神桜のノスタルジア   作:ヘリーR

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第12話「前兆」

 少年と少女は兄妹である。

 少年は豪雨と竜巻の日に生まれ、少女は大干ばつの日に生まれた。

 二人はひとりの老人に育てられた。

 老人、それも一人であるというところから予想できるように、この老人は二人の実の親ではない。

 だが、老人は兄妹の本当の親を知らなかった。

 それどころか、誰一人として二人の親を知らない。

 それもそうであろう――――――――――――――――――二人は、人間の子ではないのだから。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 カフェ『ノスタルジア』にて、現在、前置と無響、唖門、九綺の4人が暁お手製のカプチーノを飲みながら雑談に興じていた。

 

 「へえ、そんなことがあったのか」

 「ええ、まあ、反応が露骨すぎて……かなり気を使いましたよ」

 

 雑談の話題は、以前の無響と暁のプールに関してである。 

 

 「で、どうだったんや、無響はん?」

 「どう、とは?」

 「暁とハプニングとか、あったんか?」

 「へ?」

 

 九綺は無響と暁の間でハプニングが起こることを期待して、二人をプールに行かせたのだ。うまくいけば、二人の仲が進展すると信じて。

 軽い調子で聞いてはいるが、九綺本人は大親友たる暁の幸せを願っているのだ。

 

 「………」

 

 無響は沈黙しているが、顔が少し紅潮している。

 

 「ん?その様子やと、なんかあったみたいやな?」

 「まあ………なかったとは、言いませんが…」

 「おお!どないなことがあったん?」

 

 無響は隠すことなく起こった『ハプニング』を話した。

 九綺はそれを聞いて尻上がりの口笛を吹く。

 

 「ええやんええやん……ますます暁を惚れさせとるなあ、無響はん?」

 「そりゃまた、なぜ?」

 「細かいことは気にせんでええねん。ともかく、このまま頑張りや」

 「は、はあ…」

 

 一方その頃、暁は自室で、

 「ハッ……クシュン!ん~~、誰かウワサしてんのかなぁ~」

 

 まさかそのウワサの元が先程カプチーノを提供した無響たち4人であるとは、思いもしない暁であった。

 

 「………さて、そろそろ本題に入ろうか。朝長さんも呼んできてくれるかい?」

 「…む。わかりました」

 

 暁も接待テーブルにやって来た。

 

 「……さて、4人揃ったな…ひとつ、残念なお知らせがある」

 「……?いったい何?」

 

 暁の質問に前置はゆっくりとまばたきをし、しばらくしてから口を開いた。

 

 「花舞くんと朝長さん、二人はこの前プールに行ったんだね?」

 「うん、そうだよ」

 「帰りに、魔人と交戦したかい?」

 「ええ」

 「それが何か悪いことに繋がるの?」

 

 前置はカプチーノを飲んで一拍置いてから暁の質問に答える。

 

 「あの魔人は、僕がずっと警戒している男と繋がっていたようでね、二人の戦法が向こうに抜けてしまったんだ」

 「それがなぜそんなに問題なのですか?」

 

 前置は再び一拍置いて答える。

 

 「君たちも名前くらいは聞いたことがあるだろう……《鉄仮面》という二つ名を」

 「「「「!!!」」」」

 

 《鉄仮面》。

 その奇行はかなりの人が直接もしくは間接に伝えられている……この国に存在する数多の指名手配者の中でも、トップクラスの危険人物。

 《ノスタルジア》メンバーが知らないわけがない。

 

 「彼はとても厄介な敵だからね、できる限り君達の情報を明かさずにやっていきたかったのだが……向こうもかなりのやり手だったようだ」

 「何か対策は打てませんか?」

 「無いな…バレてしまった以上はこちらも堂々向かうつもりだ。ひとまずは、まだ情報が漏れてない時狭間くんと絹笠さんの情報をなるべく漏れないようにしたい」

 「具体的にはどういうことでしょうか?」

 「簡単な話だ……時狭間くん、絹笠さん、これからしばらくは…戦闘を控えてほしい」

 「なっ……」

 「なんやてぇ?」

 

 防衛ギルドのメンバーに、「戦うな」というのは、かなり無理のある頼みだ。

 

 「同じことは、あの3人にも当てはまる。彼らもまだ情報が出ていないからね」

 

 あの3人とは、六四朗、絶斗、無限のことだ。

 

 「でも、あたいらが出れんかったら…」

 「ああ。現在戦える戦力は花舞くん、朝長さん、風切くんと天上くんの4人だけだ」

 「そんな……?ちょっと待ってください、なぜ風切さんと天上さんは戦えるんです?」

 

 無響の質問は最もだ。彼らも戦えるということは、つまり……

 

 「実は、あの2人は初仕事のときに偶然にも彼らに発見されてしまってね、もう情報が漏れているんだ」

 「な……」

 

 水面下ですさまじい情報戦が行われていることに、4人は絶句する。

 

 「……でもまあ、戦える勢力が多い方が心強いでしょう。ポジティブに考えましょう」

 

 無響はなるだけメリットを考えることで前向きにものを考えていこうとしているようだ。

 

 「……そうだな」

 「悲観してても仕方ないもんね」

 「せやな。あたいもなるべく協力できるよう頑張るわ」

 

 無響の言葉によって皆暗い考えは捨てたようだ。

 

 「皆前向きで助かるよ。じゃあ、花舞くん、朝長さん、町のパトロールをお願いできるかい?」

 

 皆の様子に安堵した前置が言う。

 

 「全然。お安いご用です」

 「こっちも何も問題ないよ」

 

 そういって二人は早速パトロールに出た。

 

 

 その後。

 「…………」

 「……む。なんだい?」

 

 にやにやと笑いを浮かべながら前置を眺める九綺。その顔の意味するところを前置は察した。

 

 「………言っておくが、現状戦闘してもいい二人に行かせただけだ。決して君が思っているようなことは考えていない」

 「またまた~、少しは考えたやろ?」

 「……まあな」

 

 どうやら、二人に幸せになってほしいのは九綺だけではないようだ。




 冒頭の二人が出てきてません。
 次回出します。
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