神桜のノスタルジア   作:ヘリーR

10 / 28
第9話「忍び寄る影」

 「すすすすみませんでしたっ!!」

 

 《聖裁人》は前置を含むノスタルジアメンバーの前で頭を下げた。

 

 「まさか、かの四天王の一人たる《極幻》とそのお仲間だったとは……本当に、申し訳ない」

 「そんなに謝らなくてもいいさ、君がさっき言った『噂されているのは悪党の間』というのはあながち間違っちゃいないからね。彼らが君たちのことを知っているのにはきちんとした訳がある」

 「……防衛ギルド『ノスタルジア』、そのメンバーが俺らのことを知らないはずがない、ということだな」

 

 これまでずっと黙っていた《豪火》が口を開いた。

 

 「そういうことだ。そして僕は警視庁防衛ギルド監察課名古屋担当、後付前置だ。よろしく頼む」

 「天上(あまのうえ)天下(てんげ)だ。二つ名は《豪火》。こちらこそよろしく」

 「風切(かざきり)雷斬(らいざん)だ……二つ名は、《聖裁人》…よろしく、お願いします…」

 

 雷斬は、気が沈んでいる様子。

 

 「まったく…いつも早とちりなんだよ、おまえは」

 「本当……申し訳ねぇ…」

 「気にすることはないですよ。防衛ギルドは基本非公開の団体ですし、何より……後付さんが《極幻》だったなんて、私たちも知りませんでしたからねぇ」

 

 無響が穏やかに言う。

 

 四天王。

 日本トップ4の実力者にして、世界でも指折りの名高い戦士。

 《極幻》《深淵》《軍神》《修羅》。

 日本が誇る四大戦士、その二つ名はわかっていたが、用紙や名前は公表されていないため、その正体を知るものはごくわずかである。

 それがまさか、自分の知る者だったとは。ノスタルジアメンバーは驚愕したのだ。

 

 「いやぁ、すまないね。あまり頼られたくないから言わなかったんだ」

 「世界トップクラス、とは言っていたがな」

 

 嫌味な口調で唖門が呟く。

 

 「ああ、そうか。頼られてもおかしくなかったな、ハハハ」

 

 前置はのんきに返した。

 

 「…で、だ。風切君に天上君。君たちは強い。僕としては、君たちにノスタルジアに入ってほしいと思っている。どうかな?」

 「どうもこうもないですよ。喜んで入らせていただきます」

 「同じく。喜んで加入させていただきます。今まで入らなかった理由なんて、どこにあるか分からなかったってだけですから」

 

 雷斬と天下は揃って丁寧に頭を下げる。

 

 「じゃ、まずは試してみようか」

 「「………試す?」」

 

 二人は何の話だと言う様子。

 

 「ああ。ついさっき情報が入ってね、市役所周辺で魔人が3人、暴れているらしい。二人には、それの鎮圧をしてもらいたい。もちろん、魔人だから、手加減をする必要はないよ。ただし、まわりの一般市民や建造物には傷をつけないように頼む」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 市役所。

 その周辺に、体の黒い人が3人。

 否、人ではないか。魔人が3体。

 近くの一般市民を襲ってはいないが、停められている自動車やガードレールなど、人工物を片っ端から破壊している。

 逃げ惑う人々。その中に、一人流れに逆らうものがいた。

 《豪火》――天上天下である。

 迷うことなく1体の魔人――ガードレールを壊している――に向かって歩いていく。

 自らに近づく気配を感じたのか、魔人はガードレールを壊すのをやめ、その手に持っていたガードレールの残骸を振りかざす。

 降り下ろされるガードレール。

 天下はそれを、鞘から抜いた刀で受け止めた。

 

 「発火」

 

 天下が呟くと同時に、彼の刀の根元から分岐している小さな突起から炎が上がり、刀身を包む。

 その炎はガードレールに移り、さらに魔人にも燃え広がる。

 

 「グギャガギャギギギャ!」

 

 魔人は焼け焦げて力尽きた。

 

 炎を操る刀――それが天下の武器、宝具《孤高之刃(ここうのやいば)》。

 

 同族の断末魔を聞いた他の魔人が天下に向かって駆け出す。

 しかし、突如吹いた強風によって2体の魔人は空中に飛ばされる。

 そして、走る電光。

 断末魔を上げる間もなく2体の魔人は倒れた。

 

 「ふう…仕事は遂行したな、あのカフェに戻ろうか」

 「おう」

 

 《聖裁人》と《豪火》は颯爽と帰っていった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 雷斬と天下のふたりの戦いを、少し離れたビルの屋上から眺める二つの影があった。

 

 「ふん、あれが新入りか……なかなか強そうじゃねぇか……おい《鉄仮面》、次の準備はできてるか?」

 「ええ。もちろん、できてますとも。しかし、新たなメンバーの情報が先に得られるとは、意外でしたね……これは偶然なのか、それとも、こちらの存在に気づいているものがいるのか…」

 「どう考えても後者だろうな。ったく、主要メンバー4人の情報が手に入らねーたぁ、鬱陶しいぜ……まあいい、楽しみは長い方が良いからな。ククク……」

 

 不穏な空気が、流れ始めていた。




 前置が実はかなりの強者だったことが分かった1話でした(戦ってはいませんが)。
 そしてついに敵サイド登場。これからどう展開していくのか、お楽しみに!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。