dog days not勇者   作:鮪瓜

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第24話

人命救助訓練、午後の訓練と滞りなく終わり、空はすでに真っ暗、夕食も終わって後は寝るだけなのだが……。

 

何故、小屋が一つなのだろうか?

 

いや、たった今疑問に思ったわけではなかったのだが、色々あって後回しにしていたのだが、寝るとなってはさすがに無視が出来ない。地球ではあれだった所為で気にしていなかったが、俺も一応17歳の思春期である。シンクの所為で七海と混浴してしまったときだって真面目な話のおかげで平静を保てたが、今回はただ寝るだけ、しかしそれはとても難易度の高いことだ。

「いやぁ、こうしてみんなで一緒に寝るのはいいでござるな」

「そうだね」

全く気にしていない女性陣、やはりフロニャルドと地球は似ているようで違うらしい。普通こういうのは女性の方が嫌がるのではないのか?俺が勘違いしているのか?

「それじゃ、場所、どうしよっか」

シンク、お前もか。どうやらやっぱり俺がおかしいらしい。と思ったのだが、横を見てみるとエクレが真っ赤な顔で固まっていた。

「ちょ、ちょ、ちょっと待て!まさか全員ここで寝るのか!?勇者も駿も?」

あ、どうやら俺の勘違いでもないらしい。

「そうでござるが?」

「当たり前にように言うな!」

「でも。それならシンクと駿はどこで寝るの?」

ノワの確信をついた一言でエクレは黙ってしまう。そして何故だかこっちを見た。

「駿、お前だって嫌だろ!なんとか言ってくれ」

「気づかれてたか……まぁ、俺だって嫌だけど、野宿はもっと嫌だからな……」

「くっ…………」

さすがに俺とシンクに野宿をさせるのは気が引けるのか、エクレは了承せざるおえなかった。

と、言うことで場所決め。ユッキーとノワに押し切られくじ引きになってしまった。何故なんだろうか、シンク、俺、エクレで3対2だった筈なのに、気が付いたら2対3、1対4、0対5と逆転されていた。

「で、こうなっちゃうか……」

場所はくじの結果、エクレ、シンク、ユッキー、俺、ノワ。まぁ、惜しみなく交互になってしまった。これがシンクの力だろうか?それとも神様の思し召しだろうか?それなら管轄はどこだ?ラブコメか、ラブコメの神様か?一回ぶん殴りたい。

「それじゃ、寝よっか」

シンク、だからなんでそんなに平常なの?

 

 

昼に何も考えず無心になろうとしていたのだが、案外難しいものだった。気が付いたら何かを考えてしまっている。まぁ、それは人間として仕方がないことなのだが、無心になれる人はなれるものだろう。

とそんな話は今はいい。俺はそのときふと思い出してしまったのだ。昔のこと、まだ両親が生きていたときのこと。だから、夢を見てしまった。その思い出を。

「…………」

目が覚めた。辺りは真っ暗、ユッキーとノワはまだ寝ている。どうやらかなり早く起きてしまったらしい。

「あれ?」

頬に涙が伝っていることに今気が付いた。一体俺はどんな夢を見たのだろうか?朧そげにしか思い出せない。

「……覚えてないもの思い出そうとしても無駄か。とりあえず顔洗お」

近くには川があるわけだし、どうせならこのまま起きておこう。そう決めて俺は小屋を出た。外には何故かエクレの膝枕で寝ているシンクがいたのだが、深く追求しないでおこう。しなくても分かる人は分かると直感が言っているし。

2人を放置、俺は川辺に屈み、手で水をすくって顔にかける。夜の気温のおかげか、水は冷たくて目が覚めた。目が覚めたついでに空を見上げると満天の星、フロニャルドの天体は地球とあまり変わりなく夏の大三角形もある。

綺麗な空を見ながら自然に囲まれて一息つく。地球ではなかなか出来ないことだろう。実にいい気分、のはずなのだが、俺は少し嫌な気分だった。

理由は一つ、思い出したこと、家族のこと。楽しい思い出を思い出すことに関してはいいのだが、それとセットで嫌なことが大量に出てくる。それは辛い。それに今はなるべく避けたい。なぜなr「駿?」……どうやら神様はまだこれを喋らしたくないらしい。

「なんだ、ノワ。お前も目が覚めたか?」

後ろには可愛らしい寝間着を着たノワが立っていた。ところで、あの寝巻、フロニャルドで手に入れたんだよな?

「駿、どうしたの?」

「目、覚ましてな、顔洗いに」

「まだ日昇ってないけど、もう起きるの?」

目を覚ますためだけじゃないけど、と言おうとしたが、止めた。言ってしまえばもう一つの理由も説明しなければいけない。それはできれば避けたい。言ってしまってノワたちを心配させるのは心苦しいし。

「どうしたの?」

「ん?あ、なんでもない。俺は起きておくけど、ノワはどうする?」

そう聞くとノワは答えず、俺の横に座った。これは起きておくということだろうか。

しばらく沈黙が続く。川のせせらぎや鳥の鳴き声が妙に大きく聞こえる。これは俺から何か話題を振った方がいいのだろうか。それとも待った方がいいのだろうか……分からない。

