輸送鑑に気付かれぬよう、遠回りをして死角となる場所に回る。
ニーダが着陸地点として選んだのは炎の洞窟近くの丘だった。
元の位置とは、大分離れた場所である。バラムからは見えない。
バラムにおける目標はバラムガーデン生徒の回収と物資補給。
そのためには、ガルバディア軍の輸送艦を追い払う必要があった。
近づかなければ物資の輸送もしようがないわけである。
輸送といえば、さて、ガルバディアも何を輸送しているのか。
バラムに運ぶものもないだろうし、その逆だと推測されるわけで。
生徒たちが捕まってないことを、当事者の俺は祈るしかない。
輸送艦を追い払い、バラムの占領を解除する為に。
原作通り、ガーデンで最強の戦力であるスコール班を派遣する。
これは俺の提案ではなく、当然の流れであるといえた。
スコールはゼルとキスティスを連れて侵入を開始した。
バラム育ちのゼルがいた方が、何かと都合がいいはずである。
潜入任務にも向いているし、何より安定して強い。
数時間ほど経ってから、ゼルが1人で帰ってきた。
避難した生徒たちは、バラム市民に受け入れられたらしい。
バラム政府は空き家などを提供し住居と生活を保障してくれた。
しかし3日前。ガルバディア・ガーデンが輸送艦を伴い、来襲。
ガルバディア軍司令官は街の破壊こそしないものの、街を封鎖した。
それと同時にバラム・ガーデンの生徒たちに降伏勧告をした。
降伏をし、ガルバディアの民となれば通常の国民と同様に扱おう。
その勧告に半数ぐらいの生徒が従い、輸送鑑に乗り込んだ。
従わなかった半数も捕まったりすることなく、避難を続けている。
スコールたちは、輸送鑑を侵攻するかどうかを悩んだらしい。
乗った生徒は初等部以下が多く戦力にはならないと判断。
戦争に巻き込まれないならその方がいい、と見逃すことにした。
そして風神・雷神を撃退して、輸送鑑を撤退させた。
「つまり」
「専門部を中心に半数が戻ってくるんだね」
「そういうことだぜ」
全体的には、みんな無事ということだろうか。
何よりといって差し支えはないが、引っかかる所もなくはない。
引っかかるというか、何で、という部分なんだけども。
ま、それは後から詳しく聞けばいい。まずするべきことは。
「ありがとう、お疲れ様」
「スコールがガーデンごと迎えに来て欲しいってさ」
「判った。
ニーダ、移動の準備をお願いします」
ここで考えるよりも、色々なことを進めなければならない。
聞きたいことは、受け入れ作業と同時に行っても問題ないだろう。
バラム・ガーデンがバラムに着くまで、時間は掛からなかった。
ガーデンを近づけると、町から人が近づいてきているのが見えた。
生徒の把握で入り口にシュウたちがいるが、まだ受け入れは出来ない。
そう思って生徒たちなら一度止めようと、ゼルを連れて先に降りる。
来ていたのは代表でキスティスと、数名の生徒たちだった。
現在残った生徒たちに、ガーデンに移らせる用意を進めさせている。
その連絡で、先にガーデンに戻ってきたらしい。ありがたい。
受け入れの手筈はシュウが担当していることを伝える。
キスティスは、準備出来次第行かせると、打ち合わせしに行った。
みんな仕事熱心で何よりである。そのやる気を分けて欲しかった。
そして受け入れが始まった。
元々緊急避難だったからか、殆どが大した荷物をもっていない。
着の身着のままといった状況での避難であったらしかった。
確認作業は、最初はID照合等も行われていたが。
人数が予想よりも多く、名前と所属を確認するだけで終わった。
ちょっと不安だが、そもそも顔見知りの方が多い。大丈夫だろう。
大体1時間程で数百人の受け入れが行われ、大分騒がしくなった。
受け入れた生徒が自室に戻り一息つく間、名簿を元に戦力を確認する。
組織化をし防衛案を練り、補給案を作り出さなくてはいけない。
ガーデン同士の戦いに向けて、俺たちは必死に分析をしていた。
受け入れが終了してから1時間。
生徒たちがある程度落ち着いてから、今度も校内放送が行われた。
まずは学園長による、前に行われた放送と同じものである。
これからの魔女討伐。
スコールとシュウと俺が実際の指揮を取っていくこと。
トラビアとの協力体制をこれからは取っていきたいということ。
そしてそれからスコールの演説が行われた。
これはseedの、俺たちの居場所であるガーデンを守るための戦い。
みんな出来れば協力をして欲しい、スコールはそうみんなに告げた。
スコールをよく知らない人にとっては、意外なものだったようだ。
確かに内面を知らない人は驚くかな、とちょっと優越感に浸る。
「トラビアガーデンは無事、か」
「ああ」
セルフィはゼルに伝えられた時、よかった、と叫んだらしい。
それもそうだ、彼女にとっては、あそここそが故郷なのである。
