dog days not勇者   作:鮪瓜

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第8話

また昔の夢を見た。

今度は父さんと母さんが死んだ後、確か12歳になった夏、シンクの両親に誘われて、七海やレベッカと共にキャンプに行った時だったはずだ。

俺は死んだ両親や嫌いな親戚のこともあって、考え事や空想に漬かっていてずっと本ばかり読んでいた気がする。

でもそれだけではなかった。俺はその部分の夢をまるで走馬灯かの様に見ていく。

だが夢というのは曖昧で記憶にあまり残らない。それはこの夢も例外でなく、俺の記憶で鍵がかかり思い出せなくなった。

「・・・・・・・・・・・・んぁ」

そうして目覚めた結果、しかも目覚まし時計に起こされて、俺は最悪の目覚めだった。

「はぁ・・・・・・・・・・・・んん~~」

なんとか立ち上がり、一度大きく背伸びをする。それにより少しずつだが頭の中がはっきりとする。

そしてそんなはっきりした頭で今日の予定を確認する。

今日からビスコッティに訪れて、リコッタに通信機の作成を手伝ってもらう。たぶん、シンクへの通信なので快く了承してくれるだろう。

シンクには数日と言ったが、どんぐらいかかるのだろう?とか今考えることが出来ることを考えていたらドアが開けられた。

「駿・・・・・・え?」

入ってきたのはノワールだった。だが俺を見るなり固まった。

「どうした?」

「駿、その目、何?」

目?俺、ノワールを変な目で見てたのか?

俺はノワールの言葉に疑問を思いながら、近くにあった鏡に目をやった。すると・・・・・・

「・・・・・・・・・・・・え?」

俺の左目はいつもの真っ黒い瞳でなく、真っ赤で瞳孔が開いた獣の様な目になっていた・・・・・・・・・・・・そう、それはまるで、魔物のようだった。

「何これ?」

「何それ?」

俺とノワールがほぼ同時にそう言った。

何なんだ、これは?一体俺に何があったんだ?そんなことを考えていたが、正直答えは確実に出ていた。

あの魔人の少女だ。

あの少女は"プレゼントだよ、また会えることを楽しみにしておくよ"そう言った。

つまりこれが、プレゼントもしくはプレゼントでの副作用なのだ。

「すまん、ノワール。眼帯か何か、取ってきてくれないか?」

「え、あ、うん」

ノワールは救護室へ走って行った。よし、今のうちに冷静になって状況整理をしよう。

まず、今俺は目がこんなになって・・・・・・たぶん魔物に、いや魔人に近づいている。そしてこれはもしかしたら少しずつ拡大していくかもしれない。

俺は一度大きく息を吸って、もう一度鏡を覗いた。

まぁ、変わらないのだが、きちんと現実を受け入れなければいけない。

「駿」

「あ、すまねえなノワール」

どうやら現実を受け入れるのに思いのほか時間がかかったらしく、ノワールが救護室から既に帰ってきていた。

俺はノワールから眼帯を受け取り、左目に装着、そしてノワールに説明をした。

「駿、そんなことが・・・・・・」

「あぁ。まぁ、今日から少しビスコッティに行く気だったからダルキアンさんに相談してみるよ」

俺を心配そうな目で見つめるノワールを俺は安心させる様に頭を撫でた。

「ん、んにゃ~」

そんな声をノワールは出した。どうやら満足頂けたらしい。

「それじゃ、行ってくる」

「うん、行ってらっしゃい」

ノワールは笑顔で見送ってくれた。良かった。元気出たみたいで。

俺はセルクルを一匹貸してもらって、ゆっくりと道を進んでいく。こっちに来てこうやって自然に触れ合うことが増えた。

たぶん、俺が落ち着けたのはこれのおかげだろう。

「ん~~、いい空気だな~」

なんて独り言も呟いちゃうくらい、俺は気分が良かった。

「ほお、もう魔人化が始まっているのか」

はい、どん底に落ちました。俺のテンション核貫いてブラジル到着です。

一体、何時からいたのか。その疑問は分からないが例の魔人の少女が後ろから抱き着く形でセルクルに乗っていた。

「えっと・・・・・・・・・・・・何しに来たの?」

「君が魔人化したのを感じてな、様子を見に来たのだよ」

魔人化、この少女はその言葉を二度言った。これは聞き間違いではないのだ。

「俺はどんどん変わっていくのか?」

「そうだね。少しずつ人間ではなくなるだろうね」

どうなるのか、とは言わなかった。いや、魔人になるのはわかっているが、俺は人間の形を保てるのだろうか?

