dog days not勇者   作:鮪瓜

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第11話

翌日、俺は起きると正座のまま後ろに倒れているという謎の格好で寝ていた。

 

最初は軽く混乱した。だが昨日の出来事を思い出したら落ち着けた。

昨日、エルディーナが帰った後、クー様にああ宣言して了承してもらったものの、数十分の説教をくらった。そしてそのまま罰として膝枕になでなでをすることに、クー様はそのまま寝てしまい、どかすにどけれず俺も寝てしまったのだ。

 

「んあぁ~、腰が痛い・・・・・・」

 

「むぅ・・・・・・・・・・・・」

 

おっと、クー様が起きてしまった。

 

「駿か・・・・・・?」

 

「はい。駿ですよ」

 

どうやらクー様は高血圧で朝に強いらしい。直ぐにベッドから起き上がり、体を伸ばしていた。

 

「それで駿、お主はこれからどうするのじゃ?」

 

「はぁ・・・・・・えっと、今は、6時半なので少し書斎の方に行こうと思います」

 

「まだ調べるのか?」

 

何が、とは聞かない。正解しているからだ。

 

「そうですね。もしかしたら魔人化を止めるヒントがあるかもしれませんし」

 

「そうか・・・・・・」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

何故だが無言が続く。

 

「駿よ・・・・・・」

 

「どうしましたか?」

 

まだ、何かあるのだろうか?

 

「着がえるので出ていってほしのじゃが・・・・・・」

 

「あ、そうですね。分かりました」

 

そりゃ、そうだ。女性の着がえ中で男がいるのはおかしいな。

 

「・・・・・・お主、まったく照れんのじゃな」

 

「ん?何か言いましたか?」

 

「いや、何でもないのじゃ・・・・・・」

 

そうですか、答えて俺は部屋を後にした。

 

*

 

書斎へと辿り着き、俺は昨日読んだ古い本を手にとって席についた。そして昨日と同じページを開いた。

 

書いてあることは昨日と変わらない。

 

国の状況と人の死に方、そして宝剣について。

 

「何にもないな」

 

俺は本を閉じながら呟いた。

 

「ん?」

 

本の背表紙、古くなってあまり分からないがよく見るとそこには何か紋章の様な模様が書いてあった。

 

「なんだ、これ?」

 

その紋章に触れた途端、本は光出し、消えていった。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」

 

いや、待て。大事な証拠が消えてしまったぞ。というか、一体何が起きたんだ?

 

「クー様に何て言おうか・・・・・・」

 

本が消えてしまったんだ、か?いやいや、わけが分からない。どうしようか?

 

「おや、駿殿?」

 

席に座って色々考えているといつの間にかユキカゼがいた。

 

「どうしたでござるか?」

 

「例の国について調べてたんだ」

 

「例の国・・・・・・はて、拙者は存じないでござる」

 

「え?だってパスティヤージュに来たのだってその為だったろ?」

 

「ここへおとずれたのは駿にクー様を紹介するためでござろう?」

 

話が噛み合わない。元々ユキカゼはそれだけの為についてきたのか?

 

「すまん、ユキカゼ。用事が出来た」

 

クー様なら、クー様に訊いたなら今の現状が分かるはずだ。

 

俺は来た道を引き返して、クー様の部屋へ帰ってきた。

 

「クー様!」

 

「ど、どうしたのじゃ、駿?」

 

クー様は既に服を着替えていた。

 

ここまで来て、ふと思った。どう聞けばいいだろうか?・・・・・・よし、ここは率直にいこう。

 

「ま、魔人って知ってますか?」

 

 

一瞬の沈黙、ここで知っていると答えてくれれば勘違いと分かる。だが答えは俺の思ったものと違った。

 

「魔人?魔物ではなく?」

 

俺はその答えに膝をつきたくなった。だが何とかもちこたえて「いえ、魔物と間違えました。すいません」とか言って誤魔化して部屋を後にした。

どうなっているんだ?あの国のこと魔人のことみんな忘れている。それだけならいいんだが、俺が憶えているのはどういうことだ?

