これからよろしくお願いいたします。楽しんでくれると嬉しいです。
険しい山の中、一人の少女と一匹の白猫が歩く。
草も生えない何も無い大地を歩き、岩だらけの急な坂を乗り越え頂上を目指す。危険な場所にも関わらず保護者など居らず、明らかに可笑しい様子なのだが、本人は猫を連れて堂々と歩く。
歳は12歳頃の少女。太陽の光に反射する程光輝く金髪は腰まで長く伸び、金色の瞳は楽しげに光っている。全身は赤色でコーディネートをされており、赤のエプロンドレスに赤いリュックサック、赤いりぼんで可愛く結んでいる。
頂上に辿り着いた少女は、希望に満ちた眼差しで景色を眺めていたのであった。
少女の名前はエレン・ふわふわ頭・オーレウス。見た目とは裏腹に1000年以上生きている魔女だ。
何の為に長生きをしていた理由は今となってはあやふやだった。そんなあやふや状態でも、一つだけ大きな夢を抱えて生きていた。その夢は魔法道具店を出す事。
昔は魔法店を出していたが、時代が変わるにつれて店を出せなくなり潰れてしまった。
店が潰れた影響でお金が無くなり、途方もなくさ迷っていたエレンはある場所に迷い込む。その場所の名は幻想郷。
幻想郷。
妖怪や神などといった、不思議な存在と共に生きる隠れ里。幻と書いて如く、普通の人には絶対に辿り着く事が出来ない場所。
魔法使いの存在が大っぴらに出来る幻想郷に店を出していたのだが、人があまり来ない博霊神社の中に有った為に長くは続かなかった。
今は材料を集めながら旅をし、もう一回店を出すチャンスを伺っている。本来は幻想郷で店を出すつもりであったし、幻想郷から出ていくつもりも無かった。それなのにいつの間にか幻想郷の外に出てしまっていた。何故、幻想郷の外に出てしまった理由はエレンにも解らなかった。だけど、当の本人はそんな事を気にしていなかった。
最初の方はエレンも気にしていたが、長生きの影響なのか物忘れが酷く、段々と忘れていき次第にま、いっか。と気にしなくなっていった。
それでもエレンは夢を叶える為に今日も歩き続ける。
あれから夕方頃には山を降りていた。
本来は子供の体力で山を1日で攻略する事は不可能である。けれども、魔法で浮かんで坂道や崖を楽々と越えていく。そのお陰か夜には麓の森まで進む事が出来た。しかし不運な事に、森に入った途端急に雨が降りだす。
雨の勢いは凄く、バケツを引っくり返すようなどしゃ降りとなり、しかも遠くからは雷の音が聞こえてくる。
エレンは急いで走り雨宿りを出来る場所を探す。
「もう!雨なんか降らなくて良いのに~!」
エレンは呟き足元に気をつけながらも無我夢中に走る。
暫く走ると運良くログハウスが有った。安全の確認もせず、扉を開けようと勢い良くドアノブに手をかける。手がドアノブに軽く触れた瞬間...
「きゃっ」
バチッと静電気が走る。
よくある手に電気が走るのではなく、なんと逆立った髪の毛から音が出たのであった。
「ほんと...嫌になる......」
突然の雷雨よりも気分が落ち込むエレン。昔からこの謎の髪質が大嫌いだった。
エレンの名字ふわふわ頭・オーレウス。
オーレウスは代々と続く正式な名字であったが、ふわふわ頭はエレンの時につけられた新しい姓だ。ふわふわ頭の由来は魔法を使ったり、掛けられたりすると髪の毛が静電気により逆立ち、タンポポの綿毛の様に頭がふわふわしているからと、祖父が名付けたものだ。
家族にとっては笑い話でも、エレンからしてみればどんな事をしても治したい髪質だった。ぼさぼさ頭になる事が嫌すぎて普段から、便利で強力な魔法を極力使わないようにしていた。
(でも......私の髪の毛がパチパチする事は...この家には魔法が掛かっていて、家の中に魔法使いが居る可能性が高いと...。さて...どうしよう......)
見付けた安全地を見す見す見逃すのか、それとも、訳を言って入らせて貰うのか。エレンは雨に濡れながら考える。
(よし...決めた...)
