匈奴襲来編であり、呂風、呂布大暴れです。
第2話 新生董卓軍
私たちが董卓軍に参入して、少し経ったある日、詠が行政や軍略などを考案する部屋に私たちや霞たち董卓軍の主力の将が集まっていた。
詠があらかじめ放っていた密偵から敵に不穏な動きあり。と一報が入ったから急慮対策を立てようとして、詠が地図を見てうんうんと唸っていた。
「詠、ここの霞たちの動きをこう変えてみたらどう?」
地図とにらみ合っていた賈詡……詠の後ろから覗いてみると、敵軍勢の動きを想定して策を考案しているところだった。
華雄が真正面で防戦しながら敵を引きつけて、霞の騎馬隊はぐるりと迂回して側面から突き、私と恋は霞の反対側から伏兵で強襲をかけるという策略のようだった。
でも私からみるとまだ詰めが甘いところがあるように感じる。だから、ちょっと提案してみた。
霞の動きを迂回するのではなく、最初から敵の軍勢から遠く離れず近すぎずといったところで沿って動かして、華雄の引きつけはそのままにして、私と恋の伏兵が成功したら、霞が騎馬隊の突進をもって奇襲を掛けるという方法だ。他にも策はあるけど、今回の敵ーー匈奴には充分通用する。これがもし、馬騰率いる軍勢だったら、もっと高度に練った策が必要であるけど。
「……言われてみればそうね。そっちの方が虚を突きやすいわね。ありがと」
「あ、あと、私と恋は同じ隊にして、兵数は少なめで。浮いた兵のうち、歩兵は華雄に、騎兵は霞に回して」
「響、あんたと恋はそれで大丈夫なの?」
「誰に物をいっているのさ?私と恋だよ。ーーー伝説を知らない訳ではないでしょ?」
私と恋がこの5年間の放浪の旅であちこちで立ててきた伝説。大げさに誇張されているっぽいけど、しっかり真実が紛れ込んでいるのがあちこちに流れている。だから、気づいた時には既に遅かった。
でも、真実もあるのだから、それを上手く使えば………。
「そう、ね……。まぁ、確かにあんたたちだったら問題なさそうだけど、今回の相手は匈奴の中枢とも言える精強の軍よ。幸い、軍師と言えるような知恵者がいないせいで単純に進軍してくるだけとはいえど、総勢七万は脅威なのよ?」
「へぅ………。それに対し、私たちは精々二万が限界……。匈奴の騎馬隊の突撃力は並大抵のものではありませんし……」
「うーん、だったら、華雄が7000の歩兵を率いて、匈奴の前に立ち塞がる。勿論、陣や堀、馬防柵は設置する事は必須かな。そこから弓矢で攻撃を仕掛けて、騎馬隊の勢いを殺したら、歩兵で攻撃するのが一番だね」
それで浮足立ってくれればいいんだけど、匈奴も策がないとはいえど、確かな騎乗弓の腕と強力な突破力は脅威だ。だけど、その突破力を殺してしまえば騎馬隊など役に立たない。弓も確かに脅威だけど、騎乗であるため、そんなに豊富な矢は無いから、暫し耐えれば引き上げるだろう。
「馬防柵が突破されたらどうするの?」
「簡単に侵入出来ないように堀を作っておくんだよ。馬じゃ乗り越えられないほどの高さ、幅を揃えたものが必要だね。それに、私たちも華雄が匈奴とぶつかれば、それに協調して、側面から真っ直ぐ匈奴の大将を目指して突撃する。反対側からも霞が騎馬隊で突撃。上手くいって大将の首を取れれば、匈奴は混乱に陥って退却すると思う」
この策は隘路であれば、最大限の威力を発揮出来るのだろうけど、あいにく、今回は森が点在する盆地での戦だ。騎馬隊による逆落としの奇襲や上から落石や弓矢による攻撃は使えない。
「それだと、二人に重負担になりかねないわよ?下手したら二人だけ敵陣に取り残される可能性もあるわよ」
「戦況をみて動くから。あとは本陣から銅鑼や太鼓、または狼煙とかで合図を送ってくれたら、それに合わせて動くよ」
「わかったわ。………それにしてもよくそんなポンポン策が出てくるわね?何か学んでいたのかしら?」
「3年前だったかな?荊州を放浪していた時、司馬徽先生の学び舎に立ち寄った事があって、一年くらいだったけど、そこで手ほどきを受けたよ」
いやぁ、あの時の司馬徽先生の個性は強烈だったな。基本的は怠け者なんだけど、原石を見つけた時のやる気は凄かった。私もお目に適ったようで、短い間だったけど、一対一で軍略についてのイロハを叩き込まれた。
