神桜のノスタルジア   作:ヘリーR

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第7話「新たな強者」

 「ハア、ハア…なんだよあいつ、くそ強いじゃねえか…」

 

 とある裏路地。一人の男が何かから逃げている。

 先程までいたところには、たくさんの屍――男の仲間だった――が転がっている。

 

 「あんなバケモン、どうやって倒せっつーんだよ……う、うわぁぁっ!!」

 

 突如、体が浮く。

 その後、間髪入れることなく、空中で身動きのとれない男に雷が直撃する。

 

 声も上げれず、男は焼け死んだ。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 昼下がり、客足が途絶えてきた頃。

名古屋の町外れにあるカフェ――ノスタルジアに、前置がやって来た。

 

 「……後付か。最近はよく来るな。また仕事か?」

 

 カウンター席でその格好に似合わずアールグレイなんて飲んでいた唖門が訊ねる。

 

 「いや、今回は別の用だ。……残りの3人を呼んでくれるかい?」

 「む、わかった」

 

 ここで前置が言う3人とは、もちろん、防衛ギルド『ノスタルジア』を創ったメンバー――無響、暁、九綺のことだ。

 

 呼ばれた3人がやって来て、広めのテーブル席で前置と向き合う。

 ついでに、呼んではないが残りのメンバー、六四朗、絶斗に、無限――最近元気になったようだ――が、カウンター席に座っている。

 

 「…さて、最近、君たちのように悪い連中を蹴散らしてる者がいるようだが…聞いているかい?」

 「ええ、聞いてますとも。なんでもすでに二つ名が付いているとか」

 「確か…《聖裁人》に《豪火》やったっけ?」

 

 前置の質問に、無響が答え、九綺が補足する。

 

 「やはりもう情報が行っていたか」

 「業界じゃあもう一番の噂だからな。防衛ギルドの仕事を奪ってる、なんて言われてるぞ」

 

 苦笑しながら唖門が言う。

 

 「一番問題なのは、それだけの強者が防衛ギルドに入っていないこと…だよね、後付さん?」

 

 暁が前置に訊ねる。

 

 「うむ。本来なら強者は防衛ギルドに入らなければならないというルールは存在しない……が、その人が勝手に悪者退治なんてしてたら話は別だ。防衛ギルドに入っていないと警察機構とも連携がうまくとれない。つまり、後処理に困るんだ。おかげで最近、『裏路地に大量の焼死体が転がっている』…なんて通報が多くてね」

 「……焼死体、ですか?」

 

 無響が反応したそのワードは、《聖裁人》と《豪火》の使う能力あるいは武器をささやかに告げるものだった。

 

 「そうだ。少なくとも《豪火》はその二つ名から、炎関係の能力もしくは武器を持つことがわかる。《聖裁人》は……」

 

 前置は一旦言葉を切ってコーヒーを啜る。

 

 「……目撃者、ではないが、聴いた者がいる。裏路地で鳴り響く轟音を」

 「轟音……焼死体…なるほどね。雷か」

 「そのとおりだ朝長さん。《聖裁人》は雷使いだ」

 

 雷使いと炎使い。

 なかなかの組み合わせだ。

 

 「……ぜひとも、我がギルドに欲しいですねえ」

 

 このギルド内における最大の創始者にしてリーダー格、無響がそんなことを言う。

 

 「やはり君もそう考えるか、花舞くん。僕もこのギルドを監察するものとして、ぜひともあの二人にはノスタルジアに入ってもらいたい。ただ……」

 「ただ?」

 

 前置は困った顔で本当に困ったことを言った。

 

 「……残念ながら、その二人の容姿が全くわからないんだ」

 「「「「……へ?」」」」

 

 四人が四人揃って同じ反応を返した。

 カウンター席に座っている3人も開いた口が塞がらない様子だ。

 

 「ちょちょちょちょっと後付はん、あんた今諜報の仕事こなしとるんちゃったか?」

 「全くと言っていいほど容姿に関する情報が手に入らないからね……調べようがないんだよ……」

 「後付さんですら分からないとは…こりゃあ探し出すのにしばらく掛かりそうだね」

 

 暁がため息混じりに落胆の言葉を吐いたとき、扉が開いた。

 

 「?この時間に来るなんて珍しいな…いらっしゃいませー」

 

 怪訝に思いながら暁が席を立ち客を迎え入れる。

 その客を見た瞬間、

 「!!」

 思わず暁は戦慄した。

 (こいつら…只者じゃない)

 

 やって来た客は二人。

 一人はツンツン頭の金髪で、グレーの半袖シャツの上に白いジャケットを羽織っている。

 もう一人は黒地に赤のストライプ柄が入ったスーツに身を固めており、ソフトモヒカンとも言いがたいソフトすぎるモヒカンの髪型だ。

 その二人から醸し出される雰囲気が、尋常ではない。

 他のメンバーも、その雰囲気を感じ取ったようだ――、一気に空気が張り詰める。

 

 二人は席に座ると、二人揃ってアメリカンを頼んだ。

 

 「お待たせしました。アメリカンです」

 

 暁が二人のもとにコーヒーを持ってきたのと同時。

 扉が勢いよく開け放たれる。

 

 「いらっしゃ……ッ!?」

 

 入ってきたのは覆面をした男3人。

 咄嗟に身構えるノスタルジアメンバーと前置……だけではない。

 客二人も、身構えていた。

 

 「……いた。てめぇら、よくも俺たちの仲間を!!」

 「……?」

 

 ノスタルジアメンバーには心当たりがない。

 しかし、客二人は心当たりがあるようだ。

 

 「自業自得だろ、裁かれたんだよ、てめぇらは」

 

 金髪の青年がそんなことを言う。

 

 「!!」

 裁かれた――《聖裁人》。

 もしや、この二人。

 

 「ふふふふざけるな、俺らが何したって言うんだよ!!?」

 「思いっきり宝石店に押し入って金もらってたじゃねーか、バッチリ見たぞ。だいたい、普通ならそんな覆面しねーだろ。怪しすぎんだよ、てめぇら」

 「う………」

 「図星だな。言い逃れはできないぞ。飛んで火に入る夏の虫、だな」

 

 超ソフトモヒカン青年がどこから取り出したかわからないが刀に手を添える。鞘に指を通す穴が四つ開いた、つまり腰に差すのではなく、手で直接持ち運ぶタイプの刀だ。

 

 前置を含む8人がいつでも止めに入れるよう、気を張り詰めて見守るなか、向かい合った客二人と覆面3人は同時に地を蹴って―――




 《業火》じゃなくて《豪火》です。
 間違いじゃないです。わざとです。

 急激な修羅場で次回に移ります。お楽しみに!
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