ネオ・ボンゴレⅠ世も異世界から来るようですよ?   作:妖刀終焉

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ジョットと白夜叉の関係とは?


昔話来る!

 ツナは白夜叉の言葉に驚きを隠せなかった。

 それもその筈。ジョットとはボンゴレⅠ世(プリーモ)の本名であり、この異世界とは全く無縁の人間だからだ。

 

「な、なんで白夜叉さんがボンゴレⅠ世(プリーモ)のこと知ってるの!?」

 

 ツナの言葉に一瞬怪訝な表情で頭を捻る。そして思い当たる節があったのか昔を懐かしむようにツナへ語り出した。

 

「ボンゴレⅠ世(プリーモ)? ボンゴレ……ボンゴレ……。そういえばやつは元の世界でボンゴレとかいう組織のボスをやっていたとか言っていたな」

 

 間違いない。白夜叉は初代ボンゴレのことを知っている。

 

「もう一つ質問させてもらうぞ。お前とジョットはどんな関係だ?」

 

「えと……確かオレの先祖らしいです」

 

 白夜叉はツナの返答に目を丸くした後、口元を緩めて心底嬉しそうに笑い出す。

 

「そうかそうか! あやつ結婚しておったのか!」

 

「いやあの……」

 

 白夜叉は嬉しくなり口が軽くなったのかペラペラと語り出す。

 

「やつ、ジョットとは古い……まあ古いといっても精々数百年前だが、この"サウザンドアイズ"でともに戦った仲間であり、友人だった」

 

 それでもボンゴレの歴史を考えれば充分古いとツナは思った。

 

「成程、道理で少し懐かしい感じがおんしから漂ってくる筈だ。それにそのリング、形は変わっていても石は変わっておらんからピンときたよ。よくよく見れば顔も……いや思ったほど似てないか」

 

「どっちなんですか!?」

 

 白夜叉はガビーンな顔をしているツナをみてケラケラ笑っている。

 

「ということはそのリングは継承したのか。して? おんしで何代目だ?」

 

「いや、皆にも言ってるけどオレマフィアにはなりませんって!」

 

 ツナが戦うのはいつだって仲間のため。それがボスとして最も理想的なあり方であることをツナはまだ気がついていない。

 

 そして白夜叉はこの世界に来たジョットのことを語り出した。

 

「ふと突然この"箱庭"に来てな。行き倒れているのを私が拾ってきた」

 

「そんなペット拾ったみたいなきっかけなの!?」

 

「まあそう言うな。別に恩返しなぞ期待してなかったが、その恩に報いようと"サウザンドアイズ"に所属したあやつはその実力と手腕で次々にギフトゲームをクリアし数年で幹部にまで上り詰めた。そして元の世界に帰る際に今まで得たギフトのほとんどを"サウザンドアイズ"に謙譲することを条件に脱退して元の世界へと帰っていった」

 

「そんなことが……」

 

 これは何という数奇な運命なのだろう。初代が来た異世界に十代目であるツナが来るなどと。

 ツナがこの世界へ来たのは本当にただの偶然だったのだろうか。

 

「ジョットが持ち帰ったのはマントと手甲(ガントレット)のたった二つだけだった」

 

「それってもしかして」

 

「む? 何か心当たりでもあったか?」

 

 ツナはナッツの形態変化(カンビオフォルマ)であるⅠ世のマント(マンテッロ・ディ・ボンゴレプリーモ)Ⅰ世のガントレット(ミテーナ・ディ・ボンゴレプリーモ)のことを思い出す。ボンゴレボックスの形態変化(カンビオフォルマ)は初代ファミリーが使っていた武器を現していた。

 あの二つの起源は"箱庭"で手に入れたものだったのだ。

 

「そういえばそのリングはどう使うのだ? それについてはジョットは何も話してくれなかったが……」

 

 当時はリングに炎を灯す技術などなかったから当然だ。

 

「ああ、これは……」

 

 ツナはいつもやっているようにリングに死ぬ気の炎を灯す。死ぬ気の炎は人間の生体エネルギーを圧縮し視認できるようにしたもの。

 それは人によって大きさや質が異なる。そして一番大事なのは『覚悟』だ。

 

 死ぬ気の炎が灯ったと同時に彼の相棒であるナッツも起きたようだ。

 

 炎の鬣をした小さなライオンがツナの肩へ乗る。

 

「ガウ?」

 

「あ、ごめんナッツ。起こしちゃった?」

 

「ほぉ……」

 

