タラ・ダンカンと空白少女   作:オタクさん

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第12話 ペガサス

問題なく朝を迎えられた一行は食堂で仲良く食べるのだが....。

 

「えっ、タラも私と同じ部屋?」

 

「そうよ。私もエレンの時みたく、朝になったら部屋が変わったっていたのよ。私が勝手に魔術を使って広げてしまったと思ったわ!」

 

興奮をして抑えきれないタラは語った。

 

「凄いじゃん!タラも立派な魔術師の仲間入りじゃん!」

 

「タ、タラ、お、おめでとう」

 

嬉しそうに誉めるカルとモワノー。

 

エレンも何か言おうとするが、後ろから、初級魔術師だと思われる男の子が喜びの歓声が上がり遮られる。

 

「やったー!今日の授業は乗馬だー!」

 

エレン達は思わず後を振り返る。

後を見ると、叫んだ初級魔術師の男の子が友達と一緒に談笑しながら通りすぎていく。

 

数秒間黙った後に、カルもまたの歓喜の声を上げる。

 

「やったー!今日は退屈な授業じゃない!」

 

「魔術師《ソルスリエ》が乗馬の練習?箒に乗る練習じゃなくて?」

 

質問をするタラ。訳が分からない地球組にとっては、喜ぶどころか疑問が多すぎて頭が着いていけなかった。そんな様子を見てクスクス笑うカルとモワノー。

 

「ほ、ほ、箒?ほ、箒には、の、乗らないわよ。そ、それにね、じょ、乗馬の時間はね....」

 

「モワノー。折角だから、教えない方が良いんじゃないか」

 

「う、うふふ。そ、そうね」

 

カルの発言で止まるモワノーはクスクスと笑う。

 

「へぇー。箒は乗らないんだね」

 

箒に乗らない事に新鮮味を感じるエレン。そんなエレンに指を振って舌打ちをして小馬鹿にするカル。

 

「チッチッチッ。そんな考え非魔術師《ノンソ》じゃあるまいし、乗らないよ。あんな棒切れ一本で、空飛んでいたら危ないよ。全くエレンは、非魔術師《ノンソ》の考えにつられるんじゃないよ。非魔術師《ノンソ》も僕達に夢を持つのは良いんだけど、もうちょいリアリティーが欲しいよ」

 

得意気に話すカルだが、カルは後に、箒に跨がるどころかスケボーのように乗りこなす魔法少女と出会い、地球組から色々と言われることになる。

 

「じゃあ、空を飛ぶ時は何に乗るんだ?」

 

元々非魔術師《ノンソ》だったファブリスには苛つく言い方であり、あまりの言い方にムッとした態度を隠さななかった。

 

「絨毯さ。絨毯は良いぞ!ふかふかで乗り心地が気持ち良いし、魔術で落ちないよう保護してあるしね!」

 

得意気に語るカル。

 

「絨毯...。って、アラビアンナイトかよ」

 

本の知識により別のを思い出すファブリス。

 

「...私達は何の話をしていたの?」

 

すっかり忘れたエレン。そんなエレンを見てモワノーはクスッと笑ってから説明をする。

 

「じょ、乗馬の話よ。み、み、見れば、わ、分かるわ。も、もう、じ、時間だから、い、行かないとね」

 

モワノーの言葉で朝食を終えて、授業に向かうのであった。

 

 

 

シャンフランという先生がどうやら案内するらしい。エレン達以外の初級魔術師達も、楽しそうにはしゃぎながら次々と厩舎に集まる。

ただ待っているだけではつまんないエレンは、遠くから中を覗き込む事にした。中を覗き込むと普通の白い馬がいた。

 

エレンは馬に近寄って観察をする。

馬の体には、馬の体と同じ純白の布を保温の為なのか巻かれていた。

 

温かそうとエレンは一人、旅していた影響故に少し羨ましがる。しかし、その考えは違っていた。

 

バサッ

 

純白の羽が舞う。布と思われるそれは翼だった。

ただの馬ではなく、神話上の架空の生き物ペガサスであった。

 