あ、孔明……【朱里】と鳳統……【雛里】、徐庶……【柚里】とも意見を交換しあえたのいい刺激だった。
「はぁ!?あの司馬徽先生!?ちょっと待って、あんたの雅号は?」
「【鎮風】。『今は風も吹かない凪であれど、一度吹けば暴風となるであろう』って言ってたよ」
「あんたの才能どんだけよ……。武力も並大抵じゃないし、軍略も相当出来るときた。反則じゃないのよ……」
そんなこと言われても困るなぁ。
武術は放浪の旅をしているうちにどんどん上達して行ったし、恋とも手合わせしながらの旅だったから、此処まで強くなれたと思う。学問は朱里たちや詠と比べると劣るけど、これから研鑽していけば一角の軍師にもなれると思う。
司馬徽先生も『一年程しか手ほどきしていないが、【臥竜】にも匹敵する才能がある。競い合う相手がいれば、お前のその智略も上を見ることになるだろうな。だからこそ、お前に【鎮風】と雅号をつけた。風は何処までも自由。何かを癒す風となれば、破壊する風ともなれる。その選択を取る事が出来るかはお前次第。私は此処からそれを見届けさせて貰おう』と言っていた。
思案にふけっていると、伝令兵が駆け込んできて、匈奴襲来の一報。
「………来たわね。聞きなさい!月とボクは華雄とともに12000の兵で陣を築き、そこで指揮を執るわ。霞は5000の騎兵を森に伏せて」
「私と恋は残る3000で様子を見ながら強襲をかける。でいいんだよね。でももっと兵は少なくてもいいんだけど……」
ぶっちゃけ、足手纏い。いや、董卓軍の兵士を悪く言うわけではないんだけど、周りに味方が多いと中々思い切って月光叉双を振り廻せない。間違えて味方を斬ったら洒落にならないからだ。今までは私と恋の二人で軍勢に斬り込んでいたから、味方と協調しながら戦うのは中々慣れない。
私のこういう考えが理解出来たからなのか、理解出来なかったからなのかは分からないけど、キッと睨みつけてくる。
「あんたね、今まではそれで行けたのかもしれないけど、今はもう董卓軍の一人の将だという自覚を持って欲しいものだわね。あんたたちの身に万が一の事があれば誰が悲しむと思っているのよ?」
言葉が無かった。こういうことを言われたのは初めての事だから、虚を突かれてしまった。恋もきょとんとした可愛らしい顔を晒している。
「なんや、うちら仲間やろ?真名を交換した時点で友達やないか」
あっけからんと言い切る霞。
恋もきょとんとした顔だったのがだんだんと嬉しそうな顔になって、恥ずかしいのか首元のマフラーで顔を隠してしまう。私も頰が熱くなるのを感じる。
「おっ、なんやなんや、照れとるんか〜?かーわええの〜」
にししっと白い歯を見せて笑う霞。そのまま、恋の顔を覗き込むように身をかがめたみたいだけど、そこはマズイ。
「〜〜〜っ!」
「げぶら!?」
照れ隠しで放った恋の拳が霞の頭に叩き込まれ、地面に殴り落とされた。そのままプイとそっぽを向く恋。
苦笑しつつ、振り向くとこちらをニヤニヤと笑いながら見つめてくる月、詠、華雄の3人。何だか恥ずかしくて、思わずその場を飛び出してしまう。
でもこの暖かさが好き。どうしようもなく嬉しく感じる。
恋と一緒に3000の兵士と共に森に隠れている。やっぱり詠に言い負かされて3000の兵士たちをつけられた。まぁ、頼りにされるのは嬉しいことだし、これが繋がり。恋以外にも誰かと繋がる事。それがとてつもなく嬉しい。自然と頰が緩むのが分かる。この繋がりだけは大切にしていきたい。
遥か遠くには土煙がもうもうと立ち登り、地鳴りのような音が響いてくる。
遂に匈奴の軍勢が漢に侵入してきた。
近くの木の天辺まで登って物見をしてみると遥か彼方から黒い影のようなものが横一杯に広がって相当な速さで進軍しているのがよく分かる。
反対側を見れば、巨大な陣地が構成され、幾重にも張り巡らされた馬防柵と深い堀が作られ、その向こうに華雄が率いる歩兵が弓を持って待機して、さらにその奥に月と詠がいるであろう本陣があり、董の旗が靡く。
