神桜のノスタルジア   作:ヘリーR

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第20話「闘技大会」

 「………なるほど。東山園高校の闘技大会、ですか」

 

 赤髪の少年と出会った翌日、暁たちは無響に彼が出場するという闘技大会の話をした。

 

 「うん。なんでも、力を見せる……なんて言ってたよ。よほど自信があるのかな?」

 「3人とも、その少年から魔力は?」

 「私は全く感じ取れなかったけど……音式くん、蝶香ちゃん、二人は?」

 

 兄妹は目を合わせ、互いの考えを共有する。

 

 「僕らも全く。ただ……」

 「ただ?」

 

 音式が漏らした言葉に、暁は妙な胸騒ぎを覚えた。

 

 「……多分だけど、あの人はかなり魔力の扱いに長けてる人だよ。体の外には全く魔力を感じなかったけど……」

 「……けど?」

 「……あの体の中には、かなりの量の魔力の流れを感じたよ」

 「………!!」

 

 能力者や、越具以上のランクに分類されている武器と契約を結んだ人は、そうでない人に比べて魔力を検知するのが容易くなる。

 しかし、他人の体内を流れる魔力を感じとることは通常不可能だ。

 それができるということは、やはり音式や蝶香が特別な出生の持ち主だということを考えざるを得ない。

 

 「そこから鑑みれば、あの自信も大いに納得が行く。一見しても後悔はないと思うな」

 「……そうですか」

 

 無響は思案顔だ。

 しばらく無言で何か考え、そして、結論を出した。

 

 「……見に行きますか、闘技大会」

 

 無響の言葉に三者三様の反応が返ってきた。

 

 「うぉぉぉぃぃぃぃぃぃぃぃやったぁ!!!!」

 

 と、跳び跳ねて喜ぶ蝶香。

 

 「あの人のことも気になるしね。ありがとう、無響さん」

 

 と、嬉しさを隠しきれてない顔で冷静ぶりながら礼を言う音式。

 

 「ふふっ、良かったね二人とも…………ハッ! これって、もしかしてデートになるんじゃ……」

 

 と、なんか方向性がおかしい暁。

 しかし、暁の思惑だけは打ち砕かれる。

 

 「? 暁さん、まさかこの4人だけで行くとお思いですか?」

 「………………………ええっ!!??」

 

 あまりに驚きすぎて顔が若干ヒステリックになっている。まるでムンクの叫びのように。

 

 「このギルドに加入できるほどの人材がいるのかもしれないんですよ? 4人だけなわけないじゃないですか。全員で行きますよ」

 「そ、そんなぁ~~~……」

 

 膝からくず折れる暁。

 

 「無響さんとのデート無響さんとのデート無響さんとのデート無響さんとのデート無響さんとのデートデートとの無響さんデートさんとの無響デートデートデート…………」

 

 途中から日本語がちぐはぐを通り越して訳わからなくなっているのにも気付かず、床に指で円を書きながら呪文のように唱え続ける。

 蝋月兄妹もさすがに同意できず苦笑いでその光景を見ていた。

 だが、ここで暁をガッカリ(?)させたまま終わらせないのが無響だ。

 

 「……また別の日に、二人で出掛けましょうか。水族館にでも」

 「………本当!?」

 

 つい先ほどまで沈んでいたのに、突如眼を輝かせて顔を上げる暁。

 あまりの変わりように無響もつい怯んでしまう。

 

 「……え、ええ。本当ですよ」

 「やったぁ! その時はよろしくね!」

 「……はい」

 

 そんな茶番らしきものが繰り広げているすぐそばで、

 

 「……ねぇ、お兄ちゃん。暁さんって単純だね」

 「お前も負けず劣らず単純だけどな」

 「うっ………、ず、図星……!」

 「自分で認めちまったよ………」

 

 と、兄妹が別の茶番らしき何かを繰り広げていたとは、二人は知る由もないのであった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 それから6日後。東山園高校公式闘技場。

 観客席は、のちに入学を考えている親子やその戦闘テクニックを研究しようとしている人で埋まっていた。

 その中に、『ノスタルジア』のメンバー11人も座っていた。

 

