試験は打ち合わせ通りに進行していった。
俺による索敵は電撃作戦の武器として悪くない働きをした。
マイアの突入は練られたタイミングで行われ。
セルフィの援護はガルバディア兵士の反撃を潰した。
30分すると、ほぼ被害ゼロで担当箇所の解放は終了した。
ほぼ無傷であるのは、作戦と相手を逃がすだけの余裕があったからだ。
殺生は怨恨が問題になるため、ガーデンでは対人の殺生を極力禁じている。
「これで後は安全維持だね」
「それと撤退時や緊急時の伝令ですね」
「じゃあ周囲の索敵を続けるから、狙撃への警戒よろしく」
「了解」
「任せてください」
このガルバディア軍によるドール侵攻。
それは魔女イデアによって洗脳された大統領が引き起こしたものだ。
目的は、原作知識からすると、ドール山間部にある電波塔の修理。
電波障害によって使えないと判断された電波塔だが、
ガルバディアはなんらかの方法によってそれを利用可能に出来る。
頼りない原作知識だが、それでも恐らくは外れてないだろう。
原作では、電波塔が目標と気づいたサイファーが任務を無視して突撃。
これによる命令違反を理由にサイファーはseed試験に落ちてしまう。
それが、今後のサイファーの暴走を招いてしまうわけで。
もしそれを阻害したなら、どうなるだろうか。
暴走でも任務無視でもなければ、一体どう評価されることになるのか。
一応、俺にもサイファーを気にかける余裕はなくはないわけで。
じゃあ俺はどうするか。直接どうにかすることは出来ない。
だけど、もしかしたら少しだけ手を出せるかもしれない。
ま、せめて俺とスコールが納得いくようになればいいってね。
「シオン」
「ん、何?
セルフィさん」
「セルフィでいいよ」
「了解」
……気づいたらセルフィが近くにきていた。
「念話について聞いてみたいなと思って」
「いいけど警戒は?」
「さっきマイアが哨戒中にA班から敵司令部が撤退したって」
「成程」
A班は街の入り口担当だ。
「ね、話聞かせてよ。あれって君にしか使えないの?
あれみんなが使えたら便利だと思うんだけど」
「いや、みんな使おうとしたら使えるはずだよ」
「じゃあどうして」
むう。難しい話になるから、あんまり説明したくないけど。
俺の特異体質を使った技能ではあるけど、模倣は無理じゃない。
ただ、他の人だと再現性が低いってだけなんだけど。
誤魔化す理由もないから、とりあえず説明することにした。
「二重接続って知ってる?」
「……G・Fのジャンクションの失敗例だっけ」
お、よく知ってるな。
その通り、と俺は頷いて、言葉を選びながら説明を始める。
「そう。
一つのジャンクションマシーンで。
一つのG・Fを同時にジャンクションしたときに起こる現象」
「記憶の混乱や意識の混濁が起こるんだよね」
さすが、話が早い。
「流石だね。
それであってるよ」
「それと関係があるの?」
「そのものなんだよ」
チラリと彼女の顔を見ると、続けてという表情でうなづいた。
「記憶の混乱は二重接続で相手の精神まで入ってしまうから。
相手の精神まで入らずに繋げられたら、俺と同じことが出来る」
「……適合率の問題ってこと?」
適性率が2人を合わせて100%を超えなければ?と聞いてくる。
俺はうなづきながら、さらに続けた。
「適合率は意識して下げることが出来るから」
「接続のランクを調節すればできそうだね」
「そう。
だけどその為にはジャンクションの恩恵を受けにくくなる」
「あえてする必要はないってこと?」
あえてする理由がこの程度のものならね。
なんては態々口にはしないけど、言外に潜ませながら。
「それに体験してもらったけどさ。
一回は繋いだことがないと、実践では無理だからね。
中々実用的ではないってことで」
「なるほどね」
使うのが難しくデメリットがある。
だから使えるのが君だけなんだ、とセルフィは笑って言った。
ま、俺はデメリットを元々ハンデとして持ってるだけだけど。
「これぐらいしないと、Seedになるのは無理そうだったからね」
「受かるといいね」
「お互いにね」
俺たちは笑った。
話が終わって十分ほどすると、俺の待っていた出来事が起こった。
スコールたちの反応が山間部へと移動を始めたのだ。
G・F反応を確認することで、俺はスコールたちの位置を確認していた。
「マイア、セルフィ!
B班が持ち場を離れて山間部へ移動を始めた。
連絡を取ってみるが、念の為に伝令の準備をしてくれ」
「B班が?
