戦争は終わった。
魔女イデアはスコールに打ちとられ、代償にリノアは意識を失った。
リノアは魔女となったのだ。同時にアルティミシアを引き継いだ。
リノアはどうなったのかと尋ねるスコールに首を振る。
倒した時にドローが行われたということから、継承はほぼ確実だ。
恐らく今は、魔女の力に適合するために、睡眠をとっているのだろう。
こう、魔女の力を目の前にすると。
解析して、元の世界に帰るための手段を模索したくなるものだが。
流石に、自分の力では追いつかなさそうなので、やめておく。
そもそももう元の世界に帰りたいかと聞かれると微妙なラインだ。
ここまで関わっておいて、はいもう終わりといわれても、困る。
せめて物語の最後までは見届けておきたい。そう考えている。
ともかく。戦争の後処理とかが色々と残っている。
シド学園長と魔女イデアは、イデアの家へと帰りたいと言い出した。
俺たちはそれを良い事に2人とも死んだと発表することに決めた。
二人を亡き者にしたい訳ではないが、責任の問題がある。
戦争の中で二人とも亡くなった、そういうことの方がシンプルだ。
俺たちは、学園長と魔女イデアをかくまうことに決めたのだ。
そして、スコールたちはイデア先生たちを送っていった。
ガーデンは、高速上陸艇、実地試験で使った船を持っている。
それに乗って、二人をイデアの家まで送りに行ったのである。
スコールたちが留守にしているその間。
俺とシュウはその間、ガルバディア・ガーデンの処理を行っていた。
何せみんなの記憶が曖昧なのだ。任せようにも誰も居なかった。
とりあえずは、ガルバディア軍と生徒たちの無力化である。
ジャンクションをしていない分、無力化は武器を奪うだけでよい。
殆どが降伏していた分、それ程手間が掛かりはしなくて済んだ。
続いて、両方の死傷者の治療である。
この世界では回復魔法と蘇生魔法もあるので意外と死人は少ない。
治療が間に合わなかった人のみが、命を取り戻すことが出来なかった。
そうしているうちにスコールたちは帰ってきていたらしい。
学園長とイデアから聞いたのだろう、色々なことを放送していた。
魔女イデアに未来の魔女アルティミシアが憑依していたこと。
魔女アルティミシアの目的が、エルオーネを確保すること。
その為に、今までの戦争は起こったこと、そんなことである。
騒動になるかもと思ったが、誰もが戦争で疲れ切っていたらしい。
全くと言っていいほど騒ぎにはならず、そのまま受け入れられた。
ガルバディア・ガーデンはカーウェイ大佐に保護してもらうことにした。
そしてエルオーネが乗っている白いSeedの船の捜索が始まった。
白いseedたちがセントラにいる可能性が高い。
そうスコールが学園長に聞いていたため、あっさりと見つかった。
スコールたちが交渉に向かい、エルオーネを連れず帰ってきた。
「エスタだ。
エスタにエルオーネがいる」
「探しにいくの?」
スコールは返事をしなかった。
俺も特に問い詰めはせず、F・Hに向かうようにニーダに伝えた。
了解と、ニーダは振り向きすらせずにガーデンを動かし始める。
「いいのか?」
「よくない」
「じゃあ」
なんでという言葉を言わせる前に、俺は言葉を重ねる。
「他にエスタに行きたいって依頼をした人がいる。
護衛重要度は最高レベル。スコール班に護衛を頼みたいってさ」
「誰だ?」
誰だも何だもない。
この時点で、最優先の護衛対象なんて僅かにも残っていない。
「エスタの魔女封印技術が目的の人。
この時点でエスタに行きたがる人の心当たりは?」
「……あの人か」
今となっては、名前を出すわけにはいかない人。
その人が依頼をしてきているのだ。具体的には先代の魔女である。
ま、本人もスコールも、現役の魔女だと思ってるだろうけれど。
「その依頼のついでだったら仕方ないよね。
ついでに処理があるから俺は付いていけないよ」
「……すまない」
謝るスコールに手を振る。そんなことをされることはしてない。
「さっさと終わらせて帰ってきてよね。
任務内容はキスティスが知ってるからそっちに聞いて」
「ああ、助かる」
スコールを向けない。色んなことが顔に出てしまう気がする。
「……リノアをよろしくね。
俺が頼むことでもないんだろうけど」
「任せろ」
そしてスコールは退室していった。
みんなが無事でいてくれれば、それだけで俺たちは十分なのに。
