あっという間に騒ぎが起こった。悲鳴がキィンと鳴り響く。
響き渡る怒号に、銃声なんて聞こえない。失敗かも判りはしない。
ただ、リノアが俺の腕を掴んではぐれないようにしていた。
スコールたちの位置を確認すると、パレードの中にいた。
戦闘が開始されたかと思い、続いて凱旋門チームの場所を確認。
すると、どうやら移動中であるようだった。
凱旋門チームも、後少しで魔女までたどり着く。
そんなことを考えていると、肩を掴まれて揺らされた。
リノアである。当然だ、ここには、他に知り合いはいないはず。
「ねえ!一体どうするの?!」
「戦闘が始まった。
一旦離れて、魔法で鉄格子を狙える場所まで下がろう」
思っていたよりも、混乱が酷い。
この状況では擬似魔法ですら撃てそうになかった。
「みんなは」
「戦闘中だろう」
「大丈夫なの?!」
「殺されはしないさ」
権力の誇示の為に、捕まるだろうからね。
それに、簡単に殺されるほど、弱い彼らでもないだろう。
「助けなくてもいいの?!」
「今はまだ任務中だ。
負けが決まるまではそんなことは出来ない」
せめて、魔女の一撃が決まるまでは、手出しは要らない。
そこまでこないと、中のみんなも撤退には移ろうとしないだろう。
だから、まずはフレアを撃てる位置までさがらないと。
「でも!」
「お願いだから従ってくれ!」
つい苛立って怒鳴った俺は、気まずくなってそっぽを向いた。
リノアは納得したかどうかはともかく、一応は従うらしい。
肩を掴んでいた手を離し、俺の裾をちょこんと握る。
「……行こう」
「私、一人でも傷ついたりしてたら、あなたのこと、怨むから」
「俺だって。
きっと俺が許せないだろうね」
そういって喧騒から少しだけ離れる。
ちょっとだけ人から離れた高台で喧騒を見守っていると。
凱旋門の中に非常に大きな氷が生成されるのが見えた。
魔女の力だ。遠くからでも絶大と判る力量の、その一撃。
これで戦いは終わるはず。ならば今こそ俺たちの出番ってわけで!
杖を掲げ、集中しながら俺はリノアに指示を出す!
「リノア!」
「判ったよ!」
Seedにはあらずとも、魔女にはまだあらずとも。
圧倒的な魔力とジャンクション適性を持った少女がフレアを打ち出す。
惜しみなく打ち出されたフレアストーンが、氷と鉄格子を吹き飛ばす。
「流石」
「あとは、どうすればいいの?」
集中して、遠距離からブラインを打ち込み続ける俺に。
流石のリノアも疲れたのか、肩で息をしながら問いかけてくる。
とにかく、みんなの援護をしないといけないけれども。
「落ち着いたら、カーウェイ邸に逃げ込もう。
逃げられたなら、みんな来るはずだ」
「逃げられるかな」
「信じようよ」
「……うん」
二人で、鉄格子の中に向かってブラインやスリプルを乱打し。
救助隊やら、消火隊やらが集まり始めた頃に、俺たちは退散した。
どうか、出来るだけ多くの人が逃げ出せていればいいけど。
そして、魔女暗殺作戦は当然の様に失敗に終わった。
逃げられたのは、セルフィとアーヴァインだけだった。
魔女の一撃がリノアによって阻止されたとき。
鉄格子が破壊されたことで、任務の続行が不可能になった。
スコールはそう判断したらしい。妥当な判断である。
全員は逃げられない。そう、誰もが思ったらしい。
誰を逃がすかという段階になって、みんなが残りたがった。
その中で、スコールが選んだのはその二人だったのである。
理由はシンプル。何処まで時間を稼げるか、判らない中。
最大限に時間を稼げるように、武器のタイプで選んだらしい。
相対的に接近戦の苦手なセルフィとアーヴァインの二人を。
俺とリノアがカーウェイ邸についてから30分。
コートと帽子が戦闘中にボロボロになったアーヴァインが来た。
愛用のショットガンも、目立つから手放してきたらしい。
少しだけ落ち込んだ様子で、アーヴァインは無事帰ってきた。
「ただいま」
「?
もしかして、アーヴァイン?」
「なんだいその言い方。
コートと銃と帽子がないと見分けがつかないとか言わないよね?」
「見分けついたじゃないか。
とにかく、無事でよかった」
それから少し、アーヴァインにリノアを任せ。
俺は外へと、偵察に出ることにした。
武器の類は一切持たず、丸腰で外に出て行ったのである。
その目的はたった一つ。情報を得た理由作りである。
ミサイル発射の情報を、得られるとしたらこのタイミングだった。
原作知識ではなく、ちゃんと得てくるには、今しかなかった。
とはいえ、そんな重大情報を簡単に仕入れられるはずはない。
周りの様子を見て、犯人が捕まったという情報を幾つか仕入れ。
そしてミサイルの情報は、流石に得ることは出来なかった。
アーヴァインが帰った1時間ほど後に、セルフィがきたらしい。
騒ぎの中に偵察にいった俺が帰ってくるまでの間に帰ってきたのだ。
彼女も、大体無事である。これで、最低限のメンバーは揃った。
「戻ってきたよ」
「シオン!よかった」
「セルフィか!
