タラ・ダンカンと空白少女   作:オタクさん

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第9話 煉獄へ

「タラ!」

 

エレンはタラのところに駆け寄り、思わずタラを揺すろうとするとタラは悲鳴を上げた。

どうしていいか解らず、エレンを含めた民衆がおろおろしていると、一部始終を見ていたキマイラがタラの側に駆け寄り、カルとファブリスの助けを借りて、気を失っているタラを背中に担いで何処かに行ってしまった。

 

エレンとモワノーも着いて行こうとしたが...

 

「そこに居る者全員、動くな!」

 

怒鳴り声を上げて動きを止める。怒鳴り声を上げたのは制服を着こなしたエルフだった。エレンや周りの人達はその声で、まるで金縛りの様に固まって一歩たりとも動けなかった。

 

「これから、ここに居る者全員、事情聴取をする。大人しく着いてこい!」

 

頭ごなしに命令すると、エルフの集団は二手に別れ、一つは現場に残り写真を撮ったり、魔術で現場を調べたりする現場班となりもう一つは、エレン達を別の部屋に連れて行って、話を聞いたりてして取り調べ班をする班となる。

エレン達は一つの列を作らされ、前と後ろにエルフが立ち、犯人の様に別の部屋に連れて行かれたのであった。

 

 

 

「私の名はダンディリュス・マンジルだ。で、君の名前は、エレン・ふわふわ頭・オーレウスで合っているかね?」

 

「はい、合っています」

 

エレン達が連れてこられた場所は、机と椅子しかない狭い部屋だった。

そこに一人ずつ呼ばれて話を聞かれていく。今はエレンの番で、他のエルフの制服より少し豪華な制服を着た陰気なエルフに見下ろされている。見ていると言うよりもほぼ睨み付けているに近い。

 

エレンは何も悪い事をしていないが、ダンディリュスの威圧感に負けて俯いてしまう。

 

「あの事件が起きた時、君はどこで何をしていたかね?」

 

「私は......あの鳥の声が聞きたくなくて、少し離れた位置で様子を見ていました」

 

「...ほぉ...。では何で、アルピーの声を聞きたくなくなった?」

 

「..あの罵倒が耐えられなくて」

 

「そう...で、君は何で、檻の所に来ていたんだ?」

 

「朝起きたら、五月蝿くて二度寝出来なくて、どうしたのかなっと気になったから」

 

「君が檻の所に行く時には誰かの一緒に居たのか?一人着いた時には、檻の前にはどれぐらい人がいたんだ?」

 

「...檻の前まで行く時は一人でした。...私が着いていた頃にはカル、モワノー、ファブリスと他にも誰か分からないけど、数名いました」

 

「...つまり、君の事を証明できる人はいないと...」

 

「はぁあ!?それって!私が!犯人?!私はタラの友達だよ!友達を傷つけたりはしないよ!!!」

 

エレンは犯人扱いに耐えられなくなって机をドンッ!と叩く。

だが、タンディリュスはそれ以上の音で机を叩き、部屋全体を響かせる怒鳴り声を上げた。

 

「ああ、そうだ!お前だって容疑者の一人だ!この事件は、高等魔術師や力のある魔術師には誰だって出来ることだ。そしてお前の事は、周りからよく聞いている。力ある魔術師だっていうことを!それにあの事件の時、周りから離れて見ていたのだろう。つまり、お前の無実の証明を出来る人が、誰一人もいないんだ!」

 

「ふざけないで!私はぜっーー絶対友達を傷つけない!!」

 

友達を傷付けたりする人物として疑われるのが悲しくるエレン。けれども、それ以上に、怒りが噴火した火山の如く怒りが込み上げてくる。

 

「そんなに疑わしかったから!あの時の様に!あの変な植物を連れて来れば良いじゃん!」

 

「”真実を語る者”か。あれは、確認用だ。それに覚えていないと意味が無いんだ。お前の様に忘れていて、幻想郷に辿り着けないように」

 

