今回の旅、目的地はパスティヤージュ、同行人はリコッタとエクレールとユキカゼだ。
そしてどうやらパスティヤージュは思いのほか遠いらしく、セルクルに乗ってもけっこうかかるらしい。
「それにしても駿、お前はどうしてフロニャルドの歴史が知りたいんだ?」
「うん?あぁ~・・・・・・実はこっちの国が滅んだ夢をみたんだが、結構現実的でな、気になったんだ」
「夢でござるか・・・・・・それはまた奇妙でござるな」
ユキカゼの言うとおり、来て一ヶ月の国の昔話を夢で見るなんて本当に奇妙なことだ。
「後は色々引っ掛かるし、それに俺は謎が大好きなんでね」
そうこの夢に関してもあの少女に関しても不謹慎かも知れないが俺はワクワクしているのだ。そして今回俺はあわよくばまた新しい謎が見つかることを期待してたりもする。
「あははは、駿様、目がキラキラしているであります」
そりゃ、そうだよ。謎というものはいつも俺を楽しませてくれる。そういえば俺は昔は謎しか友達いなかった気がする。
「あ、パスティヤージュが見えてきたでござる!」
「お!あれがパスティヤージュか!」
見えてきたのは他の二国と同じように大きな城と城下町だった。空には大きな鳥が飛んでいる。あれは・・・・・・セルクルとは違うな。
結局ユキカゼやエクレール、リコッタの後についていきながらおしゃべりをしていたら、いつの間にかパスティヤージュのエッシェンバッハ城へと辿り着いた。
「おぉ、これはまた立派な城だな」
「当たり前だろう」
いや、こんなでかい城があることが当たり前って。やっぱり常識系統の話はまだ慣れないな。
「それじゃ、クー様に会いに行くであります」
セルクルを置いてから俺達は普通に城に入った。
「よく来たのじゃ!リコッタ達よ」
どうやら先に来るように知らせてたらしく、扉を開けるとそこには多くの使用人とリスの様な尻尾が可愛らしい少女がいた。
「クー様~、出迎えありがとうであります!」
「クーベル殿、お久しぶりでござる」
「クーベル様、お久しぶりです」
みんなクーベルもしくはクー様と呼ばれる少女の元へ走っていった。
あれ?なんか疎外感を感じる・・・・・・・・・・・・。
「クー様。こちらが話した天理駿様であります」
「ガレット自由騎士(仮)の天理駿です」
「おぉ、お主が駿か!ウチはここパスティヤージュの第一公女、クーベル・エッシェンバッハ・パスティヤージュじゃ」
成る程、この人がここの領主か。これはまた若い。
「よろしく、クーベル様。それで、いきなりですいませんが・・・・・・・・・・・・」
「わかっておる。フロニャルドの歴史を知りたいのであろう。用意してるのじゃ」
すごいいい人だな。噂しか聞いていない見知らぬ人間にここまで協力してくれるとは。
「ありがとうございます!」
俺は深々と一礼した。その後、クーベル様が書斎へと案内してくれた。
「これじゃ!」
クーベル様が持っていたのはかなり古い本、たぶん何百年前の本だろう。
「これは、また古い本でござるな」
「であります」
二人の言うとおりこいつには載っている気がビンビンする。
「よし、少し集中してこの本読んでみるよ」
俺は近くの椅子に座り本を広げた。そして集中・・・・・・・・・・・・
「どれどれ」
「何が載っているんだ?」
「エクレ、押さないでほしいであります」
「拙者も見たいでござる」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・うるさい。
「あの~、出来れば集中させてほしい」
さすがにこんだけ近くで喋られる上に押されると俺も集中モードに入れない。
こうしてみんなには少し離れてもらい、俺は集中モードに入った。
クーベル様達が用意してくれた資料は大正解だった。
そこに載っていたのはここから少し離れた場所にあった国、そこが何も原因が分からないまま、国民全滅、国が完全に滅んだらしい。
さらにもう少し詳細が載っている。国民はほとんどが何かで斬られたような傷をおっており、城下町の様子は建物のあちらこちらが崩れて、跡形がない建物もあったらしい。そしてもっと酷いのは城の様子、人によっては跡形がないくらいぐちゃぐちゃになっていたのだ。
最後に宝剣は片方が何処かに消えて、もう片方が破壊されていたらしい。
資料はここで終了、俺は本から目を離して思考モードに切り換える。
魔人化、それによって見ることになった過去の夢、滅んだ国、そして国を滅ぼした魔人と思われる存在。
それらにより、魔人の少女となにか関係するかまだ曖昧だが少し繋がっている気がした。
「・・・・・・・・・・・・クーベル様」
「む?どうしたのじゃ?」
俺は先ほどから開いているページをクーベル様に見せる。
「この国があった場所っていけますか?」
「うむ、大丈夫じゃ。スカイヤー!」
クーベル様はそう言って宝剣の指輪を掲げた。すると絨毯型の乗り物が現れた。
あれは、魔法の絨毯!
