タラ・ダンカンと空白少女   作:オタクさん

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第4話 オートルモンド【別世界】について

幾度の壁の前に身分証明を見せて道を開けて、辿り着いた食堂は大きなホールだった。

ホールには色んな人達がいた。どうやら魔術師以外の人達もいたがエレンにはどのような職種の人達なのかは判らなかった。エレンの肩に乗っていたソクラテスはホールの片隅に置いてある。動物用の食事場に向かって走っていった

 

カリブリス女史の掛け声が集合の合図だった。

 

カリブリス女史が「静粛に!」と言い、話始めた。

 

「皆さん、初級魔術師と新しい気象魔術師を紹介しますわ。ダンマリル先生は、初級魔術師としてロバン・マンジルを選びました。これでもう、あなた方はダンマリル先生にちょっとした用事を言い付けられずにすみますね。そう言う面倒な仕事は今後、全てロバンが引き受けてくれるのですから。彼に感謝しましょう」

 

カリブリス女史の合図で、明るい色の髪と瞳をした端正な顔立ちをした大柄な少年が立ち上がった。ニコニコと笑顔だったが、恥ずかしさのあまり顔が真っ赤に染まっていた。また直ぐに座った。

 

「新しい気象魔術師の方を紹介します。シーツを外に乾かそうとして雨が降ってきたらデリア女史に連絡してください」

 

デリア女史と言われた若くて美しい女性が立ち上がり、優雅にお辞儀をしたが、カリブリス女史に冷たい目線を投げ掛けていた。

 

「ファブリス!」

 

エレンが考え事をしている内にタラが喜びで声を上げた。その声でエレンはタラの方へと振り向いた。

 

するとそこには金髪に黒い瞳に長いまつ毛の美少年がいた。その少年はタラとカルの間に入り込んでタラと嬉しそうに会話をしていた。

 

「知り合いなのか?」

 

カルが聞いた。

 

「あぁ!」

 

ファブリスは有頂天に答える。

 

「会えて最高だよ!父さんが僕を別世界【オートルモンド】に送り込んだ時、もう少しで君の能力について話しちゃいそうになったよ。でも君がここにいるってことは、おばあちゃんにほんとうの事を言ったんだね。そうだろ?」

 

「ええ、まあそんなところよ」

 

タラは何故か口ごもりながら言う。

 

「...えっと、エレン・ふわふわ頭・オーレウスです。よろしくね!」

 

エレンは口調がたどたどしく喋り顔を真っ赤にしながらも、握手するために手を差し出し自己紹介をした。

 

「うん、僕の名前はファブリス・ド・ブゾワ=ジロンだ。よろしく」

 

ファブリスはそう言うとにこやかに笑い、エレンの手を握り握手をした。握手をしたエレンは更に真っ赤になっていた。

 

そんな中、カルはタラとファブリスの再開やエレンの慌てぶりなどをお構い無しに動きまわっていた。

 

「タラ、エレン、早くした方がいいよ。お腹がすいた!」

 

カルの言葉を合図に席に座る。右からカル、ファブリス、タラ、エレンの順になった。

 

四人が席に座ってもカリブリス女史の話は続いていた。その間カルはずっとぶつぶつと文句を言う。

 

そんな時だった。

 

まるでそれが聞こえたかのように、カリブリス女史は二つの頭を下げて昼食の時間が来たことを告げた。

 

若い給仕の一団がやってきた。運んできたものはローストビーフやグリルチキン、スパイスの効いたスープやバターがたっぷりかかった野菜、巨大なチーズ、ケーキやキャンディとチョコレートなどが並べってあった。

 

それはとても豪華な食事であった。旅の最中は勿論の事、幻想郷に住んでいた時でも御目にかかれない物だった。

 

「それでは、召し上がれ!」

 

エレンが感慨ぶっていると、カリブリス女史が微笑みながら言った。

 

そしてカリブリス女史が呪文を唱えると、部厚く切られたローストビーフがお皿に取り分けられ、ナイフやフォークが独りでにそれらを薄く切り始めた。

 

エレンは無理やり口に入れるナイフやフォークを捕まえ自分で食べた。その際に髪の毛がバチッとしたが、赤ん坊でもないのに無理やり口に入れて食べさせる方が、嫌だったので我慢した。

 

タラも同様にナイフとフォークを無理やり捕まえ自力で食べていた。

 

ファブリスは逆にそのままにしていた。その姿は日本のことわざにある郷に入っては郷に従えだった。まあ、ただ単に面白がっていただけであったが。

 