 白夜叉は感嘆してリングから発するオレンジ色の炎に目を奪われる。ツナの死ぬ気の炎の属性は他の6属性と比べると希少な『大空の炎』。そして相棒は天空ライオン(レオネ・デイ・チエーリ)シリーズをボンゴレと入江正一が共同で改造してつくられたナッツ。

 

 観察し、実際に手で触れてみたりと興味心身だ。

 大空属性のボックスアニマルは持ち主の性格に影響されやすいのでツナと同じく臆病な性格になっているから初めて見る白夜叉に少し怯えていた。

 

「ふむ、触れてもそれほど熱くはないな。やつも使っていたオレンジ色の炎と同じものか……。それにリングから出てきたこの小動物は普通の生物ではないの。……ふむふむ、ここまで生物を再現できる者はここにもそうはおらんぞ、一体何者じゃ?」

 

 耀の生命の目録(ゲノムツリー)を観察している時と同じくらいの興奮で白夜叉は分析を続ける。

 

 ツナは皆を待たしているからそろそろ行かないといけないのだが。

 

「あの、そろそろ行かないと」

 

「おおっ、長々と話して済まなかったな。また今度じっくり見させてもらうとしよう。……おっと」

 

 ツナは白夜叉の部屋を出ようとすると白夜叉に待ったをかけられた。

 

「綱吉、おんしさえ良ければ"サウザンドアイズ"に来んか? 他の三人には振られてしまったが、おんしはどうだ?」

 

 "ノーネーム"であるが故の大きなハンデ。そして名と旗を取り戻すために"魔王"と戦うこと。その道は茨の藪だ。

 

「……誘ってくれるのは嬉しいけど、ごめん。黒ウサギや皆と約束したから」

 

 ツナは白夜叉に笑いかけるとそのまま店を後にした。

 

 一人残った部屋で白夜叉はカカと笑う。

 

「弱き者を背にして強き者に立ち向かう……おんしと同じだな、ジョット。おんしは死んでもその意思は受け継がれておるぞ……」 

 

 

 

 

 ツナは先に帰っていた4人と合流。

 そして門の先にあるもの、彼らが見たものと同じものを見た。

 

 それは一言で言うのなら廃墟。木造の建物らしきもの(・・・・・)は見る影もない。ツナは残骸を手にしてみるもそれは簡単に音を立てて崩れ去る。

 

 黒ウサギは"魔王"に負けたのは三年前と言っていた。つまりこの何百年も放置されて風化したような町はたった三年前に引き起こされた現象なのだ。

 

「そんな……酷すぎる」

 

 彼は怒っている。

 らしくないことだとわかっていても憤りを隠すことができなかった。

 

「……魔王とのゲームはそれほどの未知の戦いだったのでございます。彼らがこの土地を取り上げなかったのは魔王としての力の誇示と、一種の見せしめでしょう。彼らは力を持つ人間が現れると遊ぶ心でゲームを挑み、二度と逆らえないよう屈服させます。僅かに残った仲間達もみんな心を折られ……コミュニティから、箱庭から去って行きました」

 

 飛鳥や耀はこの光景を見てとても複雑そうな顔をしている。しかし十六夜はこの状況を逆に楽しんでいた。

 

 皆はそれぞれの思いを胸に決意を新たにするのだった。

 

 落ち着いた後に4人は黒ウサギを追いかけて廃墟を抜けて徐々に外観が整った家が立ち並ぶ場所に出てきた。

 

 そこではこの居住区で逞しく生きている子ども達が黒ウサギに群がっている。子ども達に"ノーネーム"の救世主だと紹介されてツナは照れくさい気分だった。

 

「さて、自己紹介も終わりましたし!それでは水樹を植えましょう!黒ウサギが台座に根を張らせるので、十六夜さんのギフトカードから出してくれますか?」

 

「あいよ」

 

 十六夜はギフトカードから水樹の苗を取り出して黒ウサギへと渡す。

 

 ここの貯水池も昔はギフトのお陰で水で満たされていたらしいが、そのギフトさえも"魔王"に取り上げられてしまい長い間使われていなかったそうだ。

 水樹の苗が手に入ったことで子ども達が掃除をしてくれていたらしくすぐにでも使えるようになるだろう。

 

「では、行きますよー♪」

 

 黒ウサギが貯水池の中心にある柱に苗を置くと、そこから大量の水が溢れ出した。水は激流となり、瞬く間に貯水池を、そこから伸びる水路を満たしていく。

 十六夜がもたらした水樹が、"ノーネーム"の新たな水源となった瞬間であった。

 

