dog days not勇者   作:鮪瓜

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 お久しぶりです。長い間、お待たせして本当に申し訳ありませんでした。
 一応、この期間も考えてはいたので、行き当たりばったりで決めた設定を固めれたとは思います(まだ、曖昧ではありますが……)。そういう理由で許してもらえるとありがたいです。
 さて、久しぶりの投稿ですが、オリキャラしか出ない。それでも楽しんでいただけたら幸いです。


第32話

 シンク達が来て四日目、俺はビスコッティの書斎に来ていた。

 

 ユッキー、ダルキアンさんやイスカさんが魔人のことを知らなく、魔王や英雄は手詰まりの今、出来ることは考察のみだ。そこで俺の親友であり、ビスコッティ一の天才であるリコに手を借りようと思ったのだ。レオ様から開発王と呼ばれるが、リコの持つ知識は膨大であらゆる学問に通ずる。何でも知っているのではないかと思ってしまうほどに。

 

 そんなリコと何か研究をしたいとも思ったのだ。何故そう思ったのか、俺自身はっきりとは分からない。気が付くと、あんな書き置きを残していた。その理由が分かれば、俺はもっと自分を知ることが出来るだろうか。

 

 そんなことを思いながらリコがいつも座っている場所まで来たのだが、そこには誰もいなかった。いつもならここで寝ているのだが、さすがに毎日ではないようだ。

 

 机から離れて、本棚に並ぶ本を見ながら歩いていく。速読ですぐに本を読み終えることが出来るのだが、ついついリコと話し込んでしまいあまり本を読まない。その所為で、実はまだ半分も読めていない。

 

「ん?」

 

 何か読もうかな……。そんなことを考えていると一冊の本を開きながら、う~んう~んと唸っているアイサがいた。水色の垂れ耳にふさふさした飾り尾がどこかゴールデンレトリバーを彷彿とさせる(水色だからアクアレトリバー?)アイサは随分と難しい顔をしている。

 

「眉間にしわ寄ってるぞ」

 

「っ!? しゅ、駿さん。ど、どうも」

 

 横から声をかけるとアイサはビクッと体を震わせ、跳んだ。そして俺の顔を確認するや否や、寄ったしわを伸ばすように眉間を引張り、髪を整え、ニコッと笑った。

 

「今日はどうしたんですか?」

 

「お、おう。ちょっとリコに相談したいことがあってな……」

 

 そう言うと、アイサの顔から笑みが消え、ため息の後、何事もなかったかのように本に意識を戻した。

 

「あの……アイサさん?」

 

「…………」

 

「アイサ・ヴァニラさ~ん」

 

「………………」

 

 凄まじいまでの無視だ。一体俺はアイサに何をしたというのか。皆目見当もつかないが、どうやら彼女を怒らすようなことをしてしまったらしい。謝って許してもらいたいところだが、そもそも何に謝ればいいか分からないし、その謝罪も聞いてもらえないだろう。

 

 今日の目的はリコへの相談であって、アイサに用事なにのだが、それでもここで蟠りのようなものを残しておくわけにはいかない。そう思った俺はとりあえず、後ろからそっとアイサに近づき、ゆっくりと垂れ耳に触れた。

 

「ひゃ!?」

 

 それにびっくりしたアイサは前に跳び、本棚に額を激突、持っていた本を落として蹲った。

 

これは……悪いことをしてしまった。

 

「だ、大丈夫か?」

 

「う、ううう……ひどいです。ひどいです、駿さん。これは告訴も辞さないです」

 

「一体何に告訴をして、どんな罪を問うのかいまいち俺には分からないが、とりあえず大丈夫だってことだけは分かったぞ」

 

 フロニャルドには勝手に耳や尻尾を触ったら、捕まるなんて法律はなかったはずだ……たぶん。

 

「大丈夫じゃないです! 見てください、このおでこ、真っ赤でしょう!? どうしてくれるんですか!?」

 