意を決したエレンは口を大きく開く。
「誰か居ませんかー!?居たら返事をして下さい!」
エレンは家に入らせて貰う事に決める。
家の中に居る人物が悪い人かもしれない可能性も考えていたが、このまま雨に濡れるのは嫌であり、風邪を引いてしまう方がかなり厄介だ。また何よりも逃げる事、攻撃を躱す自信が誰よりもあった。襲われても大丈夫だろうと、そんな自信がエレンを高く括らせる。
エレンがじっと待っていると無言で扉が開かれる。
扉を開けてくれたの男性だった。濡れたような美しい黒髪、烏の羽のように黒い瞳。整った顔立ちは熱で真っ赤になり、時折酷い咳きを込み、スラッとした体格が更に体調を悪くみせる。
「.........どうしてこんな所に子供が......今はそんな事を言っている場合ではないか...入っておいで......」
「お兄さん大丈夫?」
熱でふらふらしている男性は思わず本音を呟く。
心配したエレンが声を掛けても、男性からの返事は無く、ふらふらとしながらベットに向かう。
「私、風邪薬を作る」
助けてくれた恩を返すと決めたエレンは、ドアを急いで閉めて暖炉に向かい、自分のリュックサックから風邪薬を作る為の必要な材料を取り出す。暖炉の近くには水や食料、鍋などの調理器具が置いてあった。
「道具借りるね」
エレンは男性の返事を待たずに勝手に始める。
小さな鍋に水を入れ、材料となる薬草を磨り潰したもの、乾燥させたものを手際よく沸騰した水の中に入れて煮込む。
鍋の中身の様子を見ていたエレンはいきなり、ピースをした両手を目元に当てる、可愛らしいが意味の無いポーズをし出す。
だけども、ポーズには意味があったようで、ポーズと同時に髪の毛がパチッと少し逆立ち、鍋からもポンと音が鳴る。鍋を覗き込めば、見事に緑色の怪しい液体が出来ていた。
薬が出来て満足げになったエレンは、にこやかな笑顔で鍋からコップに移し替えて男性に渡す。
「はい、どうぞ」
「ああ......ありがとう...」
純粋な子供の笑顔に男性は断れず、表情を引きつきながらもエレンにお礼を言いコップを受け取る。
いつまでも眺めている訳にもいかず、男性は覚悟を決め薬を少し口に含む。
あまりの苦さに吐きそうになるが、気合いで何とか我慢をして飲み込む。なんと飲んだだけで咳が止まる。薬の効果を実感すると残りを一気に飲む。顔色がまだ少し悪いが、明らかに先程よりも体調が良くなっていた。
「ありがとう。君もやはり...魔術師【ソルスリエ】何だね」
「.........ソルスリエ......?何それ?聞いた事ないよ?」
「......君は魔術師【ソルスリエ】ではないのか......?」
「ソル...何とかではないよ。お兄さんが魔法使いで、私は魔女。何を言っているの?」
「魔女...。何を言っているんだ君は。君は魔術師【ソルスリエ】だよ」
「ソル何とかなんて知らないよ。それに、さっきから何でそんなに否定しなくても...」
男性の驚きようにエレンは戸惑う。
男性は戸惑ったエレンを見て平静を取り戻す。
「ソルスリエ...簡単に言えば魔術師の事だ。魔術師がソルスリエと呼ばれている理由は、いくつもの魔術を行えるからだ。まあ君みたいに魔法使いや魔女を混同する人は多いけど...だけどそれは、ノンソと呼ばれる一般人が勘違い。だから驚いているんだ。例え地球生まれの魔術師【ソルスリエ】だとしても、必ず保護されて訂正されるから。しかし...君は何で此処にいるんだ?何で魔術師【ソルスリエ】の存在を知らないんだ?」
「旅をしているからだよ」
「旅をしている?両親は?」
「お父さんは病気で死んで、お母さんはずっと前にはぐれた」
記憶力の無いエレンでも当時の事を覚えており、泣きそうになった顔を見せないように俯く。
「そうか......辛い事を聞いてしまって本当にごめんね。それと本当に助かった、ありがとう。自己紹介がまだだったね、私の名前はルドゥガ・ドライオン。君の名前は?」
「......私の名前はエレン・ふわふわ頭・オーレウスです」
辛い気持ちから一転をして、ルドゥガの爽やかな笑顔にエレンは見惚れてしまう。
「オーレウス!?」
ルドゥガはエレンの悲しんでいる姿よりも、オーレウスの部分に過剰に反応をする。気になる理由が分からないエレンはキョトンと見詰める事しか出来なかった。
「いや...別に何でもない...。そう言えば何で旅をしている?」