「後、友達だからと言う言い分けは全く通用しない。友達が友達を殺したり、親が子を殺したりする。お前以上に怒り、泣き崩れる奴もいるがそいつが犯人だった事はよくある」

 

エレンに対して冷ややかに落ち着いた声で反論する。

 

「でも!それでも、私は!」

 

「言い分けは聞かんよ。それにもう、時間だ。証拠が無い限りお前を捕まえる事はない。だが、これ以上五月蝿くすると、公務執行妨害として罪が増えるだけだ。さっさと出て行きなさい」

 

エレンは手でぎゅっと拳を作ると、黙って部屋を出て行った。

 

 

 

エレンが部屋を出るとカル、モワノー、ファブリスが心配そうに待っていた。

エレンは彼らを見付けるとモワノーに抱き付き、悔しさのあまりに涙を流す。

 

「うぅ...うぅ...ヒック...。酷いよ!私が力を持っているからって!友達を傷つける最低な人扱いだよ......。何で...何で...」

 

軽く空を飛んだ事から始まり

 

勝手に怖がって疑われて頭の中を覗かれ

 

力を見せろと言われたから、見せたら化け物扱いされ

 

最後は犯人扱いされる。

 

エレンは力をつけたのは、ただただ...あの時見た綺麗な景色を再現したい、あの人達みたいに出来る様になりたいと憧れたから。悪いことに使う訳じゃないのに...と嘆き憤る。

 

それよりも、悔しいのは、この中で一番力を持っているのに───

 

 

 

何も出来ない事だ。

あの鳥の毒は魔法じゃ効かないうえ、その解毒剤は存在すらしていない。エレンが魔法薬を今から作るとしても、効くかどうかは分からないし、出来たとしても間に合わない可能性の方が高い。

 

エレンはモワノーのローブを掴みながらボロボロと泣き崩れる。

そんなエレンをモワノーは頭を優しく撫でながら話す。

 

「大丈夫よ。エレン。私達は、貴女の事をちっとも犯人だと思っていないわ」

 

モワノーは穏やかな声でどもらずに言う。彼女がどもらないっていう事は怒っているのだ。それでも、エレンを慰める為に感情を抑えている。

 

「全く!エレンがそんな事をする分けないだろうに!」

 

カルは怒りで叫んだ。

 

「カル。気持ちは分かるが止めろ。また、取り調べを受けて、傷つくだけだ」

 

ファブリスは落ち着いてカルを止めていたが、その声には強い怒りが含んでいた。

 

「...何で!何で!力があるのに助けられなかった!!今も!何も!出来ないの!?」

 

モワノーのローブを強く握り締める。

 

「そんなことを言ったら、僕だって何にも出来なかったぞ」

 

カルが嘆いた。

 

「僕もそうさ」

 

「わ、わ、私も何も出来ていないわ」

 

ファブリスとモワノーもカルに同意する。モワノーからは怒りが消え普段の吃音に戻った。

 

「取り調べ終わったら、タラの所に行こう。何も出来ないけど...少なくとも気持ち的には力になれると思うからさ」

 

ファブリスは、気分を変えるように手をパンパンと叩いて仲間達に呼び掛ける。

 

「おお、そうだなファブリス!」

 

「そ、そ、そうね。行きましょう」

 

「うん、行こう!」

 

悲しみから一転して気を取り直す一同。

 

「...ところで、...タラの家族...お祖母ちゃん...だっけ?こういう事は伝えた方が良いんじゃないの?......何かあった時の為に」

 

最悪な結末を考えてしまったエレンは、自分自身に嫌悪感を感じてたどたどしく話す。モワノー、カル、ファブリスはきょとんとしていたが、エレンの考えに頭が追い付くと一瞬暗い顔をしてしまっても、直ぐに気持ちを切り替えて賛同した。

 

「...あぁ!そうだね!」

 

「で、でも、わ、私連絡先とかし、知らないわ」

 

「僕の父さんに経由で伝えてもらうよ。タラの家の番号なら知っているけど、家にいるか判らないし。父さんなら、直接繋がる番号を知っているかも知れないしね。それに僕もタラの様子を見たいし」

