天下に響く風   作:霧のまほろば

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黄巾の乱まで一年の頃です。
繋ぎのため、いつもより三千字くらい少ないです。


第10話 洛陽の不穏と黄色い布

更に半年が過ぎた頃。外は白銀の世界から解放されつつあり、時折そよいてくる暖かい風が安定の都市を満たす。しかし、まだ肌寒く、薄着の呂風や呂布は毛布に包まれ、時折抱きしめあって暖かさを分け合うのが当たり前の風景になりつつあったこの頃。

外に耳を傾ければ、賑やかな声が聞こえてくる。

ここに来た頃のボロボロだった安定の街並みは見る影も無く、彫刻を施された石と木で組み合わせた立派な建物が立ち並び、大通りも石組の道に整備されて、大通りに面する商店は例外無く繁栄し始め、豊かな品物が揃い、それを買いに来た客で賑わう。そして、腹が肥えた商人は多くの税を落としていって、そのお金を街の発展に使い、民の生活の基準も跳ね上がる。例外的なほど低い税率も民手伝い、今や、首都である洛陽の繁華街にも引けを取らないほどの大繁栄の目を見ている。

 

そして、時折軽装の兵が二人一組で子供と戯れながら街を巡回し、治安も良好。ここ数週間、盗賊や強盗すら起きない。

血気盛んな民であるため、夜な夜な何処かで喧嘩騒ぎが起こるが、それすら、この町の風習であるため、兵たちも笑いながら見守り、ボロボロになった当人を手当てしながら話を聞いて、しっかりと上に報告をする。

その報告を受け取ったら、問題点を炙り出し、それを直ぐに改善する。

そうやっていった結果、人口が六万しか居なかった安定の城郭都市は今や三十万を数えるほどにまで人が増えた。辺りの難民や噂を聞きつけた集落の民が集まった結果が此れなのだ。今もまだ集まりつつあるため、収容制限に近づきつつあったため、陳宮が大慌てで呂風と共に新たな城郭を築こうとし、街の規模を押し上げようとしている。

 

兵の練度も大陸有数の名将、豪傑、天下無双に鍛えられた兵はさらなる精鋭さに磨きがかかり、先の韓遂戦役の敵兵ならば一人で三人から五人を同時に相手出来るほどにまで強くなった。しかし、匈奴や西羌の異民族とも友好の手を携えて、呂風の厳しい目によって選び抜かれた商人によって交易も盛んに行われるようになり、食料を売る代わり、匈奴の精強な馬を取り入れて騎馬軍の増強にも手を尽くし、演習では見学に来た軍人の度肝を抜くような強さを発揮し、その強さに恐れをなした盗賊や山賊は安定の周辺から姿を消し、安心した民は陳宮や呂風の指揮のもと、農地を拡大していき、三十万の人口を擁する安定の街を余裕で養える程の広大な水田や畑を開墾し、職にあぶれた人が嬉々として開墾に参加して豊かになっていく。

 

此れは最高の知恵と、最高の政治と、最高の武が並び立ち、手を携えているからこそ出来ることであり、各地の名士はこの手腕を絶賛し、褒め称える。実際に安定に訪れた者たちは余りの豊かさに驚き、民の笑顔に感動し、兵の強さに度肝を抜き、心打たれた名士は雪崩を打つように董卓の配下に加わる。そして、新参の者でも自由に発言出来る、名士にとっては夢のような環境であり、それがさらなる繁栄に拍車をかけた。

 

 

 

「あ、響。今ちょっといい?」

「ん?どうしたの?詠」

 

何だろう?廊下を歩いて詠の部屋の前を通りかかったら、開いていた扉から詠がひょっこりと顔を出して私を呼ぶ。

 

「実はね、洛陽の方を探らせていた草から報に気になることがあったの。相談出来るのが、響しかいなくて……。いや、その、変な意味では無くて、音々は資金繰りで忙しそうだし、月はこういうのに不向きだし、他の奴は武官だし……。その、迷惑かしら?」

「ううん、大丈夫。さっき私の仕事は終わったところだし、恋たちも練兵中だから、そっちに顔を出してから暇つぶしに街に行こうかなって思っていたところだから。それで、どうかしたの?」