………………。

「駿、実はね」

悩みに悩んだあげくこっちから話を振ろうと考えて声を出そうとした瞬間、先にノワがそう切り出した。

「私、少し魔物対策部隊になるのが、怖い」

「え?」

唐突に、予期していなかったことを言われて一瞬思考が止まった。ノワが、フロニャルドの住人が戦いを怖がるなんて考えてもみなかった。

「いつか、部隊を立ち上げて、私が部隊長になったとき、みんなのことを守ることができるのか、不安。私は前の魔物騒動、その場にいなかったから見てないけど、お城に帰ってきたとき、レオ様は大けがしてた」

俺はノワがそう言ったことでようやく合点がいった。 フロニャルドの住人は戦闘に慣れてはいるが、 死闘には慣れていないどころか、経験がないのだ。全員、戦をするのはあくまでもフロニャ力が満ちた土地のみ、それはつまり安全が保障されているのだ、死なないことを。

魔物のことは聞いている、文献で読んでいる。けど実際には、経験が全くない、ちゃんと見たことすらない。結局、俺たちと一緒なんだ。 戦争のことは知っているが、知らない俺たち、地球の人間と。

今はダルキアンさんやユッキーのベテランが一緒にいるから緩和されているが、1人、それも部隊長ともなると心持ちが全然違うだろう。

「レオ様がこの話を私にしてくれたとき、光栄だった。でも…………」

領主様が信頼してくれて選んでくれたのだ、光栄に決まっている。でもいくらそう思っても、心は、感情は嘘をつけない。怖いものは怖いのだ。

俺は、そんなノワになんて声をかけたらいい?小手先の言葉なんていらない、ただの慰めなんて意味がない。基本、シンク達もフロニャルドの住人は接しやすいというか、親しみやすいからこっちも話せたし、俺のことだったから色々言うこともできたけど、今回はノワのこと、俺は関係ないわけではないにしろ、主体はノワだ。

さて、なんて話したものか。地球では長い間一人で生きていた所為で、そうそう簡単に気の利いた言葉など出てこない。こんなときに孤立したことを悔やむとは本当に思わなかった。

こういう場合シンクならなんて言うのだろうか……いや、いくらシンクがノワを慰めれる言葉を言えても、それはシンクだからだ。俺が言っても、シンク以外が言っても意味はない。俺は、俺が言えることを言えばいい。気持ちがあればいいとは言わないが、あった方が良いのは確かだ。

「ノワ、確かに俺も怖いよ。死ぬことも、死なせることも。実際、俺も一度自殺しようとしたとき、結構な覚悟が必要だった」

それはフロニャルドに来たことにより、結局未遂で終わったけど、あのままあっちにいたらきっと、もう俺はこの世にいなかったんだろう。それに俺は何度か名前も呼びたくないあの人を殺そうとも思った。まぁ、それは美保がいたから止まったんだが、やっぱりいいものではない。まだ魔物を封印するだけでいいなんて楽なのだろう。

「自分の命だけならまだしも、他の命を背負うのはしんどいんだろうな。本当、領主様方々は尊敬できるよ」

レオ様もミルヒさんもクー様もみんな、しっかりと上に立っている。本当に、頭が上がらない。

「厳しいかもしれないけど今のノワにはその能力はない、あくまでも今は、だが」

「うん」

「だから、半分、俺も背負うよ」

ここまで前置きを結構してやっと言いたいことを言えた。しかしノワは追いつけなかったのかぽかんとしていた。なんか恥ずかしくなってきた。

「全部は背負えなくても、半分ずつなら俺たちでいけるよ。俺だって魔物対策部隊の一員、しかも副隊長だろうし」

何故か恥ずかしくなってきた所為で少し早口になってしまった。ノワは聞き取れただろうかと見てみるとまだぽかんとしていた。

「えっと、ノワさん?」

「あ、え、いいの?」

「命令されたら逆らえんよ、部隊長さん」

冗談っぽく、俺はノワに言った。

「…………なら、お願いできる?」

「イエッサー、部隊長」

安心してくれたようで欠伸をしたノワは小屋に戻った。

俺は色々勘違いをしていた。フロニャルドの住人は毎日笑顔で仲が良く、戦も平和的だけど、住人は悩み、弱音を吐く。嫌いな人もいて怒ったり、愚痴を言ったりもする、筈だ。ドルチェがいた頃は昔で今はもうそんなことはないなんてなかった。

「まぁ、人間である限り、当たり前か」

話によればシンクだって七海に負けて泣いていたらしいし、七海だって悩んでいた。フロニャルドのみんなだっていつも笑顔ではないだろう。

ノワが戻って行った小屋を見る。そういえばユッキーは何故、魔物退治をしているのだろうか。いやそれはダルキアンさんに拾われたからだ。俺が気になっているのはそれではない。

かつての俺と同じ、ユッキーは自分の親を殺されている。彼女は魔物を恨んでいないのだろうか?

今日のノワを見て出てきた新たな考え、彼女たちの黒い感情、俺が今まで無かったと思い、勘違いしていたそれがもしあるとするならば…………。

俺は自分の胸元にそっと手を触れた。そこに光る黒い指輪、俺がこれを手に入れるまでにあったこと、そしてこれが生まれるきっかけ。

土地神が病気で魔物になるのなら人間も魔人になってしかるべきだという証明になる、あの夢で見た映像、もし今でもその可能性があるなら真面目に考えなければいけないものだ。

リコとの研究の題材が決まった。




フロニャルドの住人ってけがすることに免疫あるのかなという妄想による産物、そんな話です。
感想アドバイス下さるとうれしいです。
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