いいですわ、了解しました」
「了解だよ」
2人の了承を得ると、俺はスコールのシヴァに意識を合わせる。
さて、スコールが俺に気づいてくれるかどうかは運次第。
この距離だと相手次第、俺にはスコールを信じるしかなかった。
サイファーが山間部へと走り出す。
総合司令官の命令違反ではあるが、班長の命令は絶対だ。
ゼル・ディンには彼の命令にしたがう義務があった。
畜生。
なんでこんなやつが班長なんだよ。
せめてスコールが班長ならもっと落ち着きがあっただろうに。
そう思って、隣を走るスコールを見る。
その彼は、額に手を当てながら集中しているようだった。
まさか、このタイミングで体調が悪いとかいわねえよな?
「どうしたんだスコール」
「シオンの通信を待っている」
「シオン……念話ってやつか!
でもあれってあっちからしか出来ないんじゃないか?」
ああ、と頷くスコールに俺は苛立つ。
そんな都合のいい話があると思った俺が間違いだった。
舌打ちしたいのを我慢して、じゃあどうして、と小さく音にする。
「あいつなら」
俺の疑問にスコールはためらうかの様に一度口ごもると、
「あいつなら俺たちの異変に気づくはずだ」
「……そうかよ」
スコールの断言を受けて、俺は否定できる材料は持ってなかった。
むしろそうなるならその方がいい。確実に、事態は好転するはずだった。
出来るならば、総合司令官に今の状況を伝えてほしかった。
「―――ル
……スコール!」
「シオン!」
繋がった!思わずガッツポーズをしてしまう。
「スコール!聞こえているか?」
「ああ。大丈夫だ」
「B班が移動しているのを感知した。
何が起こったんだ?」
なんて、俺は大体知ってるんだけど。
そんなことは尾首にも出さず、俺は心配そうな声を作る。
「山間部の端にある電波塔に敵が資材を運んでいるのを確認した。
サイファーがそれを敵行動の阻害を目的に襲撃を提案した」
「止められそうか?」
「無理だろう」
判りきった返事が返ってくる。
ならば、この後は俺のシナリオ通りに動いてもらうだけである。
何とか出来るなら、なんとかしたい。これは俺の本心だ。
「判った。
総合司令官に連絡を取る。
再度通信をする可能性があるから注意していてくれ」
「頼む」
そう言って通信を終える。
この状況なら、俺がどうにか手を打てないこともない。
既にこれからどうするかは、ここに来る前から考え済みである!
「連絡が取れた!
B班は山間部端にある電波塔が敵目的地だと確認。
敵行動阻害の為に班長が襲撃を計画したらしい」
「敵目的地……。
わかったよ。それで、どうするの班長?」
「司令官に連絡を取るなら私が走りますが?」
「頼む」
セルフィと見比べて、彼女でもいいと判断。
俺は直ぐに頷いた。
「了解。行ってまいります!」
「じゃあ私は警戒を代わりにするね」
マイアは司令官の居る、上陸地点へと走りだした。
残った俺たちは、警戒を続行。
マイアの連絡とB班の無事を待つことしか出来なかった。
――そう時間が経たないうちに、変化が起こった。
探査の中にマイアが入りこみ、だんだんと近づいてきた。
こちらからも近寄って、走りこんできた彼女の報告を聞く。
「伝令よ!」
「何があったんだ?」
俺もここで何が起こるのか、細かく知ってる訳じゃない。
スコールがどうしたかは知っていても、それ以外は知らないのだ。
昔にプレイしたっきりだから、覚えてすら居ない。
そんな俺に、マイアは息継ぎしながら報告をする。
「ドール政府がガルバディアとの交渉に成功し、依頼が終了。
それによりseedと交戦するガルバディア軍本隊が撤退を開始。
以上、任務は終了し、1900に撤退開始を司令官が発令しました!」
「この班に何か任務は?」
「seed本隊とB班にこれを伝達することです。
A班は撤退完了・C班はA班が伝えに行きました」
ん。
元のシナリオ通り、セルフィがB班に合流することは変化なし。
後は俺がここにいることだけど、さてどうするものか。
「了解。
マイアはこのままseed本隊に伝令を。
俺とセルフィはB班に伝令をする」
「了解、まいります!」
再度マイアが走りだす。セルフィは俺を見ると。
「どうするの?」
「ここからじゃ通信が届かない。
もう少し近づいて試し、駄目ならセルフィにお願いする」
「私に?」
「俺だと移動が間に合わない」
言って走り出す。
それを後発ながらもあっという間に並んだセルフィは。
「確かに遅いね」
と悪気なさそうに笑いながら言った。
第25期seed試験合格者発表
A班
ニーダ・ウェイン
B班
サイファー・アルマシー
スコール・レオンハート
ゼル・ディン
C班
該当者なし
D班
シオン・グレイル
セルフィ・ティルミット
以上6名をseedと認定する。