逃げられたんだね」
「うん。
みんなのお陰だよ!」
アーヴァインと違って、比較的ダメージの少なかったセルフィ。
一度町の外まで逃げてある程度の敵を蹴散らしてから帰ってきたらしい。
時間は掛かったが武器を失っておらず、落ち込んだ素振りはなかった。
「ところで、何か判った?
偵察に行ってたんでしょ?」
「ああ。
あんまりいい情報はない」
「聞かせてよ」
そういいながら、セルフィが真面目な顔で見てくる。
俺はその勢いに押されながらも、一応得てきた情報を伝える。
まずは、原作知識ではなく、ちゃんと得てきた情報である。
「判った。
魔女強襲の犯人は捕まった」
「だろうね」
「犯人は5人、捕まったのは3人。
残り2人は現在も逃走中だって」
「みんな捕まったのね」
リノアが溜息をつく。
俺に突きささる視線は中々に冷え切ったものだった。
負けないし。そんなのは当然判りきったものなのだから。
「だろうな。
それと彼らはD地区収容所に入れられるらしい」
「聞いたことあるよ。
税金の無駄遣い、絶対に逃げられない鉄の監獄」
まあ、アレは完璧に税金の無駄遣いだとは言うけどね。
「そうだ。
だが外の攻撃には弱い」
「助けに行くのね!」
リノアが意気込んだ。ありがたいね、この前向き精神。
しかし、もう一つ。こっちは俺が仕入れてない情報である。
というか、下手するとまだ決まってすらない情報だ。
「だがもう一つ悪い情報がある」
「なんなの?」
「ガーデンへの報復を決定したらしい。
ガルバディアはミサイルを撃ち込む気だ」
「ミサイル!?」
悲鳴を上げるかのように、リノアは繰り返した。
残り二人は、判ってたといわんばかりの視線を返してくる。
セルフィが、静かに冷たい声で俺に情報を求めてきた。
「対象は?」
「恐らくだがガルバディアは外されるだろう。
魔女の本拠地にするという話だからね」
「阻止しなきゃ!」
うん、と俺はリノアに頷き返す。
「うん、目星はついている」
「どういうこと?」
「長距離ミサイルが打てる基地は2つ。
現在稼働している基地は1つだけだ」
チラリとみんなを見まわす。
リノアは意気込みを見せ、セルフィは案外冷静な顔をしている。
それに比べ、アーヴァインはどこか不審を隠せない顔である。
「そこを狙えばいいのね」
「ああ。
ついでにガーデンへの連絡を誰かにまかせられれば最高だ」
「この家の使用人に任せられるよ!」
流石のお嬢様パワーである。この子本当に普通にお嬢様だな。
あっさり呼び鈴でメイドを呼び出すと、便箋を用意させた。
結構可愛らしいデザインなのが、俺にはあまり似合わないけども。
「以降、この4人を2班に分ける。
スコールたちの救出とミサイル基地侵入の2班だ」
「私救出行くよ!」
「はいは~い!
私はミサイル基地行きます!」
リノアが救出、セルフィがミサイル基地か。
原作とタイミングは違うけど、上手くばらさってくれたな。
じゃあ後はアーヴァインにと視線を向けて。
そこで俺は、予想外に冷たい視線に迎え入れられる。
おっと、俺何かしたかなというレベルじゃなくて。
これは敵対一歩手前とか、それぐらいの冷たい視線である。
「僕は救出に行くよ」
「ん。
それはいいけど、何か問題でも?」
バランス的に、アーヴァインに救出に行って欲しい。
そういう思いはあったので、救出に行くのは構わないけども。
D地区収容所は対魔力装置があるから、銃器が必要だし。
「ごめん。悪いけど、シオン。
僕は君の事をあんまり信用してない」
「ええと」
あー、そうか。そうだよな。そりゃそうなんだけど!
確かにアーヴァイン視点で言うと、俺の怪しさ大爆発だけど!
このタイミングで、いや、このタイミングしかないか。
「どうして、君はここにいるんだ?
随分色んなことを知ってるじゃないか」
「……ごめん、なんのことだか」
その上、そういう言われ方したら恍けるしかないじゃないか。
怪しいのは認めるけども、知ってるとはいえないことばかりだ。
しょうがないこととはいえ、調子に乗りすぎたかも知れない。