 

物音に気づいたペガサス達は、頭を馬房の外に出して若い初級魔術師達を観察をする。

どうやらペガサスは、かなり大人しくて何されても物怖じしないのである。いきなり初級魔術師が触っても、耳元で興奮した声で五月蝿く騒がれていても、反応はなく全く動じなかった。

 

エレンは軽く撫でるように優しくペガサスに触ってみた。

 

「わー...。ふわふわ...」

 

エレンは気持ちよくて思わず声を出す。

高い場所に飛ぶからか、寒さに対応出来るようにペガサスの毛はとても柔らかかった。そのままふわふわな体に顔を埋めるエレン。

 

「気持ちいい...」

 

頬を赤らめうっとりとするエレン。

エレンがうっとりとしていた間、タラとファブリスもまた産まれて初めて見たペガサスに感動し、カルはそんな彼等の様子を見て面白がっていた。

 

 

 

エレンがペガサスを堪能している内に、シャンフランがやって来る。

 

「お待たせ、騎手の卵達よ。それでは始めよう。確認だが、どんな馬でもいい、馬に乗った事がある人。手をあげて」

 

この質問は明らかにこの場所に来たばかりのエレン、タラ、ファブリス向けの質問だった。

エレン以外の初級魔術師全員が乗っていた。ユニコーンにも乗れるらしく、アンジェリカの仲間であるモニカとキャロルが乗った事があった。ユニコーンは気難しくて乗るのは難しいらしい。

 

「よろしい。では、これが鞍です」

 

エレンに見せつけるように説明を始める。

 

鞍には、騎手が落馬しないようにベルトが取り付けられている。この安全ベルトは、どんな動きにも合うように出来ていて、必要な場合には直ぐに外せるように簡単なクリップで留めてあった。

 

更にペガサスの翼全体が自由になるように切り込みが入っていた。帯紐は三本もあり、一本はペガサスの肩の前に通して鞍を固定させる用で、二本は背中に通して固定させる用だった。

鐙も騎手の足を包み込むようにできていた。

 

「それでは、この子、タングランというこのペガサスに鞍を置いて、乗馬の手本を見せましょう。その後で、貴

殿方も一人ずつ、ペガサスに乗って実際に歩いてみるんですよ」

 

そう言ったシャンフランは、馬房の戸を開けて一頭のペガサスを外に出す。

 

優雅に歩きながら登場するペガサス。

 

(...あれ?普通の馬の足ではない...?)

 

歩いている様子を見てエレンは何かに気がついた。

ペガサスの足は普通の馬にある蹄ではなく、猫の足のように鋭く収縮性のある何本の鉤爪であった。

 

シャンフランが鞍を着けようとすると、それを助ける為にペガサスは翼を少し広げた。

鞍を着けたペガサスは外に出ようとする。その前に初級魔術師達全員が、ペガサスの空へと羽ばたく姿を見る為厩舎から出てきた。

 

ペガサスは矢のように地面の端まで疾走し、空中でギャロップをして、あっという間に木々の上を力強く飛んでいく。

エレン、タラ、ファブリスはその姿に思わず見とれてしまう。特にタラとファブリスは息をするのも忘れてしまう程だった。

 

タラとカルが何か話している時に事件が起きた。

突然タラが、森へ向かって歩き出してしまったのだ。

 

「タラ?!」

 

エレンが叫んで手を伸ばすが届かない。

カル、ファブリス、モワノー、三人がかりで止めるが、タラが驚く程の力で振り払った。

 

エレンが飛びながらタラの前に立ち塞がるが、避けられたり、物凄い力で振り払えられる。

どんどん進んでいくタラに焦りを感じるエレン。

 

(まさか...!!これも呪いなの!?だとしたら、止めないと!!)