 

「原因は、本だな」

 

あれが原因、あれが消えたことが原因。

 

そうだ、不思議な点はたくさんある。魔物退治専門のダルキアンさんがそれを知らないこと、ビスコッティやガレットにあの国の情報が一切なかったこと。そして唯一あったパスティヤージュの情報も消えてしまったこと。

 

それを総合すると何となく見えてくる。

 

まずこの世界、フロニャルドで魔人という存在は一度無かったことにされた。それはどんな方法でかは今は仮定が多すぎるから分からないが。

そしてあの本は紋章術か何かでプロテクトが張られていた。そしてそれがさっき切れてしまった。もしくは俺が触れてしまったことにより消えてしまった。

ならみんなの記憶が無くなった理由は?そして俺の記憶が無くならない理由は?

 

大丈夫だ。もう材料は揃っているはず・・・・・・・・・・・・。

 

その時、一つの考えが俺の中によぎった。

 

記憶が消える者と消えない者の区切り。関わりの深さ。その人物の状態。

 

もしかしたら俺は既に関係者になってしまったのでは?つまり・・・・・・・・・・・・

 

「君は消される側の人間だってこと、かな?」

 

「エルディーナ」

 

目の前にはいつの間にか見慣れた黒い和服少女がいた。

 

「あってるのか?俺はみんなに記憶から消えるということ・・・・・・」

 

「大正解だよ。君が魔人になると同時に他の人達から忘れられる」

 

魔人になるまで、つまり最大で一週間、それで俺は忘れられる。

 

「それはつまり、どうなろうと俺は一人になるということじゃないか!」

 

「そうだね。君の気持ちは全部無駄足だったんだ。まぁ、これに君が気付くのはもう少し先のはずだったんだがね」

 

一人になる。それは前の俺がずっとやってきたことだ。だが一度密の味を知ってしまうと止めれなくなる、それと同じで俺は友人というものを知ってしまいそれを離すのが嫌だと思ってしまった。

 

俺はどうしたら・・・・・・。気がついたら俺の周りには人がいなかった。

あれからガレットに帰り3日が経った。

 

どこかずれた世界で俺は過ごした。リコッタもエクレールもノワールも何も憶えていなかった。

 

そして3日間、俺には特に異常は無かった。夢も見なくなり、あの時の様な症状が出ることも無くなった。

 

だが後4日、俺はどんどん怖くなっていた。もちろん、ずっと解決方法は探していた。だが分からない。

 

だから俺はもう一度あの国に赴いた。もう時間がない。たぶん、ここで見つからなかったら、万事休す、ゲームセットだ。因みに国のことは誰も憶えてない上に誰かを連れて行こうとする何故か辿り着けなかった。

 

そうして俺はあの時調べられなかった姉様と呼ばれていた領主の部屋に来た。

 

一通り部屋を見て周る。どうやら妹さんの様に日記はつけてないらしい。残念だ。

 

次に来たのが書斎、俺は古い本をいくつも見ていく。かなり埃っぽく大変だ。だがその時にある本が目に入った。

 

"軍事記録書"

 

どうしてか凄い気になったのでそれを手にとった。

 

そういえばここの領主様はレオ様みたく随分と好戦的だった気がする。軍事会議にも参加してたらしいし。

 

軍事記録書をピラピラとめくっていく。そこには予想通りと言うべきか、パスティヤージュへの攻撃方法が書かれている。絵が多く用いられているが字もある。

 

"先方軍は神剣アルティウムを持った領主様と共にエッシェンバッハ城に突入"

 

どうやら不意打ちしたらしい。余程この国は弱いんだな。

 

俺は呑気にそんなことを考えながら続きを読んでいく。そこで俺はある文が目に入った。

 

"後方軍は雷銃エルディーナを中心として援護"

 

雷銃エルディーナ、どこぞの魔人の少女と同じ名前だった。

 

「いや、待てよ・・・・・・」

 

今思い返すと宝剣というのは一体何なんだ?国には必須とされる二対一体の武器、という物ではないとは思っていたが・・・・・・。

 

それに宝剣と同じ名前の少女、これが偶然だろうか?そんなわけがない。ならあの少女がエルディーナと名乗る理由は分かる。

 

 

彼女が宝剣

 

 

あり得ないとか、言われるかもしれない。だが宝剣は謎だらけで未知数、これくらいあり得るだろう。

 

それならもう一方の宝剣、アルティウムはどうなんだ?

 

こっちは破壊されいているはずだ。それで終わり?そんなわけがない。破壊された理由、それはなんだ?

