残された室内は、どうしようもない空気が漂っていた。
それをつくり出したのは、俺なんだけど、なんともまあ。
悪いことしたなぁというのは、思うんだけどね。
ため息をついたら、思っていた以上に部屋に響いた。
集中する視線。少し気恥ずかしい思いをしながら、首を振る。
その視線の中から、俺を見るスコールに呼びかけた。
「スコール」
「代案があるのか」
ま、そりゃあんだけ色々言ったからにはね。
明確な代案って訳じゃないけど、次やることは明確である。
やれることとやれないことははっきりさせとこうってことで。
「ないけど、偵察ぐらいなら出来るでしょ」
「敵の総数と目標でいいか」
それぐらいしか、今の俺たちにはやれないもんねぇ。
それ以上調べるとなると、もっと時間が掛かってしまう訳で。
まあ、その総数もたいしたことはないとおもうんだけどさ。
だって、この後、実際にサイファーが単独で進入できるのだ。
その混乱の最中を突いてとはいえ、スコールたちも着いていける。
ならば、その護衛の質も量も、大したことはないと思われる。
「他に出来るならお願いするけど」
「いや、無理だな」
「でしょ」
とはいえ、これは想像にしか過ぎないからね。
実際に確かめてもらわないと、実際の数はわかりようがない。
「ちょっと待て!
作戦はしないんじゃなかったのかよ!」
スコールに偵察を依頼する中。
森のフクロウのリーダーであるソーンさんが割り込んできた。
「ああ、作戦はしない、情報が足りないからな。
だが情報を集めれば何とかなるかもしれないだろう」
「ならそういえば良かったじゃないか!」
「勘違いしたのは彼女だろう」
「スコール」
今にも口論を始めそうな二人をおしとどめる。
この段階でリノアさんにSeedの限界を理解してもらい。
スコールに悪印象を抱かせないために、俺が代理でやったけど。
流石にこれ以上の口論を引き起こすつもりはない。今のとこは。
「放送がいつから始まるか判らない。
割り込めそうならいいけど、基本は偵察だけで戻ってきてね」
「ああ」
「それと、森のフクロウの誰かに案内を頼みたいのですが」
と、ソーンさんではなく、もう一人の森のフクロウに目を向ける。
割り込めるなら、本当に割り込んでも別に構わないのだ。
その方が、今後の予定も立てやすくなるわけではあるので。
というか、サイファーが乱入するのなら乱入しないわけに行かない。
サイファーとキスティスが来るのなら、キスティスは助けないと。
そのためには、少なくとも放送局の近くに待機だけはしてもらいたい。
「それなら俺が行くっす」
「ワッツさん、よろしくお願いします」
促したとおりに、ワッツさんが引き受けてくれる。
流石に、この状況でソーンさんに任せることは出来ないし。
あれだけ好き勝手言っといて、人に任せるとか無理である。
「でも、だからってあんな言い方は……」
部屋の片隅でソーンさんが唸っている。
罪悪感は残るけど、命をかける実行班の身を守るのは俺の仕事だ。
そこだけは譲るわけにはいかない。それが俺の線引きである。
リノア専用特別乗客室への扉は、ただ静かにしまっていた。
原作では、少し流れが違った。
seedへの期待を裏切られるのは、誘拐作戦の直前であった。
大量の護衛に怖気づいたリノアが作戦変更を提案、スコールと口論。
それで作戦を中止、解散を宣言している時に、放送は始まった。
そこに現れるのが、ガーデンを脱走したサイファーだ。
リノアが依頼したと聞いて、乱入。大統領を人質に取ろうとする。
それは成功し、大統領にガンブレードを突きつけるまで至る。
サイファーを追いかけてきたキスティスが更に乱入。
それと、放送を見たスコールたちが詰めかける。
その中でゼルがガーデンと口走り、ガーデンの一味だと知れてしまう。
混乱した場に魔女イデアが現れて、大統領とサイファーを連れ姿を消す。
その後、サイファーは、魔女の騎士という言葉に憧れて。
そのまま魔女イデアの騎士として、俺たちと敵対をすることになる。
それが本編のシナリオだ。
だが、この現実にはそれがそのまま上手く行くとは限らない。
サイファーは謹慎中ではあるがseedになり、来るかどうかは判らない。
少なくとも、原作よりもサイファーとは良好な関係であるはずだ。
更に、サイファーが乱入したとしても、キスティスが来るとは限らない。
もしかしたら、本編よりも冷静に場を収めるかもしれない。
ゼルが余計なことを口走らないかも知れないし、未来はわからないのだ。
だからこその偵察だ。
彼らが来るというのなら、キスティスを助ける必要がある。
サイファーは、ここで助けるのは無理というものだろう。
彼にとって、魔女の騎士というのは夢そのものであるはずだ。
だから、どこまで何を引き換えにするかは、俺には判らない。
原作ではガーデンを引き換えに、その夢を叶えようとしたが。
中途半端に交友関係がある以上、もしかしたらこっちを優先するかも。
そういう風に思ってしまうぐらいには、仲良くしてきた積もりだ。
彼だって、スコールと同じく頼れる人が居ない子どもだったのだから。
どちらにせよ、来るか来ないかはまだこの段階では判らない。
来ないのならば無理に乱入するのではなく。
ただ放送を見て、危険だとスコールたちに判断してもらえばいい。
その後は、状況の変化により任務は一時停止。
ガルバディアガーデンに移動という流れを提案すること。
そうすれば、俺の知っている流れと大きく変わらないでも済むはずだ。
俺にとって怖いのは、必要以上に流れを変えてしまうこと。
シナリオには、大きな変化を生み出す必要は、ないのである。
この世界は俺が居なくてもHAPPYENDに終わる世界なのだから。