タラ・ダンカンと空白少女   作:オタクさん

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第6話 交流

あの後、疲れきったエレンは部屋までとぼとぼと歩いて戻り、着替えをする気力もなくベットに倒れ込むように眠る。

 

エレンの眠りを妨げのは外から扉を叩く音だった。

コンコンと始めは小さな音だったが、次第にドンドンと強めに叩かれ、音に反応したソクラテスがエレンに扉を開けるように鳴いて唆す。

 

エレンは渋々起きて、眠っていたい気持ちを無理やり抑え込み扉を開ける。

扉を開けるとそこには、タラとカルとファブリスと謁見に遅れてきた少女がいた。

 

「ふぁ~。いったい何の用?寝ていたいんだけど...」

 

「ごめんなさいね、エレン。でも凄く心配していたの。大丈夫?」

 

タラは心配そうな面持ちでエレンを見詰める。

 

「うん、一応大丈夫だよ。話をしていただけだから」

 

「そう。良かったわ」

 

タラは心の底から安堵してホッと息をついた。

 

「うわ~。朝少し見たけど凄いなあ。部屋見てみたいなぁ~、上がって良い?」

 

「うん、良いよ」

 

本当は眠っていたいエレンだったが、急に起こされたせいで眠気が無くなり、どうせならこのストレス発散に付き合って貰いたくなったのだ。

 

「じゃあ、遠慮なく。お邪魔しま~す」

 

「おい!エレンは疲れているから止めとけよ!」

 

遠慮ないカルにファブリスが怒る。

 

「私は大丈夫だよ。それに誰かと話している方がストレス発散になるよ」

 

「ほら、エレンだって良い言ってるから良いじゃん」

 

「.....分かったよ。けど、エレン、無理しなくて良いからな」

 

「うん、ありがとう!」

 

エレンはファブリスの優しい心遣いに弾んだ声で言う。

 

「じゃあ、私もお邪魔するわ」

 

「わ、わ、私も良い?」

 

謁見に遅れてきた少女は、エレンと面識がないため遠慮がちに言う。

 

「うん、良いよ」

 

「あ、あ、ありがとう。お、お、お邪魔します」

 

 

 

エレンが彼らを案内した場所は次の間は、初級魔術師の部屋よりも二倍大きい。

壁にはランゴヴィ王国の景色を描いた絵画が飾られており、部屋のすみには来客の為に白いお洒落なコードハンガーが置かれている。足下に引かれた白いカーペットは、そのまま寝転んでも眠れそうな程ふわふわだ。部屋の中央には白色のスイートシックなソファーが三つあり、複数人用の大きめのソファーが二つ、一人がけソファーが一つあり、彼ら全員が座っても余裕があった。

 

ソファーの間にはスイートシックなテーブルが置かれており、その上には来客用のお菓子が用意されていた。

 

「ほ、ほ、本当に凄いわ。カ、カ、カルがうらやましくなるのも、わ、わ、分かるわ」

 

「そう言えば、何でそんなに喋り方が変なの?」

 

エレンは首を傾げながら謁見に遅れてきた少女に問う。

 

「グ、グ、グランショットびょ、病にか、か、かかってしまったからよ」

 

「グランショット病とは、魔術師だけがかかる病気で、魔術を使いすぎると体を消耗させると同時に、余分な魔術が関節の中に居すわって軟骨を蝕んで、全く動けなくなる。死ぬことはないとは言え、とっても危険で手遅れになると治るまでに物凄く時間がかかる。唯一、救いのあるところは治療法があるぐらいかな」

 

いち早くソファーに座ったカルが得意気に言う。

 

「...あ...そうなんだ。失礼なことを聞いてごめんね」

 

「ベ、ベ、別に、だ、大丈夫よ。ちゃ、ちゃ、ちゃんと謝って、く、くれたからへ、平気よ」

 

「そっか、ありがとう。名前は」

 

「モワ、モワノー・ダヴ、ダヴ、ダヴィールです。モワ、モワ、モワノーって呼んでね」

 

「私の名前はエレン・ふわふわ頭・オーレウスです。宜しくね」

 

エレンは右手を差し出して握手を求めた。

 

「こ、こ、こちらこそ宜しく、お、お願いね」

 

モワノーも右手を差し出しエレンの握手に応じた。

 

「ところで、みんなは暇なの?」

 