 

不安げな顔をしていたから、安心させようと微笑むと、忽ち顔を真っ赤にしてしどろもどろになってしまう詠がいた。(呂風は自身の容姿がどれほどのものか理解していません)

 

「あ、ぅ……。あ、ありがとう……。え、えっと。十常侍と何進大将軍のことなんだけど……」

「ああ、確か十常侍と何進大将軍は仲が悪いんだよね。次期皇帝の派閥争いでだっけ?」

「そう。十常侍が董太后の子である劉弁皇女を、何進大将軍は弟である何皇后との子である劉協皇女を推しているのだけれど、今代の皇帝であられる霊帝の容態が芳しくないらしいの。洛陽の名医を集めて療養しているらしいけど薬が効かないみたいなの」

「劉協皇女は幼年の頃から聡明で活発な皇女であり、劉弁皇女は物大人しげながらも物事の本質を見抜くことに優れるって聞いたことがあるから、何方を皇帝にするかは難しい話なんだろうね。でも、帝の容態が芳しくないってことは初めて聞いたよ」

 

二年くらい前に洛陽に少しの間いた時に民の噂で聞いたことがある。両皇女ともまだ十を越えたばかりの年頃であるにも、将来を嘱望される才能を持っていると。

でも、霊帝はまだ30代辺りだったはず。それなのに容態が芳しくないって病か何かなのかな。若しくは、毒?

んー、あんまりこの手は使いたくなかったけど、華佗にお願いして禁中専属の医師をやってもらえば少しは容態は安定するかな?嫌がりそうな気もするけど。

 

「それでね、次期皇帝の派閥争いが最近激化しているらしくて、一触即発の空気だそうよ。洛陽軍と禁軍の動きも活発になってきているから、武力衝突もあり得るかもしれないって……」

「え、もう其処まで酷い状態なの?だったら、華佗に急いで洛陽に向かってとお願いしないと間に合わないかも。あ、でも、絶対禁中よりも街通りを優先しそうだね……」

「はい?え、ちょ、ちょっと待って!え、何?あの華佗と知り合いなの?」

 

心底信じられないと言わんばかりに目を驚愕の色に染めて詰め寄ってくるけど、近い近い!卓に身を乗り出して迫ってくるけど、勢いよく乗り出したものだから、鼻が触れる程にまで来た。慌てて身を反らしたからあわや、といったことはなかったけど、何処か不満げな顔の詠を見るとなんだか、悪いことしちゃったかなと思ってしまう。でも、詠も綺麗な方の顔立ちだから近づき過ぎると恥ずかしいのは理解して欲しい。

あ、華佗のことだったね。

 

「旅をしている途中に豫州でばったりと出会ったんだ。華佗も大陸を回りながら医療活動をしているんだよ」

「本当に偶然なのね……。それで、どうして皇帝陛下の容態が芳しくなくて、洛陽が不穏だからって華佗に繋がるの?」

「華佗は五斗米道……本人はゴッドヴェイドーって言ってたけど、気功や鍼治療などに長ける医療を得意とするから、漢方薬では効果のない病にも通用するらかもしれないんだ」

「そっか!だから陛下の医療を頼むってことなのね。陛下の容態が安定すれば、洛陽も一応落ち着くかもしれないから!あ、でも。華佗は確かに高名だけど、それだけで禁中には入れないわよ?」

 

流石、詠。きっかけを与えたら自分で正解を探り当てた。

確かに禁中に入るのは容易い事じゃない。例え、君主である月でも禁中に入るのは皇帝や皇族の許可が無いと入れない。他の方法だと、高名な人々からの推薦状や信任状。

いくら皇帝でも民の取り纏め役でもある人々や名家の人の推薦状を強制的に却下する事は出来ない。大陸に名だたる者の信任状を却下したら、その者を信じないと言うのと同義であり、弱体化した現体制の漢にはそれだけは避けたいことだと思う。

 

「そのために私の方で彼方此方、力になってくれそうな人を当たってみるよ」

「力になってくれそうな人々?」

「司馬家、荀家を始めとして、私、華琳……曹操たち、かな?上手くいけば、王允さんや何進大将軍にも頼めるかも」

「………………どんな人脈してるのよ……」

 