「さぁ、乗るのじゃ」
クーベル様はスカイヤーの運転席に乗りながらそう言った。
「え?連れていった下さるんですか?」
「お主が言ったんじゃろ?」
人が良すぎるな。たぶん昔の俺ならこの人を信じてないな。成長したな、俺。
「なら、お言葉に甘えて・・・・・・」
少し悪い気がしたのだが、魔法の絨毯に乗りたいという好奇心が圧倒的に勝ってしまった。
「あれ?駿様、クー様、どこかへ行くでありますか?」
「少し現場に行ってくるよ」
俺は言いながらスカイヤーに飛び乗る。おぉ、これが魔法の絨毯か。
「わかったであります」
「よ~し、スカイヤー!」
クーベル様の合図でスカイヤーが動き出した。
「うぉ!?」
俺はすぐさま運転席の背もたれにしがみ付いた。あぶねぇ、落ちるとこだった。
「うぉ、飛んでる!」
「あはは、ウチのスカイヤーはすごいじゃろ?」
「はい!」
そういえばこっちで空飛んだの初めてじゃないか?うおぉ、風が気持ちいい~~。
「それにしてもクーベル様は優しいですね。初対面の俺にこんなにしてくれるなんて」
「そうか?」
「はい、資料を見せてくれる上に現場まで連れて行ってくれるなんて」
俺は周りの景色を見渡しながら言った。
「うぬぅ、実はウチもその国に関しては気になっていたのじゃ」
「え?クーベル様、あの国知ってたんですか?」
それは新事実だ。てかあの時、どれどれ、とか言って覗いてた気が・・・・・・・・・・・・。
「うむ、少し前にあの本を見つけてな。原因が不明の滅亡、一体何があったのか・・・・・・・・・・・・」
成る程、だから直ぐに資料を用意出来たのか。
「それはそうとお主は何故、調べたくなったのじゃ?」
「俺ですか?実は・・・・・・・・・・・・」
俺はあの奇妙な夢の話をした。するとスカイヤーは一度大きく揺れた。
うぉ、あぶねぇ。落ちるとこだった。
「ほ、本当か!?お主が見たそれがあの国だとしたら・・・・・・」
「はい、この世界の大昔、今も解明されていない危険があるかもしれません」
もし俺が夢で見たあれが"災い"とか言われるものなら、ビスコッティにもガレットにもパスティヤージュにもそれが起きる可能性を拭い切れない。
それはなんとしても防ぎたい。あれが現実のことだと知った時から、俺の中でその気持ちが大きくなっていた。
「さて、もうすぐ着くぞ」
クーベル様がそう言って近づいていったのはその時代からずっと残されていることが良くわかる廃墟だった。
*
「酷いあり様だな」
出てくる言葉はそれかそれに近いものばかりになってしまう。それぐらいこの廃墟は酷かった。だってまだ形がある建物には斬撃の後が残っているし、よく見ると黒いシミがある。
「本当じゃな。一体なにがあったのじゃ・・・・・・」
「クーベル様、大丈夫か?」
さすがに戦がスポーツの様な世界なのだ、たぶんこんな惨劇はそう見ないだろう。
「だ、大丈夫・・・・・・とはあまり言えんかもしれん。じゃが、ここで帰るわけにはいかん!」
一領主なだけはあるな。ちゃんと覚悟した目をしている。これを帰れというのは失礼だな。
「なら、城に行きましょう。あの魔人は城から歩いてきましたから」
「うむ」
俺とクーベル様は城下町の惨劇の中を進みながら城へと向かう。流石にもう幾年も前なので死体は見当たらない。しかし、クーベル様には言わなかったが骨は幾つか見た、頭蓋骨もあった。
それに目を逸らしながら進んでいると城へ辿り着いた。
「よし、行きましょう。クーベル様」
「そ、そうじゃな」
城に入るとそこには見間違いじゃ誤魔化せない血の跡がたくさん、床や壁についていた。
