神桜のノスタルジア   作:ヘリーR

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第14話「兄妹の力 前編」

 無響曰く、『魔王の気』を纏った兄妹は、戦闘態勢に入ってなお、男たちを見据える。

 その目には、怒りと、少しばかりの冷やかな軽蔑が含まれていた。

 その視線の先にある男たちは、その軽蔑を感じ取ったのか、

 

 「……んだオラ。くたばれェ!」

 

 と、突如激昂して兄妹に殴りかかった。

 兄、妹、それぞれに3人ずつ。妥当ではある。が……、

 その激昂を兼ねた突撃は一人目であっけなく止むことになる。

 

 兄妹はそれぞれ先頭にいた男の拳を片手で受け止める。

 それを見た残りの男たちは、怯んで足が止まってしまった。

 

 そして、

 

 「……くたばるのは、そっちだ」

 

 と兄のほうが言ったかと思うと、ポキポキと小気味いい音が鳴り、直後断末魔が響く。

 拳を止められた男が握り拳を握り潰されたのだ。

 

 それを見た残りの男たちは、恐怖を顔に浮かべ逃げようとする。

 しかし。

 それは、兄妹が許さなかった。

 二人の姿が消えたかと思うと、逃げようとした残りの男たちの道を塞いでいた。

 

 「なっ……!」

 「……全員、三途の川の前で反省しろ」

 

 そして再び兄妹の姿が消えたかと思えば、男たちの後ろに現れた。

 数瞬後。

 男たちは勢い良く宙を舞い、無惨にも地に落ちた。

 

 「………すごい」

 

 一部始終を見ていた暁が呟く。

 無響も絶句している。

 

 「………あ」

 

 呆然としていたのから立ち直った無響は、携帯電話を取り出す。

 

 「……もしもし。後付さんですか?繁華街の裏路地で6名、『住人』を倒しました。処理をお願いします。ええ、ええ……頼みました」

 

 無響は電話を切ると、目の前に兄妹が来ているのに気づいた。

 

 「……なんでしょうか」

 

 二人の『気』に少し圧されている状態だが、平静を装って訊ねる。

 

 「……聞こえてたよ。俺らから、魔王の気を感じたって?」

 「……ええ」

 「どうして分かる?」

 「……それは、なんとも言えませんね」

 

 無響は少し困り顔で少年の質問に返答する。

 

 「………そうか」

 

 少年の顔が沈む。何か考えているようだ。

 

 「…ひとつ、お願いがある。いいか?」

 「ええ。なんですか?」

 

 

 「……あなたたちの家に泊めてほしい」

 「………へ?」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 「……と言うわけで、この二人を連れてきました」

 

 所は変わりカフェ『ノスタルジア』店内。

 帰ってきたのは無響と暁だけでなく、二人の子供も付いてきた。

 

 「では、自己紹介をお願いできますか?どちらからでも構いません」

 「はいはーい!じゃ、私からで良い?お兄ちゃん!」

 「ああ。構わねぇよ」

 「はじめまして!蝋月(ろうづき)蝶香(ちょうか)です!小学四年生の10歳です!よろしくお願いします!では、どうぞ、お兄ちゃん!」

 「あー……ご紹介に預かりました、蝶香の兄の蝋月音式(ねしき)です。中学二年生、14歳です。よろしくお願いします」

 

 妹――蝶香は、肩甲骨の下まで伸ばした金髪、前髪はピンで止めている。

 兄――音式は、ボサボサな焦げ茶色の髪が特徴的で、ドクロの刺繍が入った帽子を被っている。

 

 「花舞無響です。よろしくお願いします」

 

 無響以下、ノスタルジアメンバーが順に挨拶をし終えたところで、音式が急に話を切り出してきた。

 

 「それで……無響さん、魔王の気を感じたって話、詳しく聞かせてもらえませんか?」

 「む…」

 

 『魔王』という言葉に反応する人物がノスタルジアメンバーの中にも少なからずいるわけで、突如問われた無響も少しばかり戸惑ってしまう。

 

 「魔王………だと?無響、どういうことだ?」

 

 案の定、唖門が訊ねてきた。

 

