満月は動かない   作:ふらったぁ
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なんやかんやでバレンタインの話を書けなかったので。
やっぱり終わらせ方が難しいですね。
題名はなんか天啓が降りてきました。


ちょこっと遅れたチョコレート

「しれーかん、クッキーくれくれ、それ全部くれ!」

 

昼下がり、僕が売店でお菓子やらを買って帰ってきたら、開口一番そんなことを言われた。

お前なんでクッキーも買ってきたことがわかったんだ。

いつもならこの時間、望月は昼寝しているはずなんだけど、どういうわけか今日は起きていた。

さて、いきなりどうした望月よ。

 

「ほら、今日ホワイトデーじゃん? だからさ、ほら」

「ホワイトデー? 確かに、って、ん?」

 

なんだ、そんなことか。

僕は姿勢を崩して、椅子にもたれかかった。

それならしょうがない、いやまて、なにかおかしい、違和感があるぞ。

そもそも僕、バレンタインになにか貰ったか……?

 

「…え?バレンタ…ぁ?聞こえんなぁ~?」

 

ほらやっぱり、ぼかぁお前からチョコ貰った覚えはないぞ。

やらないからな、これは僕が買ってきたんだ。なんと言われようが揺るがないぞ。

椅子をくるりと回し、望月に背を見せる。

いつもいっつも僕のお菓子を持ってきやがって、今回ばかりは……

 

「司令官のけちー」

 

背中に視線が刺さる。こう、ちくちくと。

ちょっと罪悪感が湧いてきた。いや、でも、

 

「けーちー」

 

じとーっとした目でこちらを見る望月。

あぁ、くそう、それはちょっとずるいんじゃないか。

いや、でも今回ばかりは……

 

「司令官なんて知らない」

 

ちらと見るとぷいっとそっぽを向く望月。

悲しい。蝶よ花よと育てた娘が反抗期に入ってしまった父親の気分だ。

 

「……食べます?」

「わーい、ありがと司令官」

 

ものすごく棒読みでそう言われた。

もっきゅもっきゅとクッキーを食べ始める望月。可愛い。ハムスターみたいだ。

結局、渡してしまった。なんだか負けた気がする。

しかしまぁ、こうして望月の笑顔が見れたことだし、結果オーライなのかな?

それなら最初から渡せよって話だが、そりゃまぁご愛嬌ということで。

 

「司令官、なにずっとこっち見てんのさ」

「いや、なんだかね。娘の成長を見る父親の気分だよ」

「なんだよそれ、なにか? あたしが子どもだって?」

「少なくとも、僕から見りゃ子どもだよ」

 

艦娘に年齢なんてあってないようなもんだけど、僕から見りゃみんな子どものようなものだ。

駆逐艦なんてもってのほか。

 

「艦娘を子ども扱いなんてねぇ、体はともかく、実質司令官より年上なんだよ?」

「そうだな、体はともかく」

「今どこ見て言った白状しろ」

「望月口調口調」

 

おっとっと、なんてわざとらしく言う望月。

この野郎、いや野郎じゃないか。ならなんだ、野女? なんか違う。

ともかく仮にも上官と部下なんだぞ、もっと、こう、なんだ、なんだろう。

学校にいた時にもっと勉強しておけば良かった、言葉がでてこない……。

ん? これも老化……? いやいやいやいや

 

「なんだなんだ、司令官。最近老けてきたって?」

「誰がおじいちゃんだ。僕はまだまだ現役、大丈夫大丈夫」

「でもこの前、階段で少しバテてたじゃん」

 

…………。

確かにこっちに来てからというもの、全くと言っていいほど運動してなかったからなぁ。

デスクワークばかりで方は凝るわ腰は痛くなるわ、散々ですよ。

 

「そうそうこの前本土の方でなんかあったっぽいじゃん。あれ、なんだったの?」

「あぁ、なんだかどこぞの島に深海棲艦がいっぱいいたらしくてね。みんなで叩きにいったんだと」

「へぇー。まぁあたしらにゃ関係ない話だね。

「そんときに姉妹みたいな深海棲艦がいて、片方を倒したらもう片方が激昂した~。なんて話もあったぞ」

 

深海棲艦にはそんな、家族愛みたいな感情なんてないと思ってたけど、艦娘と深海棲艦は性質的に似てる、なんて話も聞いたことあるし、存外そうでもないのかもしれない。

いや、そんなこと言っても、倒さなきゃいけないことに変わりはないんだけどね。

 

「でもなんでそんな事知ってるんだ? 僕、言ったっけか」

「いやね、姉妹たちから連絡がちょいちょいくるんだよ。いやぁやることないって幸せだね」

「そういえばその作戦の中心は水無月がいるとこだったか、元気でやってるといいんだけど」

「水無月姉? なんかさっちんがふみふみがながなががって言ってるから多分元気だと思うけど」

 

なら良かった。水無月は戦力的にも家庭的にも優秀だし、重宝されてるだろう。ご飯美味しかったですまた作って欲しい。

また会うとしたら戦後か、はたまた人類の終わりが近づいた頃だろうけど。

できれば、後者はごめんだ。

それを止める術なんて僕は持ち合わせてないけど。

 

「しれーかーん? なんか顔が辛気臭いよ?」

「ん、ちょっと考え事してた」

 

目先、この平穏が続けばひとまず文句はないさ、ここにいるいたいけな少女一人くらいは僕が守ってやろう。

いや、現状、守られるのは僕か。

なんとも格好がつかないな。

 

「ほらまたー。ほら、そんなんだとしわが増えるよ?」

「わかったわかった。わかったから顔を引っ張るな」

 

にへらと笑いながらぐいぐいと僕の頬を上下に引っ張る望月をどうにか諌めて椅子に座り直す。

こんなことをしていると、さっきまで考えていたことが馬鹿らしくなってくる。

そもそも、ああいうのは僕には向かない。他の人に任せておけばいいさ。

 

「あー、司令官」

「どうした改まって」

 

さっきまでとは打って変わって、少し頬を赤らめながらもじもじとしだす望月。

そしてサイドボードの中から何かを取り出す。

 

「あー……。一応、さっき貰ったわけで、あたしとしてもその、なんだ」

 

しどろもどろで中々要件を言い出さない。

一体どうしたって言うんだろうか。

 

「あの、この前渡せなかったんだけど……一応あるからさ、チョコ。食べる?」

 

…………

 

「是非。ありがとう、望月」

「そんな改まって言うなよ……なんか恥ずかしくなるじゃん」

「はは、というか望月。今日これのために起きてたのか」

「えっ、い、いやそんなことないって、偶然だよ偶然」




読了ありがとうございました。

ところで、望月の私服はまだですかね。
あと、ポケモン買いましたポケモン(`・ω・´)
ただいまマオの試練に苦戦中です、こうごうせいやめて……






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