 

「よし、まとまったところで行くか」

 

「じゃあ、君達は先に行ってて。僕は色々と用事を終わらせてから行くよ」

 

「わ、分かったわ。ま、ま、任せたわよ」

 

「うん、よろしくね」

 

全員分の取り調べが終わった途端エレン、カル、モワノーはファブリスと別れて、急いでタラが居る場所を目指した。

 

 

 

タラがいた場所は応急医務室だった。

タラはベット上で寝ていた。顔は真っ赤に染まっていた。絶え間なく汗が出ており、時々ウッ...ウッ...と魘(うな)されていた。

 

「......タラ」

 

エレンは思わず呟いてしまう。きゅっと手で拳を作るとモワノーが優しく腕を掴んだ。

 

「モワノー」

 

エレンは泣きそう目でモワノーを見詰めた。モワノーは何も言わず、小さく首を振るとタラの方を見る。

 

「だ、大丈夫よ。し、信じましょう。き、き、祈祷師先生の腕を、タ、タラの体調をし、信じましょう」

 

「......うん」

 

「はいはい、お二人さん椅子だよ、椅子。とりあえず、何か進展があるまで座っていよう」

 

カルは魔術で椅子を作り出し、雰囲気を変える為必要以上に明るく喋る。

 

「ありがとう。カル」

 

「カ、カル、あ、ありがとう」

 

エレンとモワノーはお礼を言うと、カルに続いて座り待ち続けたのであった。

 

 

 

五十分ぐらい経った後だろうか、ファブリスが皆の分のご飯を持ってやって来たのだ。

 

「遅くなってごめん。それと、お父さんに頼んで家に連絡したんだけど...繋がらなかった。で、家に行ったんだけど、誰も居なかった。お父さんも直接繋がる番号を知らなかったんだ。でも、お父さんが通りかかった時に連絡するって約束してくれたから、後は待とう」

 

ファブリスは仲間たちに飲み物とパンやサンドイッチといった手軽に食べれる物を配りながら説明をする。

 

「サンキュー、ファブリス。そっかぁ...居なかったのかぁ...。何で居なかったんのだろう?」

 

この中で一番多く貰ったカルが早速開けながら言う。

 

「こら!君達!ここでの飲食は禁止だ!食べるなら外に行きなさい!」

 

カル、エレン、ファブリス、モワノーは祈祷師先生の助手に周りに迷惑かけない程度の音量で怒られた。

 

「すいません。...アハハ、怒られたちゃった」

 

カルは謝って祈祷師先生の助手が去った後、舌をペロッと出して惚けた。思わずエレン、モワノー、ファブリスはクスクスと笑った。ファブリスは笑いながら言う。

 

「全く、カルのせいで怒られたじゃん」

 

「そうだよ。カルって食いしん坊だもんね」

 

「そこまで、笑わなくて良いじゃん」

 

ムスッとするカルを笑う三人。

カルは不貞腐れながら立ち上がり、どこかに行こうとする。

 

「カル、どこ行くの?」

 

「ここじゃあ、食べちゃいけないからね。外に行くよ」

 

「カル」

 

そんなカルを引き止めるモワノー。

 

「なんだい?」

 

カルは不思議そうにモワノーを見る。

 

 

「ありがとう」

 

モワノーはどもらずに笑顔でお礼を述べた。

 

「.........何の事か、さっぱり分からないや」

 

カルは照れ臭そうに頭をかくと、モワノーの顔を見ずに部屋から出ていくのであった。

 

 

 

カルが食べ終えて部屋に戻ると、その間に話し合って順番で一人ずつ食べる事になっていたのだ。

朝が過ぎ、昼が過ぎ、夜になってもタラは目覚めなかった。あれから話している内にシェム先生なら知っているのではないかと気づいたが、今は治療にあたっている為結局のところ無理だった。

 

そのまま彼らは、応急医務室で泊まる為の許可を貰い、一晩医務室で過ごしたのであった。

 