手に持った赤い旗を振ると本陣からも赤い旗が振られる。
作戦開始の合図だ。
こうしている間にも匈奴の騎馬軍はみるみるうちに迫り、馬の輪郭と人影が見えてくる。
地鳴りもますます大きくなり、もう轟音と言ってもおかしくない程の音が辺りを震わせる。
「来た来た。作戦通りに事は進んでいるよ。改めて作戦を確認しておこうか。先ず、華雄が敵を引き付けながら弓矢で応戦する。敵の動きが少し止まると思うんだけど、その隙に私たちが強襲を掛けると同時に霞……張遼も突撃を仕掛ける手筈。でも、私たちは真っぐ敵将を狙って吶喊。いい?」
「て、敵がその動きに適応してきたらどうするのですか……?」
恐る恐る話しかけてきたのは郝昭。字を伯道。今回の戦で私が副官として抜擢した少女。初めて見た時、才能がある子だなと思って、ちょっと兵の指揮を見てみたら、優秀な指揮官だったから、詠に言って副官にしてもらった。私と恋は兵を指揮した経験などないから、こういった優秀な副官がいてくれて助かる。
「その時は私と恋を残して撤退。思いっきり暴れられるから」
「そ、そんな、両将軍を残して引けませんよ!?」
「大丈夫大丈夫。数万の軍の中で二人で斬りまくったのは何回もあるから。生きて帰るよ」
「呂風将軍……」
あ、遂にぶつかった。
やっぱり、華雄も指揮上手いなぁ。うまく匈奴を引きつけて、柵や堀を上手く使って次々と射落している。
あ、青い旗が振られた。私たちも動こう。
「合図!強襲を掛けるよ!」
「「「オオオオオ!!!」」」
私と恋が真っ先に駆け出し、後ろを郝昭たちがついて走り出すのを感じる。
3000人が一斉に走り出すとまるで地鳴りのように大地が鳴り響く。
兵士の顔を見ても一人一人が闘志に満ちたいい顔だ。私たちがここで負ければ、次に死ぬのは自分の大切な家族だという事は皆知っているからここは何としても勝たなくてはという決意の顔だ。こういう顔は好き。この顔を守りたくなる。
「……うん!」
「………!〈コクリ〉」
隣を走る恋に顔を向けるとちょうど向いてきたので、ちょっと微笑んで頷くと、少し頰を赤くして薄い微笑を浮かべて頷き返してきた。
そのまま少し走ると、森を抜けると視界一杯に騎兵が蠢き、人が入る隙間など無いように感じられたけどそれがどうした。
隙間が無いなら作ればいい。
片手で持った月光叉双の柄を捻ると先端が外れ、体ごと槍を振り抜くと風鳴りの音と共に矛が飛んで行き、数人の騎兵を斬りとばす。斬り抜いた矛と繋がる鋼鉄の紐を巻き取りながら次の騎兵の懐に飛び込んで飛ばした矛と反対側の矛でさらに数人を斬り捨てる。
ズルリと音を立てて騎兵の体がずれ落ちる。頭が。胸が。胴体が。足が。腕が。容赦なくあるべきところから斬り巻かれ、宙を舞う。
月光叉双を振り抜くたびに血煙が吹き出し、辺りを赤く染めあげる。
少し離れたところでは恋が方天画戟を振り回して騎兵を殴り飛ばし、他の騎兵に叩きつけ、返す刃で胴体を切り離す。
最早私たちの後ろにはおびただしい死骸が転がるだけとなり、その上を配下の兵士たちが雄叫びをあげながら突き進んでいく。
反対側からも霞が騎馬隊を率いて突撃しているようで完全に匈奴軍は浮き足立っている。
大将らしき人物が声を張り上げて統率を取ろうとしているが、一回浮き足立った軍は中々立ち直せない。
でも、大将の周りにいる兵はすぐに落ち着きを取り戻し、私たちから大将を守るかのように立ちはだかり、壁を厚くする。
そんな動きを見た霞は躊躇いなく敵将に向けて突撃を仕掛ける。
さぁて、私たちも往こう。
side郝昭
私は姓を郝、名を昭、字を伯道。
一介の兵士だったのが、昨日新たに加入した【武神】と名高い呂風将軍のお目に適ったのか、一介の兵士から副官に抜擢された。
訳も分からなかったけど、同僚達には口々におめでとうと祝福してくれた。
初めて呂風将軍に対面した時は思わず見惚れてしまった。純粋な白。雪のように真っ白な腰まである長い髪と柘榴石のような赤い目。そして、この世のものとは思えないほど可愛らしく整った顔立ち。
あらかじめ、賈詡さまから詳細を話されていなかったら女性の方かと勘違いしていただろう。