モワノーと挨拶をしたエレンは、来客用のお菓子を食べ始めている皆に話を振る。

 

「うん。何か分かんないだけど二日間、急遽休みになったんだ」

 

ファブリスが飴を舐めながら言う。

 

「大方、エレンの故郷のことなんだろなあ」

 

「それって、どういうこと?」

 

カルの発言にエレンは首を傾げる。

 

「う~ん、説明するには別世界【オートルモンド】の歴史を知らないといけないなあ」

 

「別世界【オートルモンド】の歴史って?」

 

「五千年前の話。別世界【オートルモンド】では、ドラゴンと悪魔が戦っていたのさ。理由は確か...悪魔が全宇宙を支配しようとしていから」

 

「え、えぇ。そ、そうよ。そ、そ、その時に悪魔はドラゴンと戦っていたけど。あ、悪魔はきゅ、急に別世界【オートルモンド】から地球へとタ、ターゲットを変えたわ。ち、地球のある場所から、お、別世界【オートルモンド】への侵入通路が、み、見つかったからよ。そ、そこをし、侵略してしまえば別世界【オートルモンド】をいっ、一気に押し寄せることができるから」

 

モワノーはカルの発言をサポートする。

 

「で、ドラゴン達はその事にいち早く気づいたから、先に征服しようとしたんだ。ドラゴン達は、別世界【オートルモンド】を支配していたから、エルフやトロル、巨人や小人、吸血鬼やキマイラを引き連れて地球を支配しようとした。けど、出来なかった。地球にはデミデュリスという天才的な魔術師が、四人の優れた魔術師と共に軍隊をつくって対抗した。ドラゴン達は敗北を喫し、地球の征服計画をきっぱりと終わった」

 

「じゃあ、エレンの故郷の人達がデミデュリスという魔術師みたいな存在かも知れないってこと?」

 

タラは白い部分の髪の毛をカシカシ噛みながら言う。

 

「そう、そう言うことさ。で、タラは何やっているんだ?」

 

「気にしないで、考えるときの癖なの」

 

「で、で、話を戻すわ。ド、ド、ドラゴンは私達のの先祖と協定して、あ、悪魔を討ち取って”禁じられた煉獄”に、に閉じ込めたわ」

 

「ちょっと待って!じゃあ、地球にはいつから魔術師がいたんだ?」

 

ファブリスが口に挟む。

 

「洞穴生活を始めた原始人の時くらいからいたらしい。その時はまだ、魔術を使えない人間”ノンソ”を世話して助けていたんだけど、その内の何人かは自分のことを”神”に見せかけて崇めさせようとしたんだ」

 

「じゃあ!?ギリシャ神話のゼウスやアフロディーテ、北欧神話のオーディンやトール、エジプト神話のイシス、オシリス、アヌビスとかは、皆、人間の魔術師だったこと?」

 

読書家のファブリスは、今まで読んできた空想上の話が実際に起きたことを知り驚いた。

 

「そうだな。だけど、別世界【オートルモンド】の高等魔術師評議会は神と名乗ることを禁じ、特別警察を設けたのさ。もしそう言うことをすると、すぐに逮捕されて牢屋に入れられるか、死刑になるか」

 

「....じゃあ、エレンの故郷の魔術師はもしかして殺されてしまうの?」

 

タラは白い部分の髪の毛をカシカシと噛むのを止め、カルに質問をする。

 

「......死刑になる基準は解らないが、少なくとも神と名乗るぐらいなら、牢屋行きぐらいだと思う。ただ、神と名乗った人物が力をつけていたり、ノンソに危害を加えたり利用したりすればアウトだね。まあ、見つかったらかなり怒られるのは目に見えているね。もしかしたら、高等評議会の判断によっては魔術を使えなくしてしまうかも」

 

「へ~、そうなの。ねぇ、エレン。花火の様な戦い方をしていたのはどれくらいいたのかしら?」

 

「五~六人くらいかな」

 

「じゃあ、その戦い方実際した?」

 

「うん。した」

 

「「「な、何で!?」」」

 

衝撃のカミングアウトにエレン以外一斉に声を荒げる。

 

「何か、分かんないけど勝てば願い事が叶うから」

 

「そこまで、して叶いたい願い事は何?!」

 

 

「魔法道具のお店を出すこと」

 

エレンはえっへんとどや顔で宣言した。

 