「これが水樹の力……!」

 

「凄い……!」

 

「へぇ、大したもんだ」

 

「うわぁ……」

 

 全く水気のなかった水路や貯水池があっという間に水で一杯になる様子は見ていて壮観だ。これで水を態々ギフトゲームで獲得する手間も省けて他のことに余力を回すことができるだろうとジンも喜んでいた。

 

「小さな一歩だけど大きな一歩だよ」

 

「ツナさん?」

 

 ツナは何気なく呟いただけだが隣にいたジンには聞こえていたようだ。

 急に恥ずかしくなって「何でもない」と言ってお茶を濁した。

 

 

 

 

 子ども達も寝静まりツナも疲れていたので少し早めに寝ようとした矢先に爆音がして慌てて飛び起きた。

 

「何!? 何!?」

 

 爆音がしたのは子ども達の眠る別館からだ。

 ツナは"フォレス・ガロ"が子どもを攫っては殺していたという話を飛鳥から聞いていたのでもしやと思い、急いで駆けつける。

 

 しかしたどり着いた先で見たのは怪しい格好をした男達に頭を下げられている十六夜とジンの姿だった。

 

「恥を忍んで頼む! ガルドのコミュニティ、"フォレス・ガロ"を完膚なきまでに叩き潰してほしい!!」

 

「嫌だね」

 

 男達の懇願をあっさりと却下する十六夜。

 

「ちょ、ちょっとこれどういう状況なの?」

 

 十六夜が言うにはこの侵入者達は"フォレス・ガロ"に人質をとられて無理やり言うことを聞かせていたそうだ。

 

(でも、人質はもう……)

 

「その人質な、もうこの世にいねえから。はいこの話題終了」

 

「――――……なっ」

 

「「十六夜君(さん)!」」

 

 

「気を使えってか? 冗談きついぞてめえら」

 

 咎めるツナとジンだが、十六夜の返答はどこまでも冷たい。

 

「殺された人質を攫ってきたのは誰だ? 他でもないコイツらだろうが」

 

 そう、殺された人質を攫ってきたのはこの男達。自業自得と言ってしまえばそれまでだが、許せないのはそんな非道を行った"フォレス・ガロ"だ。 

 

「で、では本当に人質は……?」

 

「……はい。ガルドは人質を攫ったその日に……殺していたそうです」

 

「そ、そんな……!」

 

 その場で項垂れる一同。彼らの心中は察するに余り有る。そんな彼らを見て十六夜は―――あろうことか、ニヤリと笑った。

 

「おまえらの気持ちはよくわかった!」

 

 冷徹だったのが一転して楽しそうに、まるで新しい悪戯を思いついたような笑顔で侵入者の肩を叩く十六夜。

 

「ガルドが、そして奴の背後にいる"魔王"が憎いだろ? 安心しろ、おまえらの仇はコイツが取ってくれる!」

 

 と、ジンの肩を抱き寄せ、

 

「このジン=ラッセルが、全ての魔王を倒すためのコミュニティを作ってくれる!」

 

「なっ!?」

 

 侵入者+ジンが一斉に驚愕する。

 何故だか、コミュニティの討伐目標が『名と旗印を奪った魔王』から『魔王全て』にすり替えられようとしていた。

 

「魔王を倒すためのコミュニティ……? そ、それはいったい?」

 

「言葉通りさ。俺たちは魔王の脅威にさらされたコミュニティを守る。守られたコミュニティは口を揃えてこう言ってくれ。"押し売り・勧誘・魔王関係お断り。まずはジン=ラッセルの元に問い合わせください"」

 

「じょ、」

 

 冗談でしょう!? と言いたかったのであろうジンの口はあえなく塞がれる。

 

 ツナも反論しようとしたが何かを思いついて踏みとどまる。

 

(もしかして十六夜君にも何か考えがあるのかな……?)