この方が本当にあの幾多の伝説を残した【武神】なのだろうかと疑ってしまったのも仕方ない事だと思う。
だけど、そんな考えも愚かだったと今、目の前で起きている殺戮の嵐を見るとそう痛感してしまう。
本当に私たちと同じ人なのかと疑ってしまうほどかけ離れた武。武人の極みへと達した武神。
聞こえはいいけど、実際に見ると冗談じゃないって思える。私たちが一回腕を振るたびに呂風将軍は五回は槍を振るっている。手がブレて見える度に血線が走り、血飛沫が噴き出し、匈奴兵の悲鳴が上がる。武器を振るうのが速すぎる。
でもそんな殺戮に見惚れてしまう自身がいた。武人の極みへと達した白き武神の舞う演舞は壮絶な美しさを、狂い咲く1つの華麗な華となり、自然と目が奪われる。
悍ましくも美しい。恐ろしくも美しい。
つい、呆然と突っ立ってしまう。非現実的な風景に目が奪われてしまう。戦場に舞う煌めく白い髪と線を引く赤い目。完成された壮絶な芸術。
「郝昭!ぼさっとしない!動く!」
「ーーーっ!?」
そ、そうだ、此処は戦場!動かないと殺られる。でも、気づいた時は匈奴兵の剣が目の前に迫る。時が遅くなったように感じる。
こんなところで死ぬの……?
目を閉じて迫り来る刃に構えようとしたけど、何時までも来ない事に不思議に思って目を開けると、匈奴兵の体に鋼鉄の糸で繋がった矛が突き刺さっていた。
鋼鉄の糸を辿るとやはり、呂風将軍の持つ月光叉双に繋がっていた。私はこの方に救われたのだ。
「郝昭。立てる?もう少し踏ん張れる?」
「ーーーはい!この郝昭伯道、貴方に精一杯ついていきます!」
私の答に満足したのか、目を細めて笑う呂風将軍。頰が熱くなるのが分かるけど、今はまだ言う時じゃない。私ももっと強くなって呂風将軍を支えられるようになるまでこの想いは胸にしまっておこう。
side詠
賈詡。字を分和。真名を詠というわ。
月とは幼年からの付き合いがあったから、月が旗を立てたいと言った時は驚いたけど、今は苦労しつつも月を支えて、1つの城郭都市【安定】を任される太守の位置にまで登り詰め、涼州刺史の階位も朝廷から任命された。
そして、華雄、霞の有能な将軍も仕官してくれた。ようやく軌道について、度々侵略に遭っている安定も漸く復興し始め、少しずつだけど、街にも活気が戻り始めた。
そんな折に霞が連れてきた二人の武人。最初に見た時は仲の良い姉妹かなと思っていたのだけれど、あの【武神】と【飛将軍】の二人だとは思わなかった。確かに二人の伝説は此処まで聞こえていたから、出来れば来て欲しいと思っていたけど、こんな辺境の都市にまで来る訳が無いかと半ば諦めていた。けど、真逆本当に来てくれるとは思わなかった。
何でも、偶々武者修行で放浪の旅で涼州を訪れていたらしい。各地で様々な君主に声を掛けられたそうだが、その話を全て断って旅を続けていたそうだ。
だが、何でボク達の所に仕えようと思ったのかと聞くと、何となく、だそうだ。思わず脱力してしまったけど、一回仕えたら、その主に万が一の事がない限り裏切るような事はしない、どこまでもついていくつもりだと言い切る。
思わず頰が緩んでしまいそうになるのを必死に抑えて、素っ気ない返事をしてしまった。
そして、驚いたのは、ボクたちの中でも一番強い霞が手も足も出ずに負けてしまったことわだった。見たことのない1つの柄に2つの矛がついた槍と腰に差した刀を使いこなして霞の攻撃をいとも容易く弾くと目に見えない程の速さで槍を振るい、刀を振るって霞を追い詰める。そして、目を疑ったのは矛に鋼鉄の紐がついて、それを自在に操るところだった。こんな武器、今まで見たことがない。
それに、霞が手も足も出ずに負ける程の磨かれた圧倒的な武。思わず身震いしてしまう程だった。
更に驚かされたのは武人一辺倒かと思いきや、謀略にも明るいこと。ボクが考案した策の甘い所や無駄な所を一目で看破し、修正案を出す、慧眼。
かの【水鏡】で有名な司馬徽先生の元で一年程学んだと聞いた時は純粋に羨ましいと思った。司馬徽先生に雅号をつけられる事は司馬徽先生にその才を認められたということ。