そうポツリと呟くと頭を抱えて卓に突っ伏してしまった。

華琳は皇帝の容態を安定させることには賛成すると思う。まだ華琳の方も力を蓄え、人材を集めたい頃だろうし。

司馬家は洛陽にいた時にお世話になった司馬防さんや………真名は顔を赤くして頑なに教えてくれなかったけど、仲達を含む司馬八達。

荀家は長女の荀彧とは会わなかったけど、当主である荀琨さん。

王允さんと何進大将軍は十常侍と敵対関係にあるから、利を説けばついてくれるかも?

あ、このみんなは旅の途中で知り合ったりお世話になった人々だ。……何進大将軍除く。

むくりと卓から頭を起こして深く深く溜息を吐いた後、心底疲れたような表情を浮かべているけど、仕方ないと思うんだけど……。旅の途中で出会ったら、出会ったものなんだしね。

 

「もういいわ……。まだ陛下には平安でいて貰わないと、この国は保たないわよ。特にこの時期は色々と不穏だから」

「………黄色い布を持つ賊の事?」

「ええ。まだ規模は小さいけど、この国の彼方此方に出現しているそうよ。最も、出現しても直ぐに討伐されるから、大した事無いのかもしれないけど………」

「けど?」

「その賊が掲げる旗が不穏極まりないのよ。ーー蒼天、既に死す。黄天、今正に立つべし。だったかしら」

「………ふぅむ」

 

確かに不穏。蒼天は漢を示す言葉。黄天が何を示すかはよくわからないけど、漢は既に死んだとあれば、不穏極まりないのかもしれない。若しかして………?

 

「ねぇ、詠。その黄色い布を持つ賊ってどんな身やり?山賊や盗賊みたいなもの?」

「最近ではそんな輩も増えたみたいだけど、最初はそうでも無かったみたいよ。そこは……五月雨、お願い」

「あい。や、響。暫くぶりさネ」

「おかえり、五月雨。一月ぶりかな?何か情報得られたの?」

 

カタリと音を立てて天井の板が外れて、そこから美女が音もなく、するりと私の側に降り立つ。五月雨こと郭汜であり、私たちの中でも一番の隠密の遣い手であり、詠が指揮する草の名称の隠密衆の新たな頭になって、時折情報収集で不在となる時がある。しかし、優秀な彼女ならばかならず何かしらの有益な情報を拾ってくれる。

 

「実はネ、この黄色い布を持つ賊は二種類いるみたいなんさネ」

「二種類?」

「そう。二種類ネ。一つは民、百姓、農民、商人を中心にした群。此れはなんて言えばいいのかネェ。偶像を追いかける群衆、と言えばいいのかネェ」

「偶像?」

「ワタシも初めて見たけど、歌って踊る三人の姉妹みたいさネ。その三姉妹を象徴するのが黄色い布なんさネ」

 

偶像って……、あいどる、とかってやつなのかな?五月雨に教えられたけど、洛陽の高級居住、商業区域では踊り子の事をそう言うみたいだけど、その三姉妹はそれとはちょっと違うみたい。

二つある群のうちの一つが民、百姓、商人の集まりだとすれば、もう一つは『恨みを持つ集合体』だね。

 

「確か、その三姉妹の名前は長女から天和、地和、人和。三人は異例なことで、真名で活動しているらしくて、姓とか、字は聞けなかったネ」

「え、誰も知らなかったの?」

「あの三人が活動を始めた時からずっと真名で活動しているらしくてネ、当時からいる追っかけでも知らないみたいさネ」

「ふぅん……。規模は?」

「それがネ…………。ワタシが見たところでザッと五万。下手すれば十万はいるかもネ。」

「………っ!?」

 

十万。十万かぁ……。ふぅむ……。偶像によく其処まで集まるもんだねぇ……、そんなに人気あるんなら、安定でも噂になっててもおかしくないと思うんだけど、それらしい噂は聞いたこと無いし……。

 