 

「ごめんね!タラ!」

 

そんな考えに至ったエレンは、髪の毛と手のひらを電気でバチバチさせながら、スタンガンのように痺れさせて動きを止める為にタラに触れようとする。

しかし、触れることはできず、タラが腕で追い払う仕草をするだけで吹き飛ばされてしまう。

 

「きゃっ..!!」

 

近くの木に衝突したエレンは痛みで声を出してしまう。

タラはエレンを吹き飛ばした事を気にせず、森の奥へと行ってしまう。

 

「ま、待って!」

 

エレンは追い掛ける事しか出来なかった。

 

 

エレンがやっとの事で追いついた時には、タラは森の中に居たペガサスに泣きながら抱き付いていた。そのペガサスは普通のペガサスと違って、"金色に目が輝いていた"。

 

何で泣いているのか、急に変な行動をしたのは呪いなのか、何もかも分からなくなったエレンは、取り敢えず聞く事にする。

 

「ね、ねぇタラ、そのペガサスはどうしたの?何で?今まで話を聞いたり、攻撃をしてきたの?」

 

エレンはタラがもし魔術を使っても、ギリギリで対処できる距離で聞く。

 

今まで無視してきたタラだが、エレンの方を振り向いて答えてくれた。

 

「このペガサスはね、ギャランっていうの!私を選んでくれたの!」

 

嬉しそうに答えるタラ。しかし、返ってきた答えは、エレンの疑問を解決出来ない答えだった。

 

「...ギャ、ギャラン...?選んでくれた?」

 

思わず呆けてしまうエレン。

嬉し涙を流しながらペガサスの首に抱き付くタラ。エレンが呆けている間にやっと辿り着いたカル、モワノー、ファブリス、シャンフラン、他の初級魔術師も追い掛けて来ていた。

 

シャンフランは息切れをしながらも疑問を呟く。

 

「一体何が起きたんだ?」

 

「先生、何でもありませんよ。あの子は注目されたいだけです。だいたい余所者ですから、ペガサスを見ただけで...」

 

息を切らしながらも嫌みを忘れないアンジェリカ。だが、これ以上続けて言うことはできなかった。ペガサスがわざと脅かすような足音で突進してきたのだ。間一髪避ける事ができたアンジェリカは金切り声を上げ、シャンフランの後ろに隠れた。

 

「見て!見て!あの子!私を襲わせる為に、あのペガサスを調教をしたんだわ!!」

 

ペガサスの様子を見ていたシャンフランは、あることに気づいた。そのままタラとペガサスの元へ向かう。

 

「そのペガサスが、君を選んでくれた"ファミリエ"なんだね?」

 

「はい!先生!名前はギャランっていうんです」

 

シャンフランはこうなる事を予測していたような、不思議な眼差しでもう一度タラを見詰める。

 

「それは良い!素晴らしい!ペガサスのファミリエなんて、魔術師史上初めてだ!今日はなんて最高の日だ!」

 

自分の事以上に喜ぶシャンフラン。彼は喜びのあまりに踊り大きくジャンプをする。その様子に若い初級魔術師達は唖然とする。

 

「その子は秘密の武器で、決定的なジョーカーだ!タラ、おいで。君達に相応しい鞍を探そう」

 

元に戻ったシャンフランは、タラとギャランを連れて歩き出した。

他の初級魔術師達は戻る雰囲気を察して、この事をペチャクチャと話しながら、厩舎へと歩き出した。エレンだけは納得できずに、頬をむーっと膨らませて怒っていた。

 

ファミリエというものが、良いものというのは分かったが、迷惑をかけても仕方はないという流れに、腹が立ったエレンはカルに訊ねる。

 

「ねぇ、ファミリエってなに?」

 

いつもよりも声が低く仏頂面で訊ねるエレンに、ぎょっとするカルであったが、それよりも、エレンの質問の内容の方に驚く。

 

「え、え、ファ、ファミリエの事!?エレンは君は知らないのか!?ソクラテスの事だよ!」

 

「?...ファミリエが、ソクラテス?何の事?」

 

本当に分からないエレンは首を傾げる。今まで怒りで黙っていたアンジェリカが、鬱憤を晴らすかのようにエレンに怒鳴った。

 