でも、一年程しか学んでいないからまだまだ未熟だという姿勢には好感が持てる。こいつならボクと一緒に月ちゃんを支えていけるかもしれないと淡い期待をもたせてくれた。
極め付きは現在進行形で侵入している匈奴との戦い。伏兵として強襲をかけた響たちは瞬く間に匈奴の軍勢のど真ん中に斬り込んでいく。馬を使っているわけでも無いのに、とんでもない突破力だ。その先頭で武器を振るうのは響と恋。二人が武器を振るう度に匈奴兵が空を飛び、道を斬り開く。
そんな非常識な光景を見たボクの脳裏に二人が立てた伝説の1つが浮かぶ。
ーー烏丸の三万程の大軍に対し二人のみで飛び込み、一万程斬り捨て、大将の首級を挙げたという俄かに信じがたい伝説。
だが、目の前の光景を見れば、否が応でも納得せざるを得ない。一人の人が万を超える大軍のど真ん中に切り込み、それで尚圧倒する。完成された美しい武は人にして人ならざるものと直感でそう感じる程、かけ離れたものだった。
模擬戦で霞が『乱世の化身、戦乱そのものや』と言っていたけど、その本当の意味がよく分かった。
人とは思えない圧倒的な強さ、武。そして、未熟といえど、司馬徽先生に【鎮風】と雅号をつけられた若き才。
そのどれもがボクにとって羨ましいことだった。月の支えになるなら、ボクももっと強くならないとと思う。
………でも、響ならこう言うんだろう。
皆で支えていけば良いんじゃない?と。会ったばかりで一ヶ月も経っていないけど、何となくこう言いそうだなという事くらいは分かる。
でも響と一緒に強くなれるならそれも良いかもしれないと思う自分がいる。この気持ちは何なのかよくわからないけど、不快なものじゃなく、心地良い。
「呂風将軍が敵軍総大将の首級を挙げました!匈奴兵は戦闘を中止して撤退を始めました!この戦、我らの勝利です!」
「直ちに霞……張遼に追撃を指示しなさい!呂風隊も張遼隊に合流するようにと伝達して!」
「はっ!」
………本当にやったのね、響。純粋に貴方に憧れる。
「詠ちゃん、何だか顔赤いよ?何だか丸で恋する乙女みたい」
「そ、そんな事ないわよ?そ、それにそれを言うなら月もそうじゃない!」
「うん、私、響に一目惚れしちゃったみたい」
思わず呆気に取られてしまった。真逆、月が響に一目惚れするとは思わなかった。でも、今思えば、時々、月の様子がおかしい時があったけど、今なら納得できる。月も女の子だ。異性を好きになる事だってあるのだろう。
自分に素直な月が羨ましい。ボクは捻くれているから………。
「詠も響の事好きでしょ?」
「………なんでそう思うの?」
「乙女の勘?何となくだけど」
勘、鋭すぎでしょうが。でも、此処まで言われちゃ、認めざるを得ないのかもしれない。でも、想いを告げるのはまだ無理。ボクは響にまだ吊り合わないから。もっと強くなって認めて貰えたら、この想いを告げる。
今は目の前の事に取り組む事にしよう。
もう一刻(二時間)経ったから追撃も止めたことでしょ。匈奴の騎馬隊の速度は侮れない。敵陣のど真ん中に食らいついたまま侵入して気付いたら包囲されていたなんてことになったら目も当てられない。でも、引き際をしっかり見極める目を持っている霞と即席で策を張り巡らせる響が居れば深追いすることもなく、そこそこで引き上げるでしょう。
「もう少ししたら張遼隊と呂風隊が戻るわ。簡易的にだけど、お腹がふくれるものを作っておくように伝令して」
「はっ」
幕舎を出て行く配下の兵士を一瞥して、月と少し話していると、心待ちにしていた一報が入る。
「張遼将軍、呂風将軍、呂布将軍、華雄将軍只今ご帰還!」
「戻ったでぇ」
「流石は匈奴の騎馬隊といったところだね。中々追いつけない上に後ろに向けて騎射する技能も見せつけてくるとは」
「響と恋が居なかったら、逆にやられていたかもしれへんわ」
「ぶっつけ本番だったけど、上手くいってよかったよ」
やっぱり匈奴は侮れないという事ね。背後に騎射することができるのは匈奴という騎馬民族だけでしょうね。でも、響と恋が居なかったらやられていたというのはどういうことなのかしら?
