「俺とアーヴァイン・キニアスが狙撃チームとして行動する。
凱旋門チームはキスティスが指揮、残りはゼル、セルフィに頼む」
おおっと、予想外でも何でもないけど俺が入ってないね。
予想外でも何でもないけど、入ってないとびっくりするよね。
別に傷ついたりはしないけど。ホントだよ?嘘じゃないよ。
「その割り当てだと、俺は通信担当でいいのかな」
「ああ。
凱旋門前の通りで待機し、定期的に双方に連絡を取れ」
「了解」
これで、最低でも俺の安全は確保できたわけで。
後はどうやって残り3人を保護するか、なんだけども……。
一番簡単そうなのは、やっぱり、リノアさんかなぁ……。
「やっ!」
「きゃっ」
大佐に実行を任されたスコールが、狙い通りの割り当てをする中。
何かを持ったリノアさんが部屋に飛び込んできた。
その拍子に、扉の前にいたキスティス先生にぶつかっている。
「あ、キスティスごめん」
「どうしたのリノア?」
「あの男に閉じ込められてたんだけど、ようやく出れたの!」
父親をあの男呼ばわりするリノア。ちょっと回りを見て欲しい。
孤児が多いSeed組が、少しだけ苦い思いをしているのが見て取れる。
まあ、俺にはそれを指摘する時間も趣味もないんだけども。
「スコール」
「なんだシオン」
「リノアを俺の護衛につけていいか」
「……戦力としては十分か」
何より、俺よりは遥かに戦闘向きな訳だしね。
どっちがお守りかって言うと、俺の方がお荷物な訳である。
もう一つ、リノアさんが居た方がいい理由もあるし、ね。
「ああ。
それに作戦終了後にティンバーに戻るならその方が都合がいい」
「決まりだな」
スコールがリノアに向かって告げる。
「あんたも協力してほしい」
「え……いいの?」
「人手が足りていない。任務はシオンの護衛だ。
シオンの指示に従い、凱旋門前で警戒をしてくれ」
へへっ任務か、とちょっと嬉しそうにしているリノア。
部屋に入った時に落としたオダインバングルはもうどうでもいいらしい。
ありがたいというか、なんというか。とにかくそれならそれでいい。
「リノアさん。
頼めるかい?」
「うん、もちろん!
私も協力する気だったんだから!」
「それはよかった」
そしてスコールをチラリと見ると、スコールは頷いた。
もう、戻れない、ね。怯む心をぎゅっと絞りだして俺も頷く。
「時間がない、始めるぞ」
「了解」
「了解だぜ」
「同じく」
「了解よ」
「了解だよ」
「頑張ろうね!」
スコール、アーヴァインの狙撃班。
キスティス、ゼル、セルフィの凱旋門班。
そして、俺とリノアさんのそれぞれが指定場所に向かっていった。
魔女暗殺作戦の、失敗の始まりであった。
リノアがきょろきょろとする中。
俺はスコールとアーヴァインが指定位置についたことを確認した。
距離的には、十分知覚できる範囲である。念話も届く。
任務は順調だ。
キスティスたちはリノアに謝ることがないから、持ち場を離れない。
焦ったリノアさんが、大統領官邸に突入もしない。
「ねえ、リノアさん。お願いがあるんだ」
「な、なに、シオン」
……やっぱり嫌われてるのかね。さっきはそうでもなかったけど。
結局こうやって二人きりになると、どうやら脅えられている。
話しかけただけでドモられると、流石にちょっと後悔もする。
「あの、さ。
もし狙撃が失敗したら、コレを使って欲しい」
「これ……魔法石?」
そういいながら、今まで集めてきたフレアストーンを渡す。
「フレアストーンだ。
もしもの時には、凱旋門の鉄格子を破壊して欲しい」
「――!
