目が覚めたら外がなんだか騒がしい。
何があったんだろうか。もしかしてここがバレちゃったのかな。
アジトがバレちゃったなら、森のフクロウの一大危機じゃない。
でもSeedがいるんだもん。
たとえ、私が望んだものとは違っていても、スコールたちは強い。
きっと私たち全員を逃がしてくれるんだろうと素直に思えた。
そんな風に現実逃避していると、部屋の扉が控え目に叩かれた。
一瞬、風のざわめきかと思うような弱さで、少しだけ戸惑った。
小さく「だれ?」と問いかけると、一拍おいてから扉が開かれた。
――入って来たのはシオンだった。
Seedの中では、戦闘向きじゃないという男の子。大人しそうな子だ。
男の子としては小柄なその姿も、Seedであるということもびっくりだ。
私が知っているSeedとは、ずっと違ってた。
もっと大きくて、もっと強くて、もっと頼りがいがあって。
乱暴で、ガサツで、でもどこか優しくて、そんな人。
私はシオンが苦手だ。
さっきみたいに、淡々と作戦の不備を指摘してきたり。
まるで私たちのやっていることが無意味のような。
そんな冷たい見透かすような視線を送ってくることがたまにある。
私の知っているあの人とは、全然違っていて、冷たい。
そういえば、私はさっき彼に怒られたばっかりなのだ。
怒られて、逃げ出して。私は泣き疲れて眠ってしまったのだった。
そのことを思い出し、罰が悪くて思わず掛け布団を引き寄せる。
「な、なんのよう?」
ドモってしまった。恥ずかしい。
「敵襲だよ。アジトがばれたみたいだ」
「……みんなは?」
本当に、アジトがばれちゃったんだ。
これから私たちはどうなってしまうんだろうか。
「森のフクロウは撤退を始めた。
Seedは今偵察中だから」
「偵察?どこへ」
「放送局。
逃げながら説明するから早く」
寝起きの頭では理解が追い付かなかった。
それでも、彼が私を助けてくれようとしているのは判った。
苦手ではあるけど、助けてくれるのを抵抗する必要はない。
服はそのままだったから着替える必要はなかった。
武器とアンジェロを連れていけば、私の準備は終わりだった。
チャクラムシューターをセットしながら、私は彼に聞く。
「どこに逃げるの?」
「スコールたちと合流する」
スコールたちとってことは、別の場所にいるってことよね。
「どこにいるの?」
「判るから大丈夫だよ」
そういって彼は振り向いて、アジトを出て行こうとする。
それを追いかけて、小走りで走ろうとすると、直ぐに追いついた。
彼は、適合率が低いという風に話を聞いていた。
私も、ジャンクションはよく使ってる。
家から持ち出してきたジャンクションマシンを付けているのだ。
だから、私には簡単に追い付けてしまう速度だった。
でも、私はそれを不思議と、頼れないとは思わなかった。
彼には警備の流れもスコールたちの位置も判ってしまうらしい。
迷わず知らない路地に入って行ってしまう彼の後ろ姿を追いながら。
その小さな背中が、決して優しくないものだとは思わなかった。
逃走の途中、駅前の大通りで騒ぎが起こった。
何が起こったんだろう。少し前を走るシオンに聞いてみる。
するとシオンは、少し複雑そうな顔をしながら、私の質問に答えた。
「どうやら放送が開始したらしいな」
「放送?」
「大統領の目的が一体何か、確認してみないかい?」
そういって彼は大通りに入って行ってしまう。
人通りの多いところにいって、大丈夫なのかな。
捕まったりしないのかなと思いながらも付いていくことにした。
街頭テレビには、大統領と、それに剣を突き付けている男の人がいた。
大柄な人。凄いかっこつけたようなコートと剣が、妙に似合ってた。
その人がまるで大統領を人質に取ったかのような振る舞いをしていた。
「サイファーか」
「サイファー……って!
あれ、もしかしてサイファーなの?!」
まさか。何で?
いつかSeedにはなってみせるといっていたけれど、本当に?
シオンが知っているということは、本物、なのよね?
「知り合いかい?」
「うん、前助けてもらったの」
サイファーは大統領を人質に何かを要求しているらしく。
護衛がそれを救おうと、そして若い女の人が仲裁するように叫んでいた。
ただ、街頭テレビから大分離れたこの場所じゃ、よく聞こえない。
そしてそのまま放送が途切れてしまった。設備が駄目になったらしい。
「困ったな。
何も判らなかった」
「あれ大統領が人質に取られてたのよね?
Seedもガルバディアに何か要求があるの?」
取りあえず、聞いてみる。
この目の前の少年だったら、何かを知っていそうな気がした。
サイファーのことも、どうやら詳しい素振りを見せてるし。
「いや、ないはずだ。
恐らくは彼の独自行動だろう」
「……どうするの?」
彼は少し自信なさそうに、
「そうだね。
スコールが偵察をしてるから、混乱に乗じて侵入するかもしれない」
「誘拐作戦はしないんじゃなかったの?」
私は、それで散々泣いていたというのに。
「実行はね。偵察は危険ではないし、やってもらってる」
「そう、なんだ」
「さっきはそれを伝えそびれたからね。
悪かったよ」
そういって、彼はそっぽを向いてしまった。
「……やってくれてたんだ」
「そういうことだね。さ、行こうか」
そう言って、彼は人ごみから離れて大通りを西に向かった。
ちょっとだけ、彼が苦手じゃなくなった私。
少し後ろではなくて、今度は右隣を走っていくことにした。
「スコール!無事か?」
「ああ」
私たちが放送局近くにある出版社前の広場に着くと。
放送局から逃げてきたらしいスコールたちがいた。
なぜか知らないけど、テレビに映っていた女の人まで居る。
「追われてるのか?」
「いや。
だが隠れる必要はあるだろう」
「リノアさん!
ここらへんで隠れられそうな場所はある?」
シオンは、突然私に話を振って来た。
驚いたけど、ここら辺には森のフクロウがいることを伝えた。
案内をお願いしてくるシオンに、私はうなづくことで了承を示した。
逃げ込んだ先のおうち。
お世話になってるおばさんのお家で、私たちは説明を聞いた。
サイファーは、なんと私の為に来てくれていたらしい。
スコールたちは、あの後、偵察で放送局に忍び込んだらしい。
そして放送が始まると、サイファーが乱入、大統領を人質にとった。
彼は、私が来ているものだと思い込んでいたらしかった。
サイファーは私から依頼があったときいてきていたらしく。
若い女の人、キスティスはそれを追いかけてきていたらしい。
画面越しのティンバー班への支援要請に対し、スコールたちは乱入。
混乱した場の中で、ゼルがガーデンのSeedであるとバラしてしまった。
どうするべきかをスコールたちが悩んでいる間に。
魔女が突然現れて、サイファーと大統領を連れ帰ってしまった。
「いきなり魔女が?」
「どうやらガルバディアと手を組んでいたらしいわ」
「そんな口ぶりだったぜ」
とにかく、大統領誘拐作戦は失敗。サイファーが逆に誘拐されて。
ティンバーから軍が撤退後、ガルバディアガーデンに向かうことになった。
私にも異論はなく、護衛を受けるということに同意をしたのだった。