カルの場合は自分のお皿に肉を三切れも積み上げ、物凄い速さで貪るようにして食べている。彼のお皿は野菜以外の料理で今にも溢れそうだった。その食べっぷりは、まるで何日も前から口にしていないかの様だった。

 

「どうやってここに来たの?」

 

食事が一段落終わり、タラはファブリスに質問をする。

 

ファブリスは喜んで話し出した。王宮に来たときのびっくり体験をひとしきり話した後、一緒に私語とをするシャンフラン先生に早く合いたいと言った。

 

次はカルの番だった。全員が魔術師である家の五人兄弟の末っ子で、両親と同じようにサルドワン先生につくことになっていたが、あまり気乗りしないようだ。

 

カルは嘆く。

 

「よく分かんないよ。だって、僕のママは公認された最高の女泥棒なんだぜ。僕は高等魔術師の為に仕事をする必要なんかないはずだ。既にとっても優秀な泥棒なんだから!」

 

「泥棒!?」

 

エレンは驚いた。

 

「そう、泥棒だよ。僕はもう少したてば、立派な泥棒になるんだ」

 

カルはあっさりと言う。

 

「おい!"泥棒"だって!?別世界【オートルモンド】ではおおっぴらに言える職業なのかい?僕達の地球では、物を盗む奴は、牢屋に入れられるんだ!」

 

「そうよ!それはやってはいけない事だわ!」

 

ファブリスは驚きながら反論する。タラも又、感情的に反論した。

 

カルはその様子を不思議そうに見ていた。すると少しの間黙っていたが、気がつきカルは叫んだ。

 

「ああ!その手の泥棒はそうさ!でも僕達は違うんだ!僕達は泥棒一家だ。つまり、ランコヴィ政府の為に仕事をするのさ」

 

エレン、タラ、ファブリスはすっかり訳がわからなくなった。

 

「そもそも、ランコヴィ政府は泥棒を使って何がしたいの?」

 

「どんな泥棒でもいい訳じゃないんだ!やっていいのは政府公認の"札付きの泥棒"なんだ!札付きの泥棒は幾つかの決められた仕事しかしない。例えばね、ある魔術師がとても危険な呪文を考え出したとする。そしてどこかの王国や帝国が、その呪文を他の国を征服するためにその呪文を利用しようとしたとする」

 

「それで?」

 

三人は声をそろえる。

 

「すると、ランコヴィ政府は、その呪文を盗むように頼むってわけさ。札付きの泥棒はその呪文を盗んで他の国々に配るんだ。そうすれば皆が同じ呪文を持って、バランスが保たれるわけさ!」

 

三人は納得したが、まだ疑問は残っている。そこでファブリスが先に質問をする。

 

「でも、どうして君もまた泥棒になるって言うの?」

 

「僕も訓練が終わりさえすれば、その一人になれることって事だよ」

 

「ねぇねぇ、訓練って何?見せて!」

 

「どんな訓練なの?」

 

エレンはカルの方に体を前のめりし、目をキラキラさせながら言う。タラはエレンの様な行動をしなかったが興味深そうに言う。

 

「どんなのか見たい?」

 

カルはエレンとタラの様子を見て少し自慢げに言う。

 

「差し支えなかったら見せて頂きたいなあ。見たいなあ!」

 

逆にファブリスは、ちょっと疑っているような口調で言った。

 

カルは首をすくめた。

 

「差し支えなんか全くないよ。じゃあ、試しに君達が盗まれる役だよ!」

 

その瞬間、部屋の隅で静に食事をしていたカルの狐、ブロンダンが騒ぎだし、テーブルの上に飛び乗った。女達は叫び、男達は悪態をついた。

 

エレンとタラが騒ぎを見ているなか、ファブリスは先にカルの方を振り向いて言った。

 

「よし、始めていいよ」

 

「もう終わったよ」

 

落ち着いた声でカルが言う。

 

その言葉にエレンとタラは急いで振り向き、盗まれる事に気が付くとすでに驚いているファブリスの様になった。そんな彼等の目の前にカルは次々と戦利品を出して見せた。

 

ブゾワ=ジロン喉イニシャルの刺繍入りハンカチ三枚、するために噛み終わったチューインガム数枚、ピンクのゴム紐、金色のバレッタ、九枚のカード、手鏡、折り畳みのくし、ちび鉛筆一本、そして銀貨が二枚と栗色のちいさな手帳。

 

「バレッタとピンクのゴム紐と手鏡と折り畳みのくしは、ファブリス、君のじゃあないよな?」

 

カルはニヤニヤ笑いながら皮肉っぽく言った。

 

「何だって!そんなもん持ってないよ!」

 

