dog days not勇者   作:鮪瓜

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dogdays"を見て、後付け設定がすごいことに……まぁ、それとは関係がない今回の話、どうぞ。


第33話

あの後、何故かアイサは顔を真っ赤にして気絶した。俺はそんなアイサを部屋まで案内……しようと思ったのだが、幾分アイサの部屋が分からなかったので、書斎にいた別の研究員に任せた。

 

アイサが起きてたら、あのまま神話の研究を手伝おうと思っていたのだが、また手持無沙汰になってしまった。

どうしようか、俺は城内をぶらぶらと歩きながら考える

 

暇だ。シンクたちがいる間は何があってもいいように予定を開けていた。それに加えて最近シンクたちを迎え入れたりするので忙しかった所為で、余計そう感じる。

 

「レオ様たちは今、会議中だし……」

 

 ガレットに戻るのは、早すぎて嫌だし。美保と七海は女子会とか言ってどこかへ遊びに行ったし……。

 

 ドルチェは…………今どこにいるのか何をしているのか分からない。彼氏として非常に情けないのだが、何故か今朝から精神のリンクがなく、会ってもいない。ドルチェにはドルチェの用事があるのだから、仕方ないとも言えるが、寂しいものは寂しい。

 

 理由は、たぶんあの魔人が言ったことだろう。

 

 君は魔人に近い。

 

 もしかしたらこの言葉はドルチェにとって、最大の侮辱だったのかもしれない。そしてあの時言った言葉じゃ、まだその傷は癒えていないのだろうか。もしそうなら、経験不足が惜しまれるところだ。

 

 ドルチェがいないところで、こんなことを考えてもどうしようもないとは分かっているが、どうしても考えてしまう。

 

「はぁ……」

 

 思わずため息を吐いてしまう。もやもやしても仕方ないし、お風呂でも入ってさっぱりしようか。

 

「あ、駿様~!」

 

 ドルチェのことは一旦置いておくとして、魔人だ。今日ビスコッティに来た最もなる理由である魔人。先ほどのアイサとの会話で、ちょっとばかし気になることがあったのだ。

 

「しゅ、駿~?」

 

 アイサの仮説――神話の神様と神剣が関係するということを前提で考えるなら、悪魔は……魔人だろう。いや、魔物という可能性もあるから、ここは魔族とでも言っておくか。仮説の上に仮説を立てているので可能性としてはまだ低いが、もしそうなら、神話の悪魔はどうなったのだろうか。

 

 あの神話は、どうしてか最後をぼかしていた。悪魔が死んだという描写もどちらが勝ったという描写もない。戦いの後、天使が土地に恩恵を与えて終わり。それでよくあそこまでのページを書いた上に、面白くできたものだと感心するが、できれば詳しく書いてほしかった。

 

「駿様~!」

 

「うおっ!?」

 

 俺の背中に何かが衝突した。考え事をしていた上に、結構な勢いだったから俺は前に倒れた。

 

「はっ! 駿様、大丈夫でありますか?」

 

「だ、大丈夫だ、なんとか」

 

 体に乗っていた重み(比較的軽量)が消え、衝突してきた人が上からどいてくれたことが分かったので、立ち上がり、その人物の方を見る。そこにいたのは、リコとシンクだった。いや、声と口調でなんとなく分かってはいたけど……。

 

「何で、いきなり突進してきたんだ?」

 

「駿様が、素通りした上に無視するからであります」

 

「……記憶にございません」

 

 実際、記憶にはないが、心当たりはある。さっきまで考え事をしていたから、完全に周りが見えていなかった。

 

「また、考え事しながら歩いていたでありますね?」

 

「うっ」

 

 さすがリコである。完全に俺のことを理解している。しかし、喜んでいいものなのだろうか、この場合。

 

「全く、気を付けるように言ったじゃありませんか。これで何回目でありますか?」

 

「すいません」

 

「前も同じことを言ってたでありますよ。今回は自分と勇者様だからよかったでありますが……本当に。姫様を無視したときもありましたし」

 

「え、姫様無視したの? それは駄目だよ、駿」

 

「うぅ……誠に申し訳ありません」

 

 確かに、一度ミルヒさんを無視したことがある。本人が一度と言っていたので一度で間違いない筈だ(優しさで黙っている可能性も否めないが)。それに、レオ様やクー様にも何度かしたことがある。その度に叱られているのに、どうしても治らない。

 

 言い方はともかく、本気の気持ちが伝わったのか、リコは怒った表情をやめた。

 

「とにかく、反省はしてくださいでありますよ?」

 

「分かりました。善処します」

 

「駿、その言い方じゃ、反省したように思えないよ?」

 

 シンク、それは偏見だと思うぞ?

 

「それじゃあ、どう言えばいいんだよ?」

 

「それは……指切り?」

 

「なるほど、破った場合は指を切るくらいの覚悟でやれと……何と恐ろしいことを考えるんだ」

 

「違うよ!」

 

 なら、子供がよくやるような指切りげんまんというものか。俺はちらっとリコを見る。小指を出していた。どうやら、やるらしい。

 

 俺も小指を立て、リコと指を絡めた。そして指切りをした。フロニャルドにもあるんだな、これ。

 

「そういえば、駿様はどうしてこちらに?」

 

 指切りを終えると、リコは思い出したように俺に聞いた。

 

「研究関連でリコに用があったんだ」

 

「そうだったんでありますか? なら……」

 

 と、リコの言葉がそこで止まった。そしてシンクと俺をそれぞれ見て、何かを思いついた顔をした。

 

「駿様、今日は先ほどの罰として自分と勇者様と一緒にお出かけするであります」

 

「あ、それいいね、リコ」

 

 リコの突然の申し出、シンクはそれに同意してリコの頭を撫でた。尻尾を振りながら喜ぶリコはとてもかわいい。

 

 ではなくて、一緒にお出かけ……俺とシンクとリコというのは初めてではないだろうか。魔人のことも気になるが、正直今は手詰まりに近い状態だし、書斎に籠っても徒労に終わる可能性の方が高いと思っていた。

 

 ここはリコに従って、お出かけするとしよう。

 

「いいけど、どこまで行くんだ?」

 

 ミルヒさんとのお出かけは前回、セルクルを乗って草原まで行った。今回はどこまで行くのだろうか。

 

「今日は町に出るであります」

 

「そっか、まだシンクに夏のビスコッティを見てないもんな」

 

「うん」

 

 店に並ぶ商品が変わってたり、旬の食べ物も変わっている。きっと真新しいものばかりだろう。ガレットはレオ様に案内してもらったが、ビスコッティはまだちゃんと回っていない俺も楽しみだ。

 

「それじゃあ、どこから行く? 駿とリコはどこか行きたいところある?」

 

「自分は二人に任せるであります」

 

「……それじゃあ、ご飯にでもするか」

 

「そうでありますね」

 

 食事ならばお気に入りの場所があるのか、リコは俺とシンクの腕を掴んで歩き出した。楽しみなのか、急に歩き出したので、引っ張られた俺はもう少しでこけるところだったが、何とか堪えてリコの横を歩く。シンクは特に大丈夫だったようだ。

 

「両手に花でありますね~」

 

「この場合、花って言うのかな……?」

 

「確かに……両手に薔薇って言った方が正しいんじゃないか?」

 

「「?」」

 

伝わらなかった。

 




 シンクを書くのが難しいです! でも駿とシンクとリコが仲良くワイワイやっているのを書きたくて、可愛いリコを書きたくて…………。次はお食事シーンでしょう。
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