 「うわぁ……すごい人。さすが闘技名門校なだけはあるね」

 

 暁があまりの人の多さについ呟く。

 

 「そうですね。……さて、暁さん。あなたが言っていた少年はどこで出てきますか?」

 

 入場時に渡されたトーナメント表を見て無響が問う。

 

 「それは……ゴメン。名前は聞いてないから分かんないや。まあでも、見たら分かると思う」

 

 そう言っている間に、大会の司会者がフィールドの中央に出てきていた。

 少しずつ観客席のざわめきが小さくなっていき、やがて消える。

 

 『え~、ご来場のお客様。本日はお忙しい中お集まりいただき、誠にありがとうございます。これより、東山園高校、第27回闘技大会を開催いたします!!』

 

 司会の熱のこもったアナウンスに再び観客席が盛り上がる。

 

 この闘技大会は生徒の自主参加制だ。観客の中には東山園高校の制服を来た者もちらほら見られる。今回の大会には参加していない人たちだろう。

 そして、観客席とは別に仕切られたスペースに、大会参加者用観戦席がある。ここで次の対戦相手になりうる人の戦法を予習しておいたりするのだ。

 しかし。

 

 「ん………?」

 「どうしました、暁さん?」

 「……いないんだ」

 「?」

 「大会参加者席に、彼の姿が見当たらないんだよ」

 「…………」

 

 そう。

 今見る限り、大会参加者席には、彼―――赤髪の少年の姿が見当たらない。

 

 「……心配はしなくていいでしょう」

 

 だが無響は、そんな状況は意にも介さなかった。

 

 「隠役であるなら、生徒会に呼ばれていたりするかもしれませんよ?欠席はないと思いますがね」

 「………そうだね」

 

 暁が赤髪の少年への不安を拭ったところで、再び司会の声が響き渡る。

 

 『さあさあ皆さん、盛り上がるのはまだ早い! とりあえずは、我が校の生徒会長と副会長に挨拶していただきましょう!』

 

 司会がそう言うと、フィールド奥の審査員用出入り口から二人の女性が出てきた。

 ひとりは長い黒髪で、凛とした表情が印象的な少々小柄な女性。

 もうひとりは白からピンクへとグラデーションしていくセミロングの髪だ。表情は活発さが伝わってくる少しヤンチャな顔。

 黒髪の女性が司会からマイクを受け取り、見たイメージそのままの凛とした声を響かせる。

 

 「生徒会長の醍乃(だいの)佐虚(さうろ)だ。今回の大会に参加した生徒諸君には、互いに出し惜しみのないよう、全力を尽くして一戦一戦を戦い抜いてほしい」

 

 そう言って、生徒会長こと醍乃佐虚は隣にいるグラデーションの髪の女性にマイクを手渡す。

 

 「副生徒会長の秋冬(あきとう)春夏(はるか)だ! 参加者の皆、この会場を震わせるくらいの最高のバトルを期待してるぜ!」

 

 マイクはふたたび佐虚の手に戻る。そして―――――――。

 

 「――――では、ここに、東山園高校第27回闘技大会の開催を宣言する!!」

 

 佐虚の凛々しい声で放たれた開催宣言に、観客席の盛り上がりは最高潮に達した。

 

 その盛り上がりを背に、フィールドを後にする二人。

 

 彼女たちが戻った通路の先で、ひとりの男が待っていた―――赤髪の少年だ。

 

 「………さて、アンタらの仕事はこれで終わりか。これからは俺の見せ場ってわけだな」

 「……そうだな。何をするかは分かっているな?」

 「ああ。やつらを叩きのめす。単純で良いじゃねぇか」

 「……1回戦は? 何試合目だ?」

 「3試合目。相手は連中のナンバー3だ。もちろん最大の目当てはやつらのボスだが、前哨戦としてはなかなかいい組み合わせだな」

 「……フ。気合い十分だな。では任せたぞ」

 「おう。任せな、生徒会長さんよ」

 

 そう言って彼は彼女らに背を向け、どこかへと向かい始めた。

 これから始まる、反逆のために―――。




 キャラがまた増えてきました。
 各キャラ、どんな人か覚えてくれると嬉しいです。
 次回をお楽しみに!
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