ファブリスは恥ずかしさのあまりに顔を赤くして叫んだ。

 

「私の物が..全て無くなっている!」

 

「私もよ!信じられない!何にも感じなかったわ!」

 

エレンとタラはポケットの中を探りながら言う。

 

「僕もさ!」

 

カルは彼等の様子を見ながら、得意気に長くてしなやかな指を動かした。

 

「これは、小さい時に教わった方法なんだ。何が注意を逸らさせるものを用意しておく。さっきはブロンダンを使ったんだけどね。でも勿論全く別のでもいいんだ。そして自分が必要な物をちょうだいする。簡単さ!」

 

エレンとタラとファブリスは、カルの方を腕前にすっかり感心して、昼食の間じゅうずっと、カルを質問攻めをした。どんな生活を送っているのか、もっと知りたくなったのだ。

 

カルの自慢のエピソードは、信用できる話と誇張した嘘臭い話で半々だった。

 

カルから盗まれた物を返してもらい、四人はデザートのケーキとキャンディーをお腹いっぱい食べ、ホールを後にした。

 

これからの事をカルは説明を始めた。

 

「ここでは、張り切りすぎちゃいけないんだ。タラはシェム先生から夏休み中って言っていたし、エレンは先生決まっていなしね。だからのんびり過ごさなくちゃ!誰かが君達に会いたがったら、身分証明が教えてくれるよ」

 

「「身分証明が教えてくれるの(ですって)?」」

 

エレンとタラは驚きのあまり目を大きく開いた。

 

「どの先生も、僕達には身分証明を使って連絡してくれるんだ。僕達を呼ぶ時も、先生の元に行かなければならない時もね。身分証明が何も指示してこなかったら、その間僕達は必要ないってことさ。僕の場合はその時間を出来るだけ、のんびり過ごす事にしてるんだ。まあ、訓練はするけどね。そうだ!王宮の庭園に行ってみない?ファブリス、午後は何か用事ある?」

 

「ないよ。シャンフラン先生の手伝いをするのは明日からだ」

 

ファブリスはにっこりして言う。

 

「良かった。じゃあ見に行こう。庭園は凄いぞ!」

 

カルはウキウキしながら案内を始めたのであった。

 

 

 

暫く歩くと庭園に着いた。彼等は庭園を見て、カルの言ったとおり凄い場所だったと痛感する。それは植物でさえ、魔術によってカラフルだったからだ。

 

赤色の幹に青と黄色の葉っぱに覆われ、花の色は赤と黒の木が繁茂しており森の様になっている。

 

更には動物でさえも魔術を使う。その事を知ったのはしっぽが二本ある赤い二十日鼠が体がオレンジに緑色の大きい耳の猫から逃げる時に魔術を使って、数メートル先に逃げたのを見たからであったからだ。又、猫も鼠を追い掛ける時に魔術を使って距離を一瞬にして縮めた。

 

カルはエレンとタラとファブリスを案内しながら話す。

 

「この世界、オートルモンドでは七つの季節が存在し、それぞれ、カイヨ、ボータン、トレボ、フェシュ、プリシュ、モワンショ、雨季のサルタンって呼ばれている。で、一年で十四ヶ月あるんだ。天気は魔術によって自由自在に変えることが出来るから、誰にも予想が出来ないし、可笑しい事が起きるんだ。日陰でも摂氏四十度になったり、夏なのに雪が三メートルも積もったりすることがあるんだ。それとさっき、動物が魔術を使ったの見ただろ?外敵から逃げたり、獲物を追うためだけではなく他にも予測不能な天気に対応する時にも使うんだ。雪が降ったら、たった一晩で毛を生やし、雪のように白色に変えることが出来る。因みに天気に対応する際に魔術を使うのは、動物だけではなく植物も使うんだ....」

 

カルはすっかりはしゃいで、別世界の事を次々とエレンとタラとファブリスに夕食のドラが鳴るまで説明をしたのであった。

 

 

 

夕食後、エレンとタラはカルとファブリスと別れて部屋に戻った。

 

部屋に入ったエレン達が見たのものはアンジェリカが偉そうにふんぞり返っており、その周りには他の少女達が集まっていた。

 

エレンとタラは自分の寝室に着くと、それぞれ寝る準備をした。

 

エレンはソクラテスをベッドの上に置き、タンスの中を調べた。そこにはお目当ての物、ネグリジェと新しいバスタオルが入っていたのであった。バスタオルはともかく、ネグリジェは長年旅をしていて持っていなかったので、凄く嬉しくなったのであった。

 