「それじゃ、また君が魔人に近づいたら会いに来るよ」

そう一方的に言った後、俺の後ろから気配が消えた。

う~ん、何と言うか・・・・・・

 

「説明、あざ~す」

 

俺は風の音も聞こえない無音の中でそう呟いた。

さて、ビスコッティに着いて俺はいつも通り書斎へ直行、扉を開けると研究員の人達が数人いた。

「リコッタいる?」

俺は近くにいた少女に訊いた。

「え、主席ですか?奥にいますよ」

俺は少女にお礼を言って、リコッタがいると言われる場所へ向かう。

「ZZZ・・・・・・・・・・・・」

まぁ、見事に寝ているね。たぶん、徹夜をしてしまったのだな。

俺は何かにかは分からないが、少し興味がわいたのでリコッタの寝顔を眺めることにした。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

さて、何分経ったのか?ちらっと横目で時計を眺めると5分弱経っていた。これは・・・・・・・・・・・・なんかいいな。

「・・・・・・・・・・・・ふわぁ」

「お、起きたか。リコッタ」

「・・・・・・・・・・・・駿様?」

リコッタは一度大きな欠伸をした後、少し寝ぼけているが、どうにか俺を認識した。

「え、駿様?えっと・・・・・・・・・・・・何時からいたでありますか?」

「ん?リコッタが起きる5分前から」

「寝顔、見たでありますか?」

「見たっていうか、眺めてた、かな?」

そう返すとリコッタの顔が見る見るうちに赤くなっていった。

どうしたのだろうか?まさかこんなところで寝たから風邪が?

「どうした?リコッタ風邪か?」

俺は気になったのでリコッタのおでこに手を伸ばした。のだが

「だ、だだだ大丈夫であります!それより今日はどうしたでありますか?」

「あ、そうだったな」

俺はすっかり忘れかけていた用事をリコッタに大雑把にだが話した。

「成る程、勇者様の世界と繋ぐ通信機でありますか」

「そうなんだよ。それで周波増幅器を発明したリコッタに協力を申し出たいのだが・・・・・・」

「了解であります」

リコッタは机の上に置いていた本を横にどけて、引き出しから周波増幅器の設計図であろうものを出した。

「あ、それとリコッタ、これもう必要ないからあげるよ」

俺はポケットから携帯を取り出して机の上に置いた。

「いいんでありますか?」

目をキラキラさせながらリコッタは言った。喜んでくれてなによりだな。

「それだったら周波増幅器とこれを使えばいけるであります」

「お、さすが主席。自信満々だねえ~」

「まぁ、それほどでも~。て、それよりその眼帯どうしたでありますか?」

あぁ~・・・・・・すっかり忘れてた。何でこんなにも存在感強い物わすれるかなぁ~俺。

「まぁ、ちょっとな。まぁ、そんなに悪い病気でもないから大丈夫だよ」

そう言ったらリコッタも納得してくれた。

さて、そんな話を終えて俺とリコッタは集中して発明に取り掛かることになった。

*

発明が始まって一週間経った。そんだけの日数を注ぎ込んだ結果も上々、なんとただの通信機でなく、テレビ電話も可能となった。

はぁ、こうして通信機は完成したのだが、時刻は午前1時、時間が時間だったのでまた後日ってことで俺とリコッタは一旦寝ることにした。

さて、寝たということはまた夢を見る。

だが今回の夢は俺の昔話ではない上に俺はまるで霊体の様に夢の中で存在していた。

『ここは・・・・・・・・・・・・?』

俺が立っているのはどこから国の様だった。

でもここが国かどうか、俺にはわからない。

何故なら、俺の足元にはたくさんの、人の死体が転がっているからだ。

もしかしたらここの国民のほとんどが倒れているのではないかと思う程の量だ。そして周りの建物や地面は真っ赤に染まっている。

『な、なんだよ・・・・・・!?これ!?』

俺もさすがにそれを見て少し吐き気を催した。だがそんな時、城へと続く道から誰かがこっちに向かってきた。

ズズズズズ・・・・・・・・・・・・。

剣の様な物を地面に擦りながら近づいてくるそれは真っ黒なオーラに包まれて原形がなく、ぎりぎり人の姿を保っている様だった。

そう、それはまるで"魔人"だった。

ズズズズズ・・・・・・ズズズズズ・・・・・・。

それはどんどんこちらに来る。さすがに俺も危険だと思い、逃げようとしたが何故か足が動かなかった。

『なっ!?ふんぬ~~!』

手で引っ張っても動かない。そして俺がそうしている間に魔人はどんどん近づいてくる。

やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい!!

魔人は持っていた剣の様な物を思い切り振り上げた。

『う、うわぁ~~~!!』

こうして俺は魔人に真っ二つにされた。

「うわぁ!」

目が覚めると俺は客室のベッドで横になっていた。俺の体は汗でびっしょり、気持悪くて仕方がなかった。

俺はベッドから降りて、一度姿鏡を覗き込む。これは俺の目が魔人化してからの習慣だった。これからどんな変化をするか分からないからな、しっかりと確認しておかないと。

鏡の中ではいつも通り、片目が真っ赤な俺の・・・・・・・・・・・・。

「え?」

鏡に映っているのは確かに俺だ。しかし俺のばさぼさの髪は腰辺りまで伸びていた。これは明らかに魔人化が進行してるな。

もしかして過去の夢を見れば、魔人化が進む?

