無響は冷静に相手6人の得物を確かめる。うち5人は全員似たような剣を持っている。もう一人は…
「――ッ!《
突如男が走りながら連射してきたマシンガンの弾丸を能力《桜刃花》によって作った壁で受け止める。
マシンガンの弾丸はなんなく止められた。
「チッ!まだ弾はあるぜッ!」
男は急いで新たな弾丸のケースを弾倉に詰め込もうとする。しかし…
「残念でしたね。先程の弾丸を防がれた時点で、あなた方に勝ちはなくなりました。そうれっ!」
壁を作っていた《桜刃花》を解き、そのまま相手に向けて全て発射する。
「ッ!!!」
とっさにそれぞれの剣やマシンガンで防ごうとするも、すぐさま無惨に砕け散る。
「――ッ、バカなッ…!」
剣やマシンガンを砕いた勢いのまま、《桜刃花》は6人の体を貫き、切り裂く。
桜の花びらの嵐が止んだとき、それを受けた6人は誰一人生きていなかった。
《桜刃花》。
桜の花びらのような刃を無数に作り出し、自在に操る無響の能力。防御のための壁も作れるし、相手に向かって容赦なく飛ばすことももちろん可能だ。
「…ふう。突如マシンガンを放たれたときは驚きましたがね…。6人に分けたのが災いしましたね。まあ、24人で一斉に来ても大差はなかったでしょうが」
そう言って無響はまわりを見渡す。
「もうじきに終わりますね…じゃあ、私はここで机の上にきれいに残ったフルーツでもいただいてましょう」
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唖門はひたすら相手の攻撃を避けていた。
苦戦しているわけではない。チャンスを探しているのだ。
唖門は物事を一気に片付けることを好む性格であり、このような戦闘時においても、一人ずつ倒すようなことはせず、6人を一気に倒すことを考えている。
しかし彼は無響の《桜刃花》のような遠距離連射型の能力や武器は持っていない。
ひたすら相手の攻撃を避ける。
「おらおら、どうしたぁ!避けてばっかじゃ勝てないぜぇ!」
そんな唖門の思惑は露知らず、6人の一人――サングラスノッポ男が挑発しながら飛びかかっていく。
なんなく避ける唖門。避けた方向は――壁で塞がっている。
後ろはこれ以上ない。
「もう逃げ場はないぜぇ!」
唖門に攻めかかってくる6人。その表情は、勝利の確信に満ちている。
だが。
勝利の確信に満ちているのは、唖門も同様であった。
(フッ――――――――)
心の中で笑みをこぼす唖門。
そして。
足に力を込める。
「ッ!!!」
男たちは驚く。
突如として追い詰めていた唖門が目の前から消えたのだから、驚かないわけがない。
正確には消えたのではなく、猛烈な踏み抜きによる居合いだったのだが。その証拠に、先程まで唖門がいた地面は少々へこんでいる。
気づけば、自分たちの後ろに《剣聖》がいた。
その右手には、緋色の日本刀が握られている。
「な――――」
驚くのも一瞬。
彼らは動けなくなった。
物理的に。
先程まで唖門がいた壁際から、現在唖門がいるその後ろまで、緋色の結晶の山脈ができている。
その結晶山脈のなかには、無論、唖門が相手していた6人の男がいる。
簡単に言ってしまえば、男たちは固められたのだ。
これが唖門の武器。
宝具《
ここで武器の説明をしておかなければならない。
武器にはランクがあり、下から通常武具、改具、越具、宝具、霊具というように分けられている。
現在霊具は存在が言い伝えられているものの実物が確認されておらず、宝具が現状の最高位に値する。
無響の《桜刃花》は能力、すなわちその本人だけが持ちうるものだが、唖門には能力はない。
しかし、越具や宝具ほどの武器を持っていれば、能力者なみの戦闘力は発揮できる。
無論、持ち主の技量もあるが。
ちなみに、武器であるゆえ譲渡などが可能になるわけだが、越具以上の武器であればその武器との特殊な「契約」によって譲渡不可能、つまり永久に自分のものとすることができる。
唖門を含め、大抵の越具以上を所持するものは契約を結んでいるだろう。
唖門の日本刀、宝具《緋龍》は、結晶の生成破壊を自在にできる武器だ。
もちろん、その大きさ、形、密度、すべて変幻自在。
「……さらばだ。砕け散れ」
後ろを振り返ることなく、唖門は《緋龍》を鞘にしまう。
すると、結晶はその言葉通り砕け散った―――中にいた6人の男もろとも。
髪の毛一本、血液一滴たりとも残すことなく、男たちはこの世から消え去った。
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暁は囲まれてからの波状攻撃をいなしながら敵の陣形を崩す最適解を探していた。
誰から倒せば連携が乱れるだろう?
そんなことを考えながら相手をする。
彼女が一番厄介に思っているのは、腕に防具をつけた小柄な男。
武器を持っていないゆえ身軽であり、どこで攻撃を仕掛けてくるかわからない。
まあ動き出せば気配で察知できるが。
残りの5人のうち3人は片手剣を持っており、一人は細剣、一人は大剣という、なんとも言いがたい組み合わせだ。
しかし片手剣使い3人の連続攻撃の合間に繰り出される細剣の刺突、最後に満を持して放たれる大剣の叩き切りという抜群のコンビネーションは暁を驚かせていた。
(チームワークはとても良いのね…、すさまじいコンビネーションには正直驚いたな…さて、あの拳術使いさんはどこで仕掛けてくるかしら……ッ!来たッ!)
