トラビアでの補給が済むと、いよいよ本格的な戦争準備が始める。
防衛地区における重火器の配備やバリケードの確保、武具の分配。
接触時、ガルバディア軍が飛行してくるのを打ち落とす狙撃班。
飛んでくるのなら打ち落とすというシュウの案である。
実際に打ち落とせなくても、少しの間一方的に攻撃出来るわけだ。
上手くいくかは知らないけれど、やらない理由がなかった。
トラビア・ガーデンとの打ち合わせの中で。
トラビア・ガーデンを、バラム同様に動かすという案が出てきた。
下層部を調べてみると確かにそれ用と思われる機関が存在していた。
だが、結論としては動かさないになった。
理由は、単純。欠点に対して、利点がそこまでないからだ。
まずは、利点。
トラビアガーデンが襲われて、全滅する可能性が格段に低くなる。
移動できるということは、接触を避けられるということであるのだ。
Seedがおらず、そうでなくてもかなりの生徒を借りている。
ガルバディア軍に対して、防衛する戦力があるかも怪しい程である。
それから逃げれるというのは、確かな利点であるように思えた。
また、ガーデン同士の戦争の際に2対1という好状況に出来る。
戦争は数であるという言葉のように、上手く運べば使えるだろう。
たとえ戦力として不足していても、あるだけで大きな違いだ。
しかし。
この利点はトラビアガーデンが満足に動くという前提にあるものである。
機関は存在したが、修理をしなければいけないものであった。
また、2対1を利点にするにはガーデン自体に攻撃力が必要だ。
ただのシェルターであるガーデンにそんなものがあるわけではない。
ガーデン級の建造物に対して有効な火器など、作らなければない。
修理に、開発。そこまでしている余裕があるわけもない。
結果として、トラビア・ガーデンの近くでバラム・ガーデンが護衛。
ガルバディア・ガーデンを確認したら、バラム・ガーデンで接触。
トラビアにたどり着く前に戦争を始めるしかないという結論に至った。
それまでは複数交代制で待機をするというわけだ。
またシュウが忙しそうだった。ぜひみんなの為に頑張って欲しい。
トラビアでの補給が終わってから4日後のことである。
海上に、ガルバディア・ガーデンが見えたという報告があった。
遂に来た。ガーデン全体に、緊張が走ったのが見えた気がした。
スコールによる戦争前最後の放送が流される。
攻撃隊と防衛隊への指示や、幼等部の学生の教室待機、激励の言葉。
俺はそれをスコールの後ろで見ていた。遂にここまで来たのだ。
防衛はシュウ主導によるSeed及び学生の出番。
Seedが各防衛地点の指揮をして、ガルバディア軍を撃退することになる。
重火器やG・Fが上手く働いてくれることを祈るだけだ。
第一陣が落ち着いたら、スコール班がガルバディアガーデンに侵入する。
侵入はスコール・ゼル・セルフィ・アーヴァイン・リノア・キスティスの6名。
俺が入っていないのは、戦力面と指揮官不足の都合であった。
スコール班は、彼らは第一陣の間は各所で最高の戦力として働き。
その後トラビアに借りた飛行機械で、魔女に直接戦闘を仕掛けに行く。
忙しいけれど、やってもらうしか勝つ手段は用意できていない。
俺の担当は補給班の維持と通信。
補給班の内6名が各防衛地点に存在し、俺の通信をひたすら待っている。
定期的な通信と、緊急の通信をその場のSeedに伝えることが目的だ。
戦闘中に通信に気が付くのは難しいから、当然の結論だと思う。
補給班には、各部の物資の状況の把握と、再分配を任せてある。
俺の知覚能力でそれぞれの戦況、物資の状況を把握し走り回ってもらう。
その点、俺の能力は、補給班の班長としてはいい感じに回っていた。
「スコール、近づくぞ!」