薄いピンク色のネグリジェと下着とバスタオルを持って浴室に向かう。お風呂に入る前に歯を磨いたその後、服を脱ぎ、今日着た服をたたみ別の所にまとめて置いてから扉を開けた。

 

そこには、水の精オンディーヌが優雅に佇んでいた。

 

「...こんばんは」

 

エレンは思わず挨拶をする。するとオンディーヌはニコッと笑顔で返した。それを見届けた後、体と髪の毛を丁寧に洗う。

 

体を洗い終わりとエレンは湯船にゆっくりと浸かった。

 

「くぅ~~、いい気持ち。生き返る~。あ~、極楽。極楽」

 

顔を赤くして緩んだ表情で親父っぽい事を言う。これは幻想郷では老若男女問わず誰もが言う言葉で、エレンにもうつったのだ。

 

「お風呂好き?」

 

湯船にちゃぽんと少し音を立てて入り、オンディーヌはエレンの近くに座った。

 

「うん、好きだよ」

 

「そう、良かったわ。他の人達はシャワーを浴びて終わりなのよ」

 

「え?そうなの?気持ちいいのに、勿体無いね」

 

「そうね」

 

エレンがお風呂を好きになったのは幻想郷の影響であった。エレンが旅で流れ着いて、暫くたったある日の事だった。

 

 

 

 

 

 

それは幻想郷に着いたばかりの頃、行くところのないエレンが町をさ迷っていると町に買い物に来ていた老夫婦が声をかけてきたのだ。エレンは戸惑ったが、その老夫婦はとても人柄が良く、その好意に甘えてお世話になることにしたのだ。

 

その日の夜

 

「ちょっと狭いけど、気持ちいいわよ」

 

お婆さんに案内された場所はお風呂場だった。お世辞にも広いと言えず、かなり狭い場所だった。そこには、湯の入った木の筒型の箱が設置され、体を洗うためのタオルと白い固形石鹸が置かれていた。

 

二人は服を脱いで体を洗い終わった後、筒型の桶の中に入った。

 

湯はかなり熱かったが火傷はしない温度だった。だが、エレンが前に住んでいた所では湯船に入る習慣はあまりなく、更に慣れていない人と肌が密着していたので、恥ずかしさのあまり体感的に火傷する程熱く感じていたのだ。

 

そんな気を紛らわそうとエレンは話しかけた。

 

「...ねぇ、さっきお風呂場からお爺さんの声聞こえたの。そのとき「く~~、生き返るの~。あ~。極楽。極楽」って言っていたけど何で?」

 

「....あぁ、あれね~。とても気持ち良くて、この里では誰もが言う言葉なのじゃ」

 

「誰もが?」

 

「そうじゃよ、男の人なら今でも言っている人は多いし、女の人なら今は言ってなくてもかつては、言っておったのじゃ」

 

「あれ?誰もが言う言葉じゃないの?」

 

「そうねぇ。言い方が悪かったの~。誰もが言っていた道って言う方が正しいの~。子供のときは必ず言ったもんじゃ。だけど、成長するとあんまり言わなくなって、私や爺さんみたいな年寄りなると逆に言うようになるのじゃ。で、エレンちゃん。気持ち良いじゃろ?」

 

エレンは長旅で暫く間、お風呂に入るどころかろくに体を洗うことも出来ずにいた。そんな久し振りに入ったお風呂は体をほぐし、疲れが抜けていくのが実感するほどであった。しかもエレンの為に薬草を使っていて、お湯は薄い緑色になっていた。

 

「うん!気持ち良いよ!」

 

エレンはそんな優しい心遣いに嬉しくて満面の笑みで応えた。

 

お婆さんもエレンの笑顔見て嬉しそうに笑った。

 

「なら、エレンちゃんもせっかくだから、一緒に言ってみるかの~」

 

 

「「く~~、生き返る~。あ~、極楽。極楽」」

 

 

 

湯船に浸かりながら昔の事を思い出した。結構長く考えていたのでのぼしかけた。

 

オンディーヌにお別れを言いお風呂を出た。

 

ネグリジェに着替え、髪をタオルで乾かしながら浴室を出た。

 

エレンはタラの所に向かう。

 

エレンがお風呂に入っている間タラは、革でできた分厚い本を読んでいた。その本には金色の文字で「王宮の礼儀作法、習慣及び風習、法律及び義務に関する書」と書かれていた。

 

パタパタと足音を発てながら近づく。

 

「あら、エレンじゃない。...ってお風呂入っていたんだ」

 

タラは側に近づいて来たエレンに気がつき、本から顔をあげて話しかけた。

 

「うん、そうだよ。お風呂気持ちいいよ!良かったら入った方がいいよ!」

 