「痛いの痛いの、飛んでけ~」

 

 俺は確かに真っ赤なアイサの額を撫でて、子どもにしか効かない魔法の呪文を唱えた。これで許されるとは思っていないが、涙目で額を押さえるアイサを見たら、なんとなくやりたくなった。

 

 当のアイサは額と同じくらい顔を真っ赤にさせながら、あわわあわわ言っている。そこから、正確な時間は分からないが、しばらく撫で続けるとアイサは「もう、いいです」と呟くような声で言った。

 

「ふぅ……中々やりますね。しょうがないです、許します」

 

 まさかの許された。意外過ぎて、思わずどうしていいか分からなくなってしまう。アイサといるとかなりの確率でこうなってしまう。

 

 アイサ・ヴァニラ。

 

 ビスッコティ国立研究学院に在籍する少女であり、詳しくは知らないが、中でも上位の成績を誇っているらしい。

 

 そんなアイサは、この書斎においてリコの次に話す人物である。いや、ビスッコティ内でもリコの次に話しているかもしれない。

 

「それにしても随分と集中していたが、何してるんだ?」

 

「研究です!」

 

「何の?」

 

「これです!」

 

 先ほど額をぶつけた時に落とした本の表紙をグイッと俺に見せるアイサ。

 

 どうもアイサは頭が良いのだが、どこか馬鹿な気がする。子どもっぽいとはまた違う、本当になんと言っていいのか分からないが、兎に角、馬鹿な気がする。

 

 まぁ、アイサのことは一旦置いておいて、アイサは俺に見せている本は、神話に関するものだった。それを俺は読んだことがないのだが、名前からそう察した。

 

「アイサって神話学を専攻してたのか」

 

「いいえ」

 

 …………どうしようか。会話が成立しているようでしていない。俺の質問には答えてくれているものの、質問の意図を汲んでくれない。

 

「でも、それを研究してるんだろ?」

 

「はい」

 

 アイサはもう一度グイッと本を押し付けた。読めば分かる、ということなのだろうか。俺はその本を受け取り、中を確認する。

 

 内容は簡潔に言うと、フロニャルドがフロニャルドになる前、神様の使い――天使と、悪魔の話だった。話はいくつかあったが、ラグナロクとかはもちろんなく、最後は神様が人々に恩恵を与えて終わり、のようだ。

 

 神話、というよりはファンタジー小説のようだ。中々面白かった。

 

「……で?」

 

「まだ分かりませんか。しょうがないですね、ならもう一つヒントをあげます」

 

 アイサはそう言って、どこかへトコトコ走って行った。

 

 しかし、一体いつからクイズになったのか、全くもって分からないが、少し興味があるので俺はアイサを待った。待ったと言っても、アイサはほんの数秒で戻ってきた。

 

 戻ってきたアイサは一冊の本を持っていた。どうやら次はあれを読めばいいらしい。

 

「さぁ、どうぞ!」

 

 神話の本をアイサに渡し、その本を受け取る。次の本はフロニャルドの歴史に関する本だった。これは読んだことがある奴で、読むまでもなく内容は知っていた。

 

 神話と歴史。

 

 この二つの関係を考えるなら、神話が記された時代を考えてみるべきだろう。神話に込められた思いや願い、望みを紐解くことによりその時代の状況を読み取る、という可能性。しかし、それは神話である必要はない。むしろ、同じ時代に書かれた書物や描かれた美術品……エトセトラエトセトラ。それらを節操なしなくらいに調べつくす方がいいだろう。

 

「これでもまだ分からないんですか? 真面目に考えてるんですか?」

 

 む、何かこれは馬鹿にされている気がする。アイサは絶対に分からないだろうという顔をしているし。

 

 俺は顎に手を当てて少しばかり考える。

 

 まず、アイサが歴史学を専攻しているのは確定だ。そして、今の研究に必要なものが神話、フロニャルドがフロニャルド成りえる前のファンタジー小説のようなお話。

 