「あんた!!本当に!何も知らないのね!こんな奴を選んだあの白い猫はお馬鹿さんね。いや、飼い主とそっくりだから選んだのよね。あ~あ、何で、こんな馬鹿が、ファミリエがいるのかしら?それに、もう個室を持っているのかしら?ほんと、見る目は無いわ!」

 

言うだけ言うと反論される前に、さっさとお仲間のところに戻るアンジェリカ。

アンジェリカが戻るとお仲間であるモニカとキャロルは、エレンの方へと振り向いてをクスクスと嗤い合って走り去っていった。

 

エレンはもう怒り狂って、質問の事などどうでもよくな

り仕返しをしようと空を飛ぶ。

カルやモワノー、ファブリスが止めようとするが、上の空で聞いていなかった。

 

エレンの事を嗤った彼女達は、エレンが空を飛んで追い掛けて来るのが分かると顔を青ざめて走り出す。彼女達はシャンフランの元に辿り着く前に、エレンに捕まってしまう。

髪の毛と手のひらをバチバチさせるエレンに、彼女達は泣いて身を縮こまる事しかできなかった。他の初級魔術師達は怖かったのかひそひそと話すだけで、誰も近寄らなかった。

 

騒ぎに気がついたシャンフランとタラが割り込む。

 

「どうしたのかね?」

 

「何が合ったの?」

 

シャンフランは平等に訪ね、タラは彼女達には目もくれずにエレンに聞く。

エレンが先に言う前にアンジェリカの口が開いた。

 

「聞いて下さい!この子は私達が何もしていないのに!いきなり、襲い掛かってきたのです!!」

 

「そうです!私達はただ、お話をしていただけです!」

 

「それなのに、急に目の前に現れて、手のひらをバチバチさせてきて...怖かった...グスグス」

 

キャロルはアンジェリカと同じくらい叫んで、モニカはわざとらしく泣く。

 

「それは...本当なのかね?エレン」

 

確認をとろうとするシャンフラン。しかしながら、その顔色は明らかにエレンが悪者だと決めつけていた。

 

エレンもその様子に腸煮えくり返りそうになる。でも、それ以上に怒っていたのはタラだった。

誰かが何かを言う前にタラが、マシンガンの如く話し出した。

 

「シャンフラン先生!まだ、エレンの話を聞いていないのに、決めつけるのは、止めていただきませんか?それに!彼女達は、私と因縁があるせいで、エレンが少しでも、何か変なことを言うと、わざわざ、あの人達から、群がってきます。ええ!確かに私は!故意ではないとは言え、彼女達に危害を加えてしまいました。たかだか、魔術を失敗してしまったせいで洗濯物をぶつけると言う、情けない理由で!勿論、謝りましたが、暴言を吐かれました。この事は、先生が知るよしもない事は、知っています。ですが、まだ!エレンの話を聞いていないのに!決めつけないで下さい!上の立場に立つ者が!平等に話を聞かなければ、いけない事でしょうが!!」

 

タラの剣幕に誰も何も言えなかった。

まだまだタラの怒りが収まる気配がなかった。タラが肩で息をすると、ついには、言ってはいけない言葉を言ってしまう。

 

「あの様な『悪魔のように小賢しい』彼女達の意見ばっかり聞いていたら、良い先生にはなれませんよ」

 

タラが喩えを使ってしまった。

 

タラがあっと後悔するのは遅かった。言い終えたのと同時にエレンの髪の毛がバッチと鳴って異変が起きた。

エレン、アンジェリカ、モニカ、キャロル、先生、他の初級魔術師、止めるためにやって来てしまったカル、ファブリス、モワノー。更に、先程タラとファミリエになったペガサスのギャラン。

 

この場に居る全員が被害に遭う。

背中には黒い蝙蝠の羽が服を突き破り、尾てい骨の近くの位置には悪魔のような尻尾が生えた。犬歯は伸びて、頭には羊の角が現れる。急な体の変化に痛みと戸惑いでタラ以外全員がその場に立ち竦んでしまう。

