dog days not勇者   作:鮪瓜

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完全オリジナル! 原作キャラ登場0!


第30話

『痛いな。誰きみ?』

 

変な黒いやつが美保(ドルチェ)を襲おうとしていたので、とりあえず蹴ったのだが、あまりダメージがなかったらしく軽い口ぶりで立ち上がった。

 

厄介な状況。明らかに今の状況はそれのことを言う。あれか、俺が女装をしなかったばっかりに。こうなったのか。これなら部隊長と一緒に行けばよかった。わざわざふた手に別れる必要なってなかった。

 

まぁ、2人を助けれたからいいけど。

 

「で、この状況なに?」

 

『知らないで蹴ったって酷いな、きみ』

 

「黙れ、お前には聞いてない。蹴ったのはお前が俺の彼女襲おうとしたからだ。酷くない」

 

暗闇だったから黒く見えたのかと思っていたが、どうやらそうではなくあいつ自身が真っ黒らしい。

人間じゃない。人間の形はしているが、あれはどう考えても人間じゃない。そしてどこかで感じたことある雰囲気をしている。

 

「そのひ、人? 魔人って言ってたよ」

 

 

「あぁ…………いくらなんでも早いだろ。もう少しさ、なんかあるだろ?」

 

『蹴られた上によく分からないことで怒られた』

 

先ほどから文句を言ってくる自称魔人。何が苛立つって、少し声が高いことだ。絶対にバカにしている。

 

「で、ドルチェは何をそんなに怒ってたんだ?」

 

『あいつが、私のことを同類と言ったんだ』

 

「………………」

 

同類、ドルチェとあれが、ね……。まぁ、魔人であるあれと、魔神の半分を体内に宿すドルチェは他人から見れば似ているのかもしれない。

 

もう一度、自称魔人を見る。形しか分からない真っ黒な姿。その黒よりさらに深い三日月型の黒、たぶん笑っているのだろう。

 

負の感情の塊――魔人、なのに笑っている。不幸な人間はときどき何故か笑ったりもするけれど、あれの最終形態か、なにかだろうか。

 

それとも、魔人になれば幸せにでもなるのだろうか。不幸のどん底に落とされたからこその幸せ。そんなものでもあるというのだろうか。

 

「……兎に角、気味が悪い。お前がドルチェと同等なんて片腹痛いわ」

 

『うんうん、なるほど、確かに。そこの子に近いってのは御幣があったよ。正確には……』

 

 

君に近い。

 

 

「………………」

 

『っ! 貴様!』

 

「そんなわけないでしょ!」

 

俺が何かを言う前に、2人が弁解した。

 

うん、今の俺は幸せものだ。少なくとも、あんな不幸に飲み込まれて、笑っているやつより全然幸せものだ。

 

「まぁ、俺も魔神の片割れ担いでる身だ。近似感を覚えるのも仕方ない。でも、似てるだけで全然違うよ」

 

『ふ~ん、そうかい』

 

自称魔人はそれを言うと同時に俺に蹴りを繰り出した。俺は疲れている体を何とか動かし、それを避ける。

 

結局バトルになるのか。てか何故追い剥ぎうさぎを捕まえるために来たのに自称魔人さん戦うことになるんだ。

 

「ドルチェ! ユニゾンだ!」

 

『わ、わかった』

 

「紫電斬!」

 

短剣のエルディーナ・アルティウムを振り、紋章剣を放つ。自称魔人はそれを難なく避ける。

 

次の攻撃を警戒したが、自称魔人は何故か攻撃を仕掛けてこなかった。そして何かを呟きながら、無い目で俺を見た。

 

『……へぇ、ふ~ん、そうか。そうかそうかそうか』

 

「はぁ?」

 

『君が、魔神か』

 

「さっき言ったろ、そう」

 

『字が違うだけで、読み方は一緒だからね。勘違いしてたよ』

 

そういえば、それもそうか。なんとなく判断してたからあまり気にしてなかった。

 

『それなら、今日はもう退かせてもらおう。まだ、準備は完了していないんでね』

 

瞬間、自称魔人は暗闇に紛れて消えた。

 

あっけなく、終わった。

 

いきなりどうしたんだ? 俺が魔神の力を持っていると知ったからか? 準備? あいつは一体何が目的なんだ。

 

「……ドルチェ、解除だ」

 

『ああ』

 

何はともあれ、敵が去ったのは事実。そう思い、ユニゾンを解除すると、ドルチェは俯いていた。心なしか、いつもピンと立っているキツネ耳もペタンとしている。

 

「どうした?」

 

「…………私は、あいつとは違う」

 

俯きながらも、はっきりと力強い声で、ドルチェは言った。

 

俺はドルチェが一体何十、いや何百年一人で生きてきたのか、知らない。その間、どうして生きてきたのかも知らない。どういう気持ちだったのか、分からない。俺の彼女なのに、俺はドルチェのこと何も知らない。

 

無意識か、俺はいつの間にかドルチェの頬に触れていた。

 

「しゅ、ん?」

 

「ドルチェ、お前は変わったな」

 

何にも知らない俺でも、それでも分かるくらい、ドルチェは変わった。

 

「初めて会ったお前はときどき現れては俺をからかって、俺に魔神を渡そうとしていた。あのときのお前の笑顔はさっきのあれに似ていた、気もする」

 

「っ!?」

 

顔をあげるドルチェ。その顔は驚きと悲しみが混ざっていた。

 

「でも、今は違う。お前は幸せそうに笑っている。純粋に、嬉しさ、喜びを表した笑顔でいつも俺と話してくれてた」

 

まぁ、ときどきいたずらの笑みがあるが、それもまたいい。

 

不幸ものの笑顔には卑屈が、負け惜しみが見え隠れする。ドルチェが魔神に解放されてから今日までの笑顔は絶対に魔人にはできない。

 

「俺たちは魔神になったんじゃない。魔神に打ち勝ったんだ。だから、絶対にお前も俺も魔神じゃない。あいつと同類なんかじゃない」

 

「そ、うか。そうだな。少し、雰囲気に流され過ぎた。ありがとう、駿」

 

「どういたしまして」

 

俺の目をまっすぐ見るドルチェの顔はもう驚きの色も悲しみの色もなかった。そしてドルチェは頬に触れた俺の手にそっと手を重ねた。そういえば、ほぼ無意識に触れてしまっていた。改めて、自覚するとこれ、すごく体温上がってきた。

 

そろそろ追剥ぎの方も解決しているはずなので、行かなければいけないのだが、ドルチェから目を離せない。こうやって見ると、やっぱりドルチェは美人だ。

 

そんなことを考えてるとドルチェは、ゆっくり顔を近づけてきた。これは、つまり…………。

 

 

「ごほぉ!」

 

 

「わっ!?」

 

完全に雰囲気に任せていたら、美保のわざとらしい咳で現実に引き戻された。

 

「2人とも、キスをすることが悪いとは言わないけど、もう少し場所とか状況とか考えて」

 

「は、はい」

 

腰に手を当てて言う美保はどこか迫力があり、怖かった。ここで口答えなんてしたら、恐ろしいことが起こりそうだ。

 

「ま、まぁ、たぶんあっちも解決してるだろうから行こうぜ?」

 

「…………その誤魔化し方は下手すぎるけど、まぁ、その通りだから、言う通りにしてあげる」

 

そう言って、美保は暗い夜道を歩きだした。

 

とりあえず、問題は解決、ではなく先送りに。俺とドルチェは美保の後を追い、歩き始めた。

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