「神話、フロニャルド、ファンタジー……?」

 

 ……そうだ。ここは地球ではなくフロニャルド、異世界なのだ、それもとびっきりファンタジーな。なら、あの神話は実際にあってもおかしくない、のかもしれない。

 

「アイサ、お前はあの神話が本当にあったことだと証明しようとしているのか?」

 

「おぉ! さすが駿さんですね。でも、正確に言うなら、神話に近しいことがあったのかを調査しているんです。あの本は、どこか書き手の心情が混じっているような気がするので」

 

 神話の出来事が本当にあったかもしれないなんて、地球で言ったら、頭を疑われてしまう。それをさも当たり前のように言ってしまう。

 

 どうやら、俺はまだフロニャルドに馴染めていないらしい。

 

「……ん? それがアイサの言う通り本物の歴史なら、何で神話なんかにカテゴライズされてるんだ?」

 

「そうなんです。でも、この神話が事実であったことを多くの学者が追っていて、仮説はいくつも立てられています」

 

 決定打に欠けるものばかりですが。とアイサは苦笑いで付け足した。

 

「まぁ、歴史の証明は史料批判とかで結構大変だからな」

 

「なんですよね~」

 

 手に入れた史料が必ずしも本物とは限らない。本物だったとしても、それだけが真実かは分からない。違う史料には別のことが書いてあるかもしれないし、矛盾が生じる可能性もある。そういったものを何度も確かめ見定めるのが史料批判。

 

 この作業がまぁしんどい。それに見定めて確信しても、また新しい史料が出てきて、変わることもある。俺の時代はそうじゃなかったって、歴史の教科書が最もジェネレーションギャップを感じるものだと思う。

 

 それにしても、神話を紐解く。なんと、興味が惹かれる研究だろう。なんなら、今からアイサと話し合いたい。だが、俺にはリコとの研究をするという第一目標がある。アイサには悪いが、ここは話を切り上げて、リコを探すとしよう。

 

「それで、アイサは何か考えがあるのか?」

 

 ほぼ無意識に、そんな言葉が出た。最近、魔神のことや恋のことやらで専門的な分野にあまり手を出していなかった反動かもしれない。

 

 訂正しようと思ったのだが、それを聞いた瞬間のアイサの輝いた目を見て、俺は言葉を飲み込んだ。

 

 まぁ、今日はリコいないし、仕方がない。それに、少し気になることもある。

 

「私が今調べてるのは、神剣についてです」

 

「……え!?」

 

 驚きのあまり声を抑えることができなかった。すぐに書斎であることを思い出して、口を塞ぐ。

 

 だって、神剣だぞ? 俺もいつかはその謎を解き明かしたいと思っている。まさか、こんな近くに同士がいるとは。

 

「しゅ、駿さん?」

 

「は! すまんすまん。テンションが上がりすぎて……」

 

 反省反省。どうやら、嬉しさが顔に出ていたらしい。アイサが若干引いている。しかし、テンションが上がるのも仕方がないだろう。自分の好きなものを目の前に吊り下げられていたら、誰でもそうなる。

 

「アイサ……」

 

「何ですか?」

 

 俺はアイサに一歩近づく。それから逃げるようにアイサは一歩後退する。俺はアイサを逃がさんばかりに本棚に手を当てた。アイサは顔を真っ赤にさせて、持っていた神話の本をぎゅっと抱きしめる。

 

「俺もその研究参加したい」

 

「……は、はい」

 




 ちょっと中途半端な終わり方な気がしますが、壁ドンが出たのでここで一旦終了です。伝わったのでしょうか? ちなみに、アイサは一度出てます、ほぼ名前だけでしたが。
 次回は、オリキャラは駿しか出さない気でいます。あとは原作キャラになると思います。
 いつになるかは分かりませんが、できるだけ早く投稿したいです。
 
 ところで、時々、可愛いリコは無性に書きたいと思うのは病気なのでしょうか?
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