 

宝剣というのは二対一体、しかも片方は絶対に神剣だったはずだ。その神剣が破壊されたとなれば何か尋常じゃないことが起きたのだろう。

 

それが何だったのか・・・・・・・・・・・・尋常じゃないこと、あるとすれば"奴"の存在。

 

もし、神剣アルティウムが破壊されたことより、奴が生まれたなら俺は奴の名称を変えなければいけない。

 

「・・・・・・魔神」

 

奴は神剣から生まれた魔神。それはとても危険な者な気がする。だがそうだとしたらそいつを倒したのは誰なんだ?そしてあの少女は何故魔人と名乗るのか。

 

「あともう少しだ」

 

材料は揃った。後はこれをちゃんと完成させるだけだ。

 

俺は急いでガレットに戻ることにした。

 

*

 

ガレットに急いで帰ってきた俺はすぐさま自室に戻ろうとしたのだが・・・・・・。

 

「駿、少しいいか?」

 

レオ様に捕まってしまった。そしてそのままレオ様の部屋に連れてこられた。

 

「どうしました、レオ様?」

 

「お主、最近ワシらを避けてないか?」

 

いきなり図星をつかれた。俺はついつい後退してしまう。

 

「な、何故そう思うのです?」

 

「態度を見ればわかる。駿よ、どうしたのだ?」

 

俺はとりあえず事情を話した。とりあえず、というのはどうせ忘れるからだ。

 

「お主、そんなことが・・・・・・・・・・・・?」

 

全部話し終えてレオ様が何かを言おうとした瞬間レオ様が止まった。どうしたんだ?

 

「・・・・・・お主、何者だ?」

 

先ほどの図星とは比べ物にならないほどの衝撃が走った。

 

「レ、レオ様・・・・・・天理駿です・・・・・・」

 

何とか声を絞り出して自己紹介をした。するとレオ様も自分を言い聞かせるように

「そうだったの、駿だったな。駿、駿・・・・・・・・・・・・」

 

あれから3日、ついに俺自身が記憶抹消の対象になった。どうやら、思い出せるからまだましだが、これからこんなことが増えてくるのか?

 

「う~ん」

 

「どうしましたか、レオ様?」

 

「どうしてお主を呼んだのか、思い出せんのだ」

 

「・・・・・・確か世間話をしてただけですよ」

 

ここで魔人とか言い出したらまたややこしいので俺は嘘をついた。

 

「そうか」

 

と俺の嘘は本当になってここから数十分、世間話が続いた。そうしてやっと解放されて俺は自室のベッドに倒れ込んだ。

 

体が動かない。どうやらレオ様のあれが予想以上に効いたらしい。

 

だが寝れもしない。怖いからだ。次寝て完全な魔人となったらどうしようとか起きた時にみんなが俺を完全に忘れていたらどうしようとか恐怖しているんだ。

 

「・・・・・・・・・・・・さっさと解決しないとな」

 

寝ることも出来ないのでなんとか立ち上がり、考察用に紙とペンを出したところで扉が叩かれた。

 

「駿、いる?」

 

「ノワールか?」

 

声の主はノワール、入っていいか訊かれたのでいいよと答えた。入ってきたノワールはどこか不安な感じがあった。

 

「どうしたんだ、ノワール?」

 

「・・・・・・実はさっき、ジョーとベルと話してたんだけど、駿最近私達を避けてない?」

 

もしかして今日からこんなことがずっと続くのだろうか、かなり嫌になるな。

 

「最近用事が出来てな、後少しで終わるから・・・・・・」

 

これまた本当の様な嘘をつく。

 

「それに駿、最近寝てる?」

 

みんな俺のことどれくらい見てるのだろう。そんなに気がつくものだろうか?確かにさっきの理由で俺はここ3日合わせて6、7時間しか寝てないはずだ。

 

「忙しいいんだ。それに慣れてるから大丈夫だよ」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

しばらく沈黙が続いた。そしてノワールは出ていった。俺もそれを見た後、ベッドにまた倒れた。

 

「君はやっぱり人付き合いが苦手なんだね」

 

「・・・・・・・・・・・・エルディーナか」

 

「驚かないんだね」

 

さすがに慣れてくるだろ、何回目だよ。そうつっこむ力はもうなかった。

 

「さて、途中経過でも聞こうか?」

 

「はぁ、わかったよ」

 

俺はさっき分かったことを全てエルディーナに話した。するとエルディーナは絶句ともとれる表情なった。

 

「まさか、もうそこまでくるとは・・・・・・」

 

「お褒めに預かり光栄です。それで?今の表情からこの仮定は正解だと考えて、お前は何者だ?」

 

そう訊くとエルディーナはふと微笑んだ。なんだ?まだ教えない気か?