それって」
「みんなを逃げさせる為、ってね」
俺よりも、リノアさんの方が魔力が高いことは既に確認済み。
だから、彼女なら鉄格子も壊せるだろうし、混乱も起こせるだろう。
ならば後は、一人でも多く、逃げ出せるようにするだけだ。
「私でいいの?」
「リノアさんだから頼むんだよ」
いや、本当に。俺は多分バステばら撒きで忙しくなるから。
ああ、そうだ。後でジャンクションも魔力型にしてもらおう。
最大威力でなければ、折角のフレアも無駄遣いになってしまう。
そう思っている俺に、リノアさんはじっと見てきた。
「ね。そういえばさ」
「何か問題があったかい?」
そうじゃなくて、とリノアさんはマジメな目で俺を見る。
「リノア、でいいよ」
「……リノアさん?」
「違うよ、リノア。
君だけ、シオンだけ私をさん付けで呼ぶの」
……ああ、そういうことか。
俺のさん付けに、何だか疎外感を感じていたって言うわけか。
それは悪いことをした。依頼者だからと線引きしてただけなんだが。
「……そっか。
じゃあ、リノア。もし失敗したら、頼むよ」
「任せてよ、シオン。
……ふふっまるで私もSeedみたいだなぁ」
混乱に乗じて、一人でも多く助けだしたい。
そしてミサイル発射を阻止する。
それが俺の、物語に関ると決めた時からの目標の一つだった。
時間が進む。時計の針は止まってくれない。
凱旋門チームが機械室に入ったのを確認し、念話を試みる。
対象はキスティス先生。恐らく、直ぐに気付いてくれるはず。
「先生」
「シオンね」
ほら、無事に繋がった。
「異常は?」
「ないわ、後は時間を待つだけよ。
そっちは?」
「何もない。
ああでも、一応だけど失敗時には鉄格子をリノアがこじ開けるから」
先ほど、リノアにお願いしたばかりのことである。
「そこから撤退すればいいのね」
「一人でも出てくれば救出作戦が実行できる」
「ゼロにするなってこと?」
「お願いするよ」
本当に、お願いしたい。
特に凱旋門チームの方が、まだ逃れられそうな位置である。
突撃するスコールとアーヴァインには期待が出来ないから。
「伝えておくわ」
「これで切るけどいいかい?」
「大丈夫よ」
「それじゃ、成功を祈ってるよ」
「ありがと。
でも、それはスコールに伝えてあげて」
判ったと伝えて、俺は念話をきる。
続けて、時計部屋にいるスコールに、同じく念話を試みる。
その俺を、リノアは静かに見守っていた。
「スコール」
「シオン」
「異常はない?」
「アーヴァインが緊張している」
あー。そうだよね。
彼にとっては、記憶に残ってるママ先生なんだよね、魔女は。
他のみんなには記憶はないけれど、彼だけに記憶が残ってる。
幼馴染、というか。兄弟みたいに育ってたことも覚えてないんだ。
彼にとってはどれぐらい不安な状況なんだろうね。
とにかく、話を続ける。このことは俺が知ってちゃいけないことだ。
「緊張?」
「あがり症らしい」
「成程」
「どうすればいいと思う」
さて。原作のスコールはどうやって伝えていたっけ。
俺は、俺だったらどうするかな。
「失敗してもいいと伝えれば?」
「そういうわけにもいかないだろう」
「突入の合図だと認識してもらえばいいじゃない」
確か、そんな感じでスコールは説得をしていたはずである。
「悪くないな」
「でしょ」
ん。やっぱりスコールもそれでいいと感じたようだ。
「試してみる」
「うん。
これで切るけど?」
「ああ」
「無事を祈ってるよ」
「感謝する」
そういって念話をきる。取りあえず俺の仕事は終わりだ。
そういえば、キスティス先生には成功を祈ると伝えて。
スコールには無事を祈るという風に言葉を変えてしまった。
やれ、先生にはその言葉はスコールにといわれたのにな。
伝えそびれたその言葉、後悔しなくても済めばいいけど。
そんな風に縁起の悪いことを考えながら、俺たちは時間を待った。
2000。パレードが、凱旋門を通り抜けようとする時間を。
やがて、街中を回っていたパレードが凱旋門にやってくる。
時計を見ると1959、何とも進行係の腕を感じさせる時刻である。
パレードが凱旋門に入り、そして。凱旋門の鉄格子が下された。