 

 

翌朝

タラは目を覚ましたが、顔色も変わっておらず、水をガブガブと飲んでいた。水を飲むか寝るかで、とても話せる状態ではなかった。

 

しばらく経つとタラが何やら口をパクパクして、懸命に何かを伝えいようだ。

 

「タラ。どうしたの?」

 

エレンが心配そうに聞く。タラが壁の方へと顔を向けるとぎょっとするしていた。

 

「?」

 

エレン、モワノー、カル、ファブリスとこの場にいる全員が壁の方へと、何が合ったんだ?と疑問を感じながらもタラが凝視している場所に視線を向ける。すると、そこには───

 

 

灰色のローブにミラーグラスで顔を隠した人物が、応急医務室の白い壁に写っていた。

 

「誰!?」

 

エレンが皆の気持ちを代弁するかのように体全体で驚いた。

 

「おお!タラ、私のメッセージを受け取ってくれたんだな」

 

その人物は亡霊の姿へと変わり、この状況になった事が、よっぽど嬉しかったのか笑いだした。仮面の色もご機嫌な気持ちを表すかのように青く光る。

 

エレンがもう一度聞き出す前に、怒り狂ったシェムは亡霊に向かって呪いを掛けた。だが効果は無いようで、一瞬ふらっとしただけで直ぐに笑いだした。

 

「無駄だ!私には全く効果がない。だが、お前に一つ良いことを教えてやろう。私を追い返すと後悔するぞ。この子を死なせたくないならな!私は解毒剤を持っている。治してやっても良いぞ。ただし、条件がある。この子が元気になったら、こちらに引き渡せ」

 

「そんな事は絶対にせん!!」

 

「何!言ってるの!!タラの命が懸かっているのに!勝手に決めないでよ!!救ける方法を考えてよ!!」

 

自分勝手なシェムに怒りを感じたエレンは、シェムの怒鳴り声を遮った。シェムはエレンを無視して続けようとしたが、カルも恐る恐る反論した。

 

「ぼ、僕もエレンと同じ気持ちです。この事はタラが決める事じゃないですか?だってタラの命なんだから」

 

シェムは二人のことを睨み付けたが、二人は一歩も引かなかった。

シェムは仕方なさそうに溜め息をつくと、タラに優しく声を掛けて決断を迫る。

 

「エレンとカルの言う通りかもしれんな。タラ、お前が決める事じゃ」

 

「死、死にたくない......」

 

タラは意識が朦朧としている中で何とか呟く。

 

「だが、わしらは解毒剤を持っておらんのじゃ。お前が生きていたいと思うのなら、マジスターに引き渡さなければならんのだ」

 

「せ、せ、先生が決めて......」

 

タラはそう呟くと完全に意識を失った。シェムは項垂れながら言う。

 

「分かった。マジスター、お前の勝ちだ。この子の命を玩びたくない。どうすれば良いのか、わしに言ってくれ」

 

「お前が、私に従うとは、何と愉快だ!一時間後にタラを扉の間に連れてこい。助手の一人にタラを引き取りに行かせるから。最後に言っておくが、解毒剤を手にいれる為に助手を人質にしようなどと考えるなよ。そんな事をしたら、解毒剤を即座に捨ててしまうからな。そうすればタラは死ぬ。分かったか?」

 

シェムが了承の返事をすると、マジスターはもう一度皆を見下す様な笑みを浮かべて消えていった。

 

 

シェムは辺りをキョロキョロとし、マジスターの亡霊がいないかどうかを確認すると若い魔術師達と向き合った。

 

「今度ばかりは、他に道はない。禁じられた魔術を使わなければならないのだろう!」

 

シェムの宣言にカル、モワノー、祈祷師とその助手が青ざめた。

 

「「禁じられた魔術って何?」」

 

エレンとファブリスは同時に質問をする。

 

「煉獄に行く為の魔術の事じゃ。そこに行って、悪魔の助けを借りれねばならんのじゃ。お前達には危険すぎるから、わしと一緒に行かない方が良い」

 