「...エレン。その夢だったら、ここにいれば叶うよ」

 

カルはかなり呆れて天を仰いだ。

 

「幻想郷でもお店を出していたけど、あまりにも売れなすぎて辞めちゃった」

 

「ノンソに気づかれちゃいけないのに何やってんだ」

 

カルの呆れが止まらず天を仰いだままだ。

 

「も、も、もうかなりヤバいわよ!ろ、ろ、ろ、牢屋行きにな、な、ならなきゃいいんだけど....」

 

モワノーは顔を青ざめ普段よりもどもってしまう。

 

「これって、どういうことになるんだ?」

 

「う~ん。この場合だと、幻想郷の魔術師を見付かり次第に、エレンと一緒に追及されるのは確かだな。......正直に言って、あまりにも事例がなさすぎて解らない」

 

「でも、ノンソには手を出していないし。神と名乗ってないから大丈夫じゃないの?」

 

「それでもかなり怒られるぞ。牢屋行きの最悪の可能性を考えるぐらいにはな」

 

「何で?そんなに怒られないといけないの?」

 

カルとモワノーの話を理解出来ていないエレンはきょとんとする。

のほほんとしているエレンの態度を見てカルとモワノーは、エレンの顔とぶつからないぎりぎり距離まで近付き、小さな子供にも緊張が伝わるように真剣な表情でエレンの顔を見詰めながら言う。

 

「良いかい、エレン。地球にいた魔術師さえもライバル意識が芽生え、争い始めたんだ。そのせいで、地球が滅びるところだったんだ。ドラゴンが止めてくれなければ、地球は五千年前に消えていたんだぞ」

 

「だ、だ、だからと言って、お、別世界【オートルモンド】には、い、い、色んな種族がいるけれども、あ、あ、あ、あまり仲良くないの」

 

「はっきり言って、専門家の中にはいつ戦争がおきてもおかしくはないって、言っている人もいるし。ドラゴンが統治しているとは言え、エルフとか他の種族の中には、自分達方こそが、別世界【オートルモンド】の支配者に相応しいって思っている人達もいて、けっこう、危ういだぞ。それなのに、自分達の知らないところで、勝手に力をつけていることを知ったら、新たな火種になるぞ」

 

「へぇー。そうなんだ」

 

カルとモワノーの必死の説明にも関わらず、エレンは呑気な返事をするだけであった。

 

 

 

「そう言えば、さあ。地球と別世界【オートルモンド】ってどんな関係何だ?」

 

気まずい雰囲気になってしまったので、ファブリスは空気を変えるために質問をする。

 

「そうねぇ。エレンの故郷のことは見つかるまで、何も解らないから一先ず、置いておいて。それに、今考えたって不安しか感じないなら、見つかるまで何もこの事は考えなければいいんじゃないの?」

 

考えることに嫌気がさしてきたタラは、ファブリスの質問に賛同する。

 

「そうだな。考えたって仕方ないな」

 

「お、お、別世界【オートルモンド】と地球は一応、こ、こ、交流は有るわ。ぼ、ぼ、貿易していて、と、特に、ド、ドラゴンは牛が大好物だから。よ、よく地球から輸入しているわ。け、けれども、ち、地球にはその存在を、か、隠しているわ」

 

「へぇー、そうなんだ。と言うか、隠しているのによく貿易が出来るわね」

 

「ぼ、貿易のために地球に、い、い、一部、そ、魔術師【ソルスリエ】がいるの。そ、その人達が魔術を使って、う、上手く誤魔化しているから」

 

 

「ねぇ。何で、そんなに存在を隠しているの?」

 

エレンは疑問に感じたので純粋に質問をする。

それが何か触れてはいけない線に触れたようで、カルとモワノーはたじろいだ。

 

「ねぇ、何で?」

 

気まずそうに口をゴニョゴニョしているものも、二人は答えられずにいた。

 

「ねぇ、どうしたの?」

 

エレンは一人用のソファーから降りて、二人の顔を心配そうに覗き込む。更に気まずくなった二人は顔を下に向けて目を合わせないようにした。

 

「ちょっと!ちょっと!どうしたの?!急に何で、こんな事になるのよ!?そんなにエレンの質問に答えられないの?」

 

二人の豹変ぶりにタラは思わず慌てる。ファブリスも真剣な表情で二人を見る。

 