「ああ、でもネ。武器とか持っていないから、ただの三姉妹を追いかけるだけ見たい」

「本当に追っかけなのね……。害は無さそうだから放置でいいのかしら?」

「その判断を下すのはまだ早いと思うさネ。もう一つの群なんだけど、これがタチ悪くて、山賊、盗賊、逃亡兵、私兵の集まりのようさネ。主に近隣の村や集落を襲って略奪を働いていくみたいさネ」

「………?山賊や盗賊、逃亡兵は分かるけど、私兵ってどういう事?辺りの豪族が兵を挙げたって事?」

「それって……、もう立派な反乱よ!?」

 

確かに、叫んだ詠の言うようにこれは反乱と認定されていてもおかしく無い。何せ、略奪をする群の方にはさっき、詠が言った【蒼天、既に死す。黄天、今正に立つべし】の旗を掲げているみたいだし。

 

「幸い、規模はまだ小さいからそんなに脅威に感じるほどって感じじゃないさネ。ワタシが見てきた辺りだと、数百から二千くらいだったネ。他のところはわからないけど」

「このくらいの規模なら、自然と消滅するか、洛陽軍が直接動くでしょ。私たちは今のうちに兵を育て、街を発展させながら匈奴や西羌の騎馬民族との交易を図り、友好を結ぶわよ」

 

二人は楽観視しているけど、なんだろう。この嫌な胸騒ぎは?何か良からぬ事が起きているんじゃないかって感じがする。

ん?ーーーっ!早速!?

 

「詠!」

「え?」

「危ないッ!」

 

私が叫ぶと五月雨も気づいたようで、すぐに詠を引っ張って二足下がると、先ほどまで詠が座っていた所目掛けて矢が飛んできた。

狙った奴は……彼処か。へぇ……、あの塔から狙ったんだ、相当な腕前だね。でも、私がいる時に狙ったのは間違いだったね。するりと詠が座っていた椅子と卓の前に立つ。

 

「ほへ?」

「あい?」

「え、ちょっ!?」

 

二人の間抜けた声と五月雨が慌てる声が聞こえるけど、それよりもヒュルヒュルと音を立てて飛んでくる二本の矢の射線の前に手のひらを広げて待ち構える。

四……三……ニ……一ッ!

指の間を鏃が通って行くのが感覚で分かる。手を後ろに引きながら指に力を入れると、拍子抜けなほど簡単に掴めた。って、あれ?矢羽の付け根に白い布?

 

「「はい?」」

「詠、なんか手紙っぽいよ?あ、逃げた」

「いやいやいや、待ちなさい。響、手を見せなさい!」

「ん?はい」

「ええ………あり得ないわよ!?切り傷どころか、火傷すらしてない!?」

 

え?あの程度の矢で火傷する訳ないじゃん。それにゆっくり飛んでいたからあのくらい、そこそこ強い人なら簡単でしょ?(呂風のそこそこ強い人の基準は関羽辺りであるため、一般の当てには成りません。呂布は結構強い。趙雲はまあまあ強い。夏侯惇はそれなりに強い)

 

「そんな事はどうでもいいでしょ。それよりも手紙が先じゃない?誰からなんだろ?」

「いや、どうでもよくないんだけど……」

 

ぼそりと詠が疲れたように何か呟いているけど、矢羽から布を外そうとしていて、聞こえなかったな。

お、布が取れた!どれどれ、はいけーん………って、これは……。

 

「……詠、大変だよ」

「何よ?」

「帝からの血勅。それも私たちの将来に関わる重大な事」

「ーーーは?え、ちょ、ちょっと見せなさい!」

 

ーーー朕はもうじき死ぬであろう。朕が死ねばこの洛陽の都は荒れに荒れ果て、朕はご先祖様に顔向け出来ぬ。故に、安定の地を高祖様の時代の繁栄にまで押し上げた董仲穎を洛陽に呼び寄せ、相国としたい。他の者たちにもそれぞれ相応しい位を勅する。

此れは朕の我儘であるという事は心得ている。されど、朕が愚かであったが故に洛陽の、否。漢帝国に住まう民を不幸にさせてしまった。せめてものの償いに洛陽の都だけでも繁栄させて欲しい。