ルドゥガは慌てて取り繕い話しを変えた。エレンは疑問に感じていたが、特に質問はせずに答えた。
「魔法道具のお店屋を出すためだよ」
「魔法道具店か......地球では出してはいけないのだけどなあ...どうしてこんな子が知らないのだろうか......。今は気にしていても仕方無いか...。お店屋を出すのであれば、別世界【オートルモンド】で出すのはどうかな?」
ルドゥガは手で顔を覆い隠しながら愚痴を溢す。だけど、ずっと暗い気持ちでは先が進まないので、何とか気持ちを立て直して話を進める。
「オート...何それ......?」
「別世界、通称【オートルモンド】。別世界【オートルモンド】とはどこでも魔術が見られ、そして魔術により文明が盛んな惑星だ」
「へえー、そんな惑星があるんだ」
最初はどうでも良かったのだが、徐々に理解が追い付き、ある事に気が付くと目を輝かせて聞く。
「じゃあさあ!そのオーなんちゃらなら!魔法道具のお店屋出せるの!?」
「ああ、出せるとも」
「本当に?やったあ!」
夢が叶えられると知ったエレンは、大喜びをしてソクラテスを抱き上げたり、跳び跳ねたりしてその場ではしゃいだ。その様子をルドゥガは、まるで我が子を見守るかのように温かい眼差しで見ていた。
素に戻ったエレンははしゃぐのを止めて質問をする。
「あ...でもどうやって、そのオーなんちゃらに行くの?」
「それは明日付いて行けば分かるさ」
「ル、ル、ルド...お兄さんが連れてってくれるの?」
「ああ、そうだよ」
ルドゥガはエレンの物覚えの悪さに、少し変だと思っていたが質問はせずに心の中に止めておいてくれた。
「何で連れてってくれるの?」
あまりの親切さにエレンは疑問を抱く。
そんなエレンに安心させるように、お茶目に右目をウインクさせながら優しく語る。
「君は、私の病気を治してくれた恩人だからね。親切にする事は当然の事さ。だから気にする必要はないよ。後...魔術師【ソルスリエ】は高等魔術評議会に登録する義務づけされているから絶対に連れて行かないといけないんだ」
「へえー、そうなの」
「ああ、そうだ。その力を悪用しないようにする為にカンリスルノさ。さあ、この話は今日はここまで、また明日にしよう」
ルドゥガは話を無理やりでも終わらせる。この話は今日中に語りきるのは無理だからだ。
「さあ、明日はこの近くにある村に行くよ。だからご飯を食べて早く寝よう」
ルドゥガはもう話しをする気はないらしい。体調が少し良くなったルドゥガはお礼も予て料理を作り始める。
エレンは話しを聞けなくて不満だったが、それよりも魔法道具のお店を出せる為の一歩を実感し、別世界【オートルモンド】に早く行きたいという気持ちの方が強くなっていた。
エレンはウキウキしながら早めの夕飯を食べ終えると、リュックサックから寝袋を出して興奮を抑えながら寝たのであった。
真夜中、エレンがすっかりと熟睡した頃。
ルドゥガはゆっくりとベットから降りると、静かにドアを開けて外に出る。
ある程度歩いたルドゥガは、ポケットから拳くらいの大きさの水晶玉を取り取り出す。
水晶玉を指で触っていくと音が鳴り誰かと繋がる。どうやらこの水晶玉は携帯電話の役割をするらしい。また、地球の技術よりも発展しているようで、水晶には相手の姿が映っていた。
「こんばんは。シェムナシャオヴィロダントラシヴュ先生」
「何じゃ。こんな真夜中に起こすとはお前らしくないぞ。ルドゥガ・ドライオン。一体何かあったのか?緊急事態なのか!?」
水晶の画面は荒く相手の顔がみえなくても、かなり焦っている事が伺えた。
「いいえ、緊急事態ではありません。ただ...私が出会った、未登録の魔術師【ソルスリエ】の少女が少し...いやかなり...異常な者でありまして...」
「異常な者?それはどういう事じゃ?」
「はい...その少女は...十代でありながら旅をしているのですが...未登録でありながら魔術を上手く使いこなせている事は、容易に想像出来るのでしょう」
「ほお...まあそうじゃな。十代の少女が旅をするには魔術が必要だからな...。だか、わしにわざわざ連絡する必要は無いぞ。それどころか、こちらの方がもっと大変な事が起きたのじゃ!」
相手はルドゥガの言葉に同意したものも、何かが起きたらしく興奮していた。
「一体、何が起きたのですか!?」
「今日の夜中、未登録の魔術師【ソルスリエ】の少女の所に、サングラーヴ族の愚か者が少女を誘拐する為に襲って来たのじゃ!!」
