることがそれ程意外ですか?」

 

 女性と見間違えてしまいそうなくらい美しい男性――桔梗。

 

「あ? 良く見りゃボンゴレ守護者達じゃねぇか!」

 

 ボサボサの髪と粗暴な口調の男性――ザクロ。

 

「本当だ~ってここ並盛だし別に遭遇してもおかしくないか」

 

 腰まで伸びた水色の長髪が特徴の少女――ブルーベル。

 

 かつてツナ達を未来で苦しめた(リアル)・六弔花の面々が立っていたのだ。

 

 ボンゴレ守護者三名と真・六弔花三名は睨み合うような形で対立する。

 

「何者ですか?」

 

「ミルフィオーレの真・六弔花だ」

 

「真・六弔花っていうとあの修羅開匣の?」

 

 獄寺の言葉で、ツナの話を聞いていた箱庭組もすぐさま理解した。現在、ミルフィオーレとは敵対しているわけではない。だが、気を許せるような相手というわけでもない。

 

「む、見慣れない顔がいますね。白蘭様が言っていた"箱庭"というものが関係しているのでしょうか?」

 

「んなこと話す必要……」

 

「そうよ。私達三名は箱庭から来たわ」

 

「テメッ! 何で態々……」

 

「私は必要も無いのに正体を隠してコソコソするのは好きじゃないのよ」

 

 真・六弔花の纏っている異質な空気を前にしても、臆さずにどうどうとした態度を取る飛鳥。

立ち上がった耀も自分を突き飛ばしたザクロを睨む。

 

「あん? 何だその目は? 喧嘩なら買うぜバーロー」

 

「にゅ~生意気! 頭蓋骨ひん剥くぞ!」

 

 その二人に対して好戦的な態度を取るザクロとブルーベル。二人の指に嵌めたリングには死ぬ気の炎が灯っている。マーレリングの本来の能力は未来のユニによって封印されたものの、強力なリングであることに変わりはない。

 

「……ふう、よしなさい二人とも。白蘭様から勝手な私闘は禁じられてる筈です。それに今から喧嘩をしていたら白蘭様との待ち合わせの時間に間に合いませんよ」

 

 臨戦態勢になった二人をヤレヤレといった態度で宥めるのはリーダーの桔梗だった。

 

「小娘二人を灰にするのに五秒も掛からねぇぜバーロー!」

 

「彼女達はおそらくボンゴレの客人扱いでしょう。なら彼女達を襲えば守護者達も黙ってはいません。――でしょう?」

 

 桔梗の目線の先にはダイナマイトを持つ獄寺、時雨金時を構える山本、ファイティングポーズをしている了平がいる。

 

「ケッ」

 

「にゅ、つまんないの」

 

 二人は渋々とリングの炎を消した。

 

(やっぱミルフィオーレの奴等は油断ならねぇ)

 

 獄寺は未来の出来事を思い出して苦い顔をする。代理戦争で同盟で共に戦ったものの、白蘭率いるミルフィオーレは信用できない。いつまた敵として現れても不思議ではない集団だ。

 

「待って」

 

 立ち去ろうとした真・六弔花三名を引き止める一人の声。その主は耀のものだった。

 

「何か?」

 

「真・六弔花は修羅開匣で匣アニマルの力を引き出せるって聞いた。それについて聞きたいことがある」

 

「ハハン、ボンゴレ側の人間にミルフィオーレの機密を話すほど、我々もお人好しではありませんよ」

 

「違う、そうじゃない。……怖いって思わなかったの?」

 

「怖い?」

 

「修羅開匣で自分の身体が怪物になること……それは怖くないの?」

 

 耀が生命の目録の真の力を知って、まるでツナの言っていた修羅開匣と似ていると思った。アンダーウッドでは仲間のためにとその力を引き出すことが出来た。しかし、今でも自分がいずれ向き合わなければならないであろう合成獣(キメラ)になることへの恐怖を拭えたわけではない。

 

「ハハン、何かと思えばそんな事ですか」

 

 桔梗は耀の言葉を鼻で笑っていた。

 

「そんな……事?」

 

「バーロー。力に怯えて力が使えないなんてド三流のやることだぜ」

 

「ダッサーい。覚悟が足りてないんじゃなーい?」

 

 ザクロとブルーベルも耀を笑っている。耀には笑われた事への苛立ちよりも、自分の疑問をさもおかしなものだと言われたことに戸惑っている。

 

「我々は白蘭様から人間離れした覚悟を買われ、そして我々の力を買って下さった白蘭様に忠誠を誓いました。白蘭様のためなら化け物になるくらいどうという事はありません」

 

 そう言って真・六弔花はその場から去って行った。

 

「覚悟……か」

 

 耀は首に掛けてある生命の目録を見て呟いた。

 

 自分はブルーベルが言っていたようにまだ覚悟が足りていなかったのかもしれない。生命の目録と向き合うにしてもまだ先のことだと鷹を括っていたのかもしれない。グライアはこれを狙ってまた目の前に現れるだろう。

 

(強くなりたい)

 

 彼女は心の中で強く願った。

 

「…………ふう」

 

 真・六弔花が去って行って黒ウサギは安堵の息を吐いた。飛鳥も強がってはいてもかいた汗の量までは誤魔化せなかった。

 

「黒ウサギ、あいつらは箱庭でいえばどれくらい?」

 

「修羅開匣での力の底上げが未知数なので正確には測れませんが、魔王を別として考えますと……おそらく五桁くらいでは相手にならないかもしれません」

 

 五桁だと、ルイオスの"ペルセウス"やサンドラの"サラマンドラ"、そしてペストの"グリムグリモワール・ハーメルン"がそれに該当する。 

 

「思ってたよりヤバイ連中ね」

 

「マーレリングが封印されてるから前程じゃないだろうが、今オレ達が戦っても確実に勝てる相手じゃねぇだろうな」

 

「リ、リボーンさん!?」

 

「ちゃおっす」

 

 ひょっこり現れてたのはツナと特訓していた筈のリボーンだった。意外な登場人物を前にして獄寺は驚きの声を上げる。

 

「ツナとの特訓はもういいのか?」

 

「ああ、思ってたよりも早く終わってな。全員揃ってるなら丁度いいだろ」 

 

「丁度いい?」

 

 黒ウサギは何故かその言葉に悪寒がした。まるで白夜叉が自分に着せるために作らせたやたらと露出度の高い服が完成した時と同じ気分だ。

 

「ボンゴレ式交流会を始めるぞ」

 




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