追剥ぎうさぎの件に関しては俺たちがみんなと合流することには解決していた。部隊長に聞いたところ、派手好き領主様お二方が全部持って行ったとか。
というか、レオ様に頼まれてわざわざ来たのに何故、レオ様も来ているのか。領主なのだからわざわざ足を運ぶ必要は……いや、必要とかではないのか、レオ様は。
そんなレオ様を見て、いつもの雰囲気に帰ってこれたと、俺は安心の吐息を1つ吐いた。正直さっきまでの雰囲気はフロニャルドでは異質、かなりの疲労があった。まぁ、合宿から連続だったってこともあるんだけど。
あぁ、そうそう、ダルキアンさんのお兄ちゃんが帰ってきたのだ。名前はイスカ・マキシマさん、それを知った時、美保は「あぁ! 気になってたのそれだ!」と叫んで顔を赤くした。
ただ、俺がそれより驚いたのはダルキアンさんの本名がヒナだったことだ。なんというか、威厳って名前も関係するんだな、と思いました。ちなみに呼ぼうとしたが、その報復が怖いのでやめた。
イスカさんはヒ……ダルキアンさんの兄だけあってやっぱり強い、らしい。俺は見たことないから分からないが、ドルチェが言うにはかなりの実力者のようだ。だが、本業は鍛冶屋のようで、レオ様も知っているほど有名らしい。つまり、戦う鍛冶屋様ということだ。
そんな戦う鍛冶屋様ことイスカさんとダルキアンさんの再開なので、風月庵へ行くことになったわけだが…………。
「何の便りも寄越さないというのはどういうつもりだ。どこかで死んでいるのか思ったんだぞ」
「バカだね、ヒナ。そう簡単に俺が死ぬかよ。お前こそ、あれだ、飲み過ぎて体壊してないだろうな」
「兄者には言われたくないぞ。私より深酒をするくせに」
なんというか、ダルキアンさんが饒舌というか、いつもより子供っぽいというか、何かいつもと違う感じがした。
(やっぱり、家族ってのは特別なものなのかな……)
二人の様子を見て、ふとそんなことを思った。たぶんダルキアンさんが少し幼く見えるのは、妹としての部分が出ているからなのだろう。
家族、俺にはもういない、思い出せる記憶も数えれるくらいしかない。だから俺にはダルキアンさんの気持ちが分からない。
少し気持ちが暗くなってしまう。今は再開と事件解決で明るくいかなければいけない。
俺は気持ちを切り替える。とりあえずミルヒさんの提案で夕飯をここで食べていくことになったので、今はおいしいご飯に舌鼓を打つことにしよう。
そうして、時間は過ぎていき、リコと部隊長の締めで夕飯も終わった。ここで全員解散、それぞれ自分たちの国に帰るのだが、俺は部隊長とドルチェを引き留め、風月庵に残った。
「…………」
「駿、どうしたの?」
居間に俺と部隊長、ドルチェ、ダルキアンさんにユッキーそしてイスカさんが円になるように座っている。何故集められたのか、当事者であるドルチェは分かっていない。
俺は一つ深呼吸をして話す内容の整理と心の準備をする。これから話すことは勇気がいる。
「みなさんに集まってもらったのは、魔人について少し話したいことがあったからなんです」
「魔人、でござるか」
「その魔人がこの事件中に現れたんです」
「え!? 魔人は駿殿が封印をしたのではなかったのでござるか?」
「俺が封印したのは魔神……ややこしいな。まぁ、それとは別の奴だ」
「それは、魔人が新たに現れたということでござるか?」
ダルキアンさんの顔が強張る。
「はい。今までドルチェの術で忘れ去られていた奴なのか、新しく生まれたのか、それは定かではありませんが、あいつらはフロニャルドに存在します」
と、そこで横にいる部隊長が少しついていけていないことに気が付いた。なんというか、オロオロしている様子は可愛い。
「部隊長は魔人についてどこまで知ってましたっけ?」
「えっと、駿が今封印しているってことくらいしか知らない」
それは魔人ではなく魔神なのだが……これ本当にややこしいな。
「魔人……あ、人の方ですよ。実は俺もまだまだ分からないことばかりで、今分かっているのは、魔人は人の負の感情から生まれてくるということぐらいなんです」
「魔物の人間バージョンみたいなものでござるか?」
「近くは、あると思うんだが、魔物みたいに元に戻せるかは分からないんだよな……ドルチェ、お前は何か知らないのか?」
今まで触れない方がいいと思い、というか前聞いたときに逆切れされたので聞かないようにしたのだが、少しでも情報が欲しい現状、さすがに訊かざる得ない。
「すまないが、私自身、あの一件しか分からんのだ。そもそも魔人が現れたことにも驚いている」