エレンは髪をタオルで拭きながら笑顔で言う。

 

「...悪いわね。私、お風呂好きじゃないのよ」

 

タラはエレンの笑顔を見て少し気まずそうに言った。

 

「ふーん、そうなんだ。ところで何で本を読んでいるの?」

 

エレンはタラの言動よりも、タラの持っている本が話が気になってしょうがなかった。

 

「ああ、この本にはこれからここで暮らして行くの必要な事が書いてあるの。エレンも後で読んだ方が良いわ」

 

「...それって、私でも覚えられるかな?」

 

エレンは自信なさげに言う。

 

「大丈夫よ!この本不思議な事にね。すんなりと内容が頭の中に入ってくるのよ。でも、エレンって物凄く物忘れ激しいよね。どうして?後、それとずっと、聞き忘れていたけど...幻想郷って何が危険なの?」

 

不思議な出来事に興奮していたタラだが、話していく内にずっと聞きそびれた事を思い出し、真剣な表情で質問をした。

 

「あ、その事?幻想郷には人を食べる妖怪がいるからだよ。それと私が物忘れ激しいのは、他のみんなよりかなり長生きしているからだよ。もう何歳かは忘れたけどね」

 

エレンは何でもないように言う。

 

「え!?人を食べる妖怪!?そんな危ない存在が地球にいるのよ!?そんな危ない存在からどうやって生き延びたの?と言うか妖怪って何?聞いたことないわよ!それと!長生きってどれくらいなの?どうやって長生きしているの?」

 

エレンと対比するようにタラは狼狽した。

 

エレンは、考え事をするように頬っぺたに人差し指をあてながら言う。

 

「...うーんとね。妖怪については分からないんだ。調べなかったし、みんながそう呼んでいるから、私もそう呼んでいるだけ。だから何も知らない。身を守る方法は魔法だよ。長生きした方法も魔法だよ」

 

「じゃあ、何でランジャリュス【整頓する】のおまじないが直ぐには出来なかったの?長生きする魔法の方が難しいでしょ?」

 

タラはエレンの話に疑い始めた。しかもその煮え切らない答えに苛ついてきたのだ。

 

「長生きする魔法の方が難しいに決まっているよ!...確かにあの魔法直ぐには出来なかったよ。何か凄くやりずらかった。やっぱり、いつもは言葉はいらないし、それに言葉を使う時は戦うときで言うとイメージしやすくして発動しやすいしね。日常では絶対使わないよ。変に意識しちゃう。タラだっていつもやっている事のやり方を変えたら物凄くやりづらいよ」

 

エレンもタラの態度に苛つき、少しムッとした声で話す。

 

「へぇー、そうなの?......まぁ、確かにそうよね。.....分かったわ!例えるならまるで、いつも右手でペンを持って書いているのに、急に左手に変えたら文字は一応書けるけど、物凄くヘンテコな字になちゃうみたいなことでしょ?」

 

タラは理解できたことが嬉しくて興奮ぎみに言う。

 

「そうなのよ。そんな感じ」

 

エレンはため息つきながら言う。

 

「じゃあ、これからやりづらいわね。ここで色んな魔法を学ぶと思うけど、どうする?」

 

「うーん、そうね。でも、これからも自分のやり方を通すよ」

 

「でも、またシェムに突っ込まれるわよ」

 

「.......シェム?誰だっけ?」

 

「今日、私達を案内してくれたドラゴンのことよ」

 

「.....ぁあ、あのドラゴンことね。けど、私。悪いことをしているわけじゃないから、このままでいくよ」

 

「そうね。エレンの言う通りだわ。少しやり方が違うからって、怒るのは可笑しいわ。色んな人がいるんだから、色んなやり方があっていいはずよ」

 

ちょうどその時、十時を告げるドラが鳴り響いた。

 

「あら、ドラが鳴ったみたい。もうお休みの時間よ」

 

「え、そうなの?じゃあお休みなさい」

 

「お休みなさい、エレン」

 

エレンはお休みすの挨拶をすると、急いで自分のベッドに向かったのであった。

 

新たにこの世界にやって来た二人の少女が、そよ風に吹かれながら眠る。明日から新しい日常が訪れるのであった。




人物紹介

ファブリス・ド・ブゾワ=ジロン
地球生まれのフランスのタゴン村の出身で、タラの幼なじみにあたる少年。金髪で結構ハンサムな見た目である。性格は温厚で心優しい。また、洞察力が優れている。好きなことはスポーツと本などの活字を読むことと、言葉遊びである。

オリジナルキャラクター

お爺さんとお婆さん

エレンがお世話になった人物。
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