バラムにおける補給は一日がかりとなった。
予想以上に多い人間が戻ってきたから、それにあわせた物資。
具体的に言うと、ほぼ食料を補給するのに時間がかかった。
今後のことを考えれば、武器、特に重火器の類も必要。
それほどバラムに重火器が蓄蔵されているわけではないけれど。
必要最低限の数を確保すると、あっという間に一日が過ぎた。
その間にシュウたちが生徒の組織化を進めていっていた。
基本的な目標とは、ガーデンを無力化して魔女を討伐すること。
言うのは簡単だが、当然これを実行するのは非常に難しい。
敵戦力はガルバディア・ガーデンの生徒とガルバディア軍。
ジャンクションがない敵は、個人戦闘能力が格段に下がる分。
飛行機械や重火器を使った俺たちに出来ない攻め方をしてくる。
数で劣ることが間違いない以上、防衛では負けてしまう。
そもそもSeed自体が防衛に向いた訓練をしてきてはいない訳で。
だからと言ってこっちから攻めるには、手数が足りない。
電撃作戦を実行するにしてもメインになるのはSeed。
彼らは僅か40人しかいないし、同時に守りの要でもあるのだ。
正攻法では、まともに戦ってすらいられない自信がある。
そうなると勝つ手筋は決まってくる。戦力の誘導しかあるまい。
ガチガチに防衛している場所と、そうでない場所を明確化。
そうでない場所に敵戦力が集中するのを誘導する。
その地点にSeedを集中して、敵侵攻部隊を殲滅するのみである。
防衛を甘くするのは、入り口、中庭、運動場の3か所。
そこでまずは、Seedの放つG・Fによって敵の突撃を阻止。
突っ込んで敵を混乱させて、後は重火器による一斉攻撃。
ま、メインで担当してるのはシュウである。
補給班の俺は、ちょいちょい口出しはするが、メインではない。
経験が豊富な彼女の方が、作戦展開は遥かに上手だろう。
敵実行部隊が一区切り着いたら、スコール班が突入。
魔女の討伐を目指す。その案内にはアーヴァインが参加する。
……アーヴァインか。まだ俺は信頼されてないみたいだけども。
まあ、全体的には原作でやっていたことと、ほぼ同じである。
原作では正面切った防衛戦をやっていて、非常に大変そうだったが。
楽が出来るように計画していけば、なんとかなるだろうと思う。
また、トラビア・ガーデンで協力を確保出来たら。
トラビアの生徒には、主に重火器を使ってもらおうと思っている。
バラムには重火器を使える子や狙撃手が少ない、とシュウが言っていた。
火器に関しては、シュウが要求したものを素直に集めた。
そこは、俺の担当ではないので、特に考える必要はない。
しかし俺がしなくてはならない仕事はまだまだ沢山あると思われた。
まず当たり前だが食料の確保。
それから医療物資や魔法生成用の各種アイテムが必要なのは間違いない。
トラビアの生徒が増えるなら、それに対応していく必要があるのだ。
また、ガーデン内に緊急用の物資を配置しておかなければならない。
ケアル系統の入ったストックストーンや、ロープなど救助用品。
戦争時の補給ラインも考えて行く必要がある。人手は足りていない。
「トラビアの協力が得られるといいんだけど」
俺の呟きは、誰の返事もなく空中に響いて消える。
何をするに当たっても、現人数では防衛線を築くのが限度である。
物資よりも何よりも、人手。現在はそれが一番の課題であった。
バラムで補給が完了すると、今度はトラビアに向けて発進した。
今度は推定8時間、ニーダにはちょっと辛いだろうが我慢してもらう。
お願いするときに、苦情はシュウに言うようにいっておいた。
そもそも生徒の配置とかはシュウが担当者なのである。
幾ら修理班であろうと俺の管轄ではないのだ。多分きっと本当に。
シュウに責任を押し付ける。ニーダからは特に文句は出なかった。
トラビアでの交渉は、もちろん学園長が行うことになった。
護衛はトラビア出身のセルフィにメンバーの選出ごとお願いした。
手を振りセルフィを見送って数時間、学園長たちは帰ってきた。
「え、うそ」
「冗談でしょう?」
「嘘じゃありませんよ」
「ホントウだってば~!」
学園長たちの報告に、俺とシュウは戸惑いを隠しきれない。
トラビアに協力を要請しに行ったのに、歓迎されてしまったのだ。
予定よりも、多くの人数と物資をただで借りられることになった。
なんの冗談という話である。そこまで都合がいいと夢みたいだ。
「今度はどんなことを?」
「セルフィを人質に取ったのね?」
「違いますよ。
シオンとセルフィのお陰です」
……俺?
「俺は今回何もしていないのですけど」
「トラビアに手紙を送ったのは誰ですか?」
あー、そういえば、そんなことをしたこともあるような気がする。
いや、でも。結局ミサイルは撃たれたのであるし、当たりもしてないし。
特に俺の力で助けられたという訳ではないような気もするが。
「そういえば手紙を送っていましたね、確か。
バラムだと効果がなかったので忘れていましたが」
「ミサイルが海に落ちる前に届いたらしいですよ。
手紙に合わせて避難をしていたらしく、被害は全くないようです。
君とセルフィに大変感謝していらっしゃいましたよ」
「私なんて英雄扱いされちゃったんだから」
英雄扱いって。まあそりゃそうかもしれないけども。
一人で基地に忍び込んで、任務成功すれば英雄とも呼ばれよう。
それはともかく。今回の反応は、感謝を含めてということ?
「そうとっても構わないでしょう」
非常にうれしいことである。
俺の行動によって人を助けることが出来、それを感謝されたのだから。
破格のお礼に罪悪感があるが、受け取らないなんて選択肢はない。
学園長によると、要求に合わせた学生を選抜してくれるそうだ。
明日の昼ごろまでには、受け入れ作業も開始できるということである。
物資に関しては、今からでも交渉を始める準備があるらしい。
「ですので、後はお任せします。
担当の方と連絡を取るといいでしょう。」
「そう、ですか。
それでは俺はトラビアに行ってこようと思います」
「私が案内するよっ!」
そして俺はセルフィの案内の下。
補給班班長としての役割を果たすことに専念するのであった。
忙しいったらありゃしないよね。本当に。
トラビアから受け入れた生徒はおよそ200人。
その殆どが、重火器ないし銃器の操作に長けている生徒である。
後は救護や機械操作の技能を持った生徒が若干名といった所。
ジャンクションの経験はなくとも、後方支援には十分である。
またそれに合わせて火器を大量に貸し入れした。
俺は引き取り作業をしただけであるが、それでも大量にあった。
トラビア生徒の居住区として。
ガルバディアに保護された生徒たちが住んでいた部屋を充てる。
荷物は別に確保したので、戻ってきても混乱はないと思いたい。
シュウは、今も生徒の組織化と防衛案のを行っている。
今回入ってきたトラビア生徒の多くは、後方支援として配備。
トラビア生徒の上級生をまとめ役に、配置されることになった。
そうやって、着実に戦争への準備が整っていく中。
物資の搬入が一区切りをついたころに、俺の部屋に珍客である。
リノア・ハーティリー。彼女が執務室に現れたのであった。