「確かに、忘れ去られたお前には接触が可能だったはずなんだよな。そもそも魔神のことは知っていても、俺たちのことは知らなかったし……」
どうも不明瞭な部分が多すぎて、謎解き以前の問題だ。なのでドルチェのことを知っていたイスカさんにも訊いてみようと思ったところでイスカさんが手を挙げた。
「なんですか?」
「さっき魔神は君が封印したって言ったな、それは今、どういう状態なんだ?」
きた、と思った。聞かれると思っていたが、まさかイスカさんからとは。いや、ほぼ初対面のイスカさんだから聞くことができるのか。
「今は俺の中にいます」
「そうか。で、それは今どういう状態なんだ?」
イスカさんの目が鋭くなった。
「さすがダルキアンさんのお兄さん、鋭いですね。封印しているで逃げたいところなんですが……そうですね、
『えっ!?』
「…………」
周りは俺の言葉で、驚愕の声を上げる。ただ、ドルチェだけは静かに黙っていた。
「さっきも言った通り、魔人は人の負の感情から生まれます。俺の中にいる魔神もそれは同じ、つまり……」
「君が負の感情に飲まれれば復活する、ということか?」
「……はい」
俺がやったのは封印だけ、俺の感情が揺れれば、その封印も甘くなってしまうのだ。今は楽しい日々を送っているから大丈夫だが、もし本気で怒ってしまったりしたら……。
駄目だ。恐怖も負の感情、落ち着け、俺。
そんな俺の気持ちを感じ取ったのか、ドルチェは俺の手を握ってくれた。少しにやけてしまう。俺はドルチェの手を握り返した。
「駿…………」
もう片方の隣にいる部隊長は不安な声音で俺の名前を呼ぶ。
「大丈夫」
俺はなるべく優しく部隊長の頭をなでる。
「確かに俺は魔神になる可能性があります。でも、それは誰かが魔人になるのとさして変わりありません。正直、この環境で負の感情に飲まれる気はしませんし」
俺が魔神になる可能性と誰かが魔人になる可能性、実は俺の方が少し高いのだが、わざわざ言う必要でもないくらいなので黙っておく。
「そうか。まぁ、魔神のことは後でゆっくり聞くとしよう。それより、これからどうするつもりかな?」
「とりあえず魔人についての調査をするつもりなんですが……資料とかも残ってなさそうですし、手詰まり感否めないんですよねぇ……ドルチェ、あの本を残したアデルって人の行方、知らないのか?」
「彼女は魔王とともに自分を封印したらしくてな。今はどこにいるやら」
あの資料に載っていたのはドルチェの国の情報だけでアデルという人が魔人を知っているかは分からないが、フロニャルド全域に効いた忘却の術が効かなかった資料を作り出したほどの力の持ち主、手助けになってくれると思ったんだが……。
「ドルチェ殿はアデルを知っているのでござるか?」
アデルという人物への道が途絶えたと思った瞬間、ダルキアンさんが驚いた様子でドルチェに尋ねた。
「ダルキアンさん、その人知っているんですか?」
聞くとダルキアンさんは懐かしむ顔で答えてくれた。
アデライド・グランマニエ。パスティヤージュで召喚された勇者であり、その後、王となった英雄。かつてダルキアンさんとイスカさんはその人と共に魔王を倒したらしい。
そう、魔王を…………。
「魔王、いたの!?」
かなりまじめな空気の中、思わずツッコんでしまった。
「いや、いたのはいたが、駿殿とは違ったものでござった」
「……あぁ、魔神って名前俺が勝手につけた気がする」
どうやら既に魔神というものはあったらしい。何だか、少し恥ずかしい。
俺は一度咳払いをして、気持ちを整える。
「英雄王、魔王、やっぱりできればその人たちに会って話を聞きたいですね」
「なら封印場所にいったらどうだ?」
イスカさんはカナタに出してもらったお茶を飲みながら、あっけからんと言った。
その後、イスカさんが言った封印場所は一度クー様と行ったところで、俺には何の反応もしなかった。なので、とりあえずその封印場所の調査が今できることとなった。
お久しぶりです、maguro328です。リアルも何とか一段落して、投稿。
この期間に一度読み返し、改めてこれからの展開を考えたのですが、穴だらけの設定に少し昔の自分を恨んでしまいました。しかし、実はこれ書き始めて2年も経つわけで、そして今があるのは昔の自分のわけで。なので、穴だらけの設定をどうにかして、ちゃんと昔からのバトンを受け取れるように頑張ろうと、思いました。
これからも至らぬところあると思いますが、また長期間消えてしまうかもしれませんが、どうぞよろしく願します。
あぁ…………三期早くやんないかな。