 

「神剣に力を使い生まれた魔人、魔神か。それがいるとしてどうやって倒したんだい?」

 

「お前か?」

 

「半々かな?」

 

半々?どういうことだ?こいつと仲間が共に魔神を倒した?それとも・・・・・・・・・・・・。

 

そこでまた一つ、疑問が浮上した。この少女がエルディーナ、もう一方の宝剣として何故魔人化しているんだ?

 

神剣アルティウムに勝てる手段、魔神を倒す方法、あるとするなら、もう片方の宝剣によってだ。だがそれが半々の正解、しかもエルディーナが魔人化してる理由は・・・・・・・・・・・・。

 

「封印か?」

 

「おぉ、正解だよ」

 

「成る程、俺に魔神の一部を渡したから俺は魔人化したのか」

 

魔人化、それは魔神の一部を入れられることにより、生じることだったのか。

 

「それで、俺にこれを渡した理由を聞こうか」

 

「封印の限界だよ」

 

エルディーナは超簡潔に言った。

 

「限界って。でもなんで俺なんだ?」

 

「魔人は私の紋章術で誰の記憶にも残らない様にしている。だから君の様な人と接しない人間が良かったんだよ」

 

「つまり、一人で生きていくのに苦がない人間がエルディーナを引き継いでずっと魔神を封印してきたのか?」

 

「そうだよ。でも引き継ぐのは君が初めてだよ」

 

そうだったのか。その封印とやらはどうやらかなり強いらしいな。

 

「で、それはどうやったら引き継げるんだ?」

 

「引き継ぐ気かい?でも残念だったね。私が予想していたよりもずっと早く魔神は動き出してしまった」

 

残念?動き出した?つまりそれって・・・・・・

 

「封印は解かれてしまった」

 

それを聞いた途端、エルディーナの周りの空間にピシリと亀裂が入りそこから黒い手が出てきた。

 

「ちょっと待て!どういうことだよ!?」

 

「私の中に封印した魔神が目覚めたのだよ」

 

そんな会話の間にも亀裂はどんどん大きくなり、もう片方の手も出てきた。そして両手で空間を押し退けて禍々しい魔神が姿を現した。そしてエルディーナは髪の毛が真っ白になってベッドに倒れ込んだ。

 

「お前が魔神か・・・・・・」

 

俺は輝力解放でタイタンソードを出現させて戦闘体制に入った。見ただけでわかる、こいつはやばい。

 

魔神はそんな俺を見ることなく部屋を見渡していた。首を動かすたびにギギギギと不快な音が部屋に鳴り響く。

 

そしてある程度見渡した後、黒い霧に囲まれて姿を消した。

 

「なっ!?」

 

くそっ!ここで見失ったらさすがにやばい。

 

俺が追いかけようとすると腕を掴まれた。

 

「待て・・・・・・」

 

「待てるか!あんな奴外に出たら・・・・・・」

 

エルディーナは何とか起き上がり裾を探り始めた。

 

「奴はまだ完全に復活していない。それに行ってどうする気だ?」

 

それを言われて俺は完全に動きが止まった。確かに行っても勝てる見込みはない。

 

「だからこれを・・・・・・」

 

そう言ってエルディーナは俺に指輪を差し出した。

 

「これは・・・・・・」

 

「雷銃エルディーナ。それがあれば勝率が0%から0.1%くらいにはなるかもね」

 

「ありがとう。期待に答えられる様に頑張るよ」

 

俺は指輪を右手の人差し指にはめて少し眺めた。宝石の色は黒、フレームは薄汚れている。

 

「そういえば、どうして魔神の存在を記憶から消したんだ?」

 

「・・・・・・・・・・・・あれは天災だ。誰にも防げない。だから私は誰もあれに恐れることのない様に記憶から消して偽りの安息を作り出したんだ。だが、それは間違っていたな。結局、私が恐れていただけだったんだ」

