第一話 十九代目
一対多数の斬り合いを得意とし、自身の速さにより最小の動きで相手を仕留める古流剣術。
幕末から明治にかけてその技を振るう男がいたという話が噂として存在するが、時代はもう21世紀。今の時代にそんな物騒な人間は存在していない。
「道に……迷った」
この男を除いては。
金髪を首の後ろ辺りで纏め、中性的な顔立ちをした細身の少年。
彼の名は
「何処だよ、来禅高校って……」
来禅高校とは彩人の転校先の高校のことだ。離れた街から電車を乗り継いで駅から歩き続けてきたのだがそれらしい建物など見えてこない。
携帯も充電が切れて地図の機能も使えない。何だこの八方塞がり。
(あの人に聞こうかな……知ってればいいけど)
道行く人の中から一人の男に目をつけた。こういうときは人に尋ねるものだと誰かに聞いたことがある。
だが、彩人が声をかけようと歩み寄った瞬間に相手もその場から移動し肩にぶつかってきた。
「チッ、気をつけやがれ」
「えっと、その、すいません」
相手は肩をぶつけた上で舌打ちして去っていった。とりあえずは軽く頭を下げて謝っておいたが、心中は決して穏やかではなかった。
鞄に入れている伸縮式の警棒を抜いてやろうかと思ったがしっかり踏み留まった。
「いかんいかん。何しようとしてんだ俺は」
飛天御剣流の使い手である自分が本気を出してしまうと警棒でも相手は病院送りになる。
イラついたので殺っちゃいました、では済まされない。
「まあいい。別の人に聞けばいいんだからな、うん」
こんなんじゃ駄目だ、と頭を左右に振る。心機一転、よしこれからだと足を踏み出した。
ウゥゥゥゥゥ――
「っ!?」
何度か聞いた警報の音。周りの人々の慌てようからして間違いない。空間震警報だ。
つくづくついてないな、と近くのシェルターを探す。
(ん? ……あいつ一体どこに向かってる?)
シェルターを目指して歩く途中、高校の制服を着た少年が走る姿を視界の端に捉えた。
近くのシェルターに向かっているのかと思ったがそうではない。彼はそこを通り過ぎて一直線に何処かへと走り去っていった。
一般人ならそんなことに構っていられないと無視するだろうが、彩人はそれを見過ごせなかった。どんな理由があるのか知らないがこのままだと彼は空間震に巻き込まれる可能性がある。
「あんまり走らせないでくれよ……」
彩人は肩掛け鞄を押さえながら少年の元へと走った。かなり距離があるが常人の速さなど彩人にとっては取るに足らない。
勢いよく走るだけですぐに追いついた。
「おい、何処に行ってるんだ? 警報は聞こえただろ?」
走る彼の左肩に手を置いて無理矢理引き止めた。驚いて振り向いた彩人と同い年ほどの少年は息を切らしながら肩を掴んできた。
「大変なんだ!
事情はとりあえず理解できた。彼の妹が何故警報が鳴っているのに外に出たままなのかは不明だが、そうとなれば一大事だ。
「妹の特徴と場所は? 俺が連れてくるから教えてくれ」
「いいのか? でも――」
「そんなこと言ってる場合か! 早くしろ! じゃないと――」
もう遅かった。その少年と彩人のいた地点から少し離れた空の景色が歪み、次の瞬間にその場所を中心に強烈な爆風が発生した。
「ぐっ……」
彩人と少年は何とか空間震に巻き込まれずに済んで、少し安心した。
空間震の爆風によって周囲のビルは窓が割れ、電柱や信号はへし折れている。地面に至ってはまるでスプーンでくりぬいたかのようにその場所だけクレーターが出来ていた。
「おい、あれ」
その被害も深刻なものだったが、二人はそれ以上に目を奪われるものがあった。
お姫様のドレスのような布に身を包み、その継ぎ目部分は所々光の膜に覆われている。
何より特徴的だったのは彼女の美しさ。夜色の長い髪を腰まで伸ばした絶世の美少女。
「お前たちも……」
「な、何? お前の知り合い?」
「そんなわけあるか!」
彩人からの冗談めいた問いを少年は否定した。それもそうだ。
あれではどう見ても空間震と共に現れたかのような――
「お前たちも、私を殺しに来たんだろう?」
少女はその身体に不釣り合いな巨大な剣を持って一瞬で彩人たちの目の前まで接近。剣の切っ先を二人の顔へ向けた。
「な、何を言って――」
「白々しい、早くかかってきたらどうだ」
少女が一歩踏み出すと同時に剣を向けられている少年は恐怖で地面に座り込んでしまう。
彩人は悟った。これはまずい、と。
「そこまで」
彩人は鞄を下ろし中から伸縮式の警棒を取り出す。少女はその言葉と武器と思しき警棒を見た途端、敵意の対象を彩人へと変えた。
「なあ、少年」
「し、
「士道、これ持ってて」
士道と呼ばれた少年は彩人から鞄を受け取り、二人から距離をとった。
これで思う存分やれる。
「さて、どんな事情があるか知らないが、無抵抗の人間にそんな物騒な物を向けるなよ」
「莫迦な、だったらお前たちは何故ここにいる」
「偶然迷いこんだだけだ。とにかく剣を置け。俺も出来ることなら争いは避けたい」
警棒を彼女の身体から離し、説得を試みるが通じることはなかった。少女は迷いなく剣を横凪ぎに振るう。
「説得にも応じずか。なら仕方ない。少しだけ大人しくしてもらうぞ」
しかし、彩人も既に動いていた。空高く飛び上がり警棒を両手で持ち上段から降り下ろす。
「飛天御剣流
落下する際の重力と剣を降り下ろす力を重ねた攻撃。まさしく飛天の名に相応しい技だ。
「小賢しい!」
少女は剣の側面で警棒を受け止める。彩人は勢いに任せて押し切ろうとするが相手の方が腕力は上。
競り負けて弾き飛ばされるが、何とか体勢を立て直し足から地面に着地する。
「消えろっ!!」
「甘い!
少女が上段に振るう剣を身体を右回転させて回避、背後に周り遠心力を利用して警棒を彼女の背中に打ち込む。
だが、その場の空間が障壁のように攻撃を止めた。一瞬遅れた彩人の顔面に右手の裏拳が叩き込まれる。咄嗟に警棒を盾にするがその程度では防ぎきれない。今度こそ地面を二転三転し瓦礫に背中を打ちつけた。
「ゲホッ……ゴホッ……」
口の中に溜まった血や砂利を吐き出し酸素を必死に身体に取り込む。どう考えても人間の腕力じゃない。そもそもあんな少女の細腕でこんな力が出せる訳がない。
少なくとも科学や常識で考えるべき相手ではないことは確かだ。
「しぶとい奴だ」
「こっちの台詞だ。簡単にへし折ってくれやがって」
右手の警棒は見るも無惨に曲がり、もはやただの鉄クズだ。武器として使っていくのは不可能だろう。
「お前なら死なないよな……周りに人がいるわけでもないし」
「何の話をしている」
「いや、こっちの話だ」
彩人は警棒を放り捨てると右手を正面に突きだした。
彩人の右手に一本の鞘に納められた刀が出現し、その手に収まる。鞘から抜かれた刀は刀身から鍔、柄に至るまで黒曜石のように黒く、光を反射する。
「
デート・ア・ライブは他の作品が気に入って書いてみたのですが、どうでしょうか……
書き方とかも変えたので違和感やらがあるかもしれません。改善点やおかしな部分があれば気軽に教えてください。