「う……ん」
目が覚めた暁はしばらく状況が理解できなかった。
なぜ眠っていたのか、思い出せない。
「おや、やっと起きましたか」
聞こえてきた無響の声にその声の主を探すと、目の前にいた。
「……ここは?」
「プールサイドのベンチです」
言われて暁は思い出した。
自分は無響にクロールの泳ぎ方を教えてもらっていて、ちょっとした(?)ハプニングがあり、それで気絶したのだ。
思い出して恥ずかしいような、嬉しいような、複雑な気分に浸っていて、暁はまた重要なことに気づく。
今、暁は寝ている状態だ。それでいて、目の前に無響の顔がある。ここはベンチ。ということは……、
(も、もしかして私、今無響さんに膝枕されてる!!?)
ベンチに座っているので、正確には膝枕とは言えないのだが、まあ、似たような状況にあるのは確かである。
あまりの刺激に暁が再びのぼせそう(?)になっていると、無響が口を開いた。
「その……暁さん、先程はすみませんでした」
「…へ?何が?」
問い返すと無響は、
「いや、その……胸に、手が当たってしまったことが…です」
と、頬を赤らめて言うではないか。
暁がドキッとしないわけがない。
「い、い、いやいやいやいや、気にしなくていいよ、当たったのは偶然だし、私だって泳ぎ方を教えてもらってる身なんだし!」
慌てて首を振る暁。
今日は刺激が強すぎる。
誰のせいでこんな日になったんだっけ。
そうだ、九綺だ。帰ったら懲らしめてやろう、夕飯にチリペッパーをこれでもかと言うくらい入れてやる。
そんなことを考える暁であった。
「さて……、じゃあそろそろ、練習に戻りましょうか」
「う、うん」
二人のクロール練習再開。
その後、なんなく暁はクロールが泳げるようになった。
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練習を終え、元の服に着替え、プール場から出てきた暁と無響。
このまま平和に帰れたらどんなに良かったか。
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁあぁあ!!」
「「ッ!!」」
突如聞こえた悲鳴。距離はそう遠くない。
「何かが起こっているようです、行きましょう、暁さん!」
「了解!」
悲鳴の聞こえた先はすぐそこの角を曲がったあたり。
行ってみれば、予想通り。
「魔人!それも5体も!急ぎ殲滅しましょう!」
「OK!」
といっても、魔人5体程度など、二人からすれば大した敵ではない。
無響が《桜刃花》を飛ばしてすぐさま4体を撃破し、その間に暁が残り1体を切り伏せる。
混乱はすぐに収まった。
しかし、この事件は、これから先の長い戦いのプロローグでもあった。
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相も変わらず、前置はモニターを見ていた。
《鉄仮面》の出現パターンを探るためである。
すると突如、画面にノイズが走る。
「ッ!今見ているのは記録映像であって、今までノイズが出たことはなかった………となれば、相当強引なジャックか……」
ノイズが収まり、画面に映し出されたのは、果たして。
今、前置が調べていた張本人であった。
『やあ、初めまして……いや、お久しぶりです、と言った方が正しいのですか?《極幻》』
「―――っ、《鉄仮面》……」
なぜ、この時に、こんなことを。
「………こんなことをするからには、何か伝えたいことがあるのだろう?速く伝えると良い」
『いやぁ、察しが良いと助かります……では、手短に』
続けられた言葉に前置は驚愕した。
『《狂戦士》と《明星》の戦闘の様子、見させていただきました』
「……ッ!バカな、そんな気配は…」
『やはり、あなたがあの四人を私たちから遠ざけてましたか……いや、街中をを徘徊してたら偶然見かけましてね、魔人を送って……というわけです』
「何だと……お前の出没の気配すら感知していないぞ……」
『そんな簡単に見つかりませんよ……では、さようなら。ククク……』
前置は、元に戻ったモニターを呆然と見つめていた。
これからは1話ごとの文字数を増やしていく所存です。