 

 快楽主義者だが彼とて非人道的な行為を許容する外道ではない。つまりこの状況を何かに利用しようとしているのだ。

 

「ガルドを倒した後の心配もしなくていいぞ! なぜなら、俺達のジン=ラッセルが魔王を倒すために立ち上がったのだから!」

 

「おお……!」

 

 十六夜の言葉に希望を見たのか、顔を輝かせる侵入者一同。この中にコイツの企みに気がついている者はいない。

 

「さあ、コミュニティに帰るんだ! そして仲間に言いふらせ! 俺たちのジン=ラッセルが"魔王"を倒してくれると!」

 

「わ、わかった! 明日は頑張ってくれ、ジン坊ちゃん!」

 

「ま……待っ……!」

 

 最後までジンの口は塞がれたまま、侵入者一同は走り去ってしまうのだった。

 

 

 

 

 三人が来たのは本拠の最上階・大広間。

 十六夜を引きずってきたジンは、堪りかねて大声で叫んだ。

 

「どういうつもりですか!?」

 

「言ったとおりだぜ? "魔王"にお困りの方、ジン=ラッセルまでご連絡ください〟―――キャッチフレーズはこんなところか?」

 

「ジン君落ち着いて!」

 

「これが落ち着いていられますか! 魔王の力はあの土地を見て理解できたでしょう!? 僕らの仇敵だけでも脅威なのに、魔王を倒すためのコミュニティなんて馬鹿げた宣誓が流布されたら、他の魔王にまで……!」

 

「そうだな、あんな面白そうな力を持った連中がゾロゾロと押し寄せてくる。ワクワクするじゃねぇか」

 

 長椅子に座って踏ん反り返っている十六夜はどこまでも強気だ。

 

「ツナさんも黙ってないで何とか言ってやってください! 面白そうだからって理由であんなことを……」

 

「ジン君、それは違うよ」

 

「ツナさん……?」

 

 ジンもまさかツナが十六夜を擁護するとは思わなかったのか困惑している。

 

「多分十六夜君はこのコミュニティに足りないものを手っ取り早く集めようとしてるんだと思う」

 

「へえ、そこまで見抜いてたか」

 

 十六夜はツナの見通しの良さに軽く驚いていた。

 

「コミュニティに……足りないもの?」

 

 それは知名度であり、仲間であり、目標だ。

 

「俺たちには名前も旗印も無い。コミュニティを象徴出来る物が何一つないわけだ」

 

 名前が無ければ宣伝ができない。宣伝ができなければ人は集まらない。人が集まらなければコミュニティは大きくなれない。コミュニティが大きくなれなければ―――魔王には勝てない。

 

「コイツはとんでもないハンデだ。それを抱えたまま、お前は先代を超えなきゃならないんだぜ?」

 

「先代を……超える……!?」

 

 その言葉に慄くジンは、まるで頭を金槌で叩かれたような顔をしていた。

 それは彼が魔王から奪われた全てを取り戻すためには絶対に必要なことで、しかし目を逸らし続けていた現実だ。

 

 だからこそ、十六夜はジンの名前を売り込んだ。

 だからこそ、わかりやすくインパクトのある"打倒魔王"を掲げた。

 

 そしてその御旗は同じく"打倒魔王"を心に秘めた者達を呼び寄せることだろう。"魔王"の被害者はこの"ノーネーム"だけではないのだから。

 

「今のコミュニティに足りないのは人材だ。俺並み(・・・)とは贅沢言わないが、せめて俺の足元並み(・・・・)の奴らは欲しい。そういう奴らなら、どっかに消えちまった昔のお仲間よりは役に立つだろうぜ」

 

 十六夜の策は筋が通っていて面白半分で考えていることではないというのは分かる。しかしリスキーであることに変わりはない。それを踏まえてジンは条件を出した。

 

「この件、受ける代わりに一つだけ条件があります。今度開かれる"サウザントアイズ"のゲームに、その昔の仲間が出品されるんです」

 

「へぇ? そいつを取り戻せって?」

 

「そうです。それも只の仲間じゃない。彼女は元・魔王なんです」

 

 ジンの言葉に十六夜の瞳が光る。

 

 つまりこの"ノーネーム"は以前"魔王"を倒して隷属させていた。そしてその"魔王"を現在隷属させているコミュニティを倒せば仲間は戻ってくる上にコミュニティの名も一気に上がる。

 

 十六夜が断る理由がない。

 

「それと心配を掛けたくないので、黒ウサギにはまだ内密に」

 

「あいよ」

 

「(良かった。もう大丈夫そう)オレは先に寝てるね」

 

 ツナはさっき寝かけていたことを思い出すと急に眠気が襲ってくるのでさっさと大広間を出て行った。

 

 その後十六夜はジンに負けたらコミュニティ脱退宣言をしてまたジンを悩ますことになったことをツナはまだ知らない。




実はD・スペードは元魔王でジョットがそれを屈服させて元の世界に連れて帰ったとか考えたけど流石にボツにしました。

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