小柄な拳術使いは仕掛けるタイミングを図っていた。まともに戦ったのでは勝てないとわかっていた。そこで、彼はタイミングを見計らって《明星》に飛びかかり、押さえたところを他のメンバーに攻撃してもらうという算段だ。
そしてそのチャンスが来た。
大剣の攻撃を避け後ろに退いた《明星》が完璧にこちらに背中を向けている。
ここぞとばかりにその背中に向けて猛ダッシュする。
しかしそれを待っていた暁は振り返りざま自分の得物――宝具《黎明》を振り抜く。
だが。
両者にとって予想外のことが起きる。
今戦っているこの場所は、もともとどんちゃん騒ぎをしていた場所なのだ――床にはいろんなものが散乱してしまっている。
予想外のこととは、つまり。
拳術使いは床に落ちていたリンゴを踏みつけ、足を滑らせたのだ。
ほぼこけるような体勢で暁に突進していく拳術使い。
こけるとはすなわち、低姿勢になるということだ。
果たして、暁の振った《黎明》は。
見事に空を切った。
「ひゃうん!?」
拳術使いはなんとか《明星》を取り押さえることに成功した。
「みんな、今だ!やっちまえー!」
叫ぶと同時に体に力が入る。
すると。
「ふぁっ…ん」
なんかいかがわしい声が聞こえる。
しかも仲間たちが攻撃をする気配がない。
拳術使いは訝しげに顔をあげる。
「お、おい…なんでみんな動かないんだよ…、ていうか熱心にどこ見て……」
皆の視線の先を見てみる。
「ッ!!!!!」
拳術使いは、自分の両手が《明星》の胸を鷲掴みにしているのを見た。
おそるおそる《明星》の顔を覗く。
そこには。
恥ずかしさと怒りに顔を紅潮させた《明星》が………
彼は慌てて胸から手を放し、謝る。
「ごめんなさいわざとじゃないんです許してくださいお願いし」
「嫌だ」
「まぐふっ!!!」
突如鳩尾に蹴りが入る。
押さえていた小さな重りを弾き飛ばした暁は即座に飛び上がり―――空中で拳術使いを切り刻んだ。
誇張表現ではない。
文字通り、切り刻んだ。
「ギャアアアアァァァァァァァァァァァアァァァァァァァァァ!!!!!!」
拳術使いの断末魔が響く。
拳術使いは倒した。
あとはこの5人を倒すだけ。
そう思って降り立った暁のまわりには、残りの5人がいる。
しかし。
「ん……?」
様子がおかしい。
全員顔をにやけさせ、武器を捨て、両手をわきわきさせている。
「………………………」
暁は自身の中の冷たい怒りを感じた。
(さては、さっきの偶発的事象を見て興奮したというの…?それだけじゃない。そうすれば私を押さえ込めるととか思ってるんだ………)
5人の男は下卑た笑みを浮かべて飛びかかってくる。
「………存在価値のないゲス豚。死んでちょうだい」
同時に、《黎明》から霧が発生する。
「ッ!! どこだ!?」
霧はとても濃く、男たちは目の前すら見えない。
これが宝具《黎明》。霧を自在に操る武器である。
霧が晴れる。
霧に包まれていた男たちは、皆血を流して倒れている。
「覚えとくといいよ…私にああいう言動をするとどうなるか」
ああいう言動が何かは、説明する必要はないだろう。
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男は《鉄槌》に飛びかかり、持っていた剣を振り抜く。
九綺は、それを腕でガードする。
「バカめ!腕ごと切り落としてやる!」
しかし、九綺の腕は切れなかった。
代わりに、男の剣が砕けた。
「んん?二つ名は知っとっても、能力は知らんかった、ちゅーやつか?」
九綺が余裕の笑顔で訊ねる。
「クッ………」
「あたいの能力は《
《滅鉄》。それが九綺の能力。
そこら辺の剣や刀で攻撃すればそちらの武器が壊れてしまう。
「そらっ、一気に決めるで!」
剣を砕かれた男の鳩尾にボディーブローを入れる。
「ガハッ………」
男は血を吐いて吹っ飛ぶ。おそらく肋骨は粉砕骨折、胃あたりも破裂したんじゃないだろうか。それくらい容赦のない拳だった。
九綺は続けざまに敵の剣を折り、鉄の拳を叩き込む。
即座に5人倒した。
最後の敵は、24人のなかで最も屈強な男だった。
「ぐ…うう…」
「なんや、怯んどるんか?うん?」
九綺は男を挑発する。
「ぐ…う…う、うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
意を決したようだ。男は、九綺に向かって拳を握り突撃する。
「体格はこちらのほうが圧倒的に上だ、殴りあいで負けてたまるかあぁぁ!」
「拳のぶつけ合いやな!ええで、受けて立ったる!」
ふたりの拳がぶつかり合う。
「ぐあ、あ、あああああああああ!!」
男は悲鳴をあげる。
「なんや、腕砕けたんか?見かけ倒しやな。がっかりやわ」
そういって九綺はストレートを男の鳩尾に決める。
「がっ、ああ……」
男は白目を剥いて倒れた。
「《滅鉄》の拳に普通の拳で対抗しようとしたんは認めたるわ…やけど、さすがに無理やったな」
こうして四人の子供誘拐実動部隊叩きはあっけなく幕を閉じた。
苦戦なんてしません(笑)
おもしろくなるのはもう少し後ですかね。
次回をお楽しみに!