 

確かにやり方は間違っているだろう。一時的平穏は教訓を伝えれなく、後の人間をより危険にさらす可能性がある。でも・・・・・・・・・・・・

 

「間違ってないと思うよ。お前は誰かの為にそれをやったんだ、自分を犠牲にして。それはとても凄いことだよ」

 

そう、俺を選んだのだって誰も悲しませない方法を考えて、苦肉の策として考え出した出した答えなのだろう。

 

「ふふっ、慰めありがとう」

 

どういたしまして、と言って俺は走り出した。

魔神は俺の中の一部が反応してどこにいるか直ぐに分かった。到着すると魔神はこっちを見た。

 

「よぉ、魔神」

 

そう言ってみたが魔神は返さない。喋れないらしい。だがその代わりに

 

ぎやぁぁぁああああ!!!

 

雄叫びを上げて答えた。と同時に尖った四本の指を収束してこっちに突き付けた。

 

「うおっ!」

 

俺はそれを間一髪避ける。そして持っていたタイタンソードで腹部を切りつけた。だがそこが直ぐに再生。どうやらこれだけじゃダメージは通らないらしい。

 

「ちっ、なら!」

 

俺は切りつけた勢いで魔神から距離を取ってから右手を掲げた。

 

「エルディーナ!」

 

そう叫ぶと右手に黄色と黒で装飾された火縄銃の様な銃が出現、それを魔神に向け、引き金を引いた。

 

バシュン!

 

するとエルディーナから雷が魔神に向かって一直線に放たれた。

 

魔神もさすがに雷のスピードには負けるようで、直撃して吹き飛んだ。

 

「よし」

 

さすがに雷をくらえば・・・・・・・・・・・・、そんなフラグを思ったら、魔神は傷一つ付けず立ち上がった。

 

そしていつの間にか首を締められていた。

 

「がっ!ぐ・・・・・・・・・・・・」

 

くそっ、意識が・・・・・・・・・・・・。

 

『俺の一部を返せ!』

 

その瞬間、頭の中にそんな声が響いた。これは、魔神の声か?

 

「この!」

 

俺はなんとか顎に銃口を向けた引き金を引いた。

 

バシュン!

 

すると頭が吹っ飛び、俺の首から手が離れた。

 

「がはっ!はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・」

 

しかし、さっきの声は?

 

もしかしてこいつが完全体になれないのって、俺が一部を持っているからか?エルディーナはそれの保険で俺に?

 

「なら、倒す方法は、これしかないな」

 

俺はある一つ決意をした。それだけでいい。それだけであいつに勝てる確率はグンと上がる。

 

その決意をした瞬間、俺の周りにはあいつと同じように黒い禍々しいオーラが発生した。そして見えないから分からないがたぶん目は赤色に、髪は腰あたりまで伸びた。

 

これが本当の魔人化か。

 

俺は2、3度手を握ったり開いたりする。力が湧き出てくる。だがこれで勝てるとは思っていない。ここからが作戦の本番だ。

 

「紋章術、アブソーブ!」

 

そういうと同時に俺の手から一本の輝力の糸が現れて、たった今立ち上がった魔神に刺さった。

 

これは相手の輝力を吸収する紋章術。つまりここからは魔神との綱引きだ。

 

「おりゃあ!」

 

俺は一気に勝負を決めるために魔神の力を大量に奪い取った。しかし魔神もやり方を分かったらしく、こっち以上の力で輝力吸収を始めた。

 

『人間は醜い。誰もが誰かを憎み、妬み、恨んでいる』

 

そんな声が聞こえてくる。どうやら魔神の声らしい。

 

「うおっ!?」

 

その言葉を聞いた瞬間、力が一気に増した。くそっ、あの野郎、負の感情を力に動いてやがるな。

 

『貴様だって知っているはずだ。人間はそういう生き物だということが』

 

どうやらエルディーナの中から色々見たり聞いてたりしてたらしい。俺の事情にも詳しいな。

 

「・・・・・・・・・・・・あぁ、確かに人間は醜いよ」

 

自分の利益の為に人を陥れたり、最悪の場合殺したりもする。いつも自分ばかりで人を助けるのだって恩を売るためだ、そう思っていた。

 

「だけど、人間はそれだけじゃない!自分の利益が無いのに他人を助けたりも出来る。俺はこっちに来てそういう人達にもあった」

 

ガレットのみんなもビスコッティのみんなも誰もが他人の為に頑張っていた。そしてエルディーナもこの世界を守るために一人魔神を背負って何百年も生きてきた。

 

俺もそうなりたい。俺も誰かを無償で助けれるそんな人間になりたい!