基地から放たれたミサイルを見て、顔色を失っていたのだから。
バラムから得ることが出来たミサイルの着弾結果について。
俺とセルフィが爆破したと思っていたミサイル基地。
あの後、直ぐに目覚めた司令官によって自爆を解除されたらしい。
基地の区画で区切られたシステムで、入り口と居住区が爆破。
バラム・ガーデン分の発射装置も爆破後、解除できたようである。
その結果、トラビア・ガーデン分だけ残っていたとのことだ。
自爆が解除されると、激高した兵士たちが即座にミサイルを発射。
目標変更には気づかず、トラビアへのミサイルは海に落ちたらしい。
どちらにせよ、もうミサイル基地としては使いようがないという。
俺たちの任務はちょっと実行しきれていなかったけれど。
結果的には、期待通りの効果を発揮したというわけだ。
多くの人の命が助かったことに、素直によかったと思えた。
「じゃあ次の目的地はトラビアだね」
「そうだな」
頷くスコールに、俺は安堵のため息をつく。
これで今後の目標は固まったわけだし、俺の介入は成功した訳だ。
本番のガーデン同士の戦争に意識を向けて行かなければならない。
「んでスコール」
「なんだ?」
「バラム侵攻について疑問があるんだけど」
聞きたいことはいくつもあった。
まずは、原作知識と現実のすり合わせをしなければならないし。
それ以外にも、納得いっていない部分は残っている。
「こちらも報告がある」
「纏めてあるんだ?」
「学園長とシュウには済ませてきた」
そうか。そっちの二人にも伝えないといけないもんね。
報告があるならまずそちらを聞くべきだろう。
俺が聞きたいことが、その中に含まれているかもしれない。
「ゼルが報告したと思うが」
「生徒たちへの降伏勧告でしょ。
なんで初等部ばっかり保護されてるの」
「ああ。
これは直接話をしようと思っていた」
そう、降伏勧告はよく判らなかった。何かがおかしい。
司令官がそこまでSeed候補生たちに優しく振舞う理由が判らない。
それこそ、自国民として扱うなんて、破格ともいっていい。
仮に、原作通りサイファーが司令官だとしても。
サイファーが考え付くというか、やりそうなことではないだろう。
あの彼が、そんな直接的じゃない手段を取るとも思えない。
それに、初等部の子達を回収するだけで満足するのもおかしい。
言葉通りに捉えれば、ガルバディアに利する行動ではないし。
それ以上に、それをスコールたちが見逃したのも、何処か変だ。
何せ戦力にならない子供たちを保護してくれるというのだ。
普通に考えたら、俺たちにとっては都合のいいことである訳で。
ガルバディア側に有利な展開にするには、意図が掴めない。
保護が嘘にしても、強制労働か人質か。どっちもうまみがない。
強制労働はティンバーの市民連れてった方が早く、反抗も出来ない。
俺たちに対する人質なら、1000人前後引き取る必要はない。
思い浮かぶのは使い捨ての兵士として利用することだけど。
それなら初等部ではなく、もっと年齢の高い生徒を乗せるはず。
それに、輸送艦に乗せるより、ガーデンに乗せた方が早い。
今一、効率的ではない行動であるのだ。その理由を聞きたい。
そう口にする俺に、スコールは小さく頷いた。
何か原因というか、筋道のある答えを彼は持っているようである。
「サイファーだ。
ガルバディア軍司令官をしているらしい」
それは、原作通りだ。魔女の騎士をやっているんだろう。
だが、初等部の学生を引き取ってくれるには理由が弱いけど。
「サイファー……。
正直彼が取る行動には思えないけど?」
「ああ。
バラムの輸送艦は風神と雷神の発案らしい」
ああ、あの二人の発想なのか。道理で俺には意味不明なはずだ。
どうもあの二人とは波長があわない。悪い奴らではないけども。
「風神と雷神か。
バラムで撃退したってゼルから聞いたけど」
「ガーデンなき後の傭兵部隊の一員として育てると言っていた」
バラム・ガーデンを潰した後のSeed候補生と、そういうことか。
どっちにしてもこの世界にジャンクションは必要だからね。
そういう用途という名目で、助けてあげようとしたってことね。
「成程、大体のことは判った。
確かにあの2人なら、特に心配することはなかったんだな」
「そういうことだ」
ガルバディアに周っていても、心はバラム・ガーデン寄りと。
というかあの二人の場合はただのサイファー派というべきだろう。
この戦争についても、そこまで深く考えてはなさそうである。
しかし、それでもありがたいとは思う。助かるのは違いない。
納得した俺が了解したと伝えると、スコールは退室していった。
慣れない演説なんかしたものだからか、どうも疲れていたらしい。
まあ休めば治るだろう、と。
疑問と心配が一通り解決した俺は、次の仕事に取り掛かり始める。
やれることは沢山あった。必要とされるうちは頑張らなければ。