「何を言っているんですか!この子は私の患者です。一晩中、どうにか死なせないようにと、頑張ったのです!今ここで見放す分けにはいきません」

 

祈祷師がそう言うと助手も頷いた。

 

「いや。お主らは、ここに居てくれ。何かあった時にお主らが無事ではないと治療が出来ん。だから、ここで待っていてくれ」

 

シェムにそう言われて、祈祷師とその助手は渋谷と受け入れた。

 

「僕達だって、行くよ!」

 

カルが断言をする。

エレンもモワノーもファブリスも真剣な表情で頷いた。

 

シェムは彼らの顔を一人ずつじっくりと見詰める。

シェムは溜め息をつくと、真剣な表情で若い魔術師達と向き合う。

 

「......お主らには危険すぎる。無理じゃ」

 

エレン達は反論しようとした。

特にエレンは何も出来なくてかなり歯痒かった。しかも、皆も辛いのにエレンの事を気にかけてくれたのだ。ここでやらなきゃ何時やるんだという想いが強くなっていた。

 

シェムは彼らが一言も喋らない内に言う。

 

「だが、君達の力は必要だ。今から、わしの指示従って貰う。.........それと、エレン......お主の力、借りさせて貰うぞ。お主は一緒に煉獄に行くぞ。.........他の者は、悪いが、そこまでじゃ」

 

カル、ファブリス、モワノーは何か言いたそうだが、シェムの有無を言わせないひと睨みで言えなくなってしまったのであった。

 

 

 

エレンが急いで部屋に戻り、ソクラテスをベットの上に置くと、使えそうな魔法薬をできるだけポケットの中に詰め込み、急いで応急医務室に戻る。エレンが戻ってきた頃には皆の頼まれ事が終わっていた。

カルは可笑しそうに笑いながら灰色の大きな卵を抱え、モワノーは本を抱き抱えて来た。相当怖い事が合ったのか本を握り締める力が強く、髪の毛がちょびっと焦がしていた。ファブリスと祈祷師の助手が頼まれていた物は、風が吹かなくても自力で動く不思議な植物だった。

 

「皆の者有り難うじゃ。だが、君達はここまでじゃ」

 

「本当に僕達の力は必要ないのですか?」

 

カルは念押してシェムに聞く。ファブリスとモワノーもシェムの顔を見つめる。

 

「......悪いが、必要ないのじゃ。.........さあ、エレンおいで。....君達は部屋の外へと出るのじゃ」

 

シェムは心底残念そうに言う。

暫くの間、シェムとカル達は見詰め合っていたが、カル達の方が折れて部屋から出ていく。

 

「私に任せて」

 

エレンは小さな声だけども力強く呟いた。

 

「...任せたぞ」

 

カルは右手で握り拳を作るとエレンの顔へと近付けた。少しビクッとしたエレンだが、エレンも真似して拳を作ってカルの顔に近付け、カルとエレンは拳と拳を軽くぶつけた。ぶつけたカルは満足して部屋から出ていく。ファブリスとモワノーもカルの真似をする。

 

「き、き、気を付けてね」

 

「任せたよ」

 

それぞれ、言葉を掛けてから部屋を後にする。

 

「エレン。準備が終わるまでにタラの身体をどこだって良いから掴みなさい」

 

「分かった」

 

エレンは返事をするとタラの右手を握る。

祈祷師が準備を終えて部屋から出ていくと、シェムは本を手に取るとタラの周りに置いてあったカップにあの動いていた植物を入れる。カップの周りから赤い煙が濛々と立ち上ぼり、部屋中赤い煙で覆われると一人で円を作り始める。

 

赤い煙が完全な円になるとシェムは呪文を唱え始めた。

 

「禁書を通じて嘆願する!悪魔の煉獄を通ろうとする、我ら旅行者達を守りたまえ。我らの心は純粋で恐れを知らない!」

 

 

シェムが唱えた途端、耳をつんざくような雷鳴が轟き、視界が真っ白となり何も見えなくなった。

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