 

「だから俺は、お前を倒して誰も信用出来ない自分を卒業する!別に誰でも信用出来なくても、せめて友達だけでも信用出来る俺になる!」

 

俺は叫びながら糸を引っ張った。すると魔神の胸元から大きな光が糸を伝って、俺の指にはめられていた宝剣に吸収された。そしてそこでアブソーブは切れた。

 

「うおっ!?」

 

俺は力よく引っ張りすぎた俺は後ろにこけて2、3回転がった。

 

「いつつ・・・・・・なんだ?」

 

頭を押さえつつ、指輪を見ると形が変わっていた。薄汚れていたフレームは綺麗になっており、真っ黒だった宝石はダイヤモンドの様に輝いていた。

 

これは、まさかあいつの中にあったアルティウムがこっちに?

 

それを証明するように魔神は明らかに弱っていた。

 

「これならいける、エルディーナ・アルティウム!」

 

俺はまた右手を掲げて、安直なネームを叫んだ。すると先ほどとは違う銀一色の銃は現れた。

 

「アルテマ・キャノン!」

 

引き金を引いた瞬間、銃口からは雷撃ではなく、黒い輝力が放たれた。それは弱った魔神に見事に命中、木々を薙ぎ倒しながら魔神は跡形もなく消えた。

 

そして俺は喚起の声を上げた。

エルディーナ・アルティウムをしまった俺はガレットに帰るために歩いていた。さすがに色々あって走る元気がない。

 

それにしても髪の毛は腰の辺りまで伸びたままだ。つまり魔人化は解けてない。というか魔人になってしまった。

 

「マジか・・・・・・」

 

それにしても魔人になってしまったってことは、俺はみんなから忘れられたのだろうか?それは嫌だな。

 

色んなことを考えているとガレットに到着、俺は止められないか恐れながら入っていく。だが止められるどころか、普通に挨拶された。

 

どういうことだ?俺は忘れられていないのか?

 

そのまま何事もなく自室に戻ると、ベッドでエルディーナが寝ていた。こいつは何を呑気に寝てやがんだ。

 

俺はスヤスヤと寝ているエルディーナの耳元まで起こさないように近づいて

 

(起きないと、悪戯するよ?)

 

昔見た漫画の様に吐息がかかる距離で耳元で囁いた。するとエルディーナはすぐさま目を覚ましてベッドの端まで凄いスピードでよって、そのまま落ちた。そしてそこから顔だけ出した。

 

「ななななな、何をしているんだ!?」

 

「何って・・・・・・・・・・・・囁き?」

 

「いやいやいや!おかしいだろう?なんで囁いた!?」

 

うるさい。部屋に響く程騒がないでほしい。

 

「何でって、お前が寝てたから」

 

「いや、だから!・・・・・・・・・・・・もうやめよう。たぶん、終わらないな、この問いかけは」

 

「それで、魔神を倒したのだが?」

 

「倒した?封印じゃなく?どうやって?」

 

俺はその質問を予想していたのでさっき起こったことを多少端折ってだが話した。するとエルディーナは唖然とした。

 

「それでは君は今、エルディーナもアルティウムも持っているのか?それに魔人の力も残っている?」

 

「そういうことになるな」

 

証拠に宝剣も見せたのだがエルディーナはまだ半信半疑だった。

 

「なんか私がここまで悩んできたことが馬鹿みたいだな」

 

「いやいや、エルディーナも凄いって」

 

俺がそういうとエルディーナはハッと思い出したようになった後、口を開いた。

 

「私は、エルディーナではない・・・・・・・・・・・・ド、ドルチェだ」

 

「は?だってお前・・・・・・」

 

そういうとエルディーナもといドルチェは顔を赤くした。

 

「あ、あれは宝剣を持っていたし魔神を封印してたからで、ドルチェは私の本当の名前だよ」

 

何故わざわざ偽名を使った?とは訊けなかった。というか訊いても意味がない気がした。

 

「はぁ、それじゃ、初めまして、ドルチェ」

 