「はぁ、情報が少なすぎる」

たぶん、タツマキがシンクに通信機を渡す時間もあるだろうから、リコッタに許可取って、ダルキアンさんに会って訊くか。

俺はそう決めてから、とりあえず伸びた髪を後ろで束ねて書斎へ向かう。もちろん眼帯も忘れていない。

書斎に着いてから俺はドアを三回ノック、そしてドアを開ける。そこにはリコッタの他にエクレールやミルヒオーレさん、ユキカゼにダルキアンさんまでいた。

「あ、駿・・・・・・様?」

どうやら髪が伸びていることを疑問に思ったらしい。う~ん、ここで話すべきだろうか?

「いや、よく分からんがこんなに・・・・・・・・・・・・まぁ、たぶん大丈夫だよ」

半分正解、半分ハズレみたいな答えをした。

「それならいいでありますが・・・・・・・・・・・・」

「う、ま、まぁ、とりあえず今日は通信機の始発試験だろ?シンクに通信機は届いたかな?」

俺は話を無理やり切り替えた。

「それならつい先ほどタツマキが向かったでござるよ」

ユキカゼを筆頭にみんなも俺が話しにくいことを察してくれたようで、シンクの話に変えてくれた。

俺はみんなの優しさに甘えてからダルキアンさんの傍へ行って

「後で相談いいですか?」

と告げた。ダルキアンさんはこれに「わかったでござる」と笑って答えてくれた。

そこからしばらくシンクの話を続けていると

Prrrrrr、Prrrrrr

と俺は聞きなれた呼び出し音が通信機から響いた。俺は俺の携帯(タッチ式)を元に作られた通信機の画面をタッチして電話に出た。

「シンクか?」

俺は受話器を耳にあててそう訊いた。

『駿~!久しぶり~!』

「あぁ、久しぶりだな。そっちではどうだ?」

約一週間ぶりの会話、俺はシンクと世間話をした。後ろから変わってオーラが半端なかったが。

「シンク、それじゃ映像モードに切り替えるぞ?」

『あ、うん。ちょっと待ってね~』

俺は映像モードのボタンを押して切り替えた。

「よし、せいk「シンク~、久しぶりです~!」「勇者殿~」「久しぶりだな」「勇者様~」・・・・・・・・・・・・はぁ」

俺は仕方なく後ろへ引き下がった。

「いやぁ、勇者殿はみんなに好かれているでござるな」

「そうですね」

俺は黒電話から少し離れて落ち着いていたダルキアンさんと話し始めた。

「それより駿殿、先ほどの相談とは?」

「あ、そうでした。実はこれ・・・・・・」

俺は眼帯を外して真っ赤な目をダルキアンさんに見せた。

「それは・・・・・・!?」

「魔人の少女のプレゼントで俺は魔人化、してるそうです」

俺がそう言うとまたダルキアンさんは驚いた。

「魔人化、というのは・・・・・・?」

「たぶん言葉のままですよ。この髪もその症状の一つです」

俺は束ねた髪をさすりながら言った。

「しかし、魔人化・・・・・・・・・・・・聞いたことないでござる」

「そうですか・・・・・・」

ダルキアンさんでも知らないとなると、いよいよ頼みの綱が無くなったな。しかしあの少女、何者なんだ?

俺はそこでふと今日の夢を思い出した。何故か分からないがかなり鮮明に俺の記憶に蘇ったのだ。

「・・・・・・・・・・・・ダルキアンさん、フロニャルドで滅んだ国ってありましたか?」

「拙者の国は魔物によって滅ぼされたでござる」

・・・・・・・・・・・・あ、これは聞いちゃいけないことだった。訊く人を選ぶべきだった。

でも、魔物?あれは魔物というより魔人に近い感じだったし、もっと言うと禍々しくて見るだけで嫌になる感じだった。

「ならフロニャルドの全体の歴史が載っている本ってありますかね?」

ビスコッティにもあったと思うが、俺のお目当ての情報はなかった筈だ。ガレットも似たようなものだった気がする。

「それなら、パスティヤージュにいけばいいであります」

いつの間にかシンクとの通話が終わっていたらしく、リコッタがいてそう言った。

「パスティヤージュ?」

なんか読んだ気がする。確か晶術という輝力の使い方をしている国で俺が一度行ってみたいと思った国だったはずだ。

「確かにガレットにもビスコッティにも無いのならパスティヤージュに行くのが賢明だな」

「エクレールの言うとおりにするか。リコッタ、明日付き合ってくれるか?」

「了解であります」

こうして俺のパスティヤージュへの旅が決定した。またガレッドに帰れないなぁ。

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