二人は互いに見詰め合うと溜め息をする。

見詰め合ったまま数秒間経つと観念したのから、カルから話しを切り出した。

 

「地球をあまり信用していない。......それに...実は...僕達、別世界【オートルモンド】の人達は、地球の事を少し見下している」

 

「そ、そ、そうなの。ご、五千年前の戦いで、ド、ド、ドラゴンが止めてくれなければ、い、い、今頃、ほ、滅んでいて、お、お、別世界【オートルモンド】の事を知ったら、ま、また争いがおきると思っているから」

 

「実際に、地球では魔女狩りがおきて、魔術師の子供達や関係ない人達が殺された」

 

魔女狩りと言う言葉に、エレンは悲しそうな顔をしてうつ向いた。

 

「そ、そ、それに、ち、地球は、ま、魔力が少ないから、わ、私達ま、そ、そ、魔術師【ソルスリエ】達のち、力が、よ、弱くなってしまうの。ぶ、文明も別世界【オートルモンド】よりもかなり、お、遅れているし。で、でも、貴方達の事は、ば、ば、馬鹿にしていないわ。ほ、本当よ。し、信じて」

 

モワノーは沈んだ表情で言う。

 

「そうなんだよなぁ。この事を言ったら嫌われると思って言いたくなかった」

 

カルとモワノーは言い終わると暗い表情でうつ向く。

暗い雰囲気が部屋を包み込み、楽しかった時間を消し去っていく。誰もが何をして良いのか分からない中、立ち上がったタラはカルとモワノーをいきなり抱きついた。

 

「うわ!?」

 

「きゃ!?」

 

二人は驚きのあまり声を出す。

 

「そんな事で嫌いにならないわよ。だって、貴方達、罪悪感を感じているじゃない。まぁ、そんな考えがあるなんて悲しいけど...これから考えを変えれば良いじゃない」

 

「それに、私達は友達だよ。そんな簡単に嫌わないよ」

 

「タラやエレンの言う通りだよ。まだ、会って一日も経っていないけど、僕達も君達は仲良くしていきたいと思っているからそれで良いじゃん」

 

タラが子供を優しく諭す様な笑顔で。

 

エレンは誰もが安心するような満面な笑みで。

 

ファブリスはどこかちょっと呆れていてるけど、優しく微笑んでいる。

 

「ふう~。良かった~。地球から来た人達と話すのが初めてで、しかも、話している内に楽しくなってきたからさあ。こんな事を聞かれる事事態想定していなかったからなあ。焦ったー」

 

「わ、私は、びょ、びょ、病気とかで、い、いつも、ひ、独りぼっちだったから、さ、寂しくて、でも、友達が出来て、嬉しかった。き、嫌われなくて本当に良かった」

 

そんな三人を見てカルとモワノーは心の底から安堵する。

 

「ねぇ。せっかくだから、地球の話もしない?私とファブリスの周りだけだけど」

 

「おお、それ良いね。エレンの話ばっかで、ちょっと飽き飽きしていたんだ」

 

タラは空気を変えるために提案をする。それを聞いたファブリスは喜びながらその提案に乗る。

 

「じゃあ、決まりね。カル、モワノーは地球の事をどこまで知っているの?」

 

「わ、私は、ぜ、全然知らないわ」

 

「僕は地球の映画とか好きで、それなりに知っている」

 

「そうか。よし、これからいっぱい話すぞ!」

 

「そうね。私達の故郷の事を好きになってもらいたいし、何よりも、貴方達ともっと、もっと、仲良くなりたいですもの」

 

「あ、そうだ!明日も臨時で休みなんだよな?せっかくだから、明日外で、地球の遊びをしない?」

 

「良いね。それ!でも、今日はいっぱい喋る日よ!」

 

ファブリスの提案にタラは興奮ぎみに賛成し、それからはずっと楽しい時間であった。

興奮したタラのテンションに、最初はエレンとカルとモワノーは着いていけなかったが、話をしている内に段々と楽しくなって着いていけるようになっていた。

 

タラとファブリスの共通の友人の話をしたり、エレンの地球の過ごし方がちょっと可笑しくて着いていけなかった時は皆でポカーンとしたり、それ以上に可笑しい別世界【オートルモンド】の習慣に、地球組の三人は目を丸くしたりして五人は楽しく話していた。

あまりにも楽しくて、彼らは夕食を告げる銅鑼の音が鳴るまで話をしていたのであった。

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