無題   作:榊 高元

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ーーー目を覚ますと白い空間にいた。

何も無いどこまでも続く白い世界。

「黒崎悠斗さん。貴方は死にました。」

所在なさげに辺りを見渡しているといきなりそんなことを言われた。

声が聞こえた方に目を向けて、俺はすぐに目を反らした。『アレ』を直視してはいけないと本能的に感じたのだ。

「あんた‥……『何』だよ」

思わずそんな言葉を呟いていた。

「私は貴方達が『神』と呼ぶ存在だと思っていただければ大方間違いはありません。」

目を反らしたままであることを気にした風もなく『神』はそう答えた。

『神』はこちらの反応がないことをいいことに、

「貴方は信号無視の車に轢かれて死んだ訳ですが‥……」

勿体ぶって一度言葉を切り、

「貴方には転生をしてもらいます。」

そう続けた。

……訳がわからない。そんな感想が出てきたのはある意味現実逃避だったのかも知れない。

「これは本来の寿命を迎える前に死んでしまった魂、その役割を果たすことなく死んだ人間に、ランダムに選ばれた魂を転生させ、新たな生を与えることでその役割を代行させようということです。」

こちらの困惑が伝わったのか簡単に事情を説明してくれた。

「なので蘇生をする訳ではないですし、もといた世界にそのまま転生させるわけにはいかないのですがその役割を演じる成功率を上げる為生前の記憶を持ったまま異世界や並列世界などで別の人としての転生をしてもらうことになります。」

生前読んだ異世界転生→俺TUEEE!なラノベみたいな話だな。

と、なれば当然、

「‥……なるほど。お断りします。」

こう答えるよな。

「‥……当然、断るのですか‥……。先ほどからこちらを見ようともしませんし失礼な人ですね。」

怒られてしまった。

目を反らしてること気にしてたんだ。

「人は死ねばそこで終わりだしそうあるべきだ。それに、ようやく終わった物をまた始めろとか嫌がらせでしか無いだろ。」

俺の持つ価値観だが、ある意味譲れない一線である。

例え理不尽で不条理な世界であっても容易にコンテニューできてしまうことが今を生きることへの冒涜となってしまう気がするのだ。

「なるほど。自身の死を知っても取り乱さなかったのはその価値観があったからですか。‥……そして目を合わせる気はなしですか。」

何か納得したようなことを言ったので、このまま成仏させて貰おうと思ったのだがーーー

「まぁ、貴方に拒否権もないですし、時間も無いのでさくっと転生してもらいまししょう。安心して下さい送るのはちゃんと異世界ですから。」

最後に全く安心できないことを言ったような。

「えっ、ちょっ「それでは行ってらっしゃーい。」

俺の発言を遮ると、『神』は何かスイッチのようなものを押した。

すると俺の足元に穴が空き俺は声を出す間もなく穴に吸い込まれていった。

 

‥……あの『神』、見るからにじいさんだったのになんで女装してたんだろうな?

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

落ちていく。

異世界転生の演出かどうかはわからないが俺は遥か上空から落下していた。

地表までもう距離がないのにスピードが落ちる気配はない。

俺は墜落の衝撃に備え、目を閉じた‥……が、予想していた衝撃はなかった。

どうやらまだ魂の状態のままだったようだ。

始まる前にゲームオーバーとか斬新過ぎるだろ、と苦笑いしながら辺りを見渡して俺は思わず絶句した。

‥……ここまで誰かに強い憎悪を抱いたのは初めてかも知れない。

確かにあの『神』は役割を果たす前に死んだ人間の変わりを転生させた魂にさせると言っていた。

俺はそれを『全くの別人』としてその役割を代行するものだと思っていた。

‥……だが、俺の目の前には今にも消えそうな命の灯火がある。

転生は転生でもこれは……憑依転生と呼ばれるものだったのだ。

まだ転生は成されていない。

おそらく、このこの命の灯火が消えない限り転生されないようだ。

つまり、俺が転生する為にはこの命を殺さなければいけないということだ。

「……ふざけるなよ」

思わず声をが漏れる。

もし、これが神とやらが書いたシナリオであっても、こんな結末を認める訳にはいかない。

俺は一つの可能性に掛ける決断をした。

 

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