「いや、大したことじゃないけど、武器を振り回すして突風を生み出して矢の勢いを殺して切り落としたり弾いたりしていただけだよ」
「いやいやいや、何言っとんねん。充分大したことや!矢を切り落とすのもそうやけど、突風で矢の勢いを殺せるちゅうの普通出来へんわ」
なるほど、此処で響の事で1つ分かったことがある。響の認識と私たちの認識、かなりズレていること。多分、常識を教えてくれる存在が居なかったから、自身と恋で出来ることが判断ラインになったんでしょうね。
でも、武器で突風を生み出せるって………いや、模擬戦で天を割ったことから考えると真実なのかもしれない。
「ま、どんな方法だったかは後にして、今は勝利を喜ぶべきだろう?外にいる兵士どももウズウズしているようだぞ」
「それもそうね。響、勝利の音頭をとりなさい」
「え、ええ!?普通、其処は月がやるものじゃないの!?」
「総大将の首級を挙げたんだから、あんたがやるのよ!」
ちょっとだけ羞恥で頰を染める響も可愛らしくて、新しい姿を見る事が出来たと喜ぶべき。月の方を見ると同じ事を考えていたのか、微笑みを浮かべていた。
「むー……。仕方ないかぁ。ーーー敵の総大将の首は討ち取った!敵軍は這々の体で逃げ出した!我らの……勝利だァァッ!!!」
「「「ウオオオォォオオ!!!」」」
幕舎から出た響を追うと、その華奢な体のどこから出るのか分からないほど大きな声で、声高に勝利を宣言し、ボクたちも、兵士たちも歓喜を爆発させて、思う存分雄叫びをあげる。
今回の匈奴の侵攻、響と恋が居なかったら、相当苦戦していただろう。下手すれば、長安まで落とされていたかもしれない。其れ程の脅威を凌いだどころが、総大将の首級を挙げるという大勝を挙げられたのだから、その嬉しさは大きいだろう。
歓喜の声が大地を震わせ、天にまで届けと響きわたる。ボクはこの日を生涯忘れる事は無いだろう。乱世の化身。彼と出会えた日を。
此処で武将のパラメーターを数字化してみます。
呂風 万武 響
統率97 武勇147+10(月光叉双+10) 知力107+8(六韜+8) 政治82 魅力95
呂布 奉先 恋
統率79 武勇134+8(方天画戟+8) 知力68 政治47 魅力81
董卓 仲穎 月
統率81 武勇74 知力82 政治62 魅力91
賈詡 分和 詠
統率64 武勇32 知力101 政治99 魅力85
張遼 文遠 霞
統率103 武勇104+5(黄竜偃月刀+5) 知力65 政治68 魅力86
華雄?? ?
統率94 武勇95+4(金剛瀑斧+4) 知力51 政治35 魅力82
郝昭 伯道 ?
統率89 武勇73 知力68 政治41 魅力83
想像であるため、本来の三国志とは違うでしょうが、ご容赦くださいませ。
そして、このパラメータは成長限界ではなく、現在のものであり、呂風たちはこれからも研鑽を続けますので成長していき、パラメータも大きくなります。