 

特に酷かったのはギャランだった。

体は黒と所々紫色なり、純白の翼は悪魔のような黒い蝙蝠の羽へと変わる。いらない犬歯は生えしまった。

 

どうすればいいのか分からないタラは、おろおろと周りを見て立ち止まる事しかできなかった。

タラは考える時の癖で白い髪の毛をカシカシ噛んで、何とか打開策を打ち出そうとする。

 

数十間使ってタラは、シェムがまた別の喩えを使って、呪いを打ち消した事を思い出す。タラは急いで叫んだ。

 

「『貴方達は...王子様の呪いを解く為のお姫様のキスをされて、元の姿に戻る!』」

 

タラが叫んだ瞬間変化は直ぐに起きた。

 

異変が起きたもの達の唇に、見えない誰かにチュッとキスをされると元の姿へと戻った。

 

突き破られた洋服も、まるで穴なんか空いてなかったように直っていた。

全員が自分の身を確認するとエレン、カル、ファブリス、モワノー、ギャラン以外全員がタラから離れた。

 

初級魔術達は互いに体を寄せ合って、恐怖のあまり震えていた。

 

シャンフランは怒りで顔を真っ赤にしていた。

 

「...もう、今日の乗馬は中止だ...」

 

静かに語るシャンフランに誰も反対意見を出すことはなかった。

 

「この事件に関わるエレン、アンジェリカ、モニカ、キャロルは、今日一日中厩舎の掃除、反省文の提出と厨房当番の仕事をしなさい。......分かったら、返事!」

 

「...はい」

 

「はい」

 

「はい」

 

「はい」

 

シャンフランの激怒に渋々返事をするエレン、アンジェリカ、モニカ、キャロル。

 

今度はタラの方を怒りの眼差しで見つめた。

 

「タラ。君は、部屋で頭を冷やしなさい。そして、君も反省文の提出してもらうからね」

 

「はい」

 

「後、ギャランは、厩舎で生活をしてもらう」

 

「えっ...それは!!」

 

ギャランと離れる事が相当嫌なのか泣き叫ぶタラ。

 

「君はもう!一言も喋るな!」

 

泣き叫ぶタラを鬱陶しがるシャンフラン。

 

タラはシャンフランの叫び声で泣くのを止めた。ところが、タラの目付きは、今にも人を殺しそうな恐ろしいものへと変わってしまった。

 

タラの変化に気がついたギャランが一生懸命に鳴いて、何かを伝えようとしていた。ギャランの鳴き声でタラは、何とか元の状態に戻って渋々了承した。

周囲が落ち着いたのを確認をしたシャンフランは、魔術でA4の紙を二十七枚作り出す。エレン、アンジェリカ、モニカ、キャロルには五枚ずつ渡し、タラには七枚の反省文を渡した。

 

「他の初級魔術師は私に着いてきて。一応、医務室で診てもらから」

 

シャンフランは、特に問題を起こさなかった他の初級魔術師を連れて移動を始めた。その際にもエレン達に声を掛けるのを忘れなかった。

 

「いいか、君達。ちゃんと、やるべき事をやりなさい。でないと、もっと恐ろしい罰を与えるからね!後、反省文は明日の朝に提出をしなさい。いいね?」

 

「「「はい」」」

 

文句ある気持ちを抑えて返事をするエレン、タラ、アンジェリカ、モニカ、キャロル。

 

返事を聞くと黙ってシャンフランは、他の初級魔術師を連れて歩き出した。その際カル、モワノー、ファブリスはエレンとタラに同情的な視線を送った。

 

アンジェリカはモニカとキャロルを連れて、さっさと歩き出す。

タラはギャランと離れたくないのか、ギャランの首に抱き付いて泣いていた。

 

そしてエレンは─

 

「...私は、何も悪くないのにーーーーーーーーー」

 

理不尽な現状に少しでもストレスを発散する為に、ありったけの声で叫ぶのであった。


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