「ああ!」
ニーダが操縦桿を前面に押し出す。
モニターがガルバディア・ガーデンでいっぱいになり、振動が走る。
接触したのだ。スコールはそれを確認すると、即座に走り出した。
放送を始めた通信士を確認してから、持ち場の1階ホールへと向かった。
第一陣の飛行部隊は狙撃を掻い潜り、殆どがガーデンに到着した。
とはいえ2割程は地面に叩きつけられ、赤い花を咲かしているようだ。
この戦争での1番目の犠牲者が彼らであることは間違いない。
とはいえ、敵方の犠牲者を悼むような余裕は、流石に今はない。
ちょっとだけ複雑な気持ちになりつつ、俺は補給用の情報確保に勤しむ。
出来れば、味方側にこそ犠牲者は出て欲しくないと素直に思う。
現在は上手くいっているようだ。特に大きな動きは見せてない。
大まかな把握しかできないが、重火器もG・Fも上手く働いている。
しかし、バラム側にも少しずつだが被害が出ているようだ。
通信担当から、ポーションの補給を早めに始める連絡が多かった。
俺たちのもくろみ通り、侵攻は入り口と中庭、運動場に集中していた。
その他の場所も多少は襲われているが、何とか均衡を保てているらしい。
このまま膠着しつつ、余裕を持って対処していけばなんとかなるだろう。
これは大丈夫だと思い始めたとき、放送で俺は操縦室に呼び出された。
「スコール!何が起こったの?」
「第一陣が途切れたらしい」
そこにはスコールたちが全員揃っていた。
全員無事である。ほっとしながらも、その言葉を聞いて息を呑む。
つまり、その時が来たのである。魔女討伐作戦の、本番が。
「……行くんだよね」
「もちろんだ。
ガーデンはお前とシュウに任せる」
「……うん。
気をつけてね」
何かを言おうとして、それでも上手く言葉にならなかった。
楽観的な言葉も悲観的な心配も、どちらもそぐわないと思えた。
原作知識という邪魔なものが、俺の素直な言葉を阻害する。
何もしらなければ、素直に頑張ってといえたのだろうか。
それともみんなを心配して、無事に戻ってきてと言えたのか。
どちらにせよ。俺の口からそれらの言葉は出てこなかった。
スコールは軽く口端を歪ませると、走り出して行った。
それにみんなが順番に続いていく。俺に一人一人視線を向けながら。
信じることしか出来ない。そういう空しさが全身を襲い掛かる。
俺はスコールたちの位置を追いながら、ニーダに指示をする。
「ニーダ。
俺が合図したらガーデンから距離を取って」
「判った。
けど、いいのか?」
離れれば、当然進入してきたスコールたちに戦力は集中する。
でも、みんななら大丈夫。彼らが負けることなんて想像もできない。
それが信頼なのか、それとも違うものなのかは、判らないけれど。
「みんななら大丈夫だよ。
それに戦力の殆どを出してるみたいだから」
「そうか。
お前の判断を信じるよ」
スコールたちがバラム・ガーデンから離れて行く。
知覚範囲を広げてそれを確認すると、ニーダに離れるように言った。
飛行機械ならギリギリ届く距離まで、ガーデンを下がらせる。
モニターで飛行機械がまた飛んでくるのを確認してから。
俺は、また持ち場の一階ホールへと戻った。
第一陣の後処理と、第二陣の戦闘。まだまだ戦いは終わってない。
主戦力だったスコールたちがいなくなって。
ガーデンが離れたことで敵数は減ったが、戦力比は大きく動かない。
スコールたちがやり遂げるまでの時間を、守り抜かなければ。
やがて、ガルバディア軍の兵士たちは記憶を失ったかのように。
その場で立ちすくみ、辺りをきょろきょろし始めたという連絡が入った。
魔女の洗脳が切れたのだ。スコールたちが魔女を倒したのだ。
俺は降伏を呼び掛けるように指示するため、操縦室に上がった。