 「……こればっかりは、見てもらった方が早いかもしれませんね。唖門なら、見ればわかるでしょう。そうですね……、風切さん、ひとつお願いできますか?」

 「……?はい」

 「この建物の庭、その奥に鉄でできた倉庫のようなものがあるのですが、わかりますか?」

 「……ああ、入ったことはないけど、見たことはありますね」

 「あそこ、実は闘技練習場なんですよ。そこで、あの二人のどちらかと、戦って欲しい」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 そして、やって来たはカフェ『ノスタルジア』の裏、メンバーたちの暮らす部屋がある棟を抜け、出た庭の奥にある闘技練習場。

 防衛ギルドの練習場だけあって、かなり丈夫な造りになっている。

 戦闘フィールドの片方に立っているのは、《聖裁人》風切雷斬。

 対するは、ドクロの刺繍が施された帽子を被った少年――蝋月音式。

 

 ノスタルジアの他のメンバー、そして音式の妹、蝶香は、小さいながら設けられたギャラリー席に座っている。

 

 「では、どうぞ。始めてください」

 

 無響の開始の合図と共に、雷斬が消える。

 気付いたときには、音式の目の前だ。

 

 「先手もらったァ!」

 

 雷斬は意気揚々と電気を帯びた拳を突き出す―――が、避けられてしまう。

 

 「ッ!?なんのッ!」

 

 避けられたことに怯まず、雷斬は立て続けにパンチを繰り出す。

 しかし、それも見切られ、避けられる。

 

 「彼の動き、私に攻撃してきたときと同じパターンです……であれば、次の彼の一手は……」

 

 無響の読みは当たった。

 

 雷斬は、パンチを避け続けている音式の足を払いにかかった。

 しかし、その足払いまでもが、避けられた。

 ジャンプすることで、足払いを避けたのだ。

 

 「ッ!?」

 

 音式はそのまま空中で1回転、回し蹴りを食らわす。

 雷斬はクロスさせた腕で防いだが、その威力の大きさに少し後ろへ飛ばされた。

 

 「ッ……、こいつ……」

 「次は俺が攻撃する番だな」

 

 そう言って攻撃モーションに入った音式を見て、―――唖門が怯んだ。

 

 「………!これは……」

 「分かりましたか?」

 「こいつは……確かに、魔王の気だ…」

 

 無響ならず、唖門までもが彼から魔王の気を感じたことで、他のノスタルジアメンバーも戦慄する。

 

 

 音式が一気に地面を踏み込む。

 彼の身は勢いよく前へと飛び、瞬時に雷斬との距離を詰める。

 

 「……ハアッ!」

 

 音式が飛んだまま蹴りを繰り出す。

 雷斬は間一髪でそれを避けた。

 そこから続く音式の怒濤のラッシュ。

 雷斬は圧倒され始める。

 

 「くっ…………!」

 「まだまだ終わらせないよ!いつまで避けれるかな?」

 「………っ、この野郎……!」

 

 音式の攻撃を、雷斬は避け、防ぎ、また避け、また防ぐ。

 少しずつ、雷斬が押されていく。

 音式の攻撃が当たり始めた。

 

 「ぐっ……が……っ」

 「とどめだ!」

 

 そうして音式が放ったパンチは、しかし雷斬に当たらなかった。

 雷斬の体が霧散したのだ。

 

 「ッ!?」

 「ふぅ、危なかったぜ」

 「!?どこに………?」

 

 そうして声の聞こえた方を向けば。

 

 「なっ!?」

 

 雷斬は、空中に浮いていた。

 自身の能力で作り出したであろう雷雲の上に、乗っているのだ。

 これには、雷斬の対戦相手である音式だけでなく、観戦していたノスタルジアメンバーも驚いた。

 

 「さァて、上空から一方的に攻撃させてもらうぜ!」

 

 雷斬の乗っている雲がゴロゴロと音を立て光り出したかと思えば、次の瞬間には雷撃が音式を襲っていた。

 

 「…ッ!」

 

 音色はギリギリでそれを避ける。

 

 「オラオラァ、さっきまでの威勢はどうしたぁ!?」

 

 際限なく襲いかかる落雷。

 ついに音式は追い込まれた。

 

 「くぅ………っ」

 「そぉらよ!」

 

 とどめとばかりに放たれたこれまでで最高威力の雷撃は、的確に音式を捉えた。

 

 そして―――――――――。




 兄妹の力とか言っておきながら、兄の音式しか戦ってません。
 まあ似たような感じだということで。そのうち蝶香も戦いますから。
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