「えっ!?大丈夫ですか!?」
今度はルドゥガが驚く番だった。
「ああ、大丈夫じゃった。その少女は何とかサングラーヴ族の手から逃げ切れだのだ」
「それは凄いですね!!あの極悪非道のサングラーヴ族から逃げ切れるなんて。それだと私が異常だと思っていた事は些細な事になりますね」
ルドゥガはすっかり興奮していた。
「そちらの魔術師【ソルスリエ】と、こちらの保護したと魔術師【ソルスリエ】。どちらが力を持っているのは知らんが...。とは言え、この程度で夜中に電話をもうするな!いいな?」
電話の相手は凄く怒っていた。
「はい、すみません。ですが...最後に...ひとつだけ...気になることがあります」
ルドゥガは謝りながらも質問をする。
「何じゃ?」
不機嫌になりながらも話は聞いてくれるみたいだ。
「少女の名前が物凄く気になります」
「たかが、名前でか?」
「はい。少女の名前はエレン・ふわふわ頭・オーレウスのオーレウスの事何ですが...」
電話の相手は鼻で笑った。
「ふん、馬鹿馬鹿しい。オーレウスの家のことだろう。膨大な魔力と不老の魔術で歳をとらない一族の話しだろう。あれは只のお伽話だ」
「そうですよね。同じ名字で反応し過ぎました」
ルドゥガは少しガッカリしていた。
「ふん、もう切るからな」
「はい、本当にすみません。シェムナシャオヴィロダントラシヴュ先生」
ルドゥガが謝ると勢いよく電話が切られる。
ルドゥガは気持ちを落ち着かせる為、暫くの間星空を眺めていたのであった。
この事が切っ掛けとなり、エレンの壮大な大冒険が幕を開けることになったのだ。
キャラ紹介
エレン・ふわふわ頭・オーレウス
1000年以上生きている女の子。見た目は長い金髪に金色の瞳。赤いリボンを結んでいる。12歳頃で身体の成長が止まっている。長い間生きているので物忘れ、物覚えが悪い。但し、大切なこと・魔法のこと・店のことは覚えている。また、魔法を使ったり、掛かったりすると髪の毛が静電気で逆立つ。その状態が進む程髪の毛が酷くなり電気の威力が上がる。なので魔法を必要な時しか使わない。
性格は天真爛漫でおっとりマイペース。優しい女の子ではあるが、非常に子供っぽいので我が儘な部分もある。恋に憧れており、美形に反応してしまう一面がある。また手先が器用。
戦い方は弾幕ごっこ。スペルカードを持っているがあまり使わない。(スペルは東方玉霊姫を参照)
両手を目元でピースのポーズは材料を元にした魔法を使う時。それ以外は普通。
エレンの能力は電気を溜め込む程度の能力だが本人は気づいてない。
オリジナルキャラ
ルドゥガ・ドライオン
ランゴヴィ王国で働く魔術師《ソルスリエ》。
見た目は黒い髪の毛に黒い瞳。背が高くスラッとした体型。歳は25歳。真面目で礼儀正しい男性。休暇にいつも地球を旅することから少し変わった人と思われている。
電話の相手
シェムナシャオヴィロダントラシヴュ
次回に詳しく書きます。
用語説明
別世界《オートルモンド》
どこでも魔術が見られ、魔術により文明が盛んな惑星。面積は地球の1.5倍。2つの月マディックスとタディックスがある。一日は26時間ある。一年は14ヶ月あり合計で454日ある。別世界には多くの種族が住んでいる。ドラゴン、人間、小人、巨人、トロル、バンパイアなどがいる。
幻想郷
日本の人里離れた山奥の辺境の地にある場所。多くの妖怪などの人外と僅かな人間が暮らす世界。博麗大結界により外の世界から遮断されている。また、結界の力により外から認識する事は出来ない。
外の世界から忘れ去られたものや絶命したものが現れることがある。
魔術師《ソルスリエ》
幾つもの魔術を操れる者。
非魔術師《ノンソルスリエ》
魔術を操れない者。《ノンソ》とも呼ばれ、一般人のことを指す。地球には多く住んでいるが別世界《オートルモンド》では少数派で差別や迫害の対象。
高等魔術評議会
魔術師《ソルスリエ》の中でもレベルの高い高等魔術師が集まって色んなことを決める会。
サングラーヴ族
灰色の服と仮面が特徴的な魔術師の集まり。世界を支配する事やノンソを奴隷にする事をやろうとしている組織。かつて、ノンソを奴隷にしようとしていたドリュイドール・サングラーヴの名が由来。
2月18日(土)にエレンの設定を少し変えました。
2月22日(水)もエレンの設定を少し変えました。本当にすみません。