今の洛陽は十常侍によって権力を握られ、病の床に伏せる朕には最早、密かに主に書を託し、頼む事しか出来ぬ。そして、我が子である弁と協の二人を頼みたい。

重ねて言うが、此れは朕の我儘であると心得ている。しかし、それでも朕には董仲穎、其方にしか頼めないのだ。どうか、朕の最期の頼み、聞き届けてくれぬか。ーーー

 

「そんな………!此れって、事実上遺言のようなものじゃない!」

「陛下も其処まで容態が悪いみたいさネェ………」

「うーん……。なんかおかしいんだよねぇ……」

「何がよ!?此れは陛下が危篤にあるってことじゃない!」

「だったら、何故、正式に召喚命令を下すのではなく、こうして矢文で召喚命令をくだすんだろう?帝の容態が悪いのは民には知られていない。多分、私たちみたいに隠密を持っている勢力くらいじゃないのかな」

 

だって、帝の容態が悪いってことは民には知られたくないだろうし。特に十常侍の面子はね。今の十常侍の権力は帝が健在であるからこそ、振るえるものであり、帝が揺らげば、十常侍の権力も揺らぐ。

十常侍の面子は帝が選ぶものであって、なろうとしてなれるものではない。故に、帝が崩御すれば、十常侍も権力を失う。あの権力の操り人形と成り果てた十常侍にはそれは何としてても避けたい筈。

でも、『朕』という言葉は帝のみが使うことを赦された言葉であり、如何に十常侍でも朕という言葉を使って虚偽の書を書く事は出来ないだろう。

だけど、其処に違和感を感じる。

 

「ん?………この血書、帝が書いたものじゃないみたいだね」

「はあ?どうしてよ?」

「字が綺麗過ぎる。病の床に伏せているのならば、字はどうしようもなくある程度崩れるんだけど、ほら、見てみて」

「………確かに、綺麗過ぎるわね。そう言えば……、帝のみが使える印字も無いわ」

「印字?」

「ええ。確か、月がここの太守を任される時の勅命にもあった筈。ええと、何処にしまったかしらね……」

 

印字って、確か、判子の事だよね。実際に見たことは無いけど。

 

「あった、あった!これよ。この字よ」

「確かに帝の字を崩したようなものみたいさネ」

「この印字は帝のみが身につける指輪に刻まれたものなの。それが無いって事は、帝の血書では無いってことね。ふぅ、助かったわ。……響?」

「……いや、助かってないよ。炙り出しだ」

「………え?ーーーッ!?」

「こ、これは………!」

 

ーーー董仲穎に命ずる。十常侍を討てーーー

 

甘い柑橘のような匂いがしたから、ふと司馬徽先生に教えられた事の一つを思い出して、蝋燭の火にかざしてみると、やっぱり赤い字が浮かび上がってきた。

それには印字がある、真摯証明、帝の言葉。それは疑いようの無い。

 

「遺言っぽいのはこの勅命の隠れ蓑だったんだね。それにしても、十常侍を討て、かぁ……。帝も無理難題を押し付けてくるものだね」

「………そのために月を相国にして、洛陽に呼び寄せようっていうの?……ふさげるんじゃないわよ……!月は道具なんかじゃない!一人の女の子なのよ!」

「でも、これは『勅命』さネ。此れに逆らえば逆賊となるのはこっち。全く……、八方塞がりってのはこういうことをいうんだろうネェ……」

 

本当に想像外のことばかりだよ。どうしたもんかなぁ。上手く行けば、漢帝国を立ち直す事ができるかもしれない。失敗すれば、私たちは逆賊となって追われる立場になる。確率は成功二割、失敗八割だろう。

んー……。今はできる限り情報を集めなきゃ……。あの人たちにもお願いして洛陽に来てもらおうかな?私たちの味方をしてくれる人は多ければ多いほど良いしね。

あ、華佗も急いで洛陽に行って貰わなきゃ。

やれやれ、ようやく安定が平和になってきたかと思えば、次は洛陽か。




次は閑話を入れたいと思いますが、何か書いて欲しいこととかありませんか?
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