「クーベル様、大丈夫ですか?」
再度その質問をなげる。クーベル様の顔色が明らかに悪い方向に変わっていたからである。
「これは、少し・・・・・・・・・・・・」
クーベル様は領主と言っても歳は12、3歳の少女なんだ。これはさすがにきついな。
「クーベル様、スカイヤーで帰ってください。俺が責任もって謎を解き明かしますから」
「うぅ、でも・・・・・・」
「お願いです。これだけ助けて頂いたんです。そんな恩人に俺は無理をさせられません」
俺は膝をついてクーベル様の肩を掴み、お願いをした。
「わ、わかったのじゃ。でも無理はしないでほしいのじゃ。お主の身に何かあったらウチはリコッタ達に顔向け出来ん」
「はい、必ず帰ります」
俺はクーベル様と同じ目線になって笑顔でクーベル様の頭を撫でた。
そしてクーベル様はスカイヤーに乗ってパスティヤージュへと戻った。よし、クーベル様との約束を守るために頑張りますか、死なない程度に。
俺はもう一度城の扉を開いて、中に入る。そこにはさっきと変わらず黒い血のシミが多々ある。俺もこれはさすがに嫌だな。
この際全部の部屋を調べたいが、正直関係無い部屋は無視して調べる部屋を極力減らそう。
そう決めて俺はこの城の誰かが住んでいたと思われる部屋を見てまわることにした。
「ここは・・・・・・・・・・・・」
俺は誰の部屋かも分からないので部屋中を探しまくった。そうして見つかったのは・・・・・・・・・・・・かなり古くなった日記だった。そこにはフロニャルド語でびっしりと何かが書いてあった。
8月16日
今日からお姉さまがここの領主となる。
私がなれなかったのは非常に残念だったけれども私はサポートをすることに徹することにしよう。
お姉さまはとても優しく、人を思いやる気持ちを持っている。だからきっとこの国はいい国になるでしょう。
8月30日
最近、お姉さまの様子がおかしい。
ここ毎日、軍事会議を良く行っている。戦争はもう随分と前にやらなくなった筈なのに。
そして軍事会議と並行に騎士の強化も行われている。
それに口をきく回数もどんどん減っていっている。
お姉さまはどうなってしまったのだろう。
9月9日
今日、私は聞いてしまった。
軍事会議中お姉さまは、パスティヤージュを襲撃すると言っていた。
パスティヤージュと言えば私達の国と仲がよく貿易を盛んに行っている国だ。
それを襲撃するなんて、お姉さま・・・・・・・・・・・・。
9月17日
遂にパスティヤージュを襲撃、国民のみなさんも何人か送り出された様子。
この城にもいつもみたいに人はいず、私一人と勘違いしそうなほど静かだ。
みなさん、勝たなくてもいいのでどうか生き残ってください。
9月18日
私達は戦争に負けた。
パスティヤージュの方々は大変優しくて国民の方々は誰も死にませんでした。
9月25日
お姉さまがまた狂ってしまった。
この前パスティヤージュに負けてしまってから軍事会議を強化して徴兵制を作りました。
国民の方々はその無理やりな制度に苛立ちを覚えています。
この国はどんどん狂ってきてます。
10月4日
国民の方々が遂に限界に達してしまった。
この国で内戦が起きてしまいました。
私ももう逃げなければ・・・・・・・・・・・・。
*
「・・・・・・・・・・・・」
これは、この国での出来事、そして滅んだ理由?いや俺の見た夢とも違うし、あそこに書いてあった詳細とも違う気がする。
つまりこれは・・・・・・・・・・・・まだ途中、これからなにかが起こる・・・・・・!?