俺は笑顔でドルチェに手をさしのべた。

 

「う、うむ」

 

するとドルチェは俺の手を握ってくれた。

 

「それはそうと、俺はみんなに忘れられたのか?」

 

ここでやっと俺が訊きたかった本題に入ることが出来た。そしてドルチェも真剣な顔になった。

 

「あれは魔神を封印した時点で発動するものだから、魔神が倒されて紋章術自体がなくなった。だからみんなの記憶は無くなくなってなし、これからも無くならないよ」

 

「そうか。よかったぁ」

 

なんか、ようやく勝った気がしてきたな。うわぁ、なんか一気に疲れが出てきたわ。

 

俺はフラフラとベッドに倒れ込んだ。そして仰向けになって伸びていた髪を指でいじくった。

 

「しかし、魔人ていうか魔神になっちゃったな・・・・・・」

 

見えないから分からないが目は真っ赤なのだろう。

 

「まぁ、いいではないか。忘れられるわけではあるないし」

 

ドルチェの野郎は完全に他人事にして楽しんでやがる。

 

「それにしても、君は色々とやらなければいけないだろう?」

 

「はぁ?何だよ?」

 

「私の紋章術が解けて記憶は失うことを止めただけでなく、失った記憶は帰ってくるのだから」

 

そう言って俺の横に座った。

 

ん?記憶が帰ってくる?ということはつまり・・・・・・

 

「駿よ!」

勢い良く扉が開き、レオ様やジェノワーズ、ガウル、そしてビスコッティの方々(パスティヤージュ同行組)やクー様まで入ってきた。ってさすがにこの部屋の容量超えないか!?

 

「頑張りたまえ」

 

俺はこの後、数人にこれまで起こったことを話した。もう、歴史の先生になった気分だった。

 

*

 

説明が終わり、質問タイムも終わった。

 

みんなはまだ納得していない気もするがどうにか納得さした。そして俺が無理矢理に話を終了させて「こっちはそれで知り合ったドルチェだ!」と言って気を逸らしたのだが・・・・・・・・・・・・

 

「そうだな、初めまして。私はドルチェ、駿君の彼女だよ」

 

ぴしりと空間が固まった、気がした。

 

「違うからな」

 

「酷いなぁ」

 

そう言ってドルチェは俺の右手を手にとり指輪を外し、次に左手を持って指輪を俺の薬指にはめた。

 

すると固まった空間はさらに固まり、ついには氷点下に達したが気がした。

 

そしてとどめと言わんばかりに俺の唇に唇を重ねた。英語で言うとマウストウマウス、つまりキス、接吻である。

 

「ん!?んん!」

 

俺はドルチェの顔を両手で持ち、何とか離した。

 

「何をやってんだ!?」

 

「キスだよ?知らなかったかい?」

 

「知っとるわ!なんでこんなことやってんだ!」

 

はっと我に帰り、横を見ると何名かが顔を赤らめて、残りが目を輝かしてこっちを見ていた。

 

「あの~・・・・・・助けては、もらえませんか?」

 

こう言いながら俺ずっとこっちに向かってくるドルチェを押さえている。そしてみんな助けてくれない。

 

「い、い、加減にしろ~~~!!」

 

俺はドルチェの頭を両手でしっかりと持ちながら、一度自分の頭後ろに下げる。そして勢い良く、でことでこをぶつけた。

 

「痛いっ!」

 

それによりドルチェはベッドに倒れた。

 

「わぁ~~・・・・・・・・・・・・」

 

外野が何人か、そんな声を出した。

 

「何か文句が?」

 

「い、いや、そんなんじゃないんだが。てか駿、おめぇ何か変わったな」

 

俺の誠意が伝わったらしく、ガウルが話を逸らした。

 

「ん?う~ん、なんというか、区切りです。元々俺自身も人を信じたいと思っていたみたいなので丁度いいですしね」

 

みたい、というのはけっこう無意識だったからだ。

 

「ということは・・・・・・・・・・・・?」

 

俺は一度そっぽを向いて頬を掻いた。そして再度みんなの方を見てできる限りの笑顔を見せて言った。

 

「改めて初めまして、天理駿です。よろしく、レオ様、ガウル、ジョー、ベル、ノワ、リコ、エクレ、ユッキー、クー様」




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