どうしてこの世界はそんなに簡単には進んでくれないのだろうか。
スコールたち7人がF・Hで降りると、後は大量にやることがあった。
ガルバディアとの関係修復。トラビアガーデンに生徒を戻すこと。
ガルバディアに奪われた生徒から、戻りたい生徒を回収するのも一つ。
そして最終的には元のバラムに戻ること。それが何より大切だ。
それを全てやっていては、凄く時間がかかるだろう。
スコールたちが戻って来るまでに、全てが終わるとは思えない。
しかし、俺はスコールたちが戻ってくるまで待つつもりはなかった。
ある一点、俺があっちに行こうとしてもおかしくないタイミングがある。
その時点までに、以降の足掛けとなることをしておかなければ。
まだまだまだまだ忙しい。俺の手は二本しかないのだけどもなぁ。
とりあえず一番最初に行うべきことは人材確保である。
目標はF・Hで隠居していた元ガルバディアガーデン学園長ドドンナ。
Seedを数人借り出して、捕まえてガーデンへと引っ張りこむ。
魔女に追い出された形で学園長を辞めた彼は学園長として最適だ。
シュウに見張らせておけば完璧な仕事をするに違いない。
傀儡だが、彼がガルバディアの学園長に戻れる日まではお願いした。
また、せっかく仕事がないんだからと白いseedも回収してみた。
イデアの遺志を継ぎ、エルオーネを助けるのは君たちしかいないとか説得。
シュウに任せてこれからはseed本隊に組み込んでもらうことにした。
また、Seedにティンバーやガルバディアの様子の偵察を依頼する。
大統領も魔女も軍司令官もいなくなり、一体どうなっているのだろうか。
カーウェイ大佐が上手く指導してくれているとこちらも助かるのだが。
続けてトラビアにいってトラビア生徒を引き渡す。
これで元々の生徒たちが戻ってきても居場所がないということはない。
補給もしておく。貸しがあるなら利用してしまう今の立場である。
バラムに戻り、ニーダの休憩のために丸1日ガーデンを止める。
その間にガルバディア、ティンバーに派遣していたseedが戻ってきた。
仕事が早いようで大変結構である。流石のベテラン組であった。
ティンバーは森のフクロウ構成員を中心に自治を取り戻し始めた。
治安も経済も特に問題はないようだ。これで独立完成である。
それに対してガルバディアは混乱の真っただ中。大混乱である。
開発独裁をしていた大統領。
その後釜になった魔女がいなくなったことで指導者がいない。
そんな中で見事に権力を掴み始めているのがカーウェイ大佐である。
もともと軍事政権であったガルバディアの軍の実質最高権力者。
魔女によりその権力を奪われていたが、派閥ごと取り返したらしい。
押し付けたガーデンやバラム生徒も上手く保護してくれているようだ。
じゃあということでバラムガーデンはカーウェイ大佐の統治を支持。
このまま上手くまとまってくれればいいなぁと思って数日間。
バラム生徒の回収を考える内に、待ち望んでいた現象が起きたのだった。
バラムの観測部がエスタに月の涙が起こったことを観測したらしい。
一体どうなったのか、どれくらいの被害なのか。
そしてスコールたちは無事なのかを確認した方がいい、とシュウに提案。
受け入れられて、誰を派遣するのかという段階で真っ先に俺が手を挙げた。
顔を真っ青にしてお願いだから勘弁してというシュウに、俺は反論する。
エスタに対して交渉をするだけの人材が、他にどこの誰が居るのか?
スコールたちの無事を確認する上で、イデアを見て問題ない人物はだれか?
行かないという選択肢や、俺の職務はどうするのかという反対が出た。
月の涙がこちらまで影響が出たらどうするつもりなのか?
一体どのようなことが起こったのかを確認しないと今後の対応が取れない。
また、俺の職務は補給と修復だけであり、一応その任務は完了している。
ガーデンの本業に戻ろうとしている以上、それは職員と学園長の仕事である。
そのためのドドンナ学園長である。とっても仕事が出来るおじさんだ。
護衛はどうするのか?という質問には白いseedを使うと答えた。
まだseed本隊に組み込んでいない。特別任務には丁度いいはずである。
エスタにエルオーネがいる以上、彼らが行きたがっているのは明白であった。
かくして、俺は白いseedを連れてエスタに向かうことになったのである。