「まぁ、大体正解かな、駿君」
「!?・・・・・・・・・・・・魔人!」
いつも通り黒い着物に狐の耳を携えた少女が俺の後ろ、埃まみれのベッドに座っていた。
「奇妙な格好をしているな、髪も長いし、眼帯とは・・・・・・」
「誰のせいだ。てか眼帯は前にも付けてたよ」
「そうか?後ろからだったから見えなかったな」
はぁ、なんなんだこいつは・・・・・・・・・・・・。俺は日記を本棚になおして、魔人の方に向き直った。
「で、なんで出てきた。そんな世間話の為じゃないだろ?」
「そうだな、では本題へ。よくぞここまで辿り着いたな」
「・・・・・・・・・・・・お前はこれと関係があるのか?」
「ふふっ、さぁね」
くそっ、やっぱりこいつはよく分からない。
しかしこいつとこの国との関係が見えてこないな。
「そういえばお前、名前はなんなんだ?」
「エルディーナ、とでも名乗ろうかな?」
エルディーナ、なんだその名前?
「ならエルディーナ、この国はどうして滅んだんだ?」
「まだ、教えられないよ」
どうやらまだ俺の集めた素材は十分じゃないらしい。こいつは一体何がしたいんだ?
「それじゃ、今日の所はこれでお終い。いい夢を」
エルディーナがそう言いながら指をパチンと鳴らした瞬間、俺は一気に眠気に襲われた。
「なっ!?・・・・・・く・・・・・・そ・・・・・・」
俺は最後の抵抗と言わんばかりにエルディーナに手を伸ばしたがエルディーナはそれを軽く避けて、俺は埃まみれのベッドに倒れた。
*
『また、この夢か』
これは前回の続きだろうか・・・・・・。そう思ったがどうやら違うらしい。
何故なら、人間が生きているからだ。でもあまりよろしい状況ではなくみんな戦争をしている。
騎士達が次々と国民を切り倒していく。どうやらフロニャ力が弱いらしく、全員が血を出している。
そう、これがあの日記に書いてあった内戦、国民が鬼のような形相で騎士に迫っていき、子供は泣き叫び、騎士はそれらを粛清する。
俺は動けず、それをただジーと見ていた。どんどん人が倒れていく。だが誰も死なない。どうやら致命傷は負っていないらしい。
それを見て、また疑問が湧き出る。ならどうしてこの国は滅んだんだ?これなら王国軍も逃げることはないはず。
俺は内戦を見ながら考え事をしているとある国民に違和感を感じた。
『あれは・・・・・・黒いオーラ?』
黒い禍々しいオーラがゆらゆらと揺れていた。そしてよく見ると他の人達からも出ていた。さらにそれは上へと上がっていく。
『なんだよ、これ!?』
上には巨大な黒い塊りが浮いていた。しかもそれはどんどん大きくなっていく。
俺は驚愕して声が出せなくなってしまった。だがその間にもどんどん塊りは大きくなっていき、そして
バンッ!!
城の上に放たれた。そして世界は一瞬黒に包まれ、そして城の上には"奴"がいた。
そこで意識が途絶えた。
*
結局、俺は辺りが真っ暗になるまで寝ていた。
クーベル様にああ言った手前、さっさと帰る義務がある。
俺は勢い良く立ち上がり、城を滑走した。だが一つ疑問を感じた。さっきまであった長い髪が消えて、数日前と同じ、首辺りまでのボサボサ髪に戻っていた。
「あれ?まさか・・・・・・・・・・・・」
眼帯を外して俺は近くにあった埃まみれ鏡を持って、月明かりと星の光がある外へ走って辿り着いた。
そして鏡を綺麗にして俺の姿を確認する。
「目が、戻ってる」
俺の目はもう一週間以上前の様に黒い瞳になっていた。
これはつまり、魔人化がなくなった?いや、違う。これは俺の予想が正しければ・・・・・・・・・・・・
「輝力解放、ライジングモード」
俺の周りに雷が発生する。しかしその雷は禍々しい赤を放っていた。それに加えて、俺の輝力もそれに似た色になっていた。
つまり病気は外が何も無ければ、内に重大なことが起きている。これと一緒で俺の魔人化はもうすぐで終わる。
「・・・・・・・・・・・・魔人に、なる」
だが、そんなことは気にしてられない。とりあえずクーベル様を安心させる為に俺は一刻も早く帰らなければいけない。
俺は不安を掻き消すように一心不乱に森を走り抜け、気がつけばエッシェンバッハ城についていた。
そして輝力を使い切り、その場に倒れ込んだ。