名古屋に居を構える防衛ギルド『ノスタルジア』。
あまり一般人に誇張するものではないので、名古屋市の中心部ではなく割と辺境にある。
だがあまりにも一般人に見つからない場所がないため、表向きは〈カフェ『ノスタルジア』〉として経営している。
なぜカフェかと言うと、メンバーの一人が「私コーヒーとか作るの得意なんだ!」と言ったのを聞いた他のメンバーが「じゃあカムフラージュはカフェでよくね?」と思った、という簡単な理由である。
現在、カフェ・ノスタルジアは忙しい昼時を過ぎ、客もおらず、ほぼ『自宅』状態である。
冗談でなく、この建物は仕事場兼自宅である。メンバーが全員ここで共同生活をしているため、敷地は広大だ。カフェが占めるスペースは全敷地の15パーセントほどである。
そこに一人、一仕事を終えて帰ってきた。
「あっ!無響さん、お帰りなさい!」
帰ってきた青年の名は花舞無響。二つ名は《狂戦士》。
「いやー、わざわざ御嶽山の中腹まで行ったのに、あまりにも簡単に終わりすぎて徒労な気がしますよー。暁さん、エスプレッソを一杯、お願いできますか?」
「任せて!」
無響にエスプレッソを頼まれたポニーテールの女性の名前は
エスプレッソを頼まれたところから分かるように、「コーヒー作るの得意!」と言った張本人である。
「フフ、暁のやつ、無響が帰ってきたとたんにウキウキしてるな」
「そら、暁は無響はんにゾッコンやからな」
ウキウキオーラ出しまくりの暁を見て苦笑い気味にその光景を眺める眼鏡の侍風な見た目の男性。名前は
若干からかい気味に、しかし本人には聞こえないように唖門に返事をした、関西弁のおかっぱ頭の女性。名前は
ちなみに、なぜ関西弁かというと、本人曰く、「一週間で京都と大阪と奈良まわったらうつってもうたわ」とのこと。
「はい、エスプレッソ」
「ありがとうございます」
無響のもとにエスプレッソが運ばれてきたとき、ドアベルが鳴った。
「やあ、お邪魔するよ」
「おや、これはこれは後付さん、あなたが来たということは、また仕事ですか?」
やって来たのは、警視庁防衛ギルド監察課名古屋担当の、
世界トップクラスの実力を誇り、本気を出したら北海道くらいなら沈むのでは?と言われるほどの実力者だが、詳細は不明。もしかしたらそれ以上かも、それ以下かも、である。
前線にでない理由は、強すぎるから。
現在はあらかた諜報系の仕事をギルド監察と並行しているそう。
「そうなんだ。帰ってきたばかりで悪いけど、これまた重大な話でね」
「いったいなにがあったんです?」
「…静岡県知事の娘さんが誘拐されたんだ」
「!!!」
こんな話は中々ない。一同は息を飲んだ。
「…で、その話には続きがあるんでしょ。今どうなってるの?」
明らかに仕事モードに入った暁が尋ねる。
「うん。まあ、よくある流れなんだが、案の定身代金の要求が犯人側から来てね。2日以内に3億円出さないと、娘さんを殺すと」
「犯人の所在位置は分かっているんですか?」
「ああ、浜名湖の近くに大きな隠し扉が見つかってね、その中にいる」
「見つかったなら、普通に逮捕すればいいのでは?まあ、私たちに話が来るということは、これで終わりではないんでしょうけど」
前置は顔をあからさまにしかめる。
「……近頃、静岡と長野南部で子供の失踪が話題になっているのは知っているね?」
「ええ」
確かその失踪事件は誘拐によるもので、犯人グループ――集団による犯行だった――は特定され、事件は解決に向かっていたはずだ。
「………まさか」
「ああ、県知事の娘を誘拐した犯人は、子供誘拐事件の犯人グループの一員だったんだ」
「…………」
なるほど、となると無闇に突入すれば子供たちを人質にとられかねない。
「つまり、捕らわれた子供たちと県知事の娘を、秘密裏に救ってほしいと?」
「まあ、そういうことになるな」
「となると、彼らの仕事になりますね。私たちの出る幕はなさそうです」
「いや、そういうわけにもいかないんだ」
「?」
正面からぶつかるスタイルの四人にとって、影からこっそりと行う任務は不適のはずだ。なぜそうはいかないのか。
「実は、彼らとは別に、子供たちの誘拐を行っている、いわば実動部隊みたいなものがいるんだ。こいつらは、浜名湖ではなく、瀬戸のはずれにいるそうだ」
「…そらぁ、めんどくさい連中やなぁ」
九綺が吐き捨てるように言う。
「君たち四人には、その実動部隊を叩いてほしいんだ」
「……分かりました。一応確認しておきますが、私たちを動かすと言うことは――」
「―――ああ、無論だ。生死は問わない。よろしく頼んだぞ」
今回は割とほのぼのして、次の話